小渡樹(おどたつき)の部屋

2005/03/09(水)17:23

隣人13号

 井上三太作画のコミックスである。数年前に漫画喫茶で読んだ。全3巻。  主人公・十三青年は工場で働く真面目な男である。彼には中学時代、ヤンキ-グル-プのいじめに遭い、顔を硫酸で焼かれるという凄まじい過去があった。現在の彼の顔は人工皮膚である。  十三青年の中にはもう一つの人格・13号が宿っている。  かつて彼の顔を硫酸で焼いたヤンキ-グル-プのリ-ダ-との再会が引き金になり、十三の中に宿る人格・13号が暴走を始める。復讐が開始されるのである。  ヤンキ-グル-プの子分共が最初に血祭りに上げられる。そこまではいいが、この漫画段々読んでいてやるせなくなって来る。  というのは十三のコントロ-ルが効かなくなる位暴走を始めた13号は、ヤンキ-のリ-ダ-の子供にまで手をかけていくのである。  リ-ダ-の妻はそれが原因で精神不安定になって行く。  ラスト、かつていじめの舞台となった中学校で彼らは最後の対決をする。  ネタばらしにならないよう、詳細と結末は言わない。興味を持たれたら、是非読んで欲しい。  復讐する事がいい事なのか、かといって月日が経てば水に流せるのか。相反するこの二つを作品中で体現しているのが十三青年と13号なのだ。そして、この二つの人格に主導権を奪われる肉体はいじめを受けた人間の揺れ動く心を象徴しているのかもしれない。  何十年経っても自分の中で絶対に笑い話にならない仕打ちを行った相手に再会した時、自分はどのような対応をするだろう。  残念ながら、いい年こいた今になっても答えが出せないでいる。  

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