そも、なんてものだかがわからない。正式名称、あるんだろうけど。
わたしは「キュウショク・ハクイ」と呼んでいる。小学校で、給食当番の生徒が身につける白い割烹着と帽子のことだ。実際、口に出して呼んだことはないけれど、給食白衣だろうな、やっぱり。
先週末、末の子どもが給食白衣を持って帰った。
——給食当番だったんだあ。
——うん、そう。
子どもが実際に給食白衣をつけて働く姿を、一度も見たことはない。まんなかの子どものも、上の子どものも、この目では見なかった。休日前に持ち帰る給食白衣を見て、初めて、その週子どもが当番だったことを知るのだった。
——洗濯、よろしく。
——へいへい。
——なつかしいよなあ、キュウショクギ(給食着と呼んでいたのね)。ぼくも着たよ、これ、かぶって。
と夫がなつかしそうに、つぶやく。
わたしの通った小学校には、こういうものがなかった。自前のエプロン・三角巾というのが、すべて、働くときのスタイルだった。給食白衣を身につけた小学生の夫が、目の前を通り過ぎる。ぷ。
おそらく、子どもがこれを持ち帰るのも、あと数回だろう。そう考えると、ものさびしさが湧く、かすかにだが。そんなことを思いながら、洗い上がった給食白衣をてのひらで叩いて干していたら、白い帽子のゴムがのびきっていることに気づく。
——あらま。
これじゃあ、子どもの頭に帽子がとまらない。目のあたりまで、ずり下がってしまうだろう。じっと白い帽子を見る。
給食白衣は、学校の備品だ。勝手な真似はできないけれど……、ゴムの入れ替えをして、わるいことはないだろう。
お日さまのにおいのする帽子から、えいっと、のびきったびろんびろんのゴムを引き抜く。ゴム通しを使って、あたらしいゴムをするすると通し、通すためにほどいたところをちょんと縫う。めんどうくさいな、と思いかけたこんな作業にかかった時間は、8分間。
——キュウショク・ハクイさん、長いこと、お世話になりました。ありがとう。
こんなになんでもないことがやけにうれしく、やけに達成感を生んだ、その日。
給食白衣/帽子。
なんだか、かわいいやつです。
まんなかの子どももなつかしがって、
アイロンをかけてくれました。
そうして、
――あ、これ。
と云って、首をかしげています。
云われて見れば、
背中の襞(ひだ)を裾まで生かして、つまり折り目を立てて
アイロンをかけてあるのでした。
――こういう襞は、こんなふうでいいんじゃないかな。
背中のゆとりのための襞は、襞の部分の下は折り目をつくらず、
「なりゆき」でふわんと仕上げればいいのじゃないか、と。
ああ、おもしろい。