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■電子の小箱

[古代史が好きで悪いかっ！] カテゴリの記事

全71件 (71件中 1-50件目)

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いましろ大王の杜（今城塚古墳）その２

さて、真の継体天皇陵と言われている今城塚古墳。最寄り駅はJR摂津富田。徒歩で約３０分。または高槻市営バス奈佐原方面行き氷室より徒歩５分。近くにもバス停がありますが、どの路線なのか知りません。以前は「福祉センター前」というバス停でしたが現在は「今城塚古墳前」に名称が変更されていました。詳しくは摂津富田駅前の高槻市営バス案内所でお聞きください。付近の大きな地図は　→　こちら（MapFanWeb）隣接の「今城塚　古代歴史館」では、付近の歴史や今城塚古墳から出土した埴輪、復元された石棺などが展示されCG映像で今城塚古墳や遺構、埴輪の解説が常時行われています。しかも常設展会場は無料です。甲冑の試着や、勾玉製作の体験コーナーもあります。古代史ファンなら半日くらいたっぷり遊べるでしょう。さて、この歴史公園で驚いたのは墳丘部です。内濠だったところは、大部分が芝生広場になっています。今後いろいろと整備されて行くのでしょうが、内堤部は遊歩道になっていて、墳丘部全体を眺めることが出来ます。そして内濠部に下りるだけでなく、墳丘部も開放されていたのです。これには驚きました。鎌倉時代に盗掘にあい、戦国時代にはその名の通り城が築かれ大地震によって崩れたり、石室も石棺も破壊されしかも大量の土砂も無くなってしまっているとは言え天皇陵と推定される古墳なのです。墳丘部前ではさすがに緊張し、一礼してご挨拶を述べてから入らせていただきました。後円部にあたるこの付近は、石組み遺構が発見された場所です。現在は埋め戻されているようです。古代史ファンとしてはゾクゾクするような体験ではありますが、同時にふと疑問にも思えました。ここを訪れていたのは、ほとんどが歴史愛好家の方々と思われましたが子供たちの遊び場にもなっているようでしたし、早くもゴミがけっこう落ちていました。天皇陵であったかどうかはともかく、やはり高貴な人のお墓なのですからもう少し見学方法に配慮が欲しかったと思いました。しかし私個人としては、非常にありがたいことだと思いました。畏れ多い気持ちもありましたが、墳丘部に入る興奮の方が勝っていたのです。前方部付近は、築造当時の様子を再現して内濠に水が張られていました。ただし、あまり深くはないようです。これならフナやブラックバスを放して釣りをしようなんて輩は出ないでしょう。整備前の濠では、けっこう釣り人の姿を見かけた記憶があります。埴輪のレプリカも今後が心配ですし、墳丘部も荒らされてしまうような気がしないでもありません。古代史ファンで興味のある方は、自由に見学するのは今がチャンスかも。今後は制約や、立ち入り禁止部分が設定される可能性も考えられます。古墳に隣接して建てられた「今城塚古代歴史館」そんなに大きな博物館ではありませんが、古代史ファンにとっては充分に見学する価値ありの場所です。 .

2011.04.14

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いましろ大王の杜（今城塚古墳）その１

大阪府高槻市にある、今城塚古墳。今世紀に入ってから、日本最大の家型埴輪を含む即位か葬送の儀式を思わせる大量の埴輪の発見や巨大な石室を支える石組み遺構などが見つかっています。2007年３月に行われた石組み遺構の現地説明会には私も参加しました。その時の様子は、下記リンク先の過去記事をご参照ください。今城塚古墳現地説明会その１今城塚古墳現地説明会その２あれから４年。今城塚古墳周辺が歴史公園として整備され先日、待ちに待ったオープンの日を迎えました。墳丘の周辺の遊歩道と、発見された遺物が展示される施設。歴史公園と言っても、その程度のものだと思っていました。しかし、思ったよりもすばらしかったです。歴史に興味のない人にとってはただの緑地公園なのですが、私たち古代史ファンにとってはたまらなく興奮する公園が出来上がりました。先ずは埴輪群。発見された場所に、発見されたままの配置でレプリカで復元されています。博物館の展示室で見る埴輪と違って、当時の様子がよくわかります。堀の周囲や墳丘部にずらりと並んだ円筒埴輪は６０００個ほどあったと言われています。この埴輪列の先頭は、馬とこの正装した武人。周囲に並んだ円筒埴輪も含め、これらは全て素焼きの焼き物のようです。お好きな方は、早めに見に行きましょう。間違いなく、悪戯や事故ですぐにあちこち壊れると思います。武人の後に控えしは、力士たち。手前に写っている影は私ではなく、力士の埴輪の影です。念のため。家型埴輪の周辺で踊っているような埴輪は巫女だそうです。高床式や入母屋造りの家型埴輪や、鶏の埴輪も並んでいますね。最大の家型埴輪は高床式の祭祀場でしょうか。大王の居住した家かも知れません。これらは隣接の「今城塚古代歴史館」で、実物や復元されたものを見ることができます。また歴史館内ではCG映像で、これらの埴輪の解説が行われています。申し遅れましたが、この今城塚古墳はただの前方後円墳ではありません。ほぼ間違いなく、真の継体天皇陵だと思います。宮内庁が管理する天皇陵や皇族の墓、そして陵墓参考地は発掘調査はおろか、学者の立ち入りすら原則として認められていません。しかし継体天皇陵は現在、茨木市にある太田茶臼山古墳が比定されているためこの今城塚古墳は長年の発掘調査に加え、こうして一般にも公開されました。ついつい興奮して、埴輪群にスペースを費やしてしまいました。次回は、この「いましろ大王の杜」でもっとも驚いたことをたっぷりとご紹介したいと思います。 .

2011.04.13

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応神天皇陵調査　その３

前回からの続きですが、今回は応神天皇陵についてではありません。天皇家（古代）の歴史を知るには、やはり天皇陵の調査が最も有効な方法だと思います。しかし先の日記には「調査目的で天皇陵を掘り返すことには反対」と書きました。では、どうすればいいか･･･。私たち一般人でも、「調査のために、あなたのご先祖様の墓を掘り返しますよ」と、言われたらいやなもんです。しかし、天皇陵は古いものだと１７００年前のものもあります。文化財としても天皇家の祭祀の場としても、整備・修復を要するものも少なくないはず。宮内庁書陵部によって、それらは行われているのでしょうがもちろん公開はされません。応神天皇陵などは百舌鳥・古市古墳群に属しています。百舌鳥・古市古墳群は世界文化遺産の国内候補の暫定リストに入っており今後は整備・修復の必要性が高まるかも知れません。そういった整備・修復時に、宮内庁監視のもとで学術的な調査をする。そのようなことは可能なのではないかと思います。実は2008年11月、宮内庁管理の古墳の整備が公開されたことがあります。公開されたのは堺市の御廟山古墳です。陵墓参考地ではありますが、仁徳天皇の妃を葬ったものあるいは応神天皇初葬地とも言われる古墳です。濠水の浸食によって崩落が進行している墳丘部・裾回りの修復のため、宮内庁と堺市が共同で行った事前調査の実施に伴い公開が実現したのです。このような公開が実現した理由のひとつは、墳丘部は宮内庁管轄ですが、濠は堺市の管理・管轄だから。公開は堺市管理の周濠に桟橋を作り、墳丘部周辺から見学する形でした。かなり近くから墳丘部を見学することが出来、場所によっては露出した埴輪に手が届きそうなほど。宮内庁もこの公開には好意的だったようで、見学者向けに説明板が設置されていたり、簡単な解説もありました。こういう場所に学芸員や学者が立ち会うことが出来ればと思います。このような場所が、周濠上の桟橋から見ることが出来たのです。ここに学者が立ち入ることが出来れば、少なくとも応神天皇陵の立ち入り調査よりはずっと成果が期待できると思います。こういった調査は、以前は別々に行われていたそうです。いわゆる「縦割り行政」ってやつですね。この時の宮内庁と堺市の合同調査は、調査・工事の効率と経費面を考えてのこと。お役所の仕事もすこしずつ進歩しているのですね。 .

