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カテゴリ:映画
「君の名前で僕を呼んで」(原題:Call Me By Your Name)は2017年公開のイタリア・フランス・ブラジル・アメリカ合作の恋愛ドラマ映画です。アンドレ・アシマンが2007年に上梓した同名小説を原作に、ジェームズ・アイヴォリーが脚色を手がけ、ルカ・グァダニーノ監督、ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマーら出演で、1983年の北イタリアを舞台に、大学教授の父親の助手として別荘に招待された24歳の大学院生に思いを寄せる17歳の少年のひと夏の恋を描いています。第90回アカデミー賞では、作品賞、主演男優賞(ティモシー・シャラメ)、歌曲賞(スフィアン・スティーヴンス)、脚色賞(ジェイムズ・アイヴォリー)にノミネートされ、脚色賞を受賞した作品です。ジェイムズ・アイヴォリーは史上最年長(89歳)のアカデミー賞受賞となりました。
「君の名前で僕を呼んで」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:ルカ・グァダニーノ 脚本:ジェームズ・アイヴォリー 原作:アンドレ・アシマン著「君の名前で僕を呼んで」 出演:ティモシー・シャラメ(エリオ・パールマン) アーミー・ハマー(オリヴァー) マイケル・スタールバーグ(Mr.パールマン) アミラ・カサール(アネラ・パールマン) エステール・ガレル(マルシア) アンドレ・アシマン(ムニール):本作の原作者 ピーター・スピアーズ(アイザック):本作の製作者 ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 美しいイタリアの田舎で家族とともに過ごす17歳の少年の夏休みと、年上の青年へのほろ苦い初恋を、一種、爽やかに描く、没入感の高い脚本と共感度の高い演出が素晴らしい作品です。 美しいイタリアの村で家族と過ごす17歳の少年の夏休みと年上の青年へのほろ苦い初恋 イタリアの小さな村が舞台 ミラノの東20〜30キロほどにある、クレマという小さな村が舞台です。海外旅行で大都市や名所旧跡を訪れることはあっても、観光名所でも何でもない小さな村を訪れることなかなかありません。そういう意味では、北イタリアの田舎を垣間見ることができる、非常に興味深いロケ地です。実はこの村は、「場所もキャラクターである」と言うルカ・グァダニーノ監督が暮らすホームタウンで、彼は知り尽くした村を活かしながら、見事に主題に絡め、魅力的に撮影しています。 当初、この作品はジェームズ・アイヴォリーとルカ・グァダニーノの共同脚本で、ジェームズ・アイヴォリーが監督、シチリアを舞台にシャイア・ラブーフ、グレタ・スカッキら出演でという構想でした。しかし、予算内に収まらないことがわかり、最終的にイタリアを知り尽くしたルカ・グァダニーノに監督のお鉢が回ってきました。彼は低予算で効果を出すべく、知り尽くしたホームタウンを舞台に選んだわけですが、何の変哲もない村を舞台にこれだけのものを見せるその手腕は、見事としか言いようがありません。 ゲイ・ロマンスを描いたわけではない? 原作者のアンドレ・アシマンはストレートで、何も知らない自分がゲイに関する性的描写を書いていいのだろうかと自問しながら書いたそうですが、
性的指向に関わらず質の高い作品が実現する時代 本作の前年に公開され、第89回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞を受賞した「ムーンライト」は、
など、異なる点もありますが、
続編ができる?! 本作を完成させたルカ・グァダニーノ監督が、リチャード・リンクレイター監督の「ビフォア」シリーズや、フランソワ・トリュフォー監督がジャン=ピエール・レオの成長をフィルムに記した「アントワーヌ・ドワネル」シリーズようなクロニクル(年代記)を考えていると聞き、とてもしっくりとくるアイディアに妙に納得してしまいました。 キャラクターが素晴らしいんです。だからその後、何が起きるのか知りたくなりました。原作の最後の40ページでは、エリオとオリヴァーの人生の20年間が描かれています。(中略)続編ではないかもしれません。 この作品の登場人物すべてのクロニクルです。もしこれらの登場人物の成長が、同じ俳優の肉体を通して見ることができればとても素晴らしいです。 原作では、エリオとオリヴァーは15年後に再会します。オリヴァーは結婚して子供がおり、教授になっています。二人はさらに5年後に会いますが、エリオの父は亡くなっています。しかし、本作がゲイ・ロマンスであることを明確に否定するルカ・グァダニーノ監督は、エリオがゲイにならないかもしれないと原作とは異なる展開も示唆しており、どのようなクロニクルになるのかは未知数です。 余談:依然として高いトランスジェンダーの壁 本作ではルカ・グァダニーノ監督の卓越したディレクションのもと、ストレートのティモシー・シャラメ、アーミー・ハマーが素晴らしいパフォーマンスを見せていますが、昨年、映画「Rub & Tug」のトランスジェンダー役にシスジェンダーのスカーレット・ヨハンソンがキャストされたことに対して、トランスジェンダー俳優やLGBTQコミュニティが猛反発、スカーレット・ヨハンソンが降板するという事件がありました。トランスジェンダー俳優らが反発した理由は、「シスジェンダーの俳優はトランスジェンダーを演じることができるのに、トランスジェンダーの俳優がシスジェンダーを演じることができないのは不公平」というものでした。 トランスジェンダーを描いた主な作品のキャスティング
