訴訟系問題に対する答案の基礎(1)
以前にも書いたが、訴訟系の問題に対する答案は、訴状を手本にするのが基本だと思う。もう少し具体的には、訴状の請求原因の項の記載の流れに沿って書ければ、試験委員に訴訟系の理解度をアピールでき、合格点がもらえるのではないかと思う。実際の訴状では、事件の内容によって細部は全く異なるが、骨組みは殆ど同じである。以前に書いたように弁理士試験では損害賠償までかかせることが稀のようなので、特許権に基づく差止請求を例に、訴状風答案の書き方の基礎を公開しよう。差止請求権はの根拠条文は特100条である。さすがにこの条文を落とす人はいないと思うが、究極的には、この条文が適用できるかどうかを主張立証するのが訴状である。訴状の請求の原因では、(1)原告特許権の特定、(2)被告の侵害行為の特定、(3)侵害(技術的範囲に属すること)、について説明する。(1)はいいだろう。差止請求訴訟では、事実審の口頭弁論終結時に原告の権利が有効に存続している点に留意するくらいか。(2)では、必要に応じて特104条を挙げる。(3)が最も重要である。まず、直接侵害か間接侵害かを考える。ここで、特許請求の範囲の解釈に当たり70条を挙げ、間接侵害なら101条を挙げる。次に、文言侵害と均等侵害について論じる。通常、明らかに文言侵害というケースは少ないので、予備的に均等侵害についても書いておく。原告の立場からは、文言侵害と決めつけて、被告製品の構成が原告特許発明の構成要件とを対比説明し、被告製品の構成が原告特許発明の構成要件の全てを充足していることを主張する。そして予備的に「仮に以上の主張が認められないとしても、被告製品は原告特許発明と均等であり、原告特許権の技術的範囲に属する。すなわち・・・」とつないで、均等の5要件のあてはめを行う。ご存知のように、原告側が主張立証の責任を負うのは第1~第3要件というのが通説であるが、第4、第5要件についても書いておいたほうがよい。実際の訴状でも、再抗弁の先行主張として書かれるのが通例のようだからだ。最後にまとめの文章を書く。「以上の通り、被告製品は、原告特許発明の全ての構成要件を充足し、または少なくも均等であるから、原告特許発明の技術的範囲に属する。したがって、被告の行為は、原告特許権を侵害する。」かなり省略したが、骨組みは以上のような感じだ。この流れをどのように論文答案に仕上げるかについては次回。