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![]() 半世紀前に初めて読んだチェーホフは戯曲の「かもめ」でした。1988年にモスクワ芸術座が来日したとき、日生劇場で上演されたその舞台を観ています(来日した劇団公演では、ルノー=バローの「サド侯爵夫人」や、ピーター・ブルックの「テンペスト」とともに、忘れられない観劇体験となりました)。「かもめ」に限らずチェーホフの舞台はこれまであれこれ観て来ました。 短篇作品では、「犬を連れた奥さん」と「退屈な話」を繰り返し読んで来ました。「犬を連れた…」は、出だしの、イヌを巧妙に利用して奥さんから言葉をかけられるところなど、大変参考になると感心したものでしたが、この作品について話したことのあるレディの皆様は、故・阿部珠理姉も含め、たいてい、いったいあれのどこがいいの?という反応で、がっかりしたものです。 チェーホフ自身の恋は、オリガ・クニッぺルと結婚する前に10年間つきあっていた、リディア・アヴィーロワへの思いがいちばん強かったと言われています。作家だったアヴィーロワには、『チェーホフとの恋』という彼女の没後に出版された回想記があり、その邦訳のアマゾン・レビューを私は書いています。 https://www.amazon.co.jp/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%9B%E3%83%95%E3%81%A8%E3%81%AE%E6%81%8B-1952%E5%B9%B4-%E8%A7%92%E5%B7%9D%E6%96%87%E5%BA%AB%E3%80%88%E7%AC%AC374%E3%80%89-%E5%B0%8F%E9%87%8E-%E4%BF%8A%E4%B8%80/dp/B000JBCTWM/ref=cm_cr_srp_d_pdt_img_top?ie=UTF8 アヴィーロワとの恋愛の顛末はどこかもどかしい感じがつきまとい、ほどなく結婚したオリガとはおおむね別居結婚で、オリガはヒステリーを起こしたりします。そのあたりのチェーホフの少し特異な事情を、説明してくれているような本がありました。作家の山田稔が編集した、『チェーホフ 短篇と手紙』(みすず書房、2002年)という本で、その冒頭に山田稔が、「チェーホフの距離」という解説を置いています。それによれば、農奴の祖父、無理解で専制的な父、その父の食糧品店が破産して少年期から青年期にかけて嘗めた赤貧、さらには結核罹患といったライフ・ヒストリーのゆえに、主義主張の上でも、対人関係の上でも、チェーホフは微妙な距離感を身につけざるを得なかった、というのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年10月20日 10時45分38秒
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