純喫茶ぴろきゃっと

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  茨木のり子(1926-2006)

  十代の終わりの頃、もう50年以上前に、莫逆の友からの便りに、「6月」という作品が引き写されていて初めて知った詩人です。私は男流詩人では木原孝一が好きで、女流詩人では新川和江、三井葉子、金井美恵子、井坂洋子、伊藤比呂美、小池昌代（この人の文章は入試に出題したことがあります）らは詩集を2冊以上持っています。比較的最近の人では、文月悠光さんが荻窪にトークショーに見えたとき、聴きに行きました。ミル様邸のご近所に存命のはずの谷川俊太郎はじめ、尊敬すべき詩人はあまたいるのかもしれませんが、茨木のり子はそのしゃきっとした姿勢が大変敬意を持たれているような気がします。「わたしが一番きれいだったとき」とか「自分の感受性くらい」、ほかに、東京堂書店での詩集と刺繍の作品など広く知られていますね。次のフレーズなど、何度読んでも笑ってしまいます。　「先生　お元気ですか　我が家の姉もそろそろ色づいてまいりました」　他家の姉が色づいたとて知ったことか　手紙を受けとった教授は　柿の書き間違いと気づくまで何秒くらいかかったか

  2024年07月01日

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  北大マルシェのアイスクリーム

  きのう札幌より頂戴しました。いやー、さすがクラーク博士の札幌農学校の伝統ですね。素材の牛乳をはじめ、ハスカップもブルーベリーもラスベリーもみんな北大農場の産物です。ナチュラルというほかない絶品のお味でした、ありがとうございます！R大もクッキーとかビールとか、グラスはありませんがマグカップとか販売しています。今や法人化されている国立大学のほうが、むしろ積極的にあれこれ売っているのかもしれませんね。30年近く前に訪ねたオクスフォードやケンブリッジ、そしてダブリン大学では、それぞれのブランドのチョコレートを売ってました。

  2024年06月29日

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  2024年前半の読書

  もうあと4日で今年も半分終わりですね。1月から読んだ40冊ほどの中から、大変面白かった本を5点ほど書きとめておきましょう。すでにご紹介済みのフォークナー『死の床に横たわりて』や、瀧井孝作『無限抱擁』は省きます。1 ミラン・クンデラ『冗談』（みすず書房、1992年）及び『笑いと忘却の書』（集英社文庫、2013年）ともにクンデラの、チェコ追放、フランス亡命という苦難の時期を物語る切実な作品です。『冗談』の最初に置かれた日本の読者へのメッセージで、クンデラは人間の根底にあるものを、「忘却によって絶えず蝕まれている人生とわれわれとを結びつけている絆としてのノスタルジー」だと述べています。私は欧州大陸はアテネ以外訪ねることができませんでしたが、いちばん訪れたかったのは、クンデラやカフカやスメタナを産んだチェコだったかもしれません。学部生時代の恩師である、ルートヴィヒ・アルムブルスター先生の故国でもありました。R大学にはマルティン君という留学生もいました。チェコのネコ・チョコレートをもらいましたが、その6年後、私が病を得て明治の文豪のようになってしまったとは、知る由もないことでしょう。2 大仏次郎『ドレフュス事件』（創元文庫、1951年）故国というもののないユダヤ人に対する欧州人の眼、そしてエミール・ゾラという卓抜した作家をいくぶんなりとも知ることができました。3 池澤夏樹『マシアス・ギリの失脚』（新潮文庫、1996年）この作品を発表して間もないころ、R大学のタッカー・ホールにて、作家とラテン・アメリカ文学の野谷文昭氏との対談が催され、私も前のほうで聴きました。が、本作を読んでいなかったので、対談の内容は覚えていません。ガルシア・マルケスの影響が色濃いところから、野谷さんが企画したのでしょうね。池澤夏樹は、実父の福永武彦を越えていると思いますが、本作のような、質・量ともに重い作品を、あと二つ、三つ発表していたら、ノーベル賞候補になっていたのではないでしょうか。4 宮本輝『蛍川・泥の河』（新潮文庫、1994年）「蛍川」は1977年の芥川賞受賞作ですが、その前年の受賞作は「限りなく透明に近いブルー」でしたね。「蛍川」も「泥の河」も傑作でほろりとします。後者は、小栗康平によって1981年に映画化され、その映画作品も、私にとっては、「心中天の網島」や「津軽じょんがら節」と並ぶ、最も忘れられない邦画のひとつです。5 尾高修也『近代文学以後ー「内向の世代」から見た村上春樹』（作品社、2011年）「内向の世代」の代表は、R大学独文科の教授でもあった古井由吉でしょうが、私は日野啓三の作品が印象に残っています。「第三の新人」の後、中上健次の前の世代ですね。本書で語られる村上春樹批判には、納得させられるところ深いものがありました。

  2024年06月26日

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  脳のお話

  11月の米大統領選は、本当にあの老ー老による対戦になってしまうのでしょうか？？？むかし養老孟司氏が言っていた「中枢は末梢の奴隷」という言葉も一面の真理ですが、でもやはり、ヒトをヒトたらしめている臓器は、心臓でも肺でもなく脳であることは明らかですね。ヒト大脳は、ピーク時の40歳前後と80歳とでは、平均値で言うと、全重量は10％しか減りませんが、いちばん肝腎の前頭葉の神経細胞（灰白質の部分ですね、白質は神経線維）の数は50％減っています。バートランド・ラッセルが、40歳にさしかかるころ、アタマが悪くなったので数学から哲学に転身すると発言したとき、そして50歳にさしかかるころ、もう哲学も無理なので社会評論家に転身すると発言したときには、哲学者と社会評論家の顰蹙を買いました。今年はイマヌエル・カントの生誕300年だそうですが（4月24日生れ）、その主著の『純粋理性批判』がカント57歳時の出版だったことは本当に驚きです。私がこれまで読んでいちばん印象的だった脳科学の一般書は、もはや30年以上前の刊行で蔵書からも処分してしまいましたが、コレージュ・ド・フランスやパスツール研究所の教授だった、ジャン＝ピエール・シャンジューの『ニューロン人間』（みすず書房、1989年）です。ヒトの脳の進んでいる方向が、ヒトをとりまく環境と齟齬を来しているかもしれない徴表として、世界各国におけるマイナー・トランキライザー（精神安定剤）の消費量の爆発的な増大が挙げられていました。脳科学の教科書としてお勧めできるのは、畏友・山内兄人（やまのうちこれひと）氏による『脳の人間科学』（コロナ社、2003年）です。

  2024年06月16日

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  サビは損？

  この国では「サビ猫」などと言われていますが、英語圏では「鼈甲猫(tortoiseshell cat)」と呼ばれるそうです。顔の表情がわかりにくいのが難ですねえ。上から、ミル様の末妹・ウル(1993-2007)、ご近所でも人気者のミケの娘で、ミル様邸に一日3～5回もやってくる「サビーヌ」、そしてサビとしては有名人だった、赤瀬川原平(1937-2014)の愛猫・ミヨ（享年17歳だったとか）です。

