2010/02/06(土)20:09
【パリ空港の人々(TOMBES DU CIEL)】 1993年 人のあるところ人生あり
パスポートを失って空港から出られなくなった学者(ロシュフォール)を主人公に、各々の事情で空港のトランジット・ゾーン(外国人用処理区域)に棲みついている人々の悲喜劇を綴るコメディ。
スピルバーグ監督の『ターミナル』(2004年)とは、主人公のモデルが一緒なのだそう。どうりで似ているわけだ。
完全なリメイクではないけれど原点はここらしい。
両方みると国柄がよく出ていておもしろい。
こちらはあざとさのない、温かな気持ちになれる粋な物語で、フランス映画の良さここにありーと思うような小品だった。
それぞれの事情を抱え、トランジット・ゾーンで暮らす人々は、大真面目なんだけれどユーモラス。
突然空港で足どめされた主人公さえ、許される限り居心地良く居ようとし、人との繋がりを求め、好奇心とトキメく心を忘れないでいる。
人生を楽しむってこういうことなんだろう。正のパワーがすごくいい。
私的に空港という場所は大好き。
流動する人々を見ているだけで、立ち止まっていることに焦りを感じるほど、色んな人生が交差していて。
そこに留まるなんて正気じゃないけれど、半分諦めて、心ではもがいて、登場人物たちは、ちゃっかりしっかりゾーン内の暮らしに馴染んでいる。
そんな、空港から出られない彼らの背を押したのは、風変わりな中年男の主人公。
夜のパリへと繰り出した彼らに、規則より大切なものが見えてくる。引っかかっていた人生の歯車がそっと動き出すとき、また新たな人生が生まれてくるように。
鮮やかな解放感と、自由の美しさで輝いたパリがステキだった。
それが現実の切なさと相まって、しっぽりとした余韻を残していった。
監督・脚本/ フィリップ・リオレ
製作/ ジル・ルグラン フレドリック・ブリリョン
撮影/ ティエリー・アルボガスト
音楽/ ジェフ・コーエン
出演/ ジャン・ロシュフォール ティッキー・オルガド マリサ・パレデス ラウラ・デル・ソル
(カラー/91分)