2011.03.05

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応神天皇陵調査　その２

前回からの続きです。今回の調査で、誉田御廟山古墳が応神陵である証拠が見つかったら例えば、内堤にこんなものが転がっていたりして･･･可能性はとても低いですが、もしも、誉田御廟山古墳が応神天皇陵だと判明したらおもしろいことになります。少なくとも、武烈天皇以前の在位期間・年代について「真剣に」再考する必要が出てくるのです。（なぜ「武烈天皇以前」かは後述）前回も書いたように、応神天皇は３世紀から４世紀にかけての天皇。在位期間は西暦２７０～３１０年とされています。そして、誉田御廟山古墳の築造年代は５世紀前半と言われています。その食い違いは、約１００年。一方、初代神武天皇の即位は紀元前７世紀。神武天皇が実在した天皇だとしたら、誰が考えても「紀元前７世紀」はあり得ませんね。これは天皇家の歴史を古く装うための年代操作だと言われています。中国の讖緯(しんい)説に基づき、「辛酉は天命が改まる年」という考えから神武天皇の即位を紀元前６６０年に設定したと考えられています。応神天皇が、記紀に記されているより１００年ほどあとの天皇だとしてそれ以前の天皇も１００年ずらせばいいかと言えば、決してそんな単純なものではないと思っています。天皇家の歴史を古く装うために、古代天皇がものすごく長生きしたことにしているのです。しかも仲哀天皇のあと、応神天皇が即位するまでに神功皇后が７０年もの長きに渡って大和を治めたことになっています。古代天皇の年齢がどのくらい不自然なほど長命だったかは、私が以前、ブログに書いた記事をご覧ください。→　古代天皇の在位そうして、ちゃんと古代史を見直して行けばあの箸墓古墳だって、ちゃんと倭迹迹日百襲姫（ヤマトトトヒモモソヒメ）の墓だと判るはず。ちなみに、上記別ブログをご覧いただけば判るように１００歳を越える天皇は初代神武から１６代仁徳まで１２人。そして応神天皇の前にほぼ１００歳の神功皇后も加わります。私が記紀の編者なら、「天皇家の歴史を古く装え」と命じられたら初代神武から３～４人の天皇が２００歳から３００歳くらい生きていたことにします。そしてその後の天皇については、正しい年代で記すのです。その方がずっと不自然さもなく、歴史書の編纂も楽です。ナント言っても天皇は、高天原の神々の末裔なので２００歳であろうが３００歳であろうが長命であってもいいのです。その後の天皇が（人間並に）短命になったのはちゃんと古事記に書かれているのですし。（邇邇芸命と木花開耶姫命の婚姻の神話）なぜこのようなややこしい擬装をしたのか。ちゃんと理由があると考えていますがそのことについては、別の機会に書くことにします。さて、では古代天皇の在位年代をどのように修正するか。それは、やはり天皇陵の調査が最も有効な方法だと思います。私は前回の日記に「調査目的で天皇陵を掘り返すことには反対」と書きました。では、どうすればいいか･･･。少し長くなってしまいましたので、そのあたりは次回に書こうと思います。最後にひとつだけ。この日記の最初の方に「少なくとも、武烈天皇以前の在位期間・年代について『真剣に』再考する必要が出てくるのです」と書きましたがその理由は、今城塚古墳の存在です。現在、宮内庁が武烈の次の、継体天皇陵に比定しているのは茨木市にある太田茶臼山古墳です。その比定については、以前から疑問視されていましたが近年の発掘調査により、そこから１ｋｍあまり北東にある今城塚古墳こそが真の継体天皇陵であると言われています。上の画像は、以前このブログで掲載した2007年3月の写真。今城塚古墳で発掘された横穴式石室の基礎となるコの字型大規模石組み遺構。現地説明会に参加して撮影しました。今城塚古墳では2001年に、日本最大の家型埴輪をはじめ天皇の即位の儀式を表わしたとも思える多数の埴輪が発見されています。間もなく、今城塚古墳は歴史公園となり近々、資料館もオープンする予定です。この今城塚古墳の築造年代は、継体天皇の年代に合致します。従って、少なくとも継体以降については記紀の記述は本来の年代に沿って書かれていると推察できるのです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく .

2011.02.28

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応神天皇陵調査　その１

日本考古学協会などの１６学会が２４日、宮内庁が応神天皇陵に比定している誉田御廟山古墳の調査を始めました。2007年に宮内庁が内規を緩和し、限定的に立ち入り調査が認められるようになりました。過去には神功皇后陵と言われる五社神古墳などの調査が行われました。何度もこのブログでご紹介しているように、皇族の陵墓は調査どころか、長い間立ち入りすら認められていませんでした。エジプトのピラミッドなどと違って、日本の天皇陵などは「無縁仏」ではないのです。歴代天皇陵や箸墓古墳などは、今上天皇のご先祖さまのお墓なのですから。しかし多くの「天皇陵」などは比定が間違っているとも言われています。天皇の祭祀は正しく行って欲しいとも思います。かと言って、やはり調査目的で皇族の陵墓を掘り返すことには反対です。せっかく許可された立ち入り調査ですが今回の調査に関する報道を見て、ちょっとがっかりしました。各学会の代表16人が調査したというのが「墳丘の周囲を巡る濠の外側にある内堤」とのこと。しかも歩いて回るだけで、掘ることはもちろんのこと何かを取上げる（拾う）ことも禁止されていたそうです。今までのことを考えると、それでも大きな進歩と言えるかも知れませんが･･･。2008年に行われた神功皇后陵（五社神古墳）の調査結果はどうだったのでしょう。専門誌を購読しているわけではありませんが、少なくとも新聞などで報道されるほどの成果はなかったのかも知れません。田母神俊雄氏が先日、「（調査学者の中に）サヨクの学者が入っていないといいですね。彼らはまた天皇陛下を貶めるトンデモ理論を作るかも知れません」と、twitterでつぶやいておられました。私はその心配はまずないだろうと思っています。たとえ日本を代表する優秀な学者が集まったとしても内堤を歩いて回るだけで、大発見があるとは思えません。しかも「サヨク学者」が何かを発表しようと思っても、かなりやっかいな理論展開が必要になるのです。今回調査対象となった誉田御廟山古墳は５世紀前半の古墳。ですが、応神天皇は記紀によれば3世紀後半から４世紀にかけての天皇。１００年ほど時代が合わないことになります。誉田御廟山古墳が応神天皇陵ではないと言うのは簡単ですが、古事記や日本書紀に記された応神陵の記載の説明も必要になります。最近話題になった斉牽牛子塚古墳（けんごしづかこふん）の例で言えば、あらたに見つかった大田皇女墓と思われる塚も含め日本書紀の斉明天皇陵に関する記載内容と合致します。古代史を語る上で、やはり日本書紀の記述を無視するわけにはいきません。古事記で「川内の惠賀」と記載された応神陵。日本書紀ではその記述はありませんが、雄略記に「誉田陵」の記載があります。その「誉田陵」が出てくるのは、河内国古市郡での話題です。やはり、誉田御廟山古墳は応神天皇陵である可能性が高いと思います。可能性は限りなく０％に近いですが、今回の立ち入り調査で、誉田御廟山古墳が応神陵である証拠が見つかってくれたらいいなと思っています。そうすると、たいへん面白いことになるんですが･･･。次回は日本の古代史観が大きく変わるかも知れない、その面白いことについてと陵墓および陵墓参考地の調査がどうあるべきかについて書こうと思います。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく .

