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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2010/04/20
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カテゴリ:生活

 風景だったのだ、と思った。
 友人のことなのだが、ひとに「風景」をあてはめるのがふさわしいかどうかと迷いながら、それを伝えてみたのだった。



   わたしにとって、アナタとコウタクンは、大事な風景でした。風景なん
  て、と思わないでくださいね。
   それは……、
   そこにあるのがあたりまえで、
   ときどきどうしても眺めたくなり、
   好き、ということなわけですから。



   大事な風景が、なくなるわけではないけれど遠くなってしまうことは、
  かなり困ることです。目の前に、ぽっかり穴があいて。



                 *



 この春に転勤で群馬県に越していったひととわたしは、子ども同士が保育園、小学校と同級だったというつながり。保育園と学校で顔を合わすというだけのお互いだったが、そのことが「かけがえない」と思えるお互いでもあった。
 息子のコウタクンがまた、じつにおもしろく——わたしはこっそり「ハカセ」と呼んでいた——学校での発言や行動の端端(はしばし)を娘から、いつもたのしく聞いた。ハカセは読書家だったが、そういうところにも感心していたのだった。
 そんなとき、用事ができた。
 それは、ことし3月に卒業した小学校の残務で、その連絡をひき受けたわたしは、卒業のあと転居したひとたち4人のあたらしい住所に郵便をだすことになった。4人のなかにはハカセの名前もあって、ああ、手紙が書ける、とはずんだ。
 先方からは、すぐと「連絡受けとりました」という返事が届き、そこには、数行の近況——ハカセが、ジャージにヘルメットという出で立ちで自転車通学しているとあった——が添えられていた。ファクスだった。「送信テストのため、ファクスで送らせていただきます」と記されている。
 わたしは再度はずんで、「受信もテストしてください」と、こちらの近況——娘はぶかぶかの制服姿で、てくてく通学と——をファクスで送信。
 翌日、こんどはパソコンにメールが届く。このメールに対する、わたしの返信が、掲出の「風景」の一文だ。



 この春、もっともさびしかった事柄が静かにすくすく変化していくことに、驚く。わたしは、思わず「なんだ、こりゃ」と呟いた。この、思いがけなくもやさしい展開に、しみじみすることすら忘れ、はずんだこころで「なんだ、こりゃ」だったわけである。




Photo





コートをクリーニングに出そうと思って
ポケットのなかを確かめたら、
こんなものが出てきました。

「なんだ、こりゃ」です、まったくのところ。


Photo_2



広げてアイロンをかけたら、こうなりました。
末の子どもが、小学校の科学遊びクラブで、
玉ねぎの皮でしぼり染めをした、ということです。

コートのポケットから出てきた思いがけないモノは、
わたしを驚かせ、いろんなことをおしえてくれました。

さて、このしぼり染め、何にしましょう……。 







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最終更新日  2010/04/20 10:00:00 AM
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