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「僕と世界の方程式」(原題:X+Y、米題:A Brilliant Young Mind)は2014年公開のイギリスのドラマ映画です。モーガン・マシューズ監督のドキュメンタリー映画「Beautiful Young Minds」(2007年)をベースに、同監督、エイサ・バターフィールドら出演で、数学に突出した才能を持ちながらも心を閉ざす少年が、国際数学オリンピックのイギリス代表候補となり、台湾での合宿を経て、愛に目覚めていく姿を瑞々しく描いています。
「僕と世界の方程式」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:モーガン・マシューズ 脚本:ジェームズ・グレアム 原案:モーガン・マシューズ/ジェームズ・グレアム 出演:エイサ・バターフィールド(ネイサン・エリス) レイフ・スポール(マーティン・ハンフリーズ) サリー・ホーキンス(ジュリー・エリス) エディ・マーサン (リチャード) ジョー・ヤン(チャン・メイ) ジェイク・デイヴィス(ルーク・シェルトン) アレクサ・デイヴィーズ(レベッカ) マーティン・マッキャン(マイケル・エリス) アレックス・ロウザー(アイザック・クーパー) エドワード・ベイカー=クローズ(9歳のネイサン・エリス) ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 数学オリンピックを目指す自閉症スペクトラムの少年という刺激的な題材を、リアルに瑞々しく描く一方で、思慮深く、暖かい眼差しで愛の大切さ訴える、ドキュメンタリーでじっくりと被写体と向き合ってきた監督ならではの、質の高いドラマ映画です。 数学オリンピックを目指す自閉症スペクトラムの少年をリアルに描く ドキュメンタリーから生まれたフィクション モーガン・マシューズ監督は、剥製技術のワールド・コンペのドキュメンタリーを制作、これがBBC2で放映され、数多くの賞の対象になるなど高い評価を得ます。このような、かつてないようなワールド・コンペのドキュメンタリーをシリーズで撮ることをBBCから依頼された彼は、理髪のワールド・コンペ、エルビスのモノマネのワールド・コンペ、世界的な伝書鳩レースなどのドキュメンタリーを企画しましたが、うまくいくかどうかわからなかったので、バックアップが必要と考えました。この時にプロデューサーから紹介されたのが、数学オリッピックのイギリス代表チーム候補の少年少女たちでした。彼らはずば抜けた才能に恵まれていましたが、その一方で厳しい時を過ごしていました。それは、彼らが心身の変化が著しい10代の真っ只中でいたこと、そして個性的なメンバーの何人かは自閉症スペクトラムでコミュニケーションや社会生活への適応が難しかったことによります。人類の将来を作り上げるような優秀な子供たちが日常生活に苦労していることを、彼は非常に興味深く感じます。マシューズ監督は、この数学オリンピックと素晴らしいメンバーたちを題材に、ドキュメンタリー映画「Beautiful Young Minds」(2007年)を制作します。そして、さらに5年以上の歳月をかけてドラマ映画にしたのが本作です。 それは私には未知の豊かな世界でした。数学への興味の有無とか、得意不得意といったことではありません。こうした信じがたい才能を持った若者達は、我々とは別の世界の存在のように感じられました。私は凡人で、彼らは魔法使いでした。私にとって彼らはヒーローでしたが、彼らはそうしたことに気づいておらず、彼らの才能は彼らにとって重荷でさえあったのです。彼らは学校で同年代の少年少女に虐められ、仲間はずれにされていました。 実話が物語の核 本作はフィクションですが、核となる部分はモデルとなったダニエルの実体験に基づいています。 ダニエルは、彼にとって普通のコミュニケーションが難しい、どういう顔をしていいのかわからないと言います。彼は人の顔の表情も読むことができず、また何を話していいのかもわかりません。何が適切で、何が不適切なのか、わからないのです。だから彼は殻に閉じこもり、基本的なコミュニケーションさえトラウマになってしまうのです。しかし、彼は中国文化に出会い、惹かれます。イギリスの人々と違い、中国の人々は数学を讃えてくれました。中国では偉大な数学者はヒーローです。数学オリッピックのチームは、中国では普通に子供たちと呼ばれますが、イギリスではオタクとか、マニアと蔑視されます。彼は中国文化を受け入れ、中国語の独学を始めます。これはドキュメンタリーで追った実在の少年のひとり、ダニエルの話です。彼は三ヶ月間、中国語を勉強し、中国に行って中国人の恋人を連れて帰ってきます。中国で中国語を学んだ時、彼は言葉だけではなく、顔の表情や手の仕草も一緒に学ぶことができたと言います。彼は言葉と一緒に表情も学んだのです。英語よりも中国語で話している方が、彼には心地よく感じられました。彼は、自分を奇妙と感じることはありませんでした。中国人には、欧米人は皆、奇妙に映るに違いないと思っていたのにもかかわらずです。(モーガン・マシューズ監督) 脚色された部分と創造的挑戦 ドキュメンタリー自体が感動的な話ですが、本作では次の部分が脚色されています。