2011.02.27

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纒向遺跡は邪馬壹国か？

本日の朝刊１面と社会面にまたまた纒向遺跡と卑弥呼の文字が躍っています。今回のNEWSは、纒向遺跡の３世紀頃の穴の土壌からタイ・アジなどの魚の骨や歯、シカなどの動物の骨そして穀類や木の実が大量に見つかったというもの。これらを供物と考え、祭祀の跡と推理するのはいいのですが例によってマスコミ各社は「卑弥呼の供物」というタイトルを付けています。毎回毎回、纒向遺跡で何か見つかると、必ず「卑弥呼の～」という「枕詞」が付くのはいかがなものでしょうか。私たち古代史ファンにとって、纒向遺跡はとても興味深い遺跡です。しかしそれは「邪馬壹国」としての興味ではなく、大和朝廷に繋がる古代王権の遺跡としてロマンを感じるのです。確かに纒向遺跡は、３世紀の遺跡であることは間違いないのでしょう。つまり邪馬壹国があったとされる時代の遺跡なのです。しかし纒向遺跡は、「３世紀に栄えていた場所だ」ということ以外に具体的に邪馬壹国につながる材料がありません。３世紀頃の遺跡なんて、全国にたくさんあると思いますが纒向遺跡が邪馬壹国である可能性は、九州以外の全国にある３世紀頃の遺跡と変わらないと思っています。纒向遺跡のこれまでの発掘調査から判ることは３世紀の大和（三輪山麓）に、強大な権力を有した「クニ」があったと、いうことでそれ以上のものではないのです。纒向遺跡が邪馬壹国の有力候補地だと騒がれる理由は、どうしても邪馬壹国が大和にあったと思いたい「邪馬壹国畿内説」によるもの。「畿内説」は魏志倭人伝にある邪馬壹国への行程の記述で「南行」と書かれた部分を「南ではなく、東の誤りである」という強引な解釈で成り立っています。魏志倭人伝の記述は曖昧だとも言われますが、百歩譲って「南行」を「東行」と解釈することに目をつぶっても「女王国の東　海を渡ること千余里　また国あり　皆倭種なり」という、魏志倭人伝の１文は畿内説では説明のしようがありません。纒向遺跡（大和）の東には海なないからです。畿内説を説く人は、この１文を完全に無視しているようですが簡単明瞭で重要な１文ではないでしょうか。ちなみに畿内説では「南行」を「東行」と解釈するわけですから、「女王国の東」の海とは、つまり「女王国の北」の海ということ？どっちにしたって、大和の周辺には海はありません。また、３世紀頃のものだと判明した箸墓古墳を卑弥呼の墓だとする説がもてはやされています。あの古墳が卑弥呼の墓だと推察出来る理由は、「３世紀頃に造られた古墳である」という以外にはありません。現在、箸墓古墳は倭迹迹日百襲姫命墓（やまとととひももそひめ）の墓とされ宮内庁の管理になっています。ただし日本書紀の記述通りに歴史を見れば、倭迹迹日百襲姫命が亡くなって墓を造ったのは崇神天皇１０年のこと。西暦で言えば、紀元前８８年のことなんです。従って、箸墓古墳造営時期と異なるのですが私は箸墓古墳は九分九厘、倭迹迹日百襲姫命の墓だと思っています。このブログでは何度も書いていますが、古事記や日本書紀は、天皇家の歴史を古く見せるために古代天皇の在位時期に手を加えていると考えています。上記の紀元前１世紀の崇神天皇は第１０代の天皇です。初代神武天皇が即位したのは紀元前７世紀という記述ですからどう考えたって事実とは思えません。しかし記紀の記述を読めば、誰がどう考えたってあの箸墓古墳は倭迹迹日百襲姫命の墓だと考えるのが妥当でしょう。従って箸墓古墳の調査結果から言えるのは「箸墓古墳は卑弥呼の墓である可能性が高まった」ではなく、「倭迹迹日百襲姫命は紀元前１世紀の人だと考えられていたが３世紀頃に生きた皇女だった」と、考えるのが自然ではないでしょうか。マスコミは、そろそろ「畿内説」の呪縛から解かれるべきです。 .

2011.01.22

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斉明天皇陵発見？？？

本日の朝刊（讀賣新聞）１面に「斉明天皇陵に“確定”」と出ていました。現在、宮内庁が斉明天皇陵に比定しているのは「車木ケンノウ古墳」奈良県高取郡高取町にある直径約45メートルの円墳です。今回「斉明天皇陵」と「特定」されたのは明日香村北西部にある牽牛子塚古墳（けんごしづか）です。少し前のマリアさんのブログで、発掘調査中であることは知っていましたがまさか天皇陵と発表されるとは思いませんでした。一昨年の１月頃に撮った、牽牛子塚古墳の石室です。この時は、益田の岩船との類似を確認するのが目的でこの古墳に興味があったわけではありませんでした。記憶では山の中にある、崩れかけた小山という感じでした。益田の岩船発掘調査の結果、牽牛子塚古墳は八角形の古墳でかなり立派な造りであることが判りました。八角形の古墳は天皇陵にのみ許されていたと言われ早朝のニュースでも「斉明天皇陵発見」とも報道されていました。この調査結果から、宮内庁がすぐに「斉明天皇陵」の比定を変更することはないと思います。調査終了後は、是非とも復元整備をして公開していただきたいものです。宮内庁から斉明天皇陵の比定を受けてしまったら１枚目の画像は絶対に撮ることが出来なくなりますね。整備後もここまで近寄ることは出来ないかも知れません。何と言っても天皇陵ですから、それなりの配慮がなされるでしょう。その意味では貴重な１枚になりました。 .

2010.09.10

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九州王朝３

日本書紀の不可解な記述１．古代天皇が在位した時代（在位年数も含め）２．神功皇后について３．厩戸皇子について４．天武天皇について結局ここまで回りくどくなってしまいましたが、本日は「九州王朝説」の観点からそれらを考えてみます。まずは「九州王朝」についてご説明しなくてはなりませんが、そいつはまた後日のことにさせていただきます。私たちはずっと、古事記や日本書紀を元にして歴史を学んできました。ですから、日本の歴史＝天皇家の歴史と思っていました。今日のところは、想像でけっこうです。７世紀までの大陸や半島において、「倭国と言えば、大和ではなく九州の国のことだった」そう思ってみてください。そうだったと仮定して、上記「１」～「４」を見てみます。１．古代天皇が在位した時代（在位年数も含め）神武天皇の即位を紀元前660年に設定したのは、中国の讖緯（しんい）説に基づいて、王朝が交代する革命が起こる辛酉の年に合わせたと言われています。天皇家の権威を高めるために、天皇家の歴史を古く見せる。確かにそうですが、裏を返せば「昔は天皇が日本の支配者ではなかった」とも言えるのではないでしょうか。神武天皇の即位が紀元前660年だったなど、記紀編纂当時の人はみんな「デッチアゲ」だと知っていたはず。それがまかり通ったのは、天皇の権威にとって都合がよかっただけではなく大和の豪族たちすべてにとっても都合がよいことだったなら誰もモンクは言いません。つまり「日本は太古の昔から、大和の天皇が治めた国だ」と主張できるから。九州王朝の存在を抹消してしまえば、天皇と大和の権威が高まるというわけです。これは大和の人々の思惑というより、唐の支持があった可能性が高いのです。このことについては、後日考えて行こうと思います。２．神功皇后について天皇家の歴史を古く見せるため、天皇の年齢や在位期間を大幅に水増ししたわけですがその「割り振り」に疑問を感じることを、少し前にご説明させていただきました。神話で天皇の寿命が短い（人と同じ）ことの逸話を載せておきながら、１００歳を超える天皇が数多くいること。天皇は天照大神の子孫なのだから、初期の天皇の年齢を操作すればいいのに仁徳天皇あたりまで異常なほど高齢の天皇ばかりなのです。なぜそのような操作が必要だったのか。それは、この神功皇后を３世紀はじめの「女王」に充てたかったからです。もうお気づきだと思いますが、３世紀はじめと言えば「魏志倭人伝」に書かれている卑弥呼や邪馬壹国の時代です。日本書紀の編者は、神功皇后が卑弥呼または壹与だとも、そうでないとも明記せず「魏誌に言う。倭の女王は･･･中略･･･貢を持ってきた」と、さらりと書いています。つまり、都合のいいつじつま合わせ。三国志（魏志倭人伝）と日本書紀の両方を照らし合わせた人が勝手に「神功皇后は卑弥呼」だと解釈できるようにごまかしているのです。邪馬壹国がここで言う「九州王朝」だったか、またはそのルーツだったかは不明ですが九州王朝の存在を隠し、有史以来この日本を治めていたのは近畿大和だとする立場から日本書紀の編者は魏と交流があった「女王国」が大和であったと装いたかったのです。しかし「魏志倭人伝」の内容と日本書紀の記述を合わせることまではしませんでした。魏志倭人伝に書かれている内容が、大和の地理や風俗などと大きく異なることを知っていたからでしょう。「魏誌に言う。倭の女王は･･･中略･･･貢を持ってきた」「読者」が勝手に勘違いしてくれるような書き方をしたのです。そして神功皇后の最後の方には「晋の天子の言動などを記した起居注に、武帝の泰初２年１０月、　倭の女王が何度も通訳を重ねて貢献したと記している」とも、書かれてあります。この「倭の女王」とは、卑弥呼の死後のことですから壹与のことでしょうか。神功皇后を卑弥呼だと断定したり、日本書紀で「卑弥呼」の名を出さなかったのは「では壹与は誰か？」と突っ込まれないように曖昧にしているのではないでしょうか。日本書紀の記述で中国の歴史書に言及することは珍しいと思うのですが神功皇后紀では何度も紹介されています。神功皇后紀のこのような記述が何を意味するかも興味深いのですが日本書紀の編者が「魏志倭人伝」や「邪馬壹国」「卑弥呼」のことをよく知っていたということは確かです。なのに魏志倭人伝に書かれた倭国と大和、そして倭国の女王と神功皇后の関係（関連）を曖昧にしていることに注目したいと思うのです。古代中国の歴史書に、「倭国」の情勢について書かれたものが他にもあります。我々にもなじみ深い「三国志」や「隋書」など、どの歴史書にも「倭国伝」はあります。その中で、わりと具体的なこと（たとえば、その時代の人物名など）が書かれたものはまずは前述の「魏志倭人伝（三国志）」ここには邪馬壹国や卑弥呼のことが書かれてあります。そして「宋書」などに書かれた、いわゆる「倭の五王」のこと。もうひとつ、「隋書」ここには「アメノタリシヒコ」という倭国王（男）が「日出処天子･･･」というケシカラン親書を持って来たと書かれています。さてここで、日本書紀の不可解な記述「３．厩戸皇子について」です。隋書に書かれている倭国王・アメノタリシヒコは九州王朝の王であるとすれば日本書紀の編者は、ここでも偽装工作を強いられることになります。しかしマズイことになりました。倭国王が隋に使者を送った時代は、大和では推古天皇の御代でした。隋書に倭国王は男だと書かれてあるので、倭国王は推古天皇ではない。さすがにこの時代になると、初期の天皇のように、活躍した年代をずらすわけに行かなかったようです。文字のない時代の伝承・伝説の「遠い遠い昔の天皇の話」とは違ってこの時代にもなれば大和内外の氏族の記憶に新しいことだったのでしょう。各地の各氏族でも「○○家伝」といったものも作られるようになっていたでしょうし朝鮮半島の歴史書との関係も懸念され、デタラメを書くわけに行きません。天皇家の歴史を捏造する国家プロジェクトなので、日本書紀のウソは絶対に見破られてはいけないのです。先にも書きましたが、日本書紀の記述は継体天皇紀あたりからは実際の時代に即して書かれているのではないかと想像しています。無責任なようですが、ごく薄い根拠による私の勝手な想像です。ところで日本書紀の編者は困ったことでしょう。アメノタリシヒコという男の倭国王をどうにかしなければいけません。この続きは、次回に。

