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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2009/10/27
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カテゴリ:生活






 そも、なんてものだかがわからない。正式名称、あるんだろうけど。

 わたしは「キュウショク・ハクイ」と呼んでいる。小学校で、給食当番の生徒が身につける白い割烹着と帽子のことだ。実際、口に出して呼んだことはないけれど、給食白衣だろうな、やっぱり。
 先週末、末の子どもが給食白衣を持って帰った。
 ——給食当番だったんだあ。
 ——うん、そう。

 子どもが実際に給食白衣をつけて働く姿を、一度も見たことはない。まんなかの子どものも、上の子どものも、この目では見なかった。休日前に持ち帰る給食白衣を見て、初めて、その週子どもが当番だったことを知るのだった。
 ——洗濯、よろしく。
 ——へいへい。

 ——なつかしいよなあ、キュウショクギ(給食着と呼んでいたのね)。ぼくも着たよ、これ、かぶって。
 と夫がなつかしそうに、つぶやく。
 わたしの通った小学校には、こういうものがなかった。自前のエプロン・三角巾というのが、すべて、働くときのスタイルだった。給食白衣を身につけた小学生の夫が、目の前を通り過ぎる。ぷ。

 おそらく、子どもがこれを持ち帰るのも、あと数回だろう。そう考えると、ものさびしさが湧く、かすかにだが。そんなことを思いながら、洗い上がった給食白衣をてのひらで叩いて干していたら、白い帽子のゴムがのびきっていることに気づく。
 ——あらま。
 これじゃあ、子どもの頭に帽子がとまらない。目のあたりまで、ずり下がってしまうだろう。じっと白い帽子を見る。
 給食白衣は、学校の備品だ。勝手な真似はできないけれど……、ゴムの入れ替えをして、わるいことはないだろう。
 お日さまのにおいのする帽子から、えいっと、のびきったびろんびろんのゴムを引き抜く。ゴム通しを使って、あたらしいゴムをするすると通し、通すためにほどいたところをちょんと縫う。めんどうくさいな、と思いかけたこんな作業にかかった時間は、8分間。
 ——キュウショク・ハクイさん、長いこと、お世話になりました。ありがとう。

 こんなになんでもないことがやけにうれしく、やけに達成感を生んだ、その日。
 



 



Photo




給食白衣/帽子。

なんだか、かわいいやつです。

 





Photo_2




まんなかの子どももなつかしがって、

アイロンをかけてくれました。

そうして、

 ――あ、これ。

と云って、首をかしげています。

云われて見れば、

背中の襞(ひだ)を裾まで生かして、つまり折り目を立てて

アイロンをかけてあるのでした。

 ――こういう襞は、こんなふうでいいんじゃないかな。

背中のゆとりのための襞は、襞の部分の下は折り目をつくらず、

「なりゆき」でふわんと仕上げればいいのじゃないか、と。

ああ、おもしろい。







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最終更新日  2009/10/27 10:00:00 AM
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