  2024年06月07日

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  street musicians

  オギクボ南口で、ホルンとクラリネットを吹いている二人組がいたので、ミル様邸にお招きして聴かせてもらいました。可愛いお花は三鷹・吉祥寺方面からいただきました、ありがとうございます！

  2024年05月31日

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  英米の恐怖小説作家

  英語圏のホラー小説の翻訳を少しまとめて読みました。アルジャーノン・ブラックウッド(1869-1951)は以前、傑作集のようなものを読み、そのアニミスティックな怪異談はけっこう怖かったです。「いにしえの魔術」という短篇から、萩原朔太郎があの傑作の「猫町」を発想したことはよく知られていますね。ブラックウッドのほかに、M.R.ジェイムズ(1862-1936)とアーサー・マッケン(1863-1947)とを合わせて、英国の恐怖小説の御三家と呼ぶようです。彼らに加えて、米国のH.P.ラヴクラフト(1890-1937)も読んでみたのですが、ブラックウッド以外の3人の作品には、化け物というか妖怪というか、そんなものがよく出て来るようで、それらの作品は私には？でした。日本の幽霊になじんでいると、西洋の悪魔はいま一つピンと来ない気がしますね。いちばん発見だったのは、ウォルター・デ・ラ・メア(1873-1956)の作品で、長篇の『死者の誘い』（原題は『帰還(The Return)』）も短篇の「シートンの叔母さん」も、怖いのみならず、恐怖小説の枠を越えるものが感じられました。教えて下さったTMさんに感謝です。平井呈一によると、デ・ラ・メアには、文豪ヘンリー・ジェイムズ(1843-1916)の恐怖小説を継承する一面があるそうです。確かに「シートンの叔母さん」は、ジェイムズの「ねじの回転」（私は結局これがいちばんコワイ！ように思います）を思い起こさせずにはいないでしょう。「ねじの回転」は、1961年に英国のジャック・クレイトン監督により映画化されています。その原題は the Innocents（ストーリィから訳すと「無垢の子ら」でしょうか）ですが、邦題は「回転」です。デボラ・カー主演のこの映画もコワイです。

  2024年05月26日

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  荻窪2丁目のフリーマーケット

  ミル様邸から徒歩数分の松渓橋公園でフリーマーケットしてました。モモヤさんのクッキーと、ミニ・ヴィオラを2株（1株25円！）買って来ましたよ。ヴィオラを植え替えたデミタス・カップは、今を去ること33年前に、大雪山のふもとで買った大雪焼きです。

  2024年05月19日

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  日本橋三越の獅子最中

  日本橋の三越本店のみで販売されているようで、ほかに白いのもいます。今を去る110年前の1914年に、三越最初の獅子たちが本店前に鎮座したそうです。それは、当時支配人だった日比翁助という御仁が、息子に「雷音」という名前を付けるほどの獅子好きで、倫敦はトラファルガー広場にまします獅子たちを見て発案したそうです。

  2024年05月13日

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  黄金週間に読みました

  今年のGWは、単行本2冊のほか、以下の3冊の文庫本を読みました。ウォルター・デ・ラ・メア(1873-1956)の怪奇小説で、原題は『帰還(The Return)』です。ホラーやミステリーは、総じて短篇より長篇のほうが面白いですね。安部公房の『他人の顔』はこの作品から想を得たのかな、と思いました。創元推理文庫、1984年初版。瀧井孝作(1894-1984)が1925年に発表した自伝的長編ですが、私はこの作家はこの作品しか知りません。飾らぬ短い文の連なりが心に沁みました。村上春樹が『風の歌を聴け』で芥川賞を受賞できなかったのは、瀧井が反対したからだと言われていますね。新潮文庫、1948年初版。ジャン・ジュネ(1910-86)の1947年の作品です。名訳の誉れ高い『泥棒日記』（朝吹三吉訳）を私は読み切れませんでしたが、こちらは読めました。いやー、強烈です。ヴィム・ヴェンダーズと並んでニュー・ジャーマン・シネマの旗手と目され、37歳で早世したライナー・ヴェルナー・ファスビンダー（「マリア・ブラウンの結婚」は必見！）の遺作は、本作の映画化作品でした。村上龍は、佐世保の高校生だったときに、ジュネとセリーヌを読んで文学に目覚めたそうですが、流石です。河出文庫、2002年初版。

  2024年05月10日

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  唐十郎　(1940-2024)

  3日前の5月4日に亡くなりました（奇しくも寺山修司と同じ命日と、札幌の方がお知らせくださいました）。澁澤龍彦(1928-87)、市川雷蔵(1931-69)、大江健三郎(1935-2023)、寺山修司(1935-83)、淺川マキ(1942-2010)、加藤和彦(1947-2009)…唐を加えて、私が密かに慕わしく思っていた著名な日本人はすべて長逝してしまったような気がします。

  2024年05月07日

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  端午の節句麺麭

  いつものごとく、荻窪2丁目「モモヤ」さんの作品です（背景の図画も）。実寸30cmくらい、巨大！もちろん美味！！

  2024年05月05日

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  ノーベル賞、貰えますか…

  これまでに長篇小説は4篇、『羊をめぐる冒険』(1982年)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985年)、『ノルウェイの森』(1987年)、『ねじまき鳥クロニクル』(1995年)を読みました。『海辺のカフカ』(2002年)と『1Q84』(2009年)も読んでみたいと思っています。映画化された作品では、大森一樹監督『風の歌を聴け』(1981年)と市川準監督『トニー滝谷』(2004年)を観ましたが、後者のほうが印象に残っています。私が「村上春樹」の名前を覚えたのは、『風の歌を聴け』でデビューする1979年に先立つこと4年前のことでした。あっという間に休刊されてしまったジャズ雑誌の創刊号で、その読者投稿欄に思わず笑ってしまうような一文を寄稿していたのです。当時国分寺にあった、「ピーターキャット」というジャズ喫茶の店主としてでした。毎年ノーベル賞候補に挙がっていると聞きますが受賞の可能性はどれくらいあるのでしょうね。チェコスロバキア出身のミラン・クンデラ(1929-2023)や、ハンガリー出身のアゴタ・クリストフ(1935-2011)が受賞できなかったことからも、やはり大変な賞なのですね。私がこれまで読んだかぎりで思ったのは、普通では到底浮かばないような卓抜な比喩表現が次から次へと繰り出される素晴らしい才能です。ただ、それを少々あざといと感じる読者もいるかもしれません。私も耳目にしたキビシイ批判はいくつかありますが、1949年生れということもあって男女関係の描き方がステロタイプだとは、フェミニスト陣営などからよく言われるようですね。ノーベル賞がスウェーデンおよびノルウェーの、つまり欧州の賞だということも、微妙な問題を孕んでいるようです。作家本人は、もちろんさまざまな国の著作家から学んでいるに違いありませんが、やはり、スコット・フィッツジェラルド、トルーマン・カポーティ、レイモンド・チャンドラー、レイモンド・カーヴァー、それにサリンジャーやマッカラーズらを精力的に邦訳していることからも、米国現代文学の影響の大きさを気にする向きもあると聞きます。若々しい作家も今や75歳、晴れの受賞は果たしてあるでしょうか？

