テーマ:最近観た映画。(40157)
カテゴリ:映画
「ジュリエッタ」(原題:Julieta)は、2016年公開のスペインのヒューマン・ドラマ映画です。アリス・マンローの短編集「ジュリエット」に収録された三つの短編(ジュリエット三部作)に基づき、ペドロ・アルモドバル監督、エマ・スアレス、アドリアーナ・ウガルテら出演で、母親から娘への愛、娘の思いを、色彩豊かな映像とともに描いています。第89回アカデミー賞外国語映画賞で、スペイン代表に選出された作品です。
「ジュリエッタ」(2016年)のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:ペドロ・アルモドバル 脚本:ペドロ・アルモドバル 原作:アリス・マンローの短編集「ジュリエット」収録の「チャンス」、「すぐに」、「沈黙」 出演:エマ・スアレス(現在のジュリエッタ) アドリアーナ・ウガルテ(過去のジュリエッタ) ダニエル・グラオ(ショアン、ジュリエッタの夫) インマ・クエスタ(アバ、彫刻家) ミチェレ・ジェネール(現在のベアトリス) ダリオ・グランディネッティ(ロレンソ、現在のジュリエッタの交際相手) ロッシ・デ・パルマ(マリアン、過去のジュリエッタの家政婦) スシ・サンチェス(サラ、ジュリエッタの母親) ピラール・カストロ(クラウディア、ベアトリスの母親) ホアキン・ノタリオ(サムエル、ジュリエッタの父親) ナタリー・ポサ(フアナ) マリアム・バチール(サナア、ジュリエッタの両親の家政婦) ブランカ・パレス(18歳のアンティア) プリシージャ・デルガド(過去のアンティア) サラ・ヒメネス(過去のベアトリス) ほか 【あらすじ】
メロドラマ風の序盤、母娘の縦糸を織り込む中盤、娘の失踪の謎に迫る終盤というダイナミックな展開を、スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督が迫力の女優陣とともに色彩豊かに描くヒューマン・ドラマです。 若いジュリエットが昏睡状態の妻を持つ漁師と情事に陥るという序盤のメロドラマ的展開に一瞬、面食らいます。中盤、ジュリエットが娘を連れて両親を訪問、アルツハイマー病を患う母を横目に家政婦と関係する父を目の当たりにしたジュリエットは、反感を覚えます。ジュリエット自身、病気の妻を持つショアンとの情事を経験しているわけですが、いざ、自分の父親の情事となるとこれを許すことができません。終盤は18歳で失踪してしまった娘の謎を追うミステリータッチの展開になりますが、ここにも親子の関係、彼我の痛みが絡んできます。異なる時代の異なるエピソードを、異なる俳優で描きながら、一貫したトーンと色彩感覚で見応えのあるドラマに仕立て上げる様が見事です。 もともとアリス・マンローという作家は、家族の内なるドラマを描いたものが多くて、それが僕の惹かれた理由でもあった。僕の作品にはミステリータッチのものが多いけれど、それは人生というものがミステリーだから。人間どんなに芯が強くても、どんなに楽観的でも、運命というものには逆らえない。運命は謎に満ちていて、それを理解することはできない。それはときに苦痛を伴うけれど、もちろん辛いばかりではないと思う。(ペドロ・アルモドバル監督) 主な登場人物 母と娘の関係が三つのエピソードの縦糸となっている ジュリエッタをベテランと新進の女優が時代に応じて演じ分ける 迫力の女優陣、色彩感覚が素晴らしい カナダのノーベル賞作家アリス・マンローが2004年に発表した短編集「ジュリエット」収録作品のうち、ジュリエット三部作と呼ばれる三編、「チャンス」、「すぐに」、「沈黙」を原作にしています。
序盤は列車の中が舞台 原作は北米が舞台で、アルモドバル監督も北米を舞台にメリル・ストリープを主演に迎えて英語劇を撮るつもりでした。しかし、ニューヨーク州の海岸近くでロケハンするものの、しっくり来なくてしばらく頭を冷やします。結局、英語で手掛けないほうが良いと感じ、舞台をスペインに移し、スペインの地形に合わせて脚本を構成、スペインの俳優を起用したスペイン語劇に変更しました。メリルストープ主演で北米を舞台にした英語劇でも観てみたい気もしますが、これらの変更により、若干トーンは異なるものの女性賛歌三部作などこれまでのアルモドバル監督の作品ともある程度の連続性が出るなど、結果として良い決断だったのではないかと思われます。 ペドロ・アルモドバル(1951年〜)は、スペインの映画監督・脚本家・プロデューサーです。22歳のとき8mmカメラを購入、1974年に最初の短編映画を撮ります。1980年に自主制作した初の長編映画がカルト的人気を博し、以後ほぼ1年に1本のペースで作品を発表します。独特なストーリーと世界観、強烈な色彩感覚などから国内外で熱狂的なファンを獲得、7本目の「神経衰弱ぎりぎりの女たち」(1988年)でヴェネツィア国際映画祭脚本賞を受賞、アカデミー外国語映画賞にノミネートされます。息子を失った母親を描いた「オール・アバウト・マイ・マザー」(1999年)でアカデミー外国語映画賞を受賞、続く「トーク・トゥ・ハー」で非英語映画としては「男と女」(1966年)以来となるアカデミー脚本賞を受賞します。