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空気の流れと湿度が球を運んでゆく。
変化球を追いながらスポーツの世界を垣間見る、山際淳司のノンフィクション! この人、好きなんです。 (いつも以上に言うことがめちゃくちゃかもしれませんがご勘弁を) 『Number』の創刊号に掲載された『江夏の21球』が注目を集め、数々のスポーツノンフィクション作品を発表。NHKのスポーツキャスターとしても活躍。 この人みたいになれたらなぁーと思ってた。(本当に漠然とではあったが) スポーツにこれだけスマートに接していた人っていないのではないか。 こんなこと言いつつ、それほど深く知っているわけではなくイメージ先行なんだけれども。とにかく格好良かった。 淡々としてクール。知的でダンディー。 どこか涼しげ。でも奥には激しい情熱が!!! って何を言っているんだか。すみませんです。 収録作品で気になったものを挙げてみる。 『プロローグ ― ホームタウン』 “野球は【ホームイン】するのを見るゲーム” by 寺山修司 そして今日も、男たちはホームへ帰っていくのであった。 『落球伝説 ― 池田純一』 ある1試合のセンターフライの落球。ゲームは逆転負けを食らう。 単に運が悪かっただけのはずが、その年チームは1ゲーム差で優勝を逃し… つくられてしまった伝説。こういう事は良くあるだろう。でも真実を表してはいない。ラストは救いというか、微笑ましい。 『スクイズ ― 西本幸雄』 江夏の21球を、近鉄サイドから。西本監督が出したスクイズのサイン。 それは20年近く前のあのシーンを思い出す結末となった。 西本さん自体に対する興味もありますが(前日紹介の『球心蔵』でも二軍監督として登場)、紙一重の勝負の分かれ目が面白く怖い。 『熱球投手 ― 金田正一』 9月に入っても20勝出来ていないという最低のコンディション。 巡ってきた“勝ち”のチャンスに交代を告げない監督に対して金田は… いやはや、昭和33年(長嶋デビュー)の4月で10勝!ってところだけでも驚きです。 『敗戦投手 ― 加藤初』 個人的に好きな投手だったので楽しみだったのですが・・・話が短すぎた。3ページ。 『つぶやき ― 足立光宏』 昭和51年、阪急 対 巨人 の日本シリーズ。ともに3勝ずつの第7戦。 阪急4-2のリードで迎えた9回裏、巨人の攻撃。マウンドにはベテラン足立。 大興奮の後楽園で、マウンドの足立がつぶやいた言葉に震えます。 『7回戦 ― 小林繁』 後半7回になると突然、制球力が落ちる阪神の小林。マウンドでの孤独。 それまで当然のように出来ていたことが、ある瞬間できなくなるかもしれないという思い。私はピッチャーではありませんが、この不安感はよく分かる。洋弓で散々悩まされました。 いづれも力むこともなくサラリと読めます。一編一編も短い。 スポーツ新聞とはまた違った楽しみ方、スポーツの観方が味わえます。 1995年に逝去され、もうその姿を見ることはできませんが、手元に『山際淳司 スポーツ・ノンフィクション傑作集成』文藝春秋(定価4800円)という800ページ近い本があるので、今後の人生でじっくりと味わいたいと思います。 以上で、キャンプイン記念野球シリーズは一先ず終了。 【小説5(うちミステリー3)、エッセイ1、ノンフィクション1】 『スカウト』後藤正治 などは、また機会があればそのうちに。 何か野球関係でお勧めがあれば、教えてくださるとうれしいです。 既読は、『魔球』東野圭吾、『野球の国』奥田英朗 くらいです。 『ナックルボールを風に』 山際淳司 角川文庫(昭和63年7月初版発行) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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