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田中およよNo2の「なんだかなー」日記

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2007年05月23日
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カテゴリ:超硬派
たとえば、こんな話を聞いたらどうだろう。
「その国は、みんなが食べるものがなくって、国の中で戦争をして、殺し合いにもなりました。
10年間でその国の人は30万人も亡くなりました」

とても、ひどい話だと思う。
あり得ないし、なんとかしてあげたいと思う。

じゃあ、こんな話はいかがだろう。
「日本の自殺者は10年で約30万人である」

***

大阪にも京橋って街がある。
はたして、街といっていいのかどうか疑問な大きさではあるのだが。

天王寺ほど下町ではないし、ましてや梅田や難波ほど栄えてもいない。
マークジェイコブスのセカンドラインのお店があるのが不思議な場所である。

ただ、ここはJRと京阪が乗り換えるところであり、結構、人並みはある。
JRと京阪の駅の間はゴールデンゲートと呼ばれているらしい。
どこがゴールデンゲートなのかわからない。
ただ単に、大きな線路が二つの駅の間にかかっているだけなのだ。
日本で一番天井の高いレール下といったほうがよいのではないか。

駅と駅の間だから、人は多い。
だから、メキシコ音楽の演奏とか、絵はがきや似顔絵を売る人がかなりいたりは、する。

その女の子がかわいくなかったら、僕はその資料を受け取っていたのだろうか。
わからない。
女の子はセーラー服を着て、しょーもなさそうに立っていた。
派手さは全然なくて、とりあえずポニーテールで髪をくくっている感じだった。
きっと、まだ、彼女は彼女の鼻筋がどれだけ美しいかに気がついていないのだろう。
隣では小柄な女の子が大きな声で、呼びかけていた。

きっと、僕は急いでいたのだ。
そのカワイイ女の子の顔を眺めて通り過ぎようとしたら、短いパンフレットを差し出された。
最悪なタイミングだ。
進路を妨害しているかのようだ。
だから、僕は足を止めた。

きっと、彼女をにらんだかもしれない。
でも、かわいかった。
だから、僕はそのパンフレットを受け取ってしまった。

***

帰宅して、そのパンフレットをみると、あしなが育英会ってとこのものだった。

じっくりと読み、僕はできる範囲で寄付をすることに決めた。
ホームページをみると、収支決算もオープンにされていて、健全な運営ができているようだ。
月々1万円にも満たないし、年間でもたいした金額にはならない。
きっと、僕の半年の本の代金にも満たない。

でも、一度やってみようと思ったのだ。

誇れることではないと思う。
NGOを立ち上げて実際に活動しているわけでもない。
また、その会の運営について、タッチするほどの情熱があるのかと言われれば、それはそうではない。

***

僕はこの国の最大の問題の一つは自殺だと思う。

最近は残酷な殺人事件が連日連夜放送される。
その報道には僕も心を痛める。
幼い子供が遺棄されて死亡したり、無辜の警官が痴話喧嘩の果てに死んでしまう。
腹立たしいことだし、許すべきではない。

誤解を招く言い方だけども、でも、そのような残虐な事件で亡くなる人は年間何人だろう。
きっと、自殺者よりも少ないはずだ。

もちろん、人の生死を量で推し量ることはできない。
死んでしまえば、人の人生がそこで終わってしまう。
個人にとっては我が身の死こそが、世界の終りなのだ。

ただ、そういう残虐性や異常性のある事件がマスコミで報道される一方で、自殺はありきたりのものになっているようだ。

おかしくはないか?