  2024年05月03日

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  First of May

  When I was small   And Christmas trees were tall…で始まるそういうタイトルの歌が、1969年にヒットしました。英国人のギブ三兄弟が中心だったBee Geesというポップ・グループの曲で、邦題は「若葉のころ」でした。当時買ったレコードは、4曲収録されていて500円。ビー・ジーズはその後も、ダンス映画の主題歌などがヒットしましたが、映画に主演していたオリビア・ニュートン=ジョンはおととし亡くなりましたね。

  2024年05月01日

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  還暦記念フォト

  拙ブログ、気づきませんうちにPVが60000を越えておりました。ほんとうにありがとうございます。「十年ひと昔」といいますが、10年前の写真です。お伝えしましたように、この年の2月某日、私が還暦を迎えた日にミル様は昇天されました。後日、お年賀状の欠礼届けを作成したおり、ミル様元女中頭と銀座のエルメスに出向いて記念写真を撮影してもらいました。どういう事情だったか忘れましたが、エルメス店舗のビル前に馬車が停められて、その中では仏蘭西人の写真家氏が希望者に無料でポートレイト写真を撮影していたのです。出来上がって、ただで貰えた記念写真、なんとウマ面に化かされておりました。あとで知ったのですが、エルメスはもともと皮革製品である馬具の製造・販売から身を起こした企業だったのですね。世界最古の自動車メイカーのプジョーも、もともとは風車等の歯車の製造・販売から起業して、その後、自転車そして自動車へと展開して行ったのでした。ミル様邸には、プジョー製のクルマはありませんが、珈琲ミルとペッパーミルはちゃんとあります。

  2024年04月25日

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  武蔵小金井「パリジェンヌ洋菓子店」

  開店40年を越える小金井のケーキ屋さんで、店主ご夫婦のお店は北口にあるほか、南口にも支店が2店あるそうです。写真は人気の「ポチ・ケーキ」、客から消費税をあずからない姿勢を続けておられ、しかも350円というお値段でした。

  2024年04月22日

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  追悼記

  3月と4月は身近だった人の亡くなった月で、あれこれ思うことの多い月でもあります。私が14年在職したR大学S学部で交流のあった方々で、この数年の間に物故された方々は何と5人に及びます。そのうちのおひとりは、最敬愛の阿部珠理姉で、私の私家版の『追悼記』に、数々の忘れられない思い出を認めました。珠理姉以外の方々は、私がS学部に移籍したときに学部長だったSさん、そして次に学部長をされたKさん（訃報が届いたのはこの2月のことです）、このおふたりは私より1歳年長でした。おふたりには大変お世話になりましたが、Sさんは英語教育研究室でご一緒だったこともあり、私の処女作の出版時には、珠理姉が設けてくれたささやかな記念会に、お忙しい中お運びいただいたのを覚えています。S学部S学科で家族社会学をご担当していたIさんの訃報は、おととしのことになりますが突然で痛ましいものでした。S学部では、私はふたりのnon meat eaterに出会いましたが、彼女はそのひとりで、あるいは私よりストリクトなvegitarianもしくはveganだったのかもしれません。いちど私の提案したシンポジウム企画を手伝って下さったことがあり、そのときに知ったことでした。お互いゆっくりお話ししてみたいと思っていたかもしれませんが、それぞれのオフィスでお茶を飲んだきりになってしまいました。もうひとりは、私のいたG学科の助教を勤めていたMさんで、医療社会学専攻の彼は、助教の任期中に日大医学部に移ることが決まり、私のほうで助教仲間たちとの小さなお祝いの席を設けました。それが、それから数年もたたないうちに帰らぬ人となってしまいました。母校は東北大でしたが、その在学中に白血病を発症していて、一度は寛解したものの後年再発したようでした。奥さんも、まだ幼いお子さんもいました。Mさんのほか癌だったのは、珠理姉とSさんで、それぞれ総胆管癌と肺癌でした。心からお悔やみ申し上げます。

  2024年04月20日

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  杉並野草の会

  歩いて10分ほどの大田黒公園（ドビュッシーを日本に紹介したことで知られる音楽評論家・大田黒元雄の広壮な宅地でした）で開かれた「杉並野草の会」に今年も足を運びました。ちょうど八重桜が見ごろで、のどかなひとときを過ごせました。

  2024年04月15日

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  ソウルと東京の夜桜

  ソウルと目黒の夜桜の写真が届きました（別々のヒトからです）。韓国では政権交代しそうなのと、目黒は若い人が多いのは、こちら日本そして荻窪とずいぶん違いますね。

  2024年04月12日

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  今季のベストショット（？）

  この一枚は、キャノンEOS30Dに、キャノンFD300/5.6 という1970年前後のMFレンズを付けて撮りました。2006年製造のデジタル一眼レフということで最高感度が800、レンズ焦点距離は35ミリ換算で480ミリ、三脚を使って絞り値5.6、シャッター速度20分の1秒でした。雨上がりの早朝、ほぼ満開でしたが、どこで撮ったかはヒミツです。

  2024年04月06日

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  五、六分咲きの善福寺川緑地

  徒歩5分もかからないのですが、緑地は久しぶりでした。平日で、桜も満開まではあと数日といったところでしたので、人出もなくて結構でした。いつ開店したのか、緑地沿いの民家がシフォンケーキのお店になっていて、買ってみたら大変美味しく2度ビックリ。米粉なのでグルテンフリーです。いちばん下に写っているのは、同じ日に届いた携帯カセットテーププレイヤーです。スピーカー付きで、イヤホンなしでも聴けるので注文してみましたが、音質はお世辞にも良いとは言えません。でも、見た目が可愛いので許します。