2010.07.13

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九州王朝２

ちょっとおさらいです。今まで長々と書いてきた、日本書紀の記述の中で不可解なこと１．古代天皇が在位した時代（在位年数も含め）２．神功皇后について３．厩戸皇子について４．天武天皇についてこれらの謎について、私が以前に考えていたことをご紹介します。「１」については、単純に「天皇家の歴史を古く見せる」そのようにしか考えていませんでした。各天皇の在位期間や年齢は、本来の在位期間や年齢に準じた割合で満遍なく割り振ったと、漠然と考えていました。「２」については、疑問にすら感じていませんでした。「３」については、藤原氏台頭の布石だと考えていました。厩戸皇子を聖人化し、その一族を滅ぼしたのが蘇我氏だというストーリー。大政治家だった馬子を天皇弑逆の張本人とし、蝦夷・入鹿は横暴な人物に仕立て上げて、「聖人」たる厩戸皇子の一族を「斑鳩宮襲撃事件」で滅ぼしてしまう極悪政治家とする構図。そのような天皇家を脅かすほどの権力を誇示する蘇我氏を討って天皇中心の政治を実現させる立役者として、藤原氏が政治の中枢に躍り出る正当性を説く。斑鳩宮襲撃事件あたりから、以降の歴史は「藤原氏が書いたシナリオ通りに動いていたのかなぁ」などとも想像していました。天智天皇と鎌足の関係を考えると、壬申の乱以降の藤原氏が問題ですが鎌足の子、不比等（天智の子だという説も）は権力の座につき以後も藤原氏の時代がつづくことになりました。ただし、斑鳩宮襲撃事件で命を落としたのは厩戸皇子ではないので厩戸皇子を聖人扱いする必要性は薄いような気がします。そして、天皇家のための歴史書が、藤原氏のために書かれるわけはありませんしそんな歴史書では天皇家にも他の氏族にも受け入れられるはずがありません。「４」については、先に書いた通りです。天智の娘を何人も妻に迎えているなど、天智と天武が同母兄弟であったとは思えません。それでも天武が壬申の乱後、天皇として即位したことを正当化するそして天武天皇の出自を隠すために書かれたのが日本書紀だという説があります。私も一時、「なるほどなぁ」と納得していました。しかし、皇統が天智系に戻った後も「日本書紀」が破棄も訂正もされなかったそのことを考えると天武を正当化する目的で日本書紀が書かれたとは言えないと思うのです。九州王朝説に注目した時、これらの疑問がすっきりと解決できると感じました。いろいろ疑問もありましたが、学べば学ぶほど九州王朝への思いが深まります。新しい情報や発見も、九州王朝説を後押しするものばかりです。次回は上記の謎解明を中心に、九州王朝説の観点から書きたいと思います。

2010.07.04

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九州王朝説について

「九州王朝」という言葉を聞いたことがあるでしょうか？そういった説の存在は、１０年くらい前から知っていましたがほとんど吟味もせず、いわゆる「とんでも説」のひとつと片付けて最近まであまり注目していませんでした。その「九州王朝説」に注目するようになったのは同じ楽天ブログで知り合った素盞嗚さんとの出会いがきっかけでした。だいたい古代史ファンというもの、普段は「話し相手がいなくて寂しい」などと言いながら、出会うと反目し合う困った種族であります。特に得意とする時代については、他人の意見は一切受け付けないという頑固者も多いのです。しかし不思議なことに、素盞嗚さんとはお互いに素直に相手の考えを聞くことができたんです。少々強面のようですが（笑）、稀有な古代史仲間です。私は全てにおいて彼の足元にも及ばない半端モンですが、音楽好き（彼は現役ドラマー）で、飲兵衛という共通点があったからかも知れません。残念ながら現在、素盞嗚さんの古代史ブログは休止中のようです。以後、ご紹介しようとしている「九州王朝説」は７世紀までの倭国（日本）とは、九州・倭国のことであり日本書紀はその事実を隠蔽するための歴史書とするもの。しかし、私の「九州王朝」に関する知識は僅かで大和を中心に語られた歴史の疑問や矛盾を晴らす「一説」として注目しているに過ぎません。素盞嗚さんは、中国各時代の歴史書の「倭国伝」を読み解き謎に迫ろうとされています。今回、日本書紀の疑問点や、そしてこのシリーズを書くきっかけとなった「聖徳太子はいなかった？」というテーマについて考えるにあたって再度　「九州王朝」　についての本を読むと、かなり奥深いものがあると感じました。ブログでちょこちょこっと書くそんな簡単にまとめられるほど、私には知識がないことも痛感したのであります。さきほどWikiで「九州王朝」を調べてみましたが意外な説や新しい情報が満載で、おろおろしてしまいました。その中で気になったのは蘇我氏のこと。馬子・蝦夷・入鹿などは名前としては不自然とした上で、馬子と入鹿を足せば「馬鹿」になることなどを指摘していました。蘇我氏は九州王朝の王家だとも書かれてありました。だとすれば、先日書いた「崇峻天皇暗殺事件」での疑問も馬子や一族の判断で行った可能性も否定できなくなります。ただし日本書紀の記述としてはイレギュラーですが。なぜなら、あの記述では天皇よりも蘇我氏の立場が上であったという証拠を残すことになりますしあくまでも蘇我氏を天皇の臣下とするならば、天皇が臣下によって暗殺された不名誉も残してしまったからです。素盞嗚さんも以前、古代史ブログで蘇我氏のことを「九州王朝」の一族と言っておられました。蘇我氏が大和に来たきっかけは「継体の乱」（一般的には「磐井の乱」と呼ばれるもの）大和が２度と筑紫に対して不穏な動きをしないよう、監視役として送り込まれたとのこと。蘇我氏の出自については、私は轡十文字を付けて保留中。と、言いますのも私の、良く言えば「浪漫」、悪く言えば「妄想」なのですが蘇我氏は出雲の出身ではないかと考えているのです。「古代史妄想　１」「古代史妄想　２」「古代史妄想　３」さて、九州王朝。ちょっと抵抗のある方もいらっしゃるかも知れませんが次回からは厩戸皇子の謎も含めた日本書紀の謎について九州王朝説の観点からご説明して行こうと思います。※素盞嗚さんの最近の九州王朝関連の記事（古代史専門ブログではありませんが）日本古代の真実を解く！１　倭の五王の住む都 .

