2022/02/27(日)22:56
昔語り:綿入れ
ここ数年、時代小説をよく読んでいる。
その中に、「綿入れの着物」が出てくる。
寒くなる前に、着物に綿を入れるのだ。
読んでいて、綿入れの着物なんてあるはずがない!と思っていた。
しかし、よく考えたら、私の子どもの時代には、綿を入れた衣服があった。
今から65年ほど前の岡山の山間部の村で私は子供時代を送っていた。
★当時、大人も子どもも、男も女も、冬になると「ちゃんちゃんこ」を着ていた。
それは、綿の入った袖なしの袢纏のようなもので、今の時代のダウンジャケットのようなものだった。
★綿入れ袢纏もよく着ていた。
綿入れ袢纏は、高校に通うようになっても家の中で着ていた。
あれは、秋の深まった頃だろうか、夜、小学生の私に母が一緒に付いて行ってと言って、小学校に行ったことがある。
母親たちの音楽同好会があって、歌が好きな母も入っていたのだった。
その時も、「はんちゃ」を着て、片手に読みかけの本を持って、母のお供をしたことがあった。
綿入れ袢纏のことを「はんちゃ」と言っていた。
語源を調べたが分からなかった。
しかし、九州の糸島や東北でも使われる言葉だそうだ。
★■ねんねこ半纏(ばんてん)■というのもあった。
赤ん坊を背負った時、赤ん坊が寒くないようにと綿の入ったおんぶ用の袢纏があった。
春や秋には綿の入っていな袷(あわせ)のを使っていた。
★亀の子袢纏
ねんねこ袢纏は、仕事がしにくいということで、ねんねこ袢纏の袖をなくしたものが、よく使われていた。
背負われた子供に、
「ええなあ、温(ぬく)うて」と大人たちは声を掛けた。
また、背負っている母親にも、
「子どもを負うとったら、温(ぬ)くかろう」と声を掛けた。
★丹前
冬、仕事から帰ると父は、風呂に入り、下着を変えてから、その上に、丹前を着た。
丹前は、綿の入った着物。
そして、夕食と晩酌。
母が作る料理を
「美味しい、美味しい・・・」と何度も言いながら酒を飲んだ。
いつも、夏の暑さより寒い方がましと思う私だが、今年の冬の寒さは辛い。
家に入ってもダウンジャケットを脱ぐことが出来ない私に、
「外みたいな恰好をするな」と夫が叱責する。
昔は、外でも内でも綿入れを着ていたのだがと私は言葉に出さずつぶやき、春の訪れを待っている。
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