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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2007/12/11
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カテゴリ:生活

 たしか、この「家事手帖」のブログをはじめたころだったと思う。ゼラニウムにあこがれている話を書いたのは。
 ——ついに、うちにゼラニウムの白花が、やってきました。
 花がやってくる、それも、住み込みにきてくれるなど、ちょっとやそっとの縁ではない、という気がする。
 植え込みながら、思わずと声をかける。
「よく来てくれたねー」



 早速、水(米のとぎ汁)をそっと与える。
 そのときだ。
 なつかしい感じに包まれた。
 ああ、どこかで嗅いだにおいだ、と思う。
 この、青臭くて、かすかに金属的な葉のにおい……。目をとじて、記憶をたどっていくと、小学生のわたしがあらわれた。そこは、大好きな祖父母の、庭。あそこに、ゼラニウムがあったのだ。
 家の南北にあるふたつの庭をつなぐ、東側の通路——そこは、隣りのお寺の墓地に面していた——には、塀に添って台が設(しつら)えてあり、たしかに植木鉢がならんでいた。そこで始終遊んでいた幼いころの匂いの記憶が、そこに植えられていたのが、ゼラニウムだったことを伝えた。およそ40年の歳月を経て。
 ふり返れば、菊の手入れをする祖父と、洗濯ものをとりこむ祖母に、会えるかもしれない。
 目をとじたまま、ふり返る。



 匂いの記憶というのは、な、なんて……。
 過去、名も名乗りあわず、ふれあっていたものの正体を、いまに伝える。



 きょう。
 自分がなぜ、これほどゼラニウムにあこがれ、なつかしんでいたか、ということに気づいた日。
 ちょっとだけ、幼い自分に戻らせてもらう……。



 おじいちゃん。
 おばあちゃん。

 

Photo





2階のベランダ、西のはずれです。
まだ若いゼラニウムを2本、植えました。
1本、158円也。安過ぎやしないかなあ。
そうそう。
先に書いた「からからに干した茶がら」を
たっぷり混ぜこんだ土に植えました。






Photo_2





下の道から写してみました。
こんなふうに、見えます。







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最終更新日  2007/12/11 10:00:00 AM
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