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ファピーの風の花

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2006.11.18
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テーマ:韓国!(16994)
カテゴリ:在日関連
異民族への視線ーマルセ太郎異聞ー

【マルセ太郎さんの自伝、『芸人魂』(講談社)。決して上手な文章とは言えないですが、面白くやがて哀しい男の人生を魅力的に描いています。すでに絶版だと思いますが、古本屋などで見かけたら是非買って読んでみて下さい。少なくとも田代まさしの自伝よりかは面白いことは保証します(笑)】

最近の靖国神社論争や日韓の北朝鮮への温度差の影響なんでしょうか?

ブログやインターネット掲示板を見ると、随分在日コリアン含めた韓国関係の文化や人々を非難する内容が多いです。

僕は、別に韓国が特別に好きなわけでもありません。
また、韓国政府や韓国人、在日韓国人の対応は、日本人には理解しにくい部分もあります。

正直なところ、アンタら、そりゃ違うやろ!と思うこともしばしばです。


しかし、インターネットの話題の中には、ヒステリックに民族そのものを全否定しているものも多く、疑問を感じます。

そして、そんな文面を見ながら、孤高の芸人 マルセ太郎さんのことを思い出していたのでした。

大学時代、先輩と居酒屋で好きな芸人について話をしたときでした。

ひょんなことから、形態模写が上手い芸人は誰か?と言う話題になり、様々な芸人が出てきた後、
先輩の口からひょっこり出てきたのが、マルセさんでした。

『ああ、そんなんいましたね。』
冷酒に舌鼓をうちながら、興味なく相槌をうった記憶があります。

僕もマルセさんの名前は知っていました。
しかし、あくまで名前程度で興味も関心もありませんでした。

正月の特番か何かで徳光アナウンサーの後ろで延々得意のゴリラの形態模写をしていた奇妙な芸人って印象ぐらい。

結局、この時は、マルセさんのことはそれ以上話題にならず、あっという間に他の話題に移りました。


そして、社会人。僕は、東京の本社に配属になりました。

付き合っていた彼女も遠距離になり、デート三昧の休日は、一人盛り場をうろつく日々と変わりました。

そんな退屈な週末のある雨の日、見たかった映画が満員で入れず、仕方なく入った場末の小劇場。
そこで、偶然マルセさんに再会したのでした。

演題は、マルセさんが1本の映画を丸々演じ、語る『スクリーンのない映画館』と言う奇妙な一人芝居でした。

薄暗く、小汚い劇場は、驚くほど閑散としていました。
僕を含め、お客さんは、10名もいなかったと思います。

そこいらの学生演劇の方が余程集まるでしょう。
あまりの少なさに何かのドッキリ企画ではないかとさえ思ったほどです。

実際、マルセさんはこの頃、どん底状態。ほとんど世間から忘れられた存在でした。
熱心なファンが何とか支えている状態だったと後で聞きました。

客の少なさ(しかも半数以上は、明らかにマルセ信者)と言う状態に居心地が悪く、出て行こうかとも思いました。

しかし、結局最後まで出て行きませんでした。

何故なら、彼は題材とした映画『泥の河』をオリジナル以上に繊細に切なく演じていたからです。

映画は終戦後間もない大阪で出会った少年と少女の交流を淡々と描いた作品でした。

マルセさんの表情や仕草は、映画を思い出させるだけでなく、静かな気迫を伴って伝わりました。

それは、僕の記憶にある“単なるゴリラの物真似をする妙な芸人”とは大きく違うものでした。

誠に不恰好、しかし、真摯な熱演ぶりは、まさに彼が信奉し、名前を拝借したフランスのパントマイム演者 マルセル・マルソーを彷彿とさせるものでした。

当時、マルセさんは、東京の某所に小さな店を開いていました。
お店と言っても『人力車』と言うただの小さなスナックでした。

このお店、芸人だけではとても食べていけないマルセさんが奥さんと一緒に営んでいたのでした。
僕は、この店に時々マルセさんがいると聞き、何回か行ったことがあります。

(ちなみにこのお店、無名時代の映画監督の崔洋一さんや作家のヤン・ソギル(梁石日)さんも来ていたそうです。ヤン氏の小説、特にデビュー作の『タクシー狂騒曲』は大好きな作品だけに、一度店で会って話してみたかったです。)

確かに運がいいと、店の奥にマルセさんがいて、いろいろな話をしてくれました。


人様に忘れられた単なる貧乏芸人。当然テレビにも出ないし、風貌もサエない労務者風。

人気のタレントみたいな洗練された部分など微塵もなく、苦労ばかりが顔に出た単なるくたびれオヤジ。

しかし、僕にとっては、憧れのスターです。

大阪の下町 生野区出身のマルセさんは、大阪での子供時代の話や芸の苦労話を面白おかしく聞かせてくれました。


僕は、憧れのスターが語りかけてくれる話を夢中になって聞きました。

ある日、ひょんなことから彼が在日コリアンであることを知りました。

しかし、在日コリアンであろうと、ブラジルであろうと、アフリカであろうと、日本であろうと、関係ありませんでした。

何故なら、僕にとってそんなことは、さして重要ではなかったからです。
そんなことより、彼の演技や芸こそ重要であり、大切だったからです。

好きな芸人の芸を見れて、その人の店で心行くまで深酒ができる。
それだけで、十分嬉しかったのです。

その後、演芸に造詣が深い永六輔さんなどに再評価がされたものの、
2001年、マルセさんは、大してブレークすることなく、亡くなりました。

ここ数年、芸人ブームで様々な人がテレビや舞台で活躍しています。
しかし、僕は、まだマルセさんほどの静かな迫力を持つ芸人には出会えていません。

売れる売れないで判断すれば、芸人として落第だったマルセさん。
しかし、そんな彼が僕にとって何故偉大だったのか?

それは、単に芸の魅力だけではないでしょう。

“国籍や出生、民族で判断するな、その人のありのままを見て判断しなさい。”そんな事を芸を通して僕に教えてくれたからだと思います。


文化や民族が違えば確かに食い違いもあるでしょう。


しかし、そんな違いを超え、人物を見据えて付き合っていくことはできないのでしょうか?

『こいつは〇〇だから』と言うレッテルを貼らずに対人間として接することはできないのでしょうか?

僕は必ずできると思います。

彼の芸からそんなことを学んだ僕は、外国人と結婚しました。
それもイデオロギーも文化も全く違う旧ソビエトの国、辺境の地、中央アジア出身の人でした。

披露宴も新婚旅行もない出発でしたが、仲人は、天国のマルセさんだったと勝手に信じています。


                        転載元: シルクロードから嫁が来た!!







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Last updated  2006.11.18 20:40:09
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