2010.07.01

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疑問点　その２

日本書紀の記述の中で不可解なこと１．古代天皇が在位した時代（在位年数も含め）２．神功皇后について３．厩戸皇子について４．天武天皇について前回までに以上の４点のうち「１」と「４」に加え「崇峻天皇暗殺事件」について、ご説明しました。（「１」と「４」については「過去記事を読め」という手抜きでしたが）今回は予定を変更して、出来るだけ簡略に「２」と「４」について書きます。■神功皇后について日本書紀は各天皇ごとに書かれていますが、唯一皇后の巻が書かれているのが神功皇后です。先に１００歳超の天皇をご紹介しましたが、神功皇后もほぼ１００歳。夫である仲哀天皇が急死したとは言え（既述のように不審死）、およそ７０年間に渡って政務を取り仕切ったことになっています。皇后の死後、息子の応神天皇が即位したのは、応神天皇が７０歳になってからでした。皇后の年齢も、空位期間の長さも不自然です。神功皇后は「伝説の皇后」と言うべき、大活躍した女性だったのでしょう。日本書紀の中で唯一皇后紀が書かれ、天皇以上に目立つ存在に「仕立て上げ」られているのには理由があります。私は、日本書紀の編者はどうしてもこの皇后を３世紀前半の「女王」のような存在にしたかったのだと考えています。また、昨年書いた記事「古代天皇の在位」でご紹介したように古代天皇の年齢と在位した時代に大いに疑問を感じています。既述のように日本書紀では天皇の歴史を古く装うために、初代天皇神武の即位年をB.C６６０年としました。そのため、以後の天皇の年齢を増やす必要があったことはよしとしても、その「割り振り」に不自然さを感じるのです。歴史を古く装うためならば、１００歳以上の天皇が多数いたことにしたり多くの天皇の在位期間を大幅に水増しする必要はありません。最初の何代かの天皇だけ、４００歳とか３００歳とか長寿にすれば編纂も楽ですし、神話的にも自然なのです。つまり、天皇は高天原の天照大神の子孫なので長寿でいいのです。それが葦原中国（あしはらのなかつくに＝日本・地上）の女性と交わって徐々に寿命が短くなったように調整すれば自然かつ簡単に天皇家の歴史を古く装うことが出来るのではないでしょうか。日本書紀の編者がそうしなかったのはなぜか。その謎解きは神功皇后が鍵となっていると思っています。つまり、伝説の女傑・神功皇后を、どうしても３世紀前半の皇后にしたかったから。そのため編者たちは、B.C６６０年から３世紀までの間に神武～仲哀天皇を割り振り、応神天皇以降を３世紀半ばから５～６世紀に割り振らなければならなかったのです。神功皇后の時代をなぜ３世紀前半に設定する必要があったのか。それは次回にご説明します（もう気が付いたかな？）。■厩戸皇子（聖徳太子）について何度も言うように、日本書紀において厩戸皇子の扱いは特別なものがあります。厩戸皇子は用明天皇の皇子であり、推古天皇の時代には「摂政」として天皇を補佐したとされています。従って日本書紀に既述があって当然なのですが、他の皇子とは大きく違う「異色の天才」として描かれています。■聖人　生まれてほどなくものを言い、聖人のような知恵を持っていた■豊聡耳　一度に１０人の訴えを聞かれても、聞き誤ることはなかった■兼知未然　先のことまでよく見通しておられた■片岡の太子と飢人　厩戸が片岡山に行ったとき、出会った行き倒れの飢人に食物と服を与えた　その飢人は聖であった。人々は「聖は聖を知る」と感心した念のため申し上げますが、上の既述は「聖徳太子信仰」の書物ではなく日本書紀に書かれてあることです。その他、厩戸皇子の功績としては1.仏教の興隆。四天王寺・斑鳩寺（法隆寺）の建立。2.冠位十二階の制定3.十七条憲法の制定4.遣隋使の派遣　　　　　　　　　　　など最近では、上記「１」以外は日本書紀編纂時の創作だとする説もあります。これほど政治的に目立った皇子は、厩戸皇子の後にも先にもいないのではないでしょうか？皇太子として天皇を補佐した皇子の既述は他にもありますが、厩戸皇子の功績は突出していると言うより、皇太子としては不自然なほどの働きです。皇子の既述に関しては「人望が厚い」「文武に秀で」程度がせいぜいなのです。そもそも天皇ですら、人格や人望について語られることは少ないと感じています。上記のように、厩戸皇子に関する記述はある意味「異常」なのです。極めつけは、厩戸皇子薨去の場面。厩戸皇子は斑鳩宮に薨去された。このとき諸王・諸臣および天下の人民は、老いた者は愛児を失ったように悲しみ、塩や酢の味さえもわからぬ程であった。若き者は慈父慈母を失ったように、泣き叫ぶ声は巷にあふれた。農夫は耕すことも休み、稲つく女は杵音もさせなかった。皆が言った。「日も月も光を失い、天地も崩れたようなものだ。これから誰を頼みにしようか」以下　省略。日本書紀に記されているどの天皇紀を見ても、天皇崩御の記事でもこれほどの既述はありません。天皇崩御の既述の一例をいくつかご紹介します。・天皇は崩御された。年75歳。朝廷の中庭に殯宮（もがりのみや）を置かれた（推古天皇）・天皇は百済宮で崩御された。宮の北に殯宮を設けた。　このとき東宮の開別皇子は16歳で誄（しのびごと）をよまれた（舒明天皇）・天皇は正殿で崩御された。殯宮を南庭に建てた（孝徳天皇）これらは極端な例ではありません。むしろスタンダードなのです。なぜこれほどまでに、厩戸皇子がクローズアップされているのか。そしてさらに、仮に一部の政治的功績や聖人伝承が後世の創作だとしたら、なぜ日本書紀の編者はそのような「捏造」を行う必要があったのか。私は次のように考えています。推古天皇という女帝の時代に、政治上、実質的には辣腕を振るった男性があたかも「国王」のごとく存在していたと装うため。なぜそんなややこしいことをしたのか。なんだかとってもアヤシイ説を語ろうとしているような感じですが。ある意味そうかも（笑）では次回は、今まで語ってきた「日本書紀の不可解」について一気に解明する「ある考え」をご紹介します。題しまして　「日本の首都は、九州にあった！！」の巻。

2010.06.29

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日本書紀の疑問点について

前回の「崇峻天皇暗殺事件」もそうですが、日本書紀の記述には、いくつか不可解なことがあります。隋書や三国志などの中国の歴史書と違って、日本書紀は天皇の命によって編纂された天皇家中心の歴史書です。従って、天皇家の不利・不名誉な事実は隠され天皇の権威と功績が美化された箇所があると想像できます。日本書紀は古代日本を知る上で貴重な資料ではありますが、反面、全てを鵜呑みにするわけにもいかないのです。しかし「隠蔽」や「嘘」の記述には不自然なものがあります。怪しい記述や、ポロリとボロが出た部分もあるのは世のお父さんたちが奥さんに嘘をつくときと似ています。（私のことではありません）では、私が日本書紀の中で「？？？」と感じている部分をご紹介します。１．古代天皇が在位した時代　　初代天皇とされる神武天皇が即位したとされるのは、紀元前７世紀のこと。　　第１１代の垂仁天皇までは紀元前の天皇ということになっています。　　そして第１６代の仁徳天皇あたりまで、１００歳を越える天皇が多数存在することも　　大きな疑問を感じます。　　２．神功皇后について　　神代（神話）は別として、日本書紀は各天皇ごとに書かれています。　　　　唯一皇后の巻が書かれているのが神功皇后です。　　　　神功皇后だけがその功績を天皇並に記されている理由はなにか。３．厩戸皇子について　　日本書紀において厩戸皇子の扱いは特別なものがあります。　　古代の皇子の活躍に関する記述は少なくありません。　　　　特に日本武尊は古事記ではヒーローとして扱われています。　　　しかし厩戸皇子は用明・崇峻・推古と三代の天皇紀に記載され、　　その活躍は政治のみならず聖人としての逸話も記されています。　　　　そしてその薨去に関する記述も異例の扱いを受けています。　　また、推古をたすけ国政を全て任されていた厩戸皇子が、　　飛鳥から遠く離れた斑鳩に宮を構えたことも不思議です。４．天武天皇について　　日本書紀では概ね１天皇１巻という構成になっています。　　在位期間が短い天皇の場合、まとめて書かれている巻もあります。　　しかし、天武天皇だけは２卷にわたって書かれています。上記のうち、「１」と「４」については、昨年の記事をご覧いただきたいと思います。　　　古代天皇の在位　　　天武天皇について ※せっかくなので、古代史ものを集めた「電子の小箱２」にリンクしました次回は、私が考えている「ある仮説」についてご説明します。コメントがなくても、足跡がなくてもめげずにガンバって書きます .