ある意味、映画の中には孤独や孤立を感じ人が何人もいます。それはネイサンであり、彼の母であり、彼の先生であるマーティンです。しかし、ネイサンは他の二人とは大きく異なります。彼は、数学では解決できない、人生の大きな問題を解決しなければならないことに気づきます。ネイサンは父の死後、あまりに母を遠ざけていましたが、一生、他の人々や過去の幻影を避け続けることはできないことを理解するのです。(モーガン・マシューズ監督) https://www.filmfestivals.com/blog/martin_i_petrov/glasgow_ff_2015_interview_with_morgan_matthews_for_xy 当事者にも評価の高い、傑出した演技 自閉症スペクトラムスペクトラムを持つネイサンを演じたエイサ・バターフィールドと、その母ジュリーを演じた サリー・ホーキンスのパフォーマンスが傑出しています。バターフィールドは、本作がファイナンスが付く前から脚本を読み始め、今までに演じたことのない役に挑戦することに決めたといいます。彼はドキュメンタリーを見て、ダニエルに会い、ダニエルの頭の中で何が置きているのかを学んで、キャラクターを作り上げました。ダニエルは内向的に見えますが、彼にとってコミュニケーションが難しいのは何故なのか、人の表情を読んで反応する為にどれだけ悪戦苦闘しなければならないのか、それを避ける為にはコミュニケーションそのものを避けるしかないことを、しっかりとバターフィールドに説明しました。これが彼の役作りの大きく貢献しているのは間違いありません。また、バターフィールドは実在するメンバーで同じく自閉症スペクトラムのルークと、スペクトラムの子供たちの特別学校に行き、彼らと共に過ごしています。結果、バターフィールドは内向的ながら共感できるキャラクターの創造に成功しただけではなく、ダニエルをしてネイサンは自分自身だと言わしめました。「この映画を見て、最初の三回は泣いてしまった。自分が感じていたが言葉できなかった事を、この映画は伝えてくれる。」と、ダニエルは語っています。また、実際に自閉症スペクトラムの子供を持つ母親達に会い、役を研究したサリー・ホーキンスのパフォーマンスも出色です。 自閉症スペクトラムのコミュニティからの反応としては、映画祭での上映後、たくさんの親御さんが来て、ネイサンの母ジュリーは彼らの自身の経験に近いと話してくれました。また、自身が自閉症スペクトラムとされている人々は、本作を真正であると感じてくれました。(モーガン・マシューズ監督) 自閉症スペクトラムの多様性 自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、従来の自閉症やアスペルガー症候群などが統合されてできた診断名で、コミュニケーションに困難さや、限定された行動、興味、反復行動などなどを特徴とします。症状には多様性があり、連続体として重なり合っているという考え方が、「スペクトラム」という用語に込められています。本作に登場するルークも自閉症スペクトラムですが、ネイサンとは症状の出方も強度もかなり異なります。自閉症スペクトラムといっても多様で個人差があり、社会適応の困難さも各人各様です。一方で、自閉症スペクトラムのコミュニティは映画やテレビでの描かれ方にうんざりしていると言います。というのは、スペクトラムの才能あふれる部分に必要以上にフォーカスしているからです。そんな人はほんの僅かしかいません。自閉症スペクトラムの人ならば、誰でも天才的資質を持っているというのは明らかに誤った見方なのです。そうした状況を考慮し、本作でもネイサンの天才ぶりは必要以上に強調されていません、ネイサンは一人の個性であり、自閉症スペクトラムを代表する人格ではないのです。 <ネタバレ> モデルとなったダニエルは数学オリンピックで銀メダルを獲得していますが、本作のネイサンはギリギリでイギリス代表になるものの、最終的にはオリンピックを途中で棄権、中国に帰ろうとするチャン・メイを追いかけます。