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「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(原題:Buena Vista Social Club)は、1999年公開のドイツ、アメリカ、フランス、キューバ合作の音楽ドキュメンタリー映画です。ヴィム・ヴェンダース監督が友人のライ・クーダーとともにキューバ音楽の古老(ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのメンバー)のコンサート、レコーディング風景、彼らの来歴、キューバの日常などを描いています。第72回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた作品です。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:ヴィム・ヴェンダース 脚本:ヴィム・ヴェンダース 出演:ライ・クーダー(スライド・ギター) ヨアキム・クーダー(パーカッション、ライの息子) ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのメンバー フランシスコ・レピラード、通称コンパイ・セグンド(ボーカル、トレス) エリアディス・オチョア(ボーカル、ギター) イブライム・フェレール(ボーカル、コンガ、クラベス、ボンゴ) オマーラ・ポルトゥウンド(ボーカル) ルベン・ゴンザレス(ピアノ) オルランド・カチャイート・ロベス(コントラバス) アマディート・ヴァルデス(ティンバレス) マヌエル・グァヒーロ・ミラバル(トランペット) バルバリート・トーレス(リュート) ピオ・レイヴァ(ボーカル) マヌエル・”プンテジータ”・リセア(ボーカル) ファン・デ・マルコス・ゴンザレス(バンドマスター、ギロ) ほか 【あらすじ】 名ギタリストであるライ・クーダーがプロデュース、大ヒットすると同時に、キューバ国外にほとんど知られていなかった隠れた老ミュージシャンに再びスポットライトを浴びさせた同名のアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」がベースになっています。ライ・クーダーがハバナを再訪問、老ミュージシャン一人一人の来歴、演奏や収録シーン、キューバの光景を織り交ぜて描いています。アムステルダム公演のシーンに始まり、キューバでの撮影・収録が続き、歴史的なカーネギーホール公演のシーンで終わります。 【レビュー・解説】 時間が止まったかのようなハバナの街並みを背景に、キューバ音楽の古老たちのコンサートや録音風景、来歴の語りを通して、夢に見たカーネーギーホールでの演奏に至るまでの彼らの奇跡的で感動的な復活劇を、美しい映像と魅力的なナンバーに乗せて描く本作は、繰り返し鑑賞に耐える優れた作品です。 本作の舞台となるキューバはアメリカのフロリダ半島の南145キロに浮かぶ、人口約1100万人ほどの島国です。キューバ革命(1959年)により、アメリカ大陸で初めて社会主義国家となったことから、「カリブに浮かぶ赤い島」とも言われ、1962年に核ミサイル基地建設が明らかになったことからアメリカが海上封鎖を実施、米ソが対立して核戦争寸前まで達したキューバ危機は、映画「JFK」(1991年)、「13デイズ」(2000年)、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(2011年)などの題材になっています。 忘れ去られていたキューバ音楽の古老たち 本作に登場するのは、キューバ革命で社会主義国家になる以前のミュージシャンたちです。ルンバ、マンボ、チャチャチャなどを生み出したキューバ音楽は、スペイン系とアフリカ系の音楽がベースになっており、19世紀の古風なヨーロッパのダンスとアフリカのリズム感溢れる鼓動のが混然となった音楽と踊りには一種の優雅さがあります。1970年代から彼らの音楽に魅了されていたギタリストのライ・クーダーは、1997年に機会を得て、キューバに渡り、かつて活躍したミュージシャンたちに会います。彼らの多くは亡くなり、生き残ったものは靴磨きをしたり、木工所などで働いて暮していました。70歳〜90歳にもなった彼らの時代遅れの音楽は、キューバでは仕事にはなりませんでした。 古老たちと制作したアルバムがグラミー賞を受賞 クーダーは自分も音楽を愛する音楽家であること、彼らに興味を持っていること、そして一緒に演奏したいことを理解してもらい、毎日集まっては演奏を録音、それを聞くということを繰り返しました。歌詞には二重、三重の意味があり、多様に解釈できる深いものでした。「音楽家は短い命を音楽に捧げ、音楽は後世に伝わるが、自分たちの文化、自分たちの音楽を持ち続けられる音楽家は少ない、彼らは素晴らしいミュージシャンで、彼らと演奏できるのは大きな喜びだった」と、クーダーは語っています。そして出来たアルバムが「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」で、これがラテン音楽ファン以外にも受け入れられる世界的な大ヒットなり、1997年のグラミー賞を受賞しました。アルバムのタイトルでもあり、本作のタイトルにもなっている「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、キューバ革命で閉鎖を余儀なくされた旧共和政時代の会員制クラブです。レコーディングに参加したメンバーの多くがこのクラブに出演していたことから、彼らのブランド名となり、アルバムのタイトルとなったものです。 