もともとクラシックとか絵画系の話は好きでしたけど、
この話も恋愛の部分と絵画の部分が上手くミックスされていて面白かったです。
■街角で自分の絵を売っていた亮は、画商の澤に才能を見出され
彼の画廊の地下で絵をかく生活に入ります。
最初は彼に注文される複製画を描いていたのですが
「自分の絵を描きたければ、愛人になれ」
と、言われます。
一旦は断わったものの、
自分と祖母だけだった家でお金が入り用になったり
日本画家だった祖父の昔の絵を買い戻したかったりと
やむを得ず、承諾する亨。
ベッドの中では人が変わったようにサディスティックになる澤にとまどいながらも
彼の中に深い闇を見た亨は、次第に彼に惹かれていくのでした。
■まず全体を通しての雰囲気が好きでした。
もちろん、昼も朝もでてくるんだけど、ずーっと夜みたいな
(地下室で描いているのもあるのだけど)ムードです。
主人公の性格も暗いというか静かなので、甘いところは皆無。
キャラ的にはそれほどのめりこまなかったかもしれないけど
「面白い」と思ったのは、暗めだけど、重くはなかったからでしょうか。
亮が次第に自分の絵を確立している過程が
ワタシの好きな『富士見』の悠季とかぶるから・・かもしれません。
エッチも、よく読めば凄い鬼畜なのかもしれないけど
表現が露骨じゃないので、気にならなかったというか
『夜夜の月』の下で抱かれているシーンは(外じゃないよ)
むしろ美しかったくらいです。
■同時に、澤も「お前が絵を描かなければ良かった」などと変化を見せるし
しかして画家として大成させる為に他のパトロンを紹介しては落ち込んだりして
ぐるぐるしているところが、だんだん可愛くなってきました。
亮の方も、自分の絵を見出してからは強くなった様子で
最後の一色を決める辺りなどは、何度でも読んでしまいそう。
初めてかもしれない朝焼けのシーンが、夜ばっかしのこの話で印象的です。
なので、フツーの話としても充分楽しんだのでした。
でもやっぱりエッチは濃いよな、ラヴァーズ文庫!