2010.06.26

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崇峻天皇暗殺事件

まずは崇峻天皇暗殺事件について書く前に少し崇峻天皇についてご紹介します。よく蘇我馬子の傀儡天皇だと言われます。ちょっと端折りますが、要するに馬子の力がなければ即位はなかった天皇です。宮を構えたのは倉梯（くらはし）という場所。明日香からはかなり離れており、形だけの天皇とも言われ馬子らから軽んじられた存在だったとも言われています。実際倉梯という土地は、明日香からは離れているだけでなく行ってみてわかったのですが、山を越えた場所になります。しかし辺鄙な場所かと言えば、必ずしもそうとは言えません。古代天皇の聖地とも言われる「磐余」に近く当時厩戸皇子が住んでいたと思われる上之宮にも近い場所でした。従って、従来よく言われていたような「ポツンと取り残された」そんな寂しい天皇だったとは限らないと思います。さて崇峻天皇暗殺事件について。日本書紀に書かれてあることを要約してご紹介します。要約崇峻５年冬１０月４日献上された猪を指差して天皇がおっしゃった。「いつかこの猪の首を斬るように、　自分が憎いと思う人を斬りたいものだ」　と。１０日蘇我馬子はその言葉を聞き（一説には妃である小手子の密告とも言われる）自分が嫌われていること、そして倉梯宮で不穏な動きがあることを警戒し一族の者を召集して天皇を弑することを謀った。１１月３日馬子は偽の儀式に天皇をおびき出し、東漢直駒を使って天皇を暗殺した。後日、東漢直駒は蘇我嬪河上娘（そがのみめかわかみのいらつめ）を奪い嬪を汚したことが露見して馬子に殺された。要約するのはたいへんでした（ようやく出来た）オヤジギャグはさておき、上記のような記述内容についてみなさんは何か疑問を感じませんか？私もこの時代に興味を持って約３０年。ずっとこの事件について、「たいへんな出来事だなぁ」としか思っていませんでした。しかし最近、ふと冷静に考えてみるとこの事件は日本の歴史上、絶対に考えられないことだと思い始めました。そしてこの記述が、何か真実を隠蔽しようとしているとしても日本人ならば考えつかないはずの作り話なのです。ここで仮に崇峻天皇暗殺事件を、ひとつの物語だとしましょう。ストーリーとしてはよく出来ていて、筋も通っています。崇峻天皇は馬子を憎み、殺したいともらした　　　　↓警戒した馬子は、天皇暗殺を企てた　　　　↓偽の儀式で天皇を暗殺　　　　↓馬子は実行犯の東漢直駒を殺した何か不自然さを感じませんか？臣下が天皇を殺すということはクーデターであり天皇のみならず、皇族を殺すことでさえ大罪だったはず。馬子と一族だけで天皇暗殺を謀ることはありえないと思います。日本書紀の記述とは違いますが、仮に崇峻天皇が先に兵を挙げたとしても臣下である馬子は、天皇の詔であれば抵抗することが出来たでしょうか。蘇我倉山田石川麻呂、大津皇子、そして長屋王。これら処刑または自害に追い込まれた事例を思えば、想像に難くないと思います。日本書紀の記述では、天皇を騙して「先手」を打ったことになっています。これで馬子に「お咎めなし」ということは、馬子の権力が天皇よりも上ということになってしまいます。仮に馬子の企ては隠密裏に進められ、実行犯である東漢直駒を処刑して幕引きにしたというストーリーだったとしても絶対におかしいのです。それは「日本書紀は天皇家の歴史書」だからです。臣下に騙されて暗殺されたとあっては、天皇にとっては不名誉なことです。もしそれが事実だったなら、隠蔽されたはずだと思うのです。もう一度まとまます。・馬子が天皇を暗殺することはありえない・天皇が臣下に暗殺されたという記述はありえない（事実であっても）実行犯は処刑されますが、天皇暗殺の罪で殺されたわけではありません。やはりどう考えても、「崇峻天皇暗殺事件」の記述は事件自体も、ストーリーとしても、日本人の感覚で考えると、絶対にありえないのです。この「日本人の感覚で考えると」という部分を、覚えておいてください。いずれ、（だいぶ先かも知れませんが）重要になってきます。ここで不自然な死に方をした天皇や皇子の例を挙げておきます。■仲哀天皇新羅征討に反対した仲哀天皇は、暗闇の中で急死。弾いていた琴の音が途切れたので、武内宿祢が火をともしてみたところ亡くなっていたというもの。「新羅征討」という神宮皇后が受けた御神託を信じなかった仲哀天皇が神の怒りを買ったとされています。天皇暗殺隠蔽の好事例ではないでしょうか。■穴穂部皇子物部守屋の後ろ盾をもらい、皇位継承を狙ったが馬子によって殺された。しかしこの「穴穂部皇子暗殺」は、先々代天皇である敏達の皇后豊御食炊屋姫尊（のちの推古天皇）の命を受けたという大義名分がありました。馬子は天皇どころか、皇子を討つためにも皇族の「お墨付き」を要したのです。■大友皇子壬申の乱で、大海人皇子（のちの天武天皇）と争って亡くなります。しかし明治になって、大友皇子は「即位していた」と認められ弘文天皇の諡号が贈られた。即位したという証拠はありませんが、現代の学者の間でも、概ね「即位していたと考えるのが自然」と言われます。仮に即位が事実だとしたら、日本書紀になぜその記述がないか。大友皇子が天皇になっていたとしたら、壬申の乱は「天皇を倒すクーデター」になってしまうのです。このように考えると、やはり「崇峻天皇暗殺事件」は事件自体も記述内容も、日本書紀的には不自然なのです。皇族や他の群臣からも非難されず、馬子が崇峻天皇を暗殺するにはやはり「大義名分」か「お墨付き」が必要だったはず。そしてその大義名分、お墨付きは誰のものか？またもや豊御食炊屋姫尊か、それとも厩戸皇子か･･･。どちらにしても、天皇暗殺は大罪です。その「大罪」を馬子に押し付けたのでしょうか？蘇我馬子による崇峻天皇弑逆が事実ならば、必ず天皇家の「誰か」が命じたはず。日本書紀は「天皇が臣下に暗殺される」不名誉は残してしまいましたが馬子に「お墨付き」を与えた「誰か」のことは隠したのかも知れません。次回は日本書紀の不可解な部分について書きます。ちょっとだけ「聖徳太子」の実像に近づける････かも。 .

2010.06.25

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聖徳太子　４

聖徳太子の謎、続けます。なぜ厩戸皇子は即位出来なかった、あるいは即位しなかったのか。 a)崇峻天皇のような傀儡天皇にはなりたくなかった b)皇太子の方が、何かと動きやすいから c)天皇になったら斑鳩宮から明日香に通うわけに行かなくなるから d)推古天皇の後で即位するはずだったが、推古よりも先に薨去してしまったから e)推古天皇が自分の息子（竹田皇子）に皇位を継がせるために、自らが即位した　（竹田皇子が即位する年齢に達していなかったためと言われる） f)実は即位していた g)即位出来る精神状態ではなかった　（高句麗から渡来した僧慧慈とともに道後温泉にて療養）「ｆ」について、前回の補足です。厩戸皇子が隋の煬帝に送ったとされる国書。「日出ずる處の天子、書を日沒する處の天子に致す。恙なきや」云々。有名な一節ですよね。隋書には、この国書をよこした倭国の王を「姓は阿毎、字は多利思比孤」と記されています。つまり倭国の王は「アメノタリシヒコ」という男性だということですね。したがって当時の天皇は女性である推古天皇ではなくて、厩戸皇子が天皇だったという説。しかし厩戸皇子の名前が「アメノタリシヒコ」って紹介されていることは解せません。隋書の「アメノタリシヒコ」については、後日ご説明させていただきます。私は、「アメノタリシヒコ」は厩戸皇子のことではないと思っています。では残る「a」と「ｇ」について。厩戸皇子が即位しなかった理由としては、この２つが可能性としては高いのではないかと思っています。私の個人的な想像ですが、厩戸皇子は通常の皇子としての役割は果たすが、皇位継承や権力にはさほど興味がなかったのではないかと思います。その理由は「仏教への深い傾倒」かも知れませんし少年時代から目の当たりにしてきた「権力闘争」や「骨肉の争い」そして相次ぐ叔父たちの殺害事件などに嫌気がさしていたのかも知れません。それに加えて母、穴穂部間人皇女の再婚（相手は厩戸皇子の異母兄）などにより厩戸皇子は精神的にまいってしまい、ノイローゼになっていたとする説もあります。伊予国風土記逸文によると推古４年、厩戸皇子が「病気療養のため道後温泉に滞在した」と記されています。その上皇子は最初の妻、刀自古郎女をも失っているという説もあります。日本書紀に直接崇峻天皇に手を下した東漢直駒が、事件のあと「蘇我嬪河上娘を奪って妻とした」という記述があります。東漢直駒（やまとのあやのあたいこま）は馬子によって処刑されますがその理由は崇峻暗殺ではなく、蘇我の娘を奪ったことだと書かれてあります。この「河上娘（かわかみのいらつめ）」は、崇峻の嬪（※）だと言われていますがこの河上娘とは厩戸皇子の妻、刀自古郎女（とじこのいらつめ）のことだという説があるのです。（※）天皇の妻の身分。上から順に正室の皇后、皇族の娘の妃、その下が嬪厩戸皇子が政治の中枢にいたとしても、仏教を推し進める「法王」のような存在で実際の政治は蘇我馬子が執り行ない、推古天皇は祭事を司っていた。そういう体制だったかも知れません。ところでその崇峻天皇暗殺事件ですがよく考えるとかなり不可解な事件であると言えます。次回はちょっと脱線して、この崇峻天皇暗殺事件のことを書きます。 .