残虐な人間が起こす殺人も怖い。
でも、平和で豊かな社会が人の心をむしばみ、自ら命を絶つ社会の異常性だって僕には怖い。
そして、その重大さに麻痺している、社会全体に対しても、怖い。

発展途上国への人道援助には希望を強く持つ若者だって素晴らしい。
でも、僕はこの日本という恵まれた社会の奥底に潜む狂気っていうものにも、目を向けて欲しい。

***

ただ、どのような経過があるにせよ、自ら死を選んだ人を蘇らせるのは無理な話だ。
もちろん、友人が自殺したいと言ったら止めることはできるし、するだろう。
ただ、彼らはこの豊かな社会に隠れてしまっているように思うのだ。

じゃあ、僕にできることはなんだろう。
そんなモンモンとした思いが、寄付をすることを僕に決めさせたのだろう。

***

断っておくと、、あしなが育英会は自殺した遺児のためだけの会ではない。
交通事故、病気、災害…
それら、すべての遺児のために設けられた会である。

僕は幸い両親が健在だから、そんな苦労は知らない。

でも、この日本という豊かな国で、金銭的に苦しいことを強いられるのは、かなり、ツライのではないだろうか。
みんなが、貧しいわけではない。
誰も、仲間がいない。

今でこそ、格差社会と言われ、弱者が注目されている。
でも、日本という国の根底に流れているものは弱者や、貧しい人をどんどん切り離し、あるいは無視する姿勢ではなかろうか。
よく言えば、みんなが頑張る社会。
悪く言えば、頑張らない人はみんなじゃない社会なのだ。
だから、その弱者に落ちることに恐怖し、命を絶つ人が多いのではないだろうか。

でも、この国にだって、頑張ることが困難な人はいっぱいいるのじゃないだろうか。
その代表が、自殺などで親を亡くした、遺児ではないのだろうか。

***

なんて、偉そうに言ってるけど、僕はこういう人たちになにもしてこなかった。
どちらかというと、自分のことばかりを考えて、押しつけていたことが多いように思う。

そして、完全に正しくないことはやりたくなかったのだ。

寄付?
そんなの、民間人がやることじゃない。
国がやることだろ。
だいたい、民間の団体なんて、どんな風にお金が流れているかわかりゃしない。

自殺遺児?
それを助けることが解決じゃないだろ。
どうやって、自殺を減らすかが大切だろ。
自殺遺児を助けたって、自殺が増えてたら同じだろ。

云々。

その意見は確かに、正しい。
でも、あまりにも正しすぎて、一個人である僕が何をしていいのか、わからないのだ。
勝手に僕は自分の無力を嘆き、やがて無関心になっていった。

***

アンパンマンってヒーローがいる。

子供が泣いていると、顔のあんパンをあげて、泣きやませるヒーローだ。
バイキンマンとかもいることはいるけど、やっつけるといったことはしない。
というか、むしろ、仲がよさそうだ。

中学の時とかはバカバカしいヒーローだと思ってた。
自分の頭を人に食べさせるなんて。
かなり、グロテスクでもある。

作者のやなせたかしさんがテレビで、なぜ、アンパンマンをヒーローにしたのかと、答えていた番組があった。
記憶には今でも残っている。

「戦争の時にね、思ったんですよ」
やなせさんは柔らかくも、強い口調だった。
「アメリカとかの敵国をやっつけるのが偉いんじゃないって。
まずは、餓えている人を助けるのが実際に役に立つヒーローなんだって。
だから、アンパンマンは自分の身を削っても、人に食べ物を与えるんです」

確かに、その通りだ。
でも、僕たちが、いや、僕自身が常に忘れていることではないか。

***

だけど、僕はこう思うようになってきた。
正しいことばっかり言って、何もできず、無関心になっていたらどうしようもないじゃないかって。

多少は間違いであったり、応急処置であったりしても、何かをやることがまずは必要なんじゃないだろうかって。

そして、きっと、世の中を変えていくのは、正しい主張を叫ぶだけじゃだめなんだ。

ささやかだけど、カタチのあるものが、大きな力にやがてなるのではないだろうか。

何しろ他人を変えるのは難しい。
というか、無理だ。
いくら偉い人間でも愚かな判断をする。

だから、僕がやるべきことは、僕ができることを精一杯やることなんだ。
それは、壮大な理屈がなくたっていい。

僕はそんな風に信じている。

※もっと、「なんだかなー」なら『目次・◎日々の「なんだかなー」No2』まで





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最終更新日  2007年05月23日 21時34分29秒
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