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扉の向こう店の中にいるのは皆同じ顔。
バーテン、ウェイター、そして全ての客の名は、マカロフである。 会員制のクラブ唯一の資格は・・・・マカロフであること。 ウズベキスタン出身のエフゲニィ・ワシリーエビッチ・マカロフ(人名)は、自然環境の制御と維持を任務とした環境工学の研究者であった。 やがて妻となるイレーナとの共同研究は順調に進んでいた。 そんな時、突然転がり込んできたひとつの驚くべき提案。 それは超国家的プロジェクトだった。 増殖個体群(マルチプリカンド)。そしてマカロフは0番目の男に。 さらには、【ならなかった自分】を観察するために70年後の世界へと・・・ まぁ平たく言えば、クローンです。 マカロフが選んだ道、そして行き着く先。オリジナル。ゼロ。 クローンとオリジナル。最近読んだブラッドベリにもそんな話はあったが、こちらでは“増殖”されたのである。これはかなり怖い!と思うのだけれど。マカロフはそんなことよりも、逆に興味津々。自分の可能性だとか、もし今と違っていたら・・・なんて思うことはあるだろうが、現状に満足していてそこまで欲求が強くなるだろうか?(私が向上心無さ過ぎ?) イレーナに全面的に賛成。結局、自分は自分でしかないのだし。 ようやく気づき、どうしようもなくなるが・・・最後に救いがあってよかった。 いつもの感想のように、凄い、巧い、雰囲気がいい、なんて事を今回はあまり言っていませんが、良かったですよー。(語彙に関しては諦めてます) ん?と疑問を持たざるを得ない冒頭からテンポ良く進み、だれることなくすっきり締める。(中編だから丁度良いのかな)SFらしい問題提起もあるし、この最後も好きだ。ちょっとキツイしゃれとも言えるが、その権利、理由はあるでしょう。何てたって希望があるから、幾らでも無理できるでしょう(笑) 遺伝子は遺伝子、わたしはわたし。 この人の作品をもっと読みたい。 『0番目の男』 山之口洋 祥伝社文庫(平成12年11月初版第1刷発行) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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