  2024年04月03日

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  ジュール・シュペルヴィエル『ひとさらい』

  ウルグアイとパリを往還する人生だったという、詩人シュペルヴィエル(1884-1960)の短篇集『沖の小娘』をたまたま読み、興味を覚えて長篇も読んでみました。澁澤龍彦が訳していたのは意外でしたが、不思議はないのかもしれません。澁澤のある古い友人は、澁澤がマルキ・ド・サドに入れあげていたのはあくまでアンドレ・ブルトンをはじめとするシュルレアリストたちが祭り上げていたからだと証言していますし、澁澤自身、いちばん好きな詩人はジャン・コクトーで、次いでシュペルヴィエルだと言っていたような気がします。ブルトンらがサドに続く神様扱いしていた、ボードレールやロートレアモンやランボーやアポリネールではなかったのですね。シュペルヴィエルの短篇は玉石混交という気がしないでもなく、ある意味で基督教護教の意図があるようにも思えましたが、ちょっと類を見ない作品群です。コクトーにも言えますが、現実と非現実にことさら区別を置かない描き方、考え方にはシュルレアリストたちに通ずるところがあり、むしろブルトンらのように芸術と政治とを前衛的精神で一貫させようとは思っていなかったであろうところなど、澁澤好みだったのかもしれませんね。澁澤龍彦のすぐ下の妹さんの澁澤幸子さんは、今年で94歳ですが下のブログで健筆を揮っておられます。https://blog.goo.ne.jp/lale-sachiko

  2024年03月19日

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  WHITE DAY

  「ネコとヒトにやさしい住まい」をうたう鈴木孝太郎工務店（中野区）のご店主様が、お手ずから届けにいらしてくださいました。たまたま女中頭が不在で、私が賜ったというわけです。某雅子様がお好きなお菓子なのだとか。

  2024年03月14日

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  Wim Wenders PERFECT DAYS

  吉祥寺オデヲン座で、昨年の邦画話題作、ヴィム・ヴェンダース「パーフェクト・デイズ」を観ました。製作時の2023年の東京が舞台で、主人公の役所広司は亀戸から浅草辺りを生活圏とする、渋谷区内の公共トイレット清掃員です。この主人公の生活趣味が私そのものなので、ぜひ観るようにと周囲から煽られて出かけた次第です。ナルホド、フィルムカメラ撮影（私と同じく店でプリントしてもらって、年月別に保存していました）、古本（主に文庫本。最初に現れるのがフォークナーの『野生の棕櫚』で、私も持っている新潮文庫復刊本でした）、洋楽のカセットテープ、軽合金の自転車、銭湯の一番風呂（私がそれをしていたのは学生時代です）、外食は（在職中の私のように）なじみの店でいつも同じもの、TVを持たない、目覚まし時計を鳴らさず起床する、などなど、確かに共通するものがありました。コンピュータは持たず、携帯電話は職場支給のPHSは持っていましたが、私的な通話は公衆電話でした。住まいの木造アパートは、私の学生時代よりははるかに良くて、姪を泊められる広さがありました。カセットテープからは、アニマルズの「朝日のあたる家」、オーティス・レディングの「ドック・オブ・ベイ」（この曲は1967年、レディングが飛行機事故で亡くなった直後に発売されNo.1ヒットになりました）、ルー・リードの「パーフェクト・デイ」などが次々に流れます。おかしかったのは、中盤あたりで飲み屋のママさんの石川さゆりが、「朝日のあたる家」の淺川マキバージョン、「朝日楼」を歌ったときでした。役所広司が、もともとは裕福で育ちが良く知的でもありながら、何らか過去の影を背負った男を好演しています。ただ、その主人公が2023年現在現役で働いていること、役所自身も1956年生れであることなど考えると、音楽の趣味がちょっと時間的にずれているような気がしました。ヴェンダースは小津安二郎に私淑していることで有名ですが、あるいは昭和のニホンの小市民的生活に共感ないし憧憬を持っていて、その残影とも思える主人公の日々を「パーフェクト」と考えているんでしょうかねえ？？？

  2024年03月07日

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  「モモの節句」サンドイッチ

  荻窪2丁目「ベイカリー　モモヤ」さんご提供。背後のフロシキは、K理学博士より。

  2024年03月03日

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  端本または欠本

  作家や詩人の個人全集または著作集を揃えることはしていないのですが、そういうものの中の特定の1巻を買うことはあります。そういう1冊は、「端本」（はほん）とか「欠本」（けっぽん）と呼ばれていて、たいてい安価なのです。その反対に、「キキメ」と呼ばれるかなり高額な1巻というものもあります。全集等は、各巻が順次発売されていくとき、最初のうちは売れ行きも良く部数も多かったりするのですが、おしまいのほうの巻は発行部数が大きく落ち込んだりすることもよくあるようです。「端本」は古書店にふんだんに出回っていますが、「キキメ」の巻はそれのみを探して購入するのは難しいわけですね。最近、そういう端本を2点入手しました。ひとつは新潮社の『世界詩人全集17』（1968年）で、アポリネール、コクトー、シュペルヴィエルの詩篇が、それぞれ渡辺一民、堀口大学、飯島耕一の訳で収められています。もう1点は富山房の『フォークナー全集6』（1974年）で、「死の床に横たわりて」の巻です。この長篇小説は、別の訳者で講談社文芸文庫に収められているのですが、その古書価はかなりお高いのです。なかなか買えないでいたところ、この全集版の端本を大変安価に手に入れることができました。どんな作品なのかは下のレビューがとても参考になるでしょう。https://ameblo.jp/classical-literature/entry-11616315146.html

  2024年02月26日

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  ミル様10周忌

  今を去ること10年前の、2014年2月18日にミル様は幽明境を異にされました。その日はあたかもミル様にお仕えしていた下男長の還暦の誕生日で、1階洋間で女中頭が記念撮影などしていた間に、ご主人様は隣室のリビングから昇天されていたのです。20年と6か月の見事な生涯でした。10周忌の当日は、都内文京区の椿山荘にて信徒たちの集いが催されました。椿山荘は2020年秋より人工雲海なるものを始めていて、深夜を除いて1時間に一度はショーを楽しめます。夜の会では、LED照明によってでしょうか、ミル様のために高貴なパープルにライトアップされていました。お忙しい中をお運びいただいた15名の皆様に、あらためて篤く御礼申し上げます。

  2024年02月23日

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  左川ちか詩集

  昨年12月26日の拙ブログ記事にて、阿佐ヶ谷駅南口を出てすぐのところの、書店「書楽」閉店をお知らせしました。昨日前を通りかかったところ、「八重洲ブックセンター」に生まれ変わっていて、店内の書籍の配架などはほぼそのままのように思いました。岩波文庫の点数はむしろ増えていて、1点購入して来ました。昨年9月に新刊で出た左川ちか(1911-36)の詩集です。思潮社の『現代詩手帖』11月号で彼女の特集がされていて、日本を越えて脚光を浴びつつあるようです。　　　毎年土をかぶらせてねものうげに蛩音もたてずいけがきの忍冬にすがりつき道ばたにうづくまつてしまふおいぼれの冬よおまへの頭髪はかわいてその上をあるいた人もそれらの人の思ひ出も死んでしまつた。

