2022/10/06(木)10:29
札差高田屋繫盛記(一):若旦那の覚悟
■若旦那の覚悟■
金貸しは、どうも性に合わないー。
札差高田屋の次男坊・新五郎は、夏五月の切米(幕臣への禄米支給)の直後、兄嫁だったお鶴と再会する。
兄の惣太郎は先の二月に事故で亡くなり、お鶴は実家へと戻っていた。
何をやってもかなわぬ兄を、近寄りがたく感じていた新五郎。
だが高田屋の跡取りとなり、厳しくみえた兄の商いに隠された秘密に気づく…。
武家の悲哀、淡い恋、家族の情。
武士相手に金を貸した商人「札差」として生きる若旦那の成長を、市井の哀歓のなかに瑞々しく描く。
待望の新シリーズ。
兄嫁の姿/朱色の珠簪/消えた縁談
江戸御時代の札差の若旦那が主人公の時代小説。
■札差(ふださし)は、■
江戸時代に幕府から旗本・御家人に支給される米の仲介を業とした者。
浅草の蔵前に店を出し、米の受け取り・運搬・売却による手数料を取るほか、蔵米を担保に高利貸しを行い大きな利益を得た。
札差の「札」とは米の支給手形のことで、蔵米が支給される際にそれを竹串に挟んで御蔵役所の入口にある藁束に差して順番待ちをしていたことから、札差と呼ばれるようになった。
この場合、客である蔵米取の武士たちを「札旦那」と呼び、旗本・御家人は札差のことを「米蔵にある家」という意味で「蔵宿」と呼んでいた。
■読書メモ■◎は、私のコメント。
●手妻
◎意味:「手を稲妻のように素早く動かす」ことが語源で、江戸時代にはすでにあったという“日本独自のマジック”です。
●旗本や御家人の家禄を担保に金を貸し、札差は巨利を得た。
(略)
江戸の代表的な富豪といえた。
銀の針金を拵え、使い捨ての元結とした者は、髪結い床の上板を壊し
「これで普請せよ」と小判を撒いた。
一日のばくちで、千二百両と角屋敷の沽券状を賭けた者もいた。
吉原の全盛の遊女を金にあかせて買い上げ、大勢の面前で散々に打ちすえて別れを告げた慢心者もいる。
大金を投じた遊女に、こんな乱暴な別れ方も出来るぞと見栄を張ったのである。
また素人芝居にのめり込み、自分の屋敷を芝居がかりに建て直し、衣装や持ち物迄そっくりに揃えたお調子者もいた。
桁外れの無駄遣いである。
馬鹿馬鹿しいほどの浪費といえた。
◎これで思い出したのが、大坂の豪商、淀屋。
江戸初期の元禄から正徳年間の記録「元正間記」は淀屋4代目、三郎右衛門(隠居後は古安)の豪華な暮らしぶりを記す。
「夏座敷と称して天井にビードロ(ガラス)を張り、そこへ清水をたたえ、金魚を泳がせた」。
あるいは、「大名へ金を貸すことが面白く、千両の無心なのに、千五百両も用立てた」。
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