2010.06.20

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その３

なぜ厩戸皇子は即位出来なかった、あるいは即位しなかったのか。前回、上記の謎に対してのいろいろな説をご紹介しました。今回は「なぜ厩戸皇子は即位出来なかった、あるいは即位しなかったのか」について考えて行こうと思います。a) 崇峻天皇のような傀儡天皇にはなりたくなかったb) 皇太子の方が、何かと動きやすいからc) 天皇になったら斑鳩宮から明日香に通うわけに行かなくなるからd) 推古天皇の後で即位するはずだったが、推古よりも先に薨去してしまったからe) 推古天皇が自分の息子（竹田皇子）に皇位を継がせるために、自らが即位した　（竹田皇子が即位する年齢に達していなかったためと言われる）f) 実は即位していたg) 即位出来る精神状態ではなかった　（高句麗から渡来した僧慧慈とともに道後温泉にて療養）上記「ｂ」については説明する気にもなれません。だったら皇太子じゃない方が、もっと動きやすいと思います。「ｃ」についても同様。当時の「都」は天皇が代わるたびに場所を移していました。天皇の「宮」が「みやこ」だったのです。厩戸皇子が即位したら、厩戸皇子は斑鳩からだろうがどこからだろうが明日香に「出勤」する必要はありません。「ｄ」についてですが、一番自然な説だとは思います。しかし推古天皇の即位が厩戸皇子へのつなぎだったとしたら厩戸皇子がそれなりの年齢に達した時点で、譲位すればよかったのではないでしょうか。それまで「生前退位」の前例はないようですが、そもそも「女帝」自体、前例のないことだったのです。推古天皇の次の次に即位した皇極天皇は、生前退位して孝徳天皇に譲位。さらに孝徳天皇の死後、再び皇位について（重祚）斎明天皇として即位しました。「e」は古代史ファンが好みそうな説です。しかしこの説も可能性は低いようです。もし竹田皇子に皇位を継がせるために自らが即位したのなら他の優秀な皇子を排除するのが普通だと思います。持統天皇がおそらくは無実だった大津皇子を処刑した例がその最たるもの。少なくとも厩戸皇子を政治の表舞台からは遠ざけたと思います。その上、竹田皇子は即位出来る年齢に達していた可能性が高いのです。用明天皇後の皇位継承問題で、日本書紀に次のような記述があります。「自宅に兵を集め、押坂彦人皇子の像と竹田皇子の像を作り呪詛」これは穴穂部皇子を推す物部守屋に与した中臣勝海がとった行動です。つまり、穴穂部皇子を天皇にするために押坂彦人皇子と竹田皇子を呪い殺そうと企んだのです。ということは推古天皇が即位する５年ほど前に、竹田皇子は既に成人に達していたと考えられるのです。しかし馬子と守屋の争い以降、日本書紀にその名は登場しません。崇峻天皇即位前後に薨去したのではないかと言われています。日本書紀の記述によれば、推古天皇が自分を竹田皇子と合葬するように遺詔しています。少なくとも推古天皇よりも早く亡くなっていたようです。押坂彦人皇子についてはここでは触れないことにします。（そっちに話題がそれてしまいそうなので･･･）敏達紀以降、押坂彦人皇子は表舞台に登場しませんがそれは蘇我氏と関係を持たなかったためだと言われています。次に「ｆ」について。厩戸皇子薨去後に興った「聖徳太子信仰」の流れの中での願望のようなものとして捉えられている説。そのほか、厩戸皇子が即位していたかも知れない傍証はありますがその前に、日本書紀が厩戸皇子の即位を隠す理由が全く見当たりません。歴史上から抹消してしまいたいほどの愚王ならともかく日本書紀での厩戸皇子の扱いは異常なほど「聖人化」しているのです。さっさと行きたいところですが、思いのほか長くなってしまいました。「a」「ｇ」については、次回に。ご意見、反論、疑問などございましたらどんどんご指摘ください。.

2010.06.17

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聖徳太子はいたか？　その２

では前回の続きタイトルでは「聖徳太子」と表記していますが本文では基本的に「厩戸皇子（うまやとのみこ）」と書きます。１．「摂政」などという前例のない形をとってまで　　厩戸皇子が天皇になら（なれ）なかったのはなぜか。２．斑鳩宮は、どう考えたって明日香からは離れすぎ。この２つの疑問について考えて行きます。まずは「１」について。この頃の皇位継承については、いろいろ複雑な問題があります。蘇我馬子の姉と妹、堅塩媛と小姉君のこと（どちらも欽明天皇の妃）蘇我氏から距離を置いていたと思われる押坂彦人皇子がどうしていたか等々。今回は端折って、厩戸皇子にだけ注目します。父は用明天皇（父：欽明天皇　母：堅塩媛）母は穴穂部間人皇女（父：欽明天皇　母：小姉君）欽明天皇のあとに即位した敏達天皇の皇統ではありませんが天皇家と、時の権力者であった蘇我氏の血を濃く引いた皇位継承の資格充分の皇子だったと思います。しかし次の天皇として即位したのは、叔父にあたる祟峻天皇でした。母・穴穂部間人皇女の弟です。なお、もう一人の伯父、穴穂部皇子がいましたが蘇我馬子と物部守屋の争いに先立ち、炊屋姫（のちの推古天皇）の命を受けた馬子によって殺害されています。ちなみに馬子と守屋の争いは、崇仏派と排仏派の衝突と言われますが私は宗教には関係のない権力闘争だと思っています。崇仏派が勝ったからと言って、神道が排除されたわけではありませんから。さて、馬子の傀儡天皇とも称される祟峻天皇ですが、即位後たった５年ほどで馬子によって殺されてしまいます。排仏派の仏教弾圧や権力闘争、そして相次ぐ伯父の暗殺。それらを目の当たりにした厩戸皇子は、どういう思いだったでしょうか。加えて母・穴穂部間人皇女の再婚にショックを受けたと説く論者もいます。母の再婚相手は田目皇子という、厩戸皇子の異母兄だったのです。そして崇峻天皇暗殺後に即位したのは、初の女帝・推古天皇でした。厩戸皇子にとっては叔母（父：用明天皇の同母妹）にあたります。用明天皇崩御の時は厩戸皇子は若干１３歳でしたが崇峻暗殺時は、もうすぐ１９歳という年齢でした。当時の慣例から言えば、まだ即位には若いと言える年齢です。なぜ厩戸皇子は即位出来なかった、あるいは即位しなかったのか。いろいろな説がありますが、私の手元にあるいくつかの資料にはそれぞれ次のような理由が書かれてあります。a)崇峻天皇のような傀儡天皇にはなりたくなかったb)皇太子の方が、何かと動きやすいからc)天皇になったら斑鳩宮から明日香に通うわけに行かなくなるからd)推古天皇の後で即位するはずだったが、推古よりも先に薨去してしまったからe)推古天皇が自分の息子（竹田皇子）に皇位を継がせるために、自らが即位した　（竹田皇子が即位する年齢に達していなかったためと言われる）f)実は即位していたg)即位出来る精神状態ではなかった　（高句麗から渡来した僧慧慈とともに道後温泉にて療養）この中に真実があるかどうかはともかく、みなさんはどう思われますか？少し長くなってしまいましたので、今回はここまで。次回は上記　a)～g)について検証してみたいと思います。.