  2024年02月16日

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  海外の短編小説

  拙ブログ、2022年7月29日の記事にて、深く印象に残っている日本の小説を書きとめてみました。短編は以下の4編でしたが、ほかに、芥川龍之介「奉教人の死」も若い頃感動しました。内田百閒「サラサーテの盤」坂口安吾「桜の森の満開の下」小山清「おじさんの話」宇能鴻一郎「鯨神」海外の短編小説なら、書影を載せた、メリメ『エトルリヤの壺』（岩波文庫、1928年）に所収の「マテオ・ファルコネ」（同じく収録されている「トレドの真珠」は掌編ですが、三島由紀夫が激賞していましたね）シュニッツラー『花』（岩波文庫、1939年）に所収の「盲のジェロニモとその兄」ジョイス『ダブリン市民』（新潮文庫、1953年）に所収の「死せる人々」フォークナー『エミリーに薔薇を』（福武文庫、1988年）の収録作いずれもG.ガルシア＝マルケス『エレンディラ』（ちくま文庫、1988年）中の表題作そして、もちろん、チェーホフ「犬を連れた奥さん」、それから、『コンラッド短編集』（岩波文庫、2005年）に所収の「エイミー・フォスター」、といったところでしょうか。

  2024年02月10日

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  8％の壁

  1月の末日、在職中に何度もご一緒に授業をコーディネイトして、大変お世話になった、私よりひと回り年長のサイエンティストが荻窪に来て下さり、お茶を2杯いただきました。先輩も胃癌経験者（大腸癌も）なので、家を出る前に、気が向いて医師国家試験用の50年前の教科書をパラパラめくりました。すると、いやー、ビックリ！1946年から62年までの胃癌手術例2500件弱について、そのステージⅣの5年生存率が6.4％と記されていたのです。いつぞやお伝えしたとおり、いちばん新しい数字が8％ですから、50年以上経ちながら2％弱しかアップしていないのです。外科学の、その医師国家試験用の安直な教科書（とはいえ750頁もあります）は1975年の刊行でした。著者の前書きに、自分たちが医学の教育を受けた1950年代には、分かっていないことばかりで教科書も薄かったが、今勉強中の学生諸君（つまり当時の私ら）は知らねばならない内容が飛躍的に多くなった、と書かれています。それからさらに50年近く経ったいま現在の医学は、まさしく想像を越えています。画像診断は著しく進歩している（私らの頃にCTスキャンが一般化し始めました）でしょうし、疾患も遺伝子レベルで究明されているはずです。でありながら、胃癌Ⅳ期の生存率はほとんど変わっていないのでした。手術後3年から5年の間がキビシイという状況も同じです。というわけで、もちろん全く楽観できないのですが、私は、私のようなのが100人いたら、そのうち8人しかあと2年生き延びることができない、とは思っていません。結局、私の体内の異常細胞と免疫系との戦いの問題なので、白血球やリンパ球に頑張ってもらうしかないのですが、その免疫系を賦活する要素はいろいろあると思うのです。食生活、運動の習慣、睡眠の質といった日々の生活、好奇心と趣味の広さ、そして何といっても周囲のネコたちおよびヒトの皆さまとの心安らぐ関係…それらで8％という数字は多少伸び縮みするのではないですかねえ。

  2024年02月03日

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  阿佐谷に猫カフェ出現

  阿佐谷南口のパールセンター商店街に、里親募集型保護猫カフェと謳う「拝啓ねこ様」、および、猫雑貨店「ねこ貴族」ができていました。高円寺から引っ越して来たようですね。

  2024年01月27日

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  今東光(1898-1977)

  久しぶりに雷サマの「眠狂四郎」をDVDで観たら、なぜだか気持ちが沈んでしまいました。雷サマの大映では勝新太郎も人気で、「座頭市」シリーズの前に「悪名」シリーズで芸風を作ったのではないでしょうか。そんな連想から『悪名』でも読もうかと思い立ったわけですが、原作者の今東光は、私の思うところでは、19世紀末に生れ「昭和の妖怪」とでもいうべき人々の中の、「文士代表」という感じがします（他の妖怪は、政界では岸信介、財界では笹川良一ですかねえ）。同じく作家だった弟・今日出海は普通に東大仏文を出て文化庁長官までやりましたが、兄の東光は素行不良で旧制中学除籍なので小学校卒という学歴でした。とにかく腕っ節が強くて喧嘩早かったようです。それでも若くして文才を認められたのみならず、天台宗の最高位にまで登り詰め、参議員議員までやりました。法名は春聴だそうで、同じく素行不良を言われていた瀬戸内晴美が同じく天台宗に帰依したとき、寂聴の法名をつけてもらったのは有名ですね。とりあえず『悪名』と、千利休の娘を描いて直木賞を受賞した『お吟さま』でも読んでみようと思います。

  2024年01月22日

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  エミール・ゾラ(1840-1902)

  昨年12月からゾラを読んでいます。「ルーゴン・マッカール叢書」と名づけられた長篇小説群は、いずれもパリの暗い物語ですが、短篇には意外な作風でとりつきやすい作品もあります。19世紀のフランスの小説家では私はいちばん好きかもしれません。写真は、初期の作品、『テレーズ・ラカン』(1867)の何度か目の映画化、マルセル・カルネ監督「嘆きのテレーズ」(1952年)のワン・シーンです。シモーヌ・シニョレ主演ですね。ゾラといえばドレフュス事件の立役者として尊敬されています。私は未見ですが、ドレフュス事件は2019年にロマン・ポランスキー監督によって「オフィサー・アンド・スパイ」という映画が作られて話題になったようですね。昨年10月には、おりからガザでイスラエルとハマスの衝突が起こり、あらためてユダヤ人について考えた人も多いことでしょう。私はロンドン大学でエジプトからの留学生とは知り合いましたが、これまでユダヤの人とは知り合っていません。その渡英は1996年のことでしたが、ユダヤ人はゴルフの会員制クラブには入会しにくいなど、まだ差別は残されていると聞いた覚えがあります。「自然主義」と呼ばれるゾラの作風はとにかく暗い！青山学院大仏文科の福田美雪さんという先生は、高校生のときに『居酒屋』を読んでそれ以来ゾラ一筋なのだそうですが、すごいです。いまそちらの学科長はTK氏というモンテーニュ等の専門家で、私の最初期の学生さんのひとりでした。よく古本屋回りなど付き合ってもらったものです。

  2024年01月15日

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  チョット癌のお話(A bit of Oncology)