セカンド・アルバムの制作にカメラが密着 帰国後もキューバでの出来事を思い出してはにんまりと、心ここにあらずのクーダーを見た友人のヴェンダース監督は、まだアルバムなる前のミックス・テープを借りて聴き、心を奪われました。走っていた車を停めて聴き、さらに一晩に四度も聴き返したといいます。翌朝、クーダーからミュージシャンたちの来歴を聞いたヴェンダース監督は、彼らに会わなければならないと思いました。そして一年後、ライから電話をもらったヴェンダース監督は、二枚目のアルバム制作に密着することになります。わずか一週間前の連絡で、クルーや予算もろくに確保できないまま、ハバナに向かう飛行機に乗ったそうです。 時の流れが止まったかのようなハバナ そして訪れたハバナは1959年(キューバ革命)で時間が止まっていました。本作の冒頭、ライが息子のヨアキムと側車付きの古いバイクで走りますが、街並みも車もカストロ以前の旧共和政時代のままです。こうしたなかなか見れない風景や、有名なハバナ葉巻やその製造シーンなど地域色豊かな描写も、本作の大きな魅力になっています。また、終盤には、老ミュージシャンたちがケネディもマリリン・モンローも知らないことがわかります。実は1962年以降、アメリカによる経済封鎖が実施され、経済発展が滞るだけではなく、文化的交流も希薄だったという背景があるのです。 時の流れが止まったかのようなハバナの街 ミュージシャンたちと一体になって撮影 計画的と言うよりは自然発生的に始まった事は撮影は、あたかも日記を記録するように進められました。本作はヴェンダース監督が初めてデジタルで撮影した作品で、カメラはソニーのMiniDVを使用し、ステディカムを用いて最小限の人数で撮影してしています。MiniDVは16ミリが持ち込めないような状況でも撮れる、映画の可能性を広げたカメラで、ステディカムで得られる機動性は、軽快でノリの良い彼らの音楽にマッチしました。カメラマンがコントラバス奏者でもあったことから、すぐに老ミュージシャンたちに仲間意識が芽生え、彼らと一体になって撮影を続けられました。撮影が中断すると、「僕らとお友達をやめるのかい?」と冗談を言われるほどだったと言います。映画は老ミュージシャンたちが、夢に見たカーネギー・ホールのセンターステージで演奏を終えるまでを描いており、ハバナで50時間、アムステルダムで20時間、カーネギーホールで10時間、合計80時間の撮影が行われました。 カーネギー・ホールのセンターステージで演奏を終えるまでを描いている 老ミュージシャンたちのあるがままの人生、文化そのものの音楽を讃える作品 カーネギーホールの公演を終え、熱狂的な称賛の声も聞こえぬかのように立ち尽くす老ミュージシャンを見た時、ヴェンダース監督は彼らの人生を凌駕するような大きく、信じられないような物語の証人となり、ドキュメンタリー以上のものが撮れたと感じたと言います。歌や演奏を止め、靴磨きをしていた70歳や90歳の老ミュージシャンが、人生の最晩年で大スターになるという、夢のようなサクセスストーリーが描かれてますが、彼らはそれに値する人たちであり、それに値する彼らの音楽が万人を魅了したことに他なりません。彼らはウィーン国立歌劇場でも20分間のスタンディング・オベーションを受けたと言います。リヒャルト・シュトラウス以上とも言われるこの称賛は、老ミュージシャンたちのあるがまま人生、文化そのものである音楽に向けられたものと言えます。 ライ・クーダー(右、スライド・ギター)と ヨアキム・クーダー(左、パーカッション、ライの息子) フランシスコ・レピラード、通称コンパイ・セグンド(ボーカル、トレス) エリアディス・オチョア(ボーカル、ギター) イブライム・フェレール(ボーカル、コンガ、クラベス、ボンゴ) オマーラ・ポルトゥウンド(右、ボーカル) ルベン・ゴンザレス(ピアノ) オルランド・カチャイート・ロベス(コントラバス) アマディート・ヴァルデス(ティンバレス) マヌエル・グァヒーロ・ミラバル(トランペット) バルバリート・トーレス(リュート) 【サウンドトラック】 「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」オリジナル録音リマスター(楽天市場)
【撮影地(グーグル・マップ)】
【関連作品】 フォトブック(楽天市場) Donata & Wim Wenders 「Buena Vista Social Club」 「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の続編のDVD(楽天市場) 「Buena Vista Social Club: Adios」(2017年) ヴィム・ヴェンダース監督作品のDVD(楽天市場) 「都会のアリス」(1974年) 「さすらい」(1976年) 「アメリカの友人」(1977年) 「ハメット」(1982年) 「パリ、テキサス」(1984年) 「ベルリン・天使の詩」(1987年) 「夢の涯てまでも」(1991年) 「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」(2011年) 「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」(2014年)・・・共同監督 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2017年11月01日 05時00分11秒
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