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テーマ:旅のあれこれ(10280)
カテゴリ:ほどよく
汚いおばちゃんだった。
さっさと終われよと思っていた。 僕は銀行で列の後ろにならんでいたからだ。 いつもとちょっと、違うのはそれが、香港の銀行だったことだ。 日にちは2008年9月16日 だから、緑が濁った色をした長袖のシャツを着たそのおばちゃんが まくし立てていた言葉は、きっと、広東語だったのだろう。 言葉が上海語でも、普通語でも僕は区別がつかないのだけども。 僕がその香港の銀行にいたのは、カードが効かなくなったからだ。 メインバンクを僕は外資系の銀行にしており、海外のATMでも自由に お金がおろせるのだ。 でも、旅行を初めてから一度もおろせてなかったから、問い合わせにきたわけだ。 ただ、カードが異常か、正常かはその香港の支店ではわからなかった。 日本に帰国して、カードを取り替えてもらうことに、なるのだけど。 話が脱線した。 2008年9月16日の香港の、銀行のおばちゃんだ。 銀行の窓口の社員と、おばちゃんの長い広東語らしき言葉での やりとりが終わり、しばらくがたった。 そわそわと、おばちゃんは肩からかけていたトートバックを掴んだり、 離したりしていた。 落ち着きが無くって、スーパーで夕方のタイムセールスをひたすら 待っている日本のおばちゃんにも、見えた。 すると、窓口には何人かの銀行の係員が奥の部屋から出てきていた。 なにやら、台車を押していた。 窓口の係員の背後で台車は止まり、白い手袋が なにかをつかみ始めた。 札束。 しかも、片手では取り出せないほどだった。 白い手袋から、窓口の銀行員に札束が渡され、ガラスで仕切られている 窓口と、カウンターの間の、ガラスがないスキマから銀行員が 札束を渡した。 そして、青い血管が浮き出た手の甲でおばちゃんがそれを受け取り、 トートバックにおもむろに投げ込んだ。 何回、札束がガラスのスキマをくぐったのだろう。 僕は正確に数えていたわけではないのだが、おばちゃんのトートバックが ふくらんでいたのは確かだった。 かなり、僕はびっくりした。 でも、きっと、実は事業か、なんかをやっていて、おばちゃんが 急に金が必要だったのだろうって、その程度に僕は思っていた。 **** 僕は日本に帰国している。 そして、外回りで街を歩き、証券会社の前で足を止める。 写し出されているのは株価。 それも、激しく下落した株価である。 その日本の株価を見る度、僕は香港の、あの汚いおばちゃんを思い出す。 おそらく、あのおばちゃんは、前日のリーマンブラザーズ破綻のニュースを 聞いてすぐに決断したのではないか。 「資産の価値が暴落する。預金も危ない。全部現金にしておこう」 そして、その決断は圧倒的に正しい。 株も、投資信託も暴落している。 日本の平均株価だと、リーマンが倒産した翌日の9月16日の始値は約12000-円。 そして、10月9日の終値は約8200円である。 つまり、3600円程度、約30%以上も下落している。 逆に言えば、日経平均株価に対する現金の価値は30%も上昇しているとも 言える。 また、9月16日に売って10月9日に買い戻せば、3600円のキャッシュフローが 手に出来ることにもなるのだ。 僕も多少は株をやっている。 でも、香港のおばちゃんのような対応はできない。 **** もしかすると、香港の人たちはリスクや、危険を察知する方法が日本人とは 全然違うのかもしれない。 かつて、中国から香港には、中国での財産の没収をされたお金持ちも多くいたと 聞く。 彼らが家庭で習っている歴史や、その対処の方法は、のほほんと暮らしている 僕らとは全く違うのだろう。 その家庭での教えは「混乱してたら、現金を持て」という単純なものかもしれない。 多くの日本の人は、僕も含めて、そんな行動原則さえ持っていない。 でも、これから多くの日本人が対峙しないといけないのは、そんなリスク感覚に 鋭敏な外国の人かもしれない。 おばちゃんの身なりの汚さに、目がくらんでちゃ、いけないのだ。 ※もっと、「なんだかなー」なら『目次・◎時事・ニュース』まで お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年10月11日 21時29分25秒
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