ときめきの出会い
素敵な出会いがあると、たびたび、初恋のように心がときめき、夢中になった。最初は、独身の頃、白樺湖の法政大学の広大な敷地の山小屋。雨で蓼科登山が中止になり、たまたまその山小屋を訪れた。学生オーケストラの演奏や合唱団の歌が聞こえていた。雰囲気の良い若い人々にあふれた山小屋の夏休み。 素晴らしい出会いが、木の香のする片隅のバーにあった。出会いの相手は、人ではなかった。それは、誰かが寄贈した、たくさんの世界の推理小説!水割りを飲みながら、何気なく、その中の一冊を読み始めた。いつしか、雨の音も今自分がどこにいるかも忘れた。心は、英国のどこかで起こった殺人事件に没頭していた。たしかエラリークインの「Yの悲劇」だったと思う。この出会いは強烈で、初恋のようにときめいた。山から戻ってからすぐに山のように買った。かずかずの推理小説からスパイ小説の名作まで。数十冊、机の上に積み上げた。仕事が終わると一目散、毎日のように、心は、世界中の怪事件の解決に没頭した。クイーン、クロフツ、ジョン・ル・カレ。カトリーヌ・アルレーの「死者の入り江」は、深夜、読むのが怖いほどの秀作だった。油絵「巴里の夜」 ウイスキーをボトルのキャップで飲むと、舌で転がせば甘くて酔いが心地よい。酔うほどに推理小説の主人公になって、心は世界中の街角を徘徊はじめ、恐怖の夜をすごし、犯人を追い詰めた。あのときめきの出会いをいまだに忘れられない。積み上げた本の数だけ、毎夜、新しい恋人に出会うような幸せな日々だった。しかし1カ月後にドクターストップ。恋の病なら、まだ良いが、毎夜、ウイスキーのストレートを半ボトル飲んだので胃に穴が開きかけていた。今でも、あの一ヶ月は、ほんとうに幸せな日々だった。本は、人々を、さまざまな世界へ旅立たせる。その無限の歓びは、はかりしれない。さて、楽天での交流がきっかけになって、私のスペインの水彩画が、そんな本の挿絵になりました。 リタイヤして丹沢近くの町に住んで見つけた喜びと憧れのスペインへの思いがあふれている本です。よかったら、本屋で注文してお買い求めください。 【里山暮らし、ときどきスペイン】 太陽出版 定価1,260円(税込)詳細は、下記のホームページへ。里山暮らし、ときどきスペイン 楽天ブックスでも買えるそうです。キャンペーン中は、送料無料とか。自分の行く末をいかに生きるかの示唆になるかも。