  写真は胃癌を誘発するピロリ菌(helicobacter pylori)です。私はそのステージⅣB、来たる5月で術後3年を迎えます。Ⅳ期の5年生存率は6～8％ということで、術後3～5年の再発率が高く、まさしく正念場に差し掛かっています。主治医のS先生がまったく楽観的なことを口にされないのは、胃壁を突き破った癌細胞が腹膜その他に広範に播種していることを目視しておられることに加えて、癌の細胞診の結果が腺癌の低分化型だったからです。癌の多くは、扁平上皮細胞、あるいは腺上皮細胞などの、組織を被覆している上皮細胞由来です。腺上皮細胞は、化学物質の分泌機能（血中に分泌するのが内分泌で、導管に分泌するのが外分泌）を有しているのに対し、扁平上皮細胞には分泌機能はありません。喫煙由来の肺癌は扁平上皮癌で、非喫煙者だった私の実妹の肺癌は腺癌でした。胃癌はすべて腺癌ですが、妹も私も低分化型で、高分化型に比べて予後が悪いとされています。高分化型であれば、癌細胞が本来の正常細胞に近似的なまでに分化しているでしょうが、低分化型であればまだ成熟途上で異形性が強いのではないかと思います。そして、高分化型癌細胞なら、その周囲の細胞へと押し拡がる形で浸潤していくことが多いのに対し、低分化型癌細胞だと浸潤の仕方が不規則で、あちこち散らばりやすいのだそうです。今回のお勉強の最後のあたりは、先日主治医のS先生にお伺いして私も初めて知りました。

  2024年01月08日

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  あけましておめでとうございます

  この元旦は、おめでたく赤の地に決めましたわ。おせちは飛騨高山の「州さき」に決めてます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。みなさまにおかれては、幸多き一年となりますように。

  2024年01月01日

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  阿佐谷北口アーケード商店街

  ネガカラー写真の続きです。「文士も愛した本舗の品品」にご注目！掃除用具などを商う荒物屋さんは、こちらや荻窪北口の「報恩商店」など、荻窪・阿佐谷界隈にはいく店か健在です。本年はほんとうにありがとうございました。どうぞ来年も、阿佐谷の商店街ならびに拙ブログ、なにとぞよろしくお願い申し上げます。皆さま、佳いお年をお迎えくださいますよう。

  2023年12月31日

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  ネガカラーフィルムフォト

  ウサギ年もわずか一日を残すのみとなりました。真ん中の写真は、下の写真左側の、旧東独製、プラクチフレックスFXという、私と同年のカメラで撮りましたが、フィルムはコダック・ゴールド200です。白黒フィルムは、富士フィルムで出していた「ダークレス」という明室現像キットで自家現像しますが、カラーフィルムはネガもポジもラボで現像してもらって、ニコンのクールスキャン5000というフィルムスキャナでスキャンしています。スキャナも、それを繋いでいるマックも、20年ほど前の製品です。2006年の滞豪時、帰国後の授業のテキストとして、あちらの有名な自然写真家が著した写真の教科書を買いました。それには、デジタル一眼レフは今後の進化を待つべきで、今はむしろ優秀なフィルムスキャナを求めるべき、と書かれていました。20年の間に、デジタルカメラは一眼レフからミラーレスへと移り変わりましたが、急速に進化したスマートフォンのカメラで十分というユーザーも多く、カメラ業界は苦戦を強いられています。現状を予想できた人はどれほどいたのでしょう…。

  2023年12月30日

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  小山清の文庫新刊

  小山清（拙ブログ2022年4月20日の記事でご紹介しました）の文庫の新刊が去る10月に出ていると、その直後に札幌に移住したコンソメ大人が教えてくれました。阿佐ヶ谷駅南口すぐのところにあるなじみの書店で求めましたが、店先には来月閉店のお知らせが…。私が阿佐谷に来たのが1984年で、当時は阿佐ヶ谷駅周辺に大小7軒の新刊書店がありました。「書楽」の閉店で、阿佐谷には新刊書店が一つもなくなってしまうのではないかと思います。かつては「阿佐谷文士村」と謳われた地で、と思うと寂しいかぎりです。

  2023年12月26日

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  クリスマス・ソング

  探したらこれ1枚だけ持ってました。右はソプラノ歌手の島田祐子ですが、左はもともと俳優だった林隆三です。R大学付属高校の出身で、藤田敏八監督の「妹」（1974年）で秋吉久美子と共演していましたね。晩年は歌手およびピアニストとして活躍しました。阿佐谷南口の商店街、パールセンターには、かつて中央堂とホープ堂というレコード屋さんがありました。このCD袋はホープ堂で、店主のおばさんとは仲良しでした。

  2023年12月25日

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  メリー・ミルサマス！

  先週くらいから、この季節らしい寒さになりましたね。ちょうど30年前、ミル、テル、ウル三姉妹をお届け下さり、何年か前にその肖像画まで賜った女性画家の方の悲報を先月お聞きしました。まだ58歳（癌でした）、心からお悔やみ申し上げます。きょうのランチは、荻窪2丁目「モモヤ・ベーカリー」（2022年12月29日と2023年3月3日の記事でご紹介しました）の素晴らしい創作麺麭をいただきます。

  2023年12月24日

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  電車に乗って

  所用で目黒に行きました。行きはタクシーでしたが、帰りは山手線を使いました。電車に乗るのは昨年3月に荻窪ー吉祥寺を往復して以来1年9か月ぶりだったので、少し心配でしたが、新宿からの総武線は座れて事なきを得ました。きょうから師走も下旬ですね。2種類のアドヴェント・カレンダーは順調にカウント・アップしていて、下のくまチョコは、きのうのロイズ・アドヴェント・チョコです。

  2023年12月20日

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  保温の必要

  寒さが増すとココロも冷えそうですが、6年前にクロ兄弟とサビ娘の3匹を産んだ、ミケ母が久しぶりにご入来して温まりました。たまたま小山清（拙ブログ2022年4月20日の記事でご紹介しました）の旺文社文庫版短編集に入っていた「早春」という作品を読んでいて、そちらからも温んでいたところでした。小山清は薄倖でしたが、「早春」のほか、「落穂拾い」、「前途なお」、「おじさんの話」など大変好きで、そのへんはみな、インターネットの青空文庫に収録されているようです。もうひとつ大好きな「雪の宿」は青空文庫にはないようですね。ところでこの旺文社文庫版に収められた随筆にあったのですが、小山清は1925年10月、旧制中学在学中の15歳のときに、小山内薫が演出した築地小劇場の「叔父ワアニヤ」を観て感銘を受けたようです。その後の作風において、チェーホフの影響は十分考えられますね。

  2023年12月15日

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  ウィリアム・ワイラー「女相続人」(1949年)