本作ではネイサンの数学的な資質をいたずらに強調するのではなく、数学オリンピックという刺激的な題材を通して、10代の子供たちならではの悩み。自閉スペクトラムの主人公や周囲の人々が抱える悩み、そして愛の大切さといった人間的なテーマを追求しています。ドキュメンタリー作品を通してじっくりと被写体と向き合ってきたマシューズ監督ならではの、思慮深く、暖かい眼差しが感じられる、質の高い作品です。 <ネタバレ終わり> エイサ・バターフィールド(ネイサン・エリス) エイサ・バターフィールド(1997年〜)は、イングランド出身のイギリスの俳優。7歳から演技を学び始め、2006年にテレビ映画で初めて役を得る。「縞模様のパジャマの少年」(2008年)で主演に抜擢され、いくつかの賞にノミネートされた。5部門でアカデミー賞を受賞したマーティン・スコセッシの監督の「ヒューゴの不思議な発明」(2011年)の主演を務めている。 レイフ・スポール(マーティン・ハンフリーズ) レイフ・スポール(1983年〜)は、イングランド出身のイギリスの俳優。舞台及び映画で活動している。 サリー・ホーキンス(ジュリー・エリス) サリー・ホーキンス(1976年〜)は、ロンドン出身のイギリスの女優。王立演劇学校を卒業、主にイギリス国内の舞台・テレビ・映画で活躍している。マイク・リー監督の「ハッピー・ゴー・ラッキー」(2008年)でベルリン国際映画祭銀熊賞やゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞、ウディ・アレン監督の「ブルージャスミン」(2013年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている演技派の女優。 エディ・マーサン (リチャード) エディ・マーサン(1968年〜)は、ロンドン出身のイギリスの俳優。父はトラックの運転手、母親は教師の助手という労働者の家庭に生まれる。舞台で活動を始め、1992年にテレビに初出演する。マイク・リー監督の「ハッピー・ゴー・ラッキー」(2008年)で、全米映画批評家協会賞助演男優賞などを受賞している。 ジョー・ヤン(チャン・メイ) ジョー・ヤンは中国出身のイギリスの女優。中国に生まれ、8歳の時からロンドンに住む。中国語、英語に堪能。北京電影学院を卒業、中国のテレビや映画に出演し、本作が初めてのイギリス映画。 【撮影地(YouTube)】
【関連作品】 自閉症スペクトラムを描いた映画のDVD(楽天市場) 「レインマン」(1988年) 「モーツァルトとクジラ」(2004年) 「マラソン」(2005年) 「スノーケーキを君に」(2006年) ・・・輸入版、日本語なし 「彼女の名はサビーヌ」(2007年) 「恋する宇宙」(原題 Adam)(2009年) 「マイネーム・イズ・ハーン」(2010年) 「海洋天堂」(2010年) 「メアリー&マックス」(2008年) 「シンプル・シモン」(2010年) 「Wretches & Jabberers」(2011年) 「ザ・コンサルタント」(2016年) エイサ・バターフィールド出演作品のDVD(楽天市場) 「ヒューゴの不思議な発明」(2011年) サリー・ホーキンスxエディ・マーサン共演作品のDVD(楽天市場) 「ヴェラ・ドレイク」(2004年) 「ハッピー・ゴー・ラッキー」(2008年) サリー・ホーキンス出演作品のDVD(楽天市場) 「人生は、時々晴れ」(2002年) 「レイヤー・ケーキ」(2004年) 「17歳の肖像」(2009年) 「ファクトリー・ウーマン」(2010年)・・・楽天SHOWTIME 「ジェーン・エア」(2011年) 「サブマリン」(2011年) 「ブルージャスミン」(2013年) 「パディントン」(2014年) 「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年) 「パディントン 2 」(2017年) 「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」(2017年) エディ・マーサン 出演作品のDVD(楽天市場) 「僕と彼女とオーソン・ウェルズ」(2008年) 「アリス・クリードの失踪」(2009年) 「思秋期」(2011年) 「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2018年01月09日 05時00分03秒
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