行きかふ人も又

2010/01/31(日)19:19

【Dr.パルナサスの鏡(THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS)】 2009年 鏡のむこうは欲望の迷宮

イギリス映画(27)

 2007年、ロンドンにパルナサス博士(プラマー)率いる、旅芸人一座がやって来た。出し物は、心の中の欲望を鏡の向こうの世界に創り出す摩訶不思議な装置“イマジナリウム”。 しかしお客はゼロ、しかもパルナサス博士は、かつて悪魔のMr.ニック(ウェイツ)と交わした契約の期限が近付き気が気でない。 一方、もうすぐ16歳になる博士の娘ヴァレンティナ(コール)は、偶然助けた記憶喪失の男トニー(レジャー)に心奪われる。トニーは一座に加わり、彼の魅力で女性客は増えるのだが・・・。  ヒース・レジャーの遺作というだけでも、注目の集まるテリー・ギリアム監督最新作。 イマジネーション溢れる異世界へのトリップは、コアなギリアムファンにはたまらないでしょう。 冒頭、Dr.パルナサス一座が現れた瞬間から心を奪われてしまう! 舞台は2007年というのに、この一座の風貌がロンドンの街角に現れて違和感ないことがまずスゴイ。 1000歳になるという博士には、悲しい秘密がある。かつて“不死”と交換に、娘を悪魔に差し出す約束を交わしてしまったのだ。 タイムリミットは3日後、ヴァレンティナの16歳の誕生日。 博士は欲望に堕ちない人間を見つけ、娘を救うことができるのか・・・! 博士自身、若かりしころ欲望に堕ちた。悪魔と契約などしてしまったのだから。だからこそ“イマジナリウム”を発明し、人間の欲望と向き合って今なお苦しんでいる。 人々の欲望は尽きることなく、悪魔の誘惑は絶大。形勢は不利の連続だけれど、娘のため、諦めるわけにはいかないのだった。 物語の核になるのは、博士が娘を守れるかどうか――それと同時に、ヒース演じる記憶喪失のトニーが、自身の犯した罪と罰に対峙していくシニカルな物語でもある。 恐るべき“イマジナリウム”の世界へ偶然足を踏み入れてしまったトニーを、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が、亡きヒース・レジャーの代わりに見事に演じ分けている。 願望と欲望の世界で、トニーの悪どい姿を露呈させ、悲劇の結末へと突き進んでいく様は、さすがにギリアムらしいブラックな味わい。 ワケありトニーが仲間に加わってからというもの、一座はぎくしゃく。メンバーのひとり、若いアントン(アンドリュー・ガーフィールド)にはとくに不満が募る。 それはトニーに惹かれていくヴァレンティナに、ずっと恋してきたからだった。 アントンの恋の行方はいかに?ヴァレンティナの運命はいかに?腹黒いトニーの運命はいかに? 悪魔の手に堕ちることなく、みんな幸せになれるのか・・・?! 結末はご覧になってのお楽しみ。 ギリアム氏の脳内妄想が創り出すファンタジーには、よくわからないところや、辻褄の合わない場面がたしかにある。 しかし、そこはもう目を瞑るしかなくて、物語性より、めくるめく繰り広げられるダークファンタジーに身を委ねて映像を楽しむのが正解だと思う。 ほかの誰にも創れないユーモアと美しさに満ち満ちた世界はギリアム・ワンダーランド。心が自由に楽しめる空間があった。 最後の最後まで手の抜かない劇場演出もうれしかったし、相変わらず日本贔屓の衣装が『ローズ・イン・タイドランド』に引き続き魅力的だった。 来日中、爆笑問題とふざけ合う時のあのテンション、、、。変人ぶりも微笑ましく、次回作がまた楽しみだ。 ●   ●   ●   ● 監督 /テリー・ギリアム 製作総指揮 /デイヴ・ヴァロー  ヴィクター・ハディダ 脚本 /テリー・ギリアム  チャールズ・マッケオン 撮影 /ニコラ・ペコリーニ   音楽 /マイケル・ダナ  ジェフ・ダナ 出演 /ヒース・レジャー  クリストファー・プラマー  ジョニー・デップ  ジュード・ロウ コリン・ファレル  リリー・コール  トム・ウェイツ (カラー/124分/イギリス=カナダ合作)

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