  かねてより観たいと思っていたヘンリ・ジェイムズ原作の映画化作品を、「シネマヴェーラ渋谷」で観ることができました。ヒロインのオリヴィア・デ・ハヴィランドは、「風と共に去りぬ」のあの聡明で気立ての良いメラニー（スカーレット・オハラの親友）の役で知られていますね。実妹のジョーン・フォンティンが、ヒチコックの「断崖」で1941年にアカデミー主演女優賞を獲りましたが、姉も本作で主演女優賞を受賞し、さらに後年もう一度主演女優賞を得ています。オリヴィアとジョーンは大変不仲だったそうですが、二人とも長生きして、特に姉は2020年に亡くなったとき104歳でした。映画は原作に負けないまごうことなき傑作でした。なぜか館内でとても幸せそうな表情のオールド・レディが目立ったのですが、あとで、嗚呼、モンゴメリー・クリフト（モンティ）のファンだったんだ、と思い当たりました。ジェイムズの小説は、原題の『ワシントン・スクエア』で、岩波文庫版が出ているようですね。

  2023年12月05日

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  アドヴェント・カレンダー・チョコレイト

  札幌（日本）からロイズの、キルヒベルク-ベンドリコン（スイス）からリンツの、アドヴェント・カレンダー・チョコをちょうだいしました。アドヴェント・カレンダーとシュトーレンは、いつの間にやらけっこうおなじみになりましたね。

  2023年12月04日

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  ひみつのサプリメント（続）

  サプリメントの続編は、胃のすべてと大腸3分の2を失った私の現状に意味がありそうなものについてです。いちばん上の青汁粉末は、自家製豆乳ヨーグルトに混ぜて、もう10年以上飲んでいます。私は抗癌剤治療を1年半続けました。抗生物質も腸内細菌まで攻撃してしまいますが、抗癌剤となると加えて腸壁細胞まで壊してしまいます。その副作用は、新陳代謝の活発な部位ということで、毛髪、皮膚、腸壁に強く現れ、私は抗癌剤を中止して1年になりますが、毛髪は回復したものの、腸内細菌や腸壁へのダメージは続いています。ですから、少しでも腸内環境を整える（いわゆる「善玉腸内細菌」を増やす）ためにも、青汁は悪くないだろうと思えます。定期的に受けている血液検査の数値は、一昨年5月の手術以後、低栄養は少し改善されましたが、それ以外はほとんど変わっておらず、抗癌剤の副作用（骨髄機能の抑制）である貧血は続いています。その対策に、鉄分とビタミンB12を服用しています。 さて、いちばん下のマカとかノコギリヤシとかは、よく「男性機能」の維持などと謳われて販売されていますね。私はあまり考えずに長年服用して来ましたが、中央のツムラ41番、補中益気湯は執刀医にして主治医のドクターSが、私に毎回処方してくださる漢方薬です。あるとき、いつもどおりＳ先生がその処方を書いていたら、若いナースが無邪気にも、「センセイ、それ効くんですかあ？」と尋ねたのです。するとドクターは、ナースを振り向いて、「うん、元気になるんだよ」と答え、それに対してナースは「ほんとですかあ？」と笑ったのでした。そのとき悟りましたが、つまりそういう働きを謳うサプリメントや漢方薬は、日々の気分を上げる（下げない）のに役立っているのでしょう。私の能天気なのはそれらのおかげなのかもしれません。

  2023年12月02日

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  ひみつのサプリメント

  2022年5月29日の記事にも書きましたが、もう30年近くあれこれのサプリメントを試していて、今は一日20錠以上飲んでいます。市販薬も処方薬も「クスリ」は注意が肝腎ですが、サプリメントはせいぜい、毒にも薬にもならない、くらいですみますよね。過去の記事のとおり、最初は、読書や撮影のためにも目の保護を、と思ってルテインから始めました。いつしか視力が良くなって、眼鏡は映画の字幕を見るときしか必要がなくなっています。インターネット通販以前は、「ピューリタンズ・プライド」という米国のメイカーから個人輸入していました。目の次は膝や足腰ですね。グルコサミンですが、阿佐谷の猫好きの帽子屋さんから聞いて驚いたことがありました。愛猫が高齢のため足腰が立たなくなったとき、店主氏がご自分のグルコサミンを少量砕いて服用させたら、また立って歩けるようになった、というのです！それからアタマ用ですね。記憶力は、衰えて来るとそのこと自体に気づかなくなるものでしょうかねえ。とすると、効果は不明？

  2023年12月01日

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  洋楽のカセット・テープ

  いまかけているカセット・テープは、1曲を除くと60～70年代に街に流れていた洋楽です。何曲ご存じですか？A面1 ピンク・フロイド　One of These Days2 ショッキング・ブルー　Venus3 プロコル・ハルム　A Whiter Shade of Pale4 ジャニス・イアン　Love Is Blind5 ボブ・ディラン　One More Cup of Coffee6 ジェシカ・ハーパー　Old Souls7 トム・ウェイツ　More Than Rain8 ピンキーとフェラス　Manchester & Liverpool9 ザ・バンド　I Shall Be Released10 メリー・ホプキン　Those Were the Days11 ザ・ビートルズ　Happiness Is a Warm Gun12 ジャニス・ジョプリン　Summertime13 ザ・ローリング・ストーンズ　You Got the SilverB面1 イヴォンヌ・エリマン　Everything's Alright2 ダイアー・ストレイツ　Sultans of Swing3 フランソワーズ・アルディ　Premiere Rencontre4 ポール・マッカートニー　Somedays5 カエターノ・ヴェローゾ＆ガル・コスタ　Nenhuma Dor6 ロッド・スチュワート　Gasoline Alley7 トニ・ブラクストン　Un-Break My Heart8 ピンク・フロイド　Julia Dream9 ジャニス・イアン　Will You Dance10 ボブ・ディラン　You're a Big Girl Now11 ジャニス・ジョプリン　Ball and ChainA面8曲目の「マンチェスターとリバプール」は、2022年3月24日の記事に拙訳を載せてしまいました。B面7曲目の「アンブレイク・マイ・ハート」だけ、1990年代（正確には1996年）のヒット曲です。もちろんいつも珈琲を飲みながら聴いていますが、今朝は、先日頂戴したルワンダからやってきたというフェア・トレードの珈琲で、酸味がなくて美味しいです。日本茶と珈琲とに兼用で使える、なかなかスグレものの急須で淹れてみました。昨年2月に開設の拙ブログ、いまPVが50000を越えました。ありがとうございます、どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます。