このに作品に続いて製作された「ボルベール〈帰郷〉」(2006年)は、カンヌ国際映画祭で脚本賞と主演女優賞(ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、ヨハナ・コボ、チュス・ランプレヴら6名の主演女優全員)を受賞します。女性賛歌三部作と言われるこの三作は、アルモドバル監督をスペインを代表する映画製作者として揺るぎないものにしました。大胆なプロットでかつ繊細に女性を描く彼は、同性愛者であることを公言しており、 どうしてかと訊かれても困るけれど、僕にとっては女性の方が理解しやすい。もしかしたら、子供の頃女性に囲まれて育ったからかもしれないね。(ペドロ・アルモドバル監督)と語っています。彼の作品はメロドラマやポップカルチャーのスタイルを利用しながら、人間の欲望や情熱、家族や個人のアイデンティティといった問題をテーマを描くことが多く、複雑な脚本やブラック・ユーモア、色彩感豊かな映像が特徴的です。 エマ・スアレス(現在のジュリエッタ) エマ・スアレス(1964年〜)は、マドリッド出身のスペインの女優。演技とは全く縁のない環境で生まれ育ったが、独学で勉強、1993年、1996年、2007年、20010年にスペインのアカデミー賞に相当するゴヤ賞の主演女優賞にノミネート、1996年に受賞している実力派。2016には本作で同賞の主演女優賞を受賞した他、別作品で助演女優賞にノミネートされている。 アドリアーナ・ウガルテ(過去のジュリエッタ) アドリアーナ・ウガルテ(1985年〜)は、スペインの女優。作家の曽祖父、作家・舞台美術家の祖父を持つ。2006年にスペインのアカデミー賞に相当するゴヤ賞で最優秀新人女優賞にノミネートされている。 ダニエル・グラオ(ショアン、ジュリエッタの夫) ダニエル・グラオ(1976年〜)は、スペインの俳優。 インマ・クエスタ(左、アバ、彫刻家) インマ・クエスタ(1980年〜)は、バレンシア出身のスペインの女優。「ブランカニエベス」(2012年)などに出演している。2011年、23013年、2015年とスペインのアカデミー賞に相当するゴヤ賞の主演女優賞にノミネートされている。 ミチェレ・ジェネール(現在のベアトリス) ミチェレ・ジェネール(1986年〜)はバルセロナ生まれのスペインの女優。父がイギリス系、母がフランス系のスペイン人で、いずれも俳優。 主にスペインの映画、テレビで活躍している。 ダリオ・グランディネッティ(ロレンソ、現在のジュリエッタの交際相手) ダリオ・グランディネッティ(1959年〜)はアルゼンチンの俳優。主にアルゼンチン映画に出演していたが、1998年以降、国外の作品にも出演するようになる。いくつものスペイン映画に出演しており、テレビドラマにゲスト出演することもある。ペドロ・アルモドバル監督作品では「トーク・トゥ・ハー」(2002年)に出演、他にアルゼンチン・スペイン合作の「人生スイッチ」(2014年)などに出演している。2012年には文化・教育番組で、国際エミー賞を受賞している。 ロッシ・デ・パルマ(マリアン、過去のジュリエッタの家政婦) ロッシ・デ・パルマ(1964〜)は、マヨルカ島出身のスペインの女優。数多くのペドロ・アルモドバル監督作品に出演している。 スシ・サンチェス(左、サラ、ジュリエッタの母親) スシ・サンチェス(1955年〜)は、ヴァレンシア出身のスペインの女優。スペインの舞台、映画、テレビに中心に幅広く活動している。2013年にスペインのアカデミー賞に相当するゴヤ賞の助演女優賞にノミネートされている。 【サウンドトラック】 「ジュリエッタ」サウンドトラックCD輸入版(楽天市場)
【撮影地(グーグルマップ)】
【関連作品】 ジュリエッタの原作本(楽天市場) アリス・マンロー短編集「ジュリエッタ」(楽天市場) ペドロ・アルモドバル監督 x ダリオ・グランディネッティのコラボ作品(楽天市場) 「トーク・トゥ・ハー」(2002年) ペドロ・アルモドバル監督 x ロッシ・デ・パルマのコラボ作品(楽天市場) 「欲望の法則」(1987年) 「神経衰弱ぎりぎりの女たち」(1988年) 「私の秘密の花」(1995年) 「抱擁のかけら」(2009年) ペドロ・アルモドバル監督作品のDVD(楽天市場) 「グロリアの憂鬱」(1984年) 「マタドール〈闘牛士〉 炎のレクイエム」(1986年) 「ライブ・フレッシュ」(1997年) 「オール・アバウト・マイ・マザー」(1999年) 「バッド・エデュケーション」(2004年) 「ボルベール〈帰郷〉」(2006年) 「私が、生きる肌」(2011年) インマ・クエスタ出演作品のDVD(楽天市場) 「ブランカニエベス」(2012年) ダリオ・グランディネッティ出演作品のDVD(楽天市場) 「人生スイッチ」(2014年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年07月08日 05時00分05秒
コメント(0) | コメントを書く
[映画] カテゴリの最新記事
|
|