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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2011/03/28
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カテゴリ:生活

 3月25日(金)
 水道水に「国の基準値を超えた放射性物質」が含まれる地域があるというニュース。わたしの住む東京都武蔵野市の水道水にも配水されている金町浄水場の水から、そういう値が出ているという(24日現在)。ただし、それを摂らないことにしようというのは、1歳未満の赤ちゃんに限られるとのこと。うちには、その存在がないから、あわてずさわがず、水道水を摂っている。
 ここであわて、さわいだら、きょうまで暮らしてきた甲斐がないように思える。いま、「甲斐」の二文字を持ちだすことが不謹慎だとしても。



 無口な日日がつづいている。
 まず、町が静かである。
 わたし自身も、これまでの3割方無口になっているような気がする。たとえば「いまは、云えない」というような心境を、そのまま吐露(とろ)する場を、自分でつくれるようになっている。ひとに問われても「聞かないでほしい」と云えるだけの覚悟をもっている。……と、思える。
 以前なら、わが胸のここにある「云えない」「云わない」思いを自ら踏みつけて何かしらのことを云い、「聞かないでほしい」を軽くごまかして、聞かれる前に何かしらのことを答えていたのだったが。
 無口な日日はそして、察するこころを生んでいるようでもある。



 3月26日(土)
 朝から、夫と、娘のうち家にいた2人とともに、てくてくである。町町の様子、角角の気配、人びとの佇まいを目の縁(ふち)にためながら。
 被災地の皆さんにこの様子を、この気配を、この佇まいをお目にかけたとしても恥じないだけのものが、ある。ある、と云うのはおこがましくとも、そこここに、恥じないだけのものが芽生えていますと、知らせられそうに思える。



 長女26歳の誕生日会。
 ほんとうのその日は、もうすこし先だけれど、今夜。
 末娘がつくった紙の輪飾りを天井からつるし、ろうそくで演出を。と思ったら、ろうそくは、いま、晩ごはんの定番だった。
 昨日夫が豆腐屋でもとめてきたおから……。これでケーキをこしらえることを思いつき、今朝、日の出とともに焼き上げた。どうか、おいしくできていますように、と念じ、隠しておいた。



おからのケーキ



材料〈直径24cmのリング型〉
おから(豆腐屋でもとめる)………………………………250g
小麦粉………………………………………………大さじ3杯強
ベーキングパウダー……………………………………小さじ1
卵黄…………………………………………………………4個分
砂糖……………………………………………………………80g
レモン…………………………………………………………1個
卵白…………………………………………………………4個分
砂糖(卵白用)…………………………………………大さじ3
バタと小麦粉(ケーキ型に塗るため)………ほんの少しずつ



つくり方
①小麦粉とベーキングパウダーを合わせて、ふるっておく。
②ケーキ型にバタをぬり、小麦粉をはたく。
③レモンの皮をすりおろし、果汁をしぼる。
④卵4個は、卵黄と卵白に分け、卵黄は中くらいのボウルに、卵白を大きいボウルに入れる(ボウルに水気のないように)。
⑤ひとつ泡立て器を使う場合は卵白を、卵黄より先に混ぜる。卵白、しっかり泡立てて砂糖(大さじ3)を混ぜておく。
⑥卵黄に砂糖(80g)を入れてよくよく混ぜ、レモンの皮と果汁、ほぐしたおからを加える。ここに、ふるった粉も加えて混ぜる。
⑦⑤の卵白に⑥を少しずつ加えて混ぜ(練らないように)、型に流し入れる。
⑧160〜170℃にあたためたオーブンで35〜40分焼く。
※型から出し、好みで粉砂糖をふっても、泡立てて砂糖を加えた生クリームを添えても。

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おからのケーキ。
しっとり、さっぱり、なかなかおいしく
できました。



 3月26日(土)
 朝起きだして、動きまわるが、寒くてたまらない。
 サンドウィッチをこしらえ、仕事に行く子らをおくり出したあとは、からだの動きが鈍くなってゆく一方だ。
 歯をくいしばっている。この2週間あまり、くいしばってもくいしばっても、まだくいしばり足りないように思って、暮らしてきた。この単純な精神構造の主には、歯をくいしばることしか思いつかなかったからだ。が、ほんとうは、それとは異なるこころの働きに期待してもよかったのではないか。もっと……、おおらかなこころの働きに。
「風邪じゃないの? 暖房器具をすっかりしまって、昨日薄着でいたから」と、夫。
 そんな簡単なことにも気づかないでいた。寒いということにさえ気がつかずに、気がつきかけても目をつぶって。
 思いきって、午後から布団にくるまって過した。いろんな夢を見た。夢のなかでちょっと泣いたような気がする。この国のいまの被災の悲しみに、自分自身が抱えるうまくいかなさに。けれど、さいごには、俳優の「大竹しのぶ」——もちろん、舞台や映画テレビで観るだけの存在——とふたり乗りの飛行艇で空を飛びまわり、怖かったが無事着陸したところで目が覚めた。
「大竹しのぶ」に対してわたしは、こころ柔らかくも肝が据わっているという印象をもっている。斯(か)くありたい思いが、夢にそのひとを招いたか。からだを起こしながら、こころをつよく保ち、堂堂と生きようと、と誓っていた。寒気はもう去っていた。







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最終更新日  2011/03/28 11:23:03 AM
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