  2023年11月28日

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  荻窪の麺麭屋さん

  無胃徒食者の飲食の難儀は何度も書きました。食物が食道と小腸との連結部をうまく通過してくれなくて、浸透圧勾配が大きくなってしまうと、ダンピング症状に悩まされて30分くらい辛い思いをします。お仲間の皆様が一致して安全だといっている食品は、納豆、オクラ、なめこ茸などですね。難しいのは麺類で、私も和蕎麦は2年以上、中華蕎麦は手術以後いちども食べていません。励行している一日6回の少量頻回食のうち、3～4回は麺麭を食べているので、荻窪の個性的な麺麭屋さんには本当に助けられています。写真は上から、ミル様邸に近い順に並べてあります。いちばん上の「ツェルマット」は目と鼻の先なので同じ町内かと思っていたら、荻窪3丁目でした。バゲットやブールを買っています。2番目の荻窪2丁目「モモヤ」さんは、すでに重ねてご紹介しましたね（2022年12月29日と2023年3月3日の記事）。最もお世話になっております。3番目は荻窪4丁目「どんだけじこちゅー」、店名については何も申しますまい。人参とツナのサンドイッチなどとても美味しいです。4番目は南荻窪4丁目に本店のある「PUKUPUKU」、「いたる」という社会福祉法人が運営していて、荻窪ルミネの「ザ・ガーデン」や、阿佐ヶ谷南口の杉並区民センターなどでも購入できるものがあります。いちばん下は、本店が練馬区富士見台にある「エッセン」の移動販売車で、上荻1丁目の某所に、火曜と金曜の9時30～50分だけ出現します。お兄さんとはすっかり仲良しです。南口の荻窪5丁目には、ほかにも「えだおね」や「ハニー」といった美味しい麺麭屋さんがあるのですが、開店時間等の関係でなかなか回れません…。

  2023年11月25日

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  癌とは…（続）

  前回、胃の絵まで載せながら、話が胃癌まで行き着きませんでした。どの部位の癌もステージは0期からⅣ期までに区分されていて、各ステージの定義は部位によって異なりますが、Ⅳ期はその部位の外に転移している状態です。胃癌Ⅳ期は、癌細胞が塊として例えば肝臓に転移している場合などもあるでしょうが、私の場合は癌細胞が胃壁を突き破って、腹膜その他に広範に散らばっている「播種」という状態です。播種となると、癌細胞の総量がブロック状の転移よりも大きく、しかも微細なので画像診断不可能という難点があります。手術直後に、胃癌Ⅳ期の5年生存率が、手持ちの本に6.6％とありましたのでドクターにお見せしたところ、本の奥付をご覧になって、「これは10年前のデータですから、今はもっといいですよ」と仰りながら、数字は教えてもらえませんでした。その後、5年前の統計を見つけましたが、次のような数字です。臓器別癌ステージⅣの5年生存率■すべての癌…15.9%◎食道癌…9.1%◎胃癌…7.2%◎直腸癌…14.5%◎肝臓癌…7.7%◎肺・気管の癌…4.3%◎乳癌……32.2%◎子宮頸癌…20.9%◎前立腺癌…43.6%　　　　　　　　　　　　　※公益財団法人　癌研究振興財団「癌の統計11」そして、上の図はさらに新しい統計を棒グラフにしたものですね。8.9％までアップしたようです。つまり10年ほどで2％ほど伸びただけですね。肺癌に次いで厳しいことは変わっていません。診察室でのS先生との貴重な時間も2年半が流れ、毎回丁々発止とやり合っている、ということはないですが、これは外科の先生に共通でしょうか、決して楽観的なことは仰いません。私が、「Ⅳ期でも5年たてば『寛解(regression)』と言えるのですか？」と尋ねたときは、「言えますが、5年を過ぎて再発することもありますよ」とのことでした。それでも、乳癌などは、10年、15年たっても、再発率が胃癌ほどは下がらないのだそうです。「胃がなくなって、もうピロリはいないのでしょうから、再発率が下がるということはないのですか？」と尋ねたときは、前回ご紹介したK博士のいうとおり、「遺伝子変異の原因は無数にあって、そのほとんどは知られていません。癌は本当にほとんど分かっていない病気なのです」というご返事でした。そのとき先生は、「まあ、交通事故に遭う心配などしてもしょうがないですから、それと同じですよ」とも仰いましたが、これは弘法も筆（口？）の誤りというべきでしょう。術後5年（今後2年半）の間に、何らかの要因（私の場合、遺伝負荷はありますし、若い頃は喫煙もしてました）で遺伝子変異が生じ、癌細胞が暴れ出す確率が統計的に9割以上あるというのに対して、今後2年半のうちに交通事故に遭う確率というのはいたって小さいと思われるからです。

  2023年11月23日

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  癌とは…

  胃癌にかぎらず癌はすべて、何らかの原因で遺伝子が変異することにより、蛋白質合成のための遺伝子の本来の指令が狂わされて、異常な細胞が増殖することによって引き起こされます。本来のプログラミングから逸脱して、自律的・不可逆的に増殖して行く細胞が癌細胞ですね。遺伝子変異を引き起こし、高い確率で癌を発症させる原因としてよく知られているのは、白血病（血液の癌ですね）を来たす放射線、肺の扁平上皮癌を来たすニコチン、胸膜や腹膜の悪性中皮腫を来たすアスベスト（石綿）、皮膚の悪性黒色腫（メラノーマ）を来たす紫外線、そして2005年に知られるようになった胃癌を来たすピロリ菌などでしょう。私が某医学校にいた頃には、九州の風土病扱いされていた、成人Ｔ細胞白血病というものもよく話題になっていましたが、その原因は、HTLV-1ウイルスと突き止められたようです。とはいえ、そういった種々の原因に曝されて異常な細胞が作られたとしても、それが直ちに悪性細胞の顔を見せて暴れ出すとは限りません。暴れ出すまでに20～30年かかるものもあると聞きます。近藤誠医師などが「癌もどき」と呼んでいたのは、そのような眠れる癌細胞だったのかもしれません。私が何かと知恵を仰いでいるお一人は、学部学生の時代から生物物理学専攻で、今は（株）医学生物学研究所で創薬に携わっているK博士です。あるときの博士のメールは…。「人それぞれ顔が少しずつ異なるように、癌もそれぞれです。時間が経つにつれて変異を蓄積するわけですが、どのタイミングで本物の癌になるのか、きちんとした研究はないのが現状です。体内では免疫や正常細胞とのせめぎ合いですので、癌細胞をシャーレで培養していただけでは癌という病気の実態は理解出来ません。また、癌細胞は遺伝子変異が原因で生じますが、遺伝子組替えマウスやヒト癌細胞移植マウスは同時に複数の遺伝子に変異を入れますので、いきなり最終段階の実験を行なっていることになります。さらにヒトの癌細胞では、癌種にもよりますが、100以上の変異が見つかりますので、それを実験的に再現することはほぼ不可能です。」癌がいかに難しい病態なのか、とても分かりやすい説明ですね。癌研究の困難さは、例えば漢方薬品の薬効検定のそれと似ています。生薬の組成成分は個々それぞれが膨大で、さらにそれらの組み合わせによる効果も考えねばならないとなると、西洋医学流の1成分単位の薬効検定など不可能に近いはずです。「癌は治る病気になりつつある」などという言い方は軽率でしかありません。癌は、この世に産み落とされた生命に、やがては訪れる使者のようなものかもしれませんね。K博士はいま癌の免疫療法の研究中で、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用が将来の標準治療になる、と予言しておられますが実現を望みたいところです。

  2023年11月22日

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