トランスジェンダーを描いた主な作品のキャスティングを見てみると、確かにシスジェンダーがトランスジェンダーを演じることが圧倒的に多いことがわかります。個人的な好みで言えば、「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャレッド・レトのパフォーマンスはシスジェンダーながら素晴らしいし、「タンジェリン」のトランスジェンダー、キタナ・キキ・ロドリゲスとマイヤ・テイラーも素晴らしいと思いますが、「ナチュラルウーマン」のトランスジェンダー、ダニエラ・ベガはリアルではあるものの少し違和感を感じます。すべての役はシスジェンダーが演じても、トランスジェンダーが演じてもいいと思っていますが、映画ファンとしては、
ティモシー・シャラメ(エリオ・パールマン、両親と別荘で夏を過ごす17歳の少年) ティモシー・シャラメ(1995年〜)は、ニューヨーク出身のアメリカの俳優。父はフランス人、母は元ブロードウェイ・ダンサーで、フランスとアメリカ双方の国籍を有する。フランス在住の姉も俳優。幼少の頃から一年の1/3以上をフランスで過ごし、フランス語に堪能。原作のエリオは英語のイタリア語のバイリンガルだが、本作ではティモシーに合わせて、英語、イタリア語、フランス語のトリリンガルの設定に書き換えられている。幼少の頃からコマーシャルに出演、2008年に短編映画、2009年にテレビ映画にデビュー。ルカ・グァダニーノ監督によって本作の主演に抜擢され、第90回アカデミー主演男優賞にノミネートされている。
アーミー・ハマー(オリヴァー、エリオの父に招待され夏をともに過ごす大学院生) アーミー・ハマー(1986年〜)は、サンタモニカ出身のアメリカの俳優。「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)、「Sorry to Bother You」(2018年)、「Hotel Munbai」(2018年)などに出演している。 マイケル・スタールバーグ(パールマン博士、エリオの父、大学教授) マイケル・スタールバーグ(1968年〜)は、カリフォルニア出身のアメリカの舞台、映画、テレビ俳優。ジュリアード学院、ロンドン大学、UCLAで演技を学ぶ。卒業後より舞台俳優として活動し、トニー賞にもノミネートされる。映画では「ワールド・オブ・ライズ」などに端役で出演した後、「シリアスマン」(2009年)で初主演を果たし、ゴールデングローブ賞などにノミネートされる。売れっ子俳優で、2017年に出演した「シェイプ・オブ・ウォーター」、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」、「君の名前で僕を呼んで」の三作がすべてがアカデミー作品賞にノミネートされている、今後が楽しみな俳優である。 アミラ・カサール(右、アネラ・パールマン、エリオの母、何ヶ国語も話す翻訳家) アミラ・カサール(1971年〜)は、ロンドン出身の女優。10代の頃よりフランスを拠点に女優として活動している。クルド人の父親とロシア人の母親を持ち、イギリスやアイルランドで育つ。14歳のときに写真家のヘルムート・ニュートンに見出され、シャネルやジャンポール・ゴルチェのモデルとして活躍しながら、パリで演劇を学ぶ。「父を殺した理由」(2001年)、「The Forbidden Room」(2015年)、「永遠の門 ゴッホの見た未来」などに出演している。 エステール・ガレル(マルシア、近隣に住むフランス人の少女) エステール・ガレル(1991年〜)は、パリ出身のフランスの女優。父が映画製作者、母は女優、兄、祖父も俳優。2001年、父の監督する作品で長編映画デビュー。「メゾン ある娼館の記憶」(2011年)、「つかのまの愛人」(2017年)などに出演している。 アンドレ・アシマン(左、ムニール)とピーター・スピアーズ(中央、アイザック) アンドレ・アシマンは本作の原作者で、ピーター・スピアーズは本作のプロデューサー。 【サウンドトラック】 「君の名前で僕を呼んで」オリジナル・サウンドトラックCD
【撮影地(グーグルマップ)】
「君の名前で僕を呼んで」の原作本(楽天市場) アンドレ・アシマン著「君の名前で僕を呼んで」 ルカ・グァダニーノ監督作品のDVD(楽天市場) 「ミラノ、愛に生きる」(2009年) 「胸騒ぎのシチリア」(2015年) ジェームズ・アイヴォリー監督作品のDVD(楽天市場) 「ボストニアン」(1984年):監督 「眺めのいい部屋」(1986年):監督 「モーリス」(1987年) 「ハワーズ・エンド」(1992年):監督 「日の名残り」(1993年):監督 マイケル・スタールバーグ出演作品のDVD(楽天市場) 「シリアスマン」(2009年):北米版、リージョン1,日本語なし 「ヒューゴの不思議な発明」(2011年) 「セブン・サイコパス」(2012年) 「リンカーン」(2012年) 「スティーブ・ジョブズ」(2015年)< 「メッセージ」(2016年) 「ドクター・ストレンジ」(2016年) 「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年) 「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(2017年) LGBTを描いた映画のDVD(楽天市場) 「愛についてのキンゼイ・レポート」(2004年) 「ミルク」(2008年) 「キッズ・オールライト」(2010年) 「アデル、ブルーは熱い色」(2013年) 「パレードへようこそ」(2014年) 「人生は小説よりも奇なり」(2014年) 「キャロル」(2015年) 「タンジェリン」(2015年) 「ムーンライト」(2016年) 「BPM ビート・パー・ミニット」(2017年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019年02月03日 05時00分05秒
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