2010.06.16

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聖徳太子はいたか？

聖徳太子はいたか？昨年の１１月、このテーマで張り切って書き始めたのですが４回ほど日本書紀の不自然な記述などのことを書いて肝心の聖徳太子の話題にたどりつけないまま中断してしまいました。今度は時間をかけてでも完結させます。毎回シリーズものとして書く場合、疑問や謎を列挙して、最後にそれらをつなぎ合わせて結論に持ち込む･･･そういう手法のつもりでした。しかし、いつも本題に入る前に息切れしてしまい結論どころか、本題からそれた話題で中断してしまったこともありました。ちゃんと状況証拠となるものを、あらかじめ並べておかないと結論（私が抱いている仮説）を申し上げる勇気がなかったのです。「えぇぇぇぇぇ～っ！　pleさん、へんてこりんなこと考えてるぅ」そう思われるのが、ちょっと怖かったんです（笑）今回は早い段階で「私が考えている仮説」を申し上げたあとで私がそう考えている理由や状況証拠をご紹介する形にしようと思います。さて　聖徳太子はいたか？私の考えは（明日になったら変わるかも知れませんが）･･･●厩戸皇子という優れた皇子はいた●しかし後に「聖徳太子」と呼び称される「政治家」はいなかったと、考えています。そして付け加えれば、日本書紀の編者は ●あの時代にどうしても男性の「王」がいたことにしたかったなのです。実はわたくし、「日出処の天子」という漫画から古代史に引き込まれその漫画を読んだ後、１～２年は厩戸皇子のことばかり調べていました。以来３０年近く、厩戸皇子ファンです。「聖徳太子は蘇我入鹿だった」とか「聖徳太子はいなかった」など今までに何度もそういう説を耳にしましたが、さしたる検証もせずにことごとくそれらの説を拒絶してきました。しかしいろいろな古代史の本を読み、少しずつ増えていく知識（と、かなりの忘却）と、それと同じくらい湧き上がる疑問。その疑問に答えてくれるのは、以前は誰かの本のどこかの頁にあると思い込んでいました。しかし誰かの本では、また新たな疑問も発生します。誰かの本のどこかの頁を探すのではなく、少しずつ自分なりに考えるようになったとき疑問の数が減り始めました。もう一度　申し上げますね。●厩戸皇子という優れた皇子はいた ●しかし後に「聖徳太子」と呼び称される「政治家」はいなかった「厩戸皇子という優れた皇子はいた」の「優れた」という部分は厩戸皇子ファンである私の願望も入っています。でも、おそらく優秀な皇子であったとは思います。今　私は日本書紀に書かれている古代史とは全く違った歴史解釈をしようと試みています。その仮説の下では、ファンとしては残念ですが日本書紀に書かれた「聖徳太子」は虚像であると言わざるを得ません。●厩戸皇子という優れた皇子はいたが　　　　　　　　　　「聖徳太子」と呼び称される「政治家」はいなかったそう考えたとき、長年の胸の痞えがとれてスッキリしました。聖徳太子の物語を読んだり、あの時代のことが書かれた本を読みながら心の片隅でいろいろな疑問が、小さな針のようにわたしの胸をチクチクと刺し続けていました。それらをずっと、私は無視し続けてきたのです。●厩戸皇子という優れた皇子はいたが　　　　　　　　　　「聖徳太子」と呼び称される「政治家」はいなかった　　　　　　　　　　　　　（しつこいですか？）チクチクがなくなって、スッキリしたのです。それらがどんな疑問だったかと言いますと･･･１．「摂政」などという前例のない形をとってまで　　厩戸皇子が天皇になら（なれ）なかったのはなぜか。２．斑鳩宮は、どう考えたって明日香からは離れすぎ。などなど･･･。古代史にお詳しいみなさんなら、きっと上記の疑問に対し「正しい」と言うか、既存の解釈をお持ちだと思います。こんなことは誰もが持つ疑問なのですが、一応「解決」されています。しかしそれは、日本書紀に書かれている通り「厩戸皇子は推古天皇の摂政として活躍した優れた政治家だった」という前提の下での解釈ではないでしょうか。次回は、上記「１」「２」の疑問について書きます。

2010.06.14

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天武天皇について

聖徳太子の謎に迫るシリーズ第４段。神功皇后について書く予定でしたが、計画変更！今回は天武天皇について書きます。早くも息切れしてしまい、前回の記事から１０日もたってしまいました。日本書紀は　１天皇１卷　という構成が基本です。短命だったり在位期間が短い天皇は何代かの天皇が１卷にまとめられている卷もけっこうあります。しかし天武天皇については２卷に渡って書かれているのです。在位期間は１５年ほどなので、それほど長いわけではありません。では、なぜ天武天皇だけが２卷に渡って書かれているのでしょうか。１５年ほど前だったでしょうか。歴史に造詣が深い作家、井澤元彦氏の「逆説の日本史」という本を読みました。その本に、天武天皇のことが書かれていました。・天武天皇は天智天皇の同母弟ではなく、しかも年上だった可能性もある。・天武（大海人）は皇位に着く可能性は低い皇子だった。・日本書紀は天武天皇の指示で編纂が始められたもの。以上のことから、日本書紀は「天武天皇の出自を隠し、皇位継承の正当性を説くために作られた」つまり井澤氏は、日本書紀は天武の正体を隠すために編纂されたとしています。当時の私は、日本書紀や古事記を自分で読むまでには至っておらず井澤氏の説を手放しで受け入れ、感動した記憶があります。そして当時の私は、日本書紀を日本の正史として疑いもなく見ていました。そんな私にとって、「日本書紀に書かれたことは、言わば『大本営発表』のようなものだ」とし、日本書紀が天武の正体を隠すための歴史書だとした井澤氏の説は正に「目からウロコ」の心境でした。これなら天武天皇紀が２卷あることも、壬申の乱がドラマチックに書かれ、そして天武天皇がヒーローに祭り上げられていて当然です。また、天智と天武が同母の兄弟としている日本書紀。しかし、乙巳の変や白村江での敗戦と百済滅亡など６世紀後半は激動の時代であったにもかかわらず、天武（大海人）の名は近江朝以前にはほとんど登場しません。そしてのちの持統天皇をはじめ、天武は多くの天智の娘を妻としています。同母兄弟とは、とうてい考えにくいことです。しかし、今は井澤氏の説を１００％受け入れることは出来ません。なぜなら、皇位が天智系に戻ってからも日本書紀は日本最古の歴史書として、「日本の正史」として残っているからです。壬申の乱以降、天智系と天武系の皇子の間には相当な確執があったと思います。天智系と天武系についてピンとこない方は、「壬申の乱（じんしんのらん）」以降の歴史を復習してみてください。何度も言うように、日本書紀では天智と天武は兄弟ということになっています。天智亡きあと、その息子である大友皇子と天智の「弟」とされる天武の戦いが壬申の乱。その戦いに勝利した天武が天皇として即位し、以後は天武系の天皇の時代になります。やがてその皇統が途絶え、天智系に皇統が戻り光仁天皇を経て桓武天皇以降、天智系の皇統が続きます。それまでの奈良時代に、日本書紀は多くの人に読まれ天智系天皇の時代になって改修することは不可能だったと思われるかも知れません。しかし天皇の権力をもってすれば、「日本書紀は誤りである」として訂正または、全ての日本書紀を葬ることも出来たはず。実際、日本書紀が編纂される前の歴史書は断片すら残っていません。このことは、日本書紀によって過去の歴史が書き換えられた可能性を暗示しています。壬申の乱で敗れた大友皇子は、明治時代に即位が認められ弘文天皇の諡号（しごう）が贈られています。もし大友皇子が即位していたとすれば、なぜ日本書紀に記されていないのか。それは、壬申の乱が天武（大海人皇子）のクーデターになってしまうからだと言われています。その日本書紀に、蘇我馬子と厩戸皇子によって「天皇記」「国記」などが編纂されたことが記されています。もちろん現在は何も残っていません。日本書紀には、乙巳の変（大化改新）の時「蘇我臣蝦夷（馬子の子・入鹿の父）は殺される前に全ての天皇記・国記・珍宝を焼いた。船史恵尺はそのとき国記を取り出して中大兄に奉った」と記されています。現在、蘇我入鹿の邸宅だった可能性がある「甘樫丘東遺跡」の発掘が行われています。農地があるため発掘が進まず、邸宅と思われる遺跡は見つかっていませんが近い将来に見つかったとしても、天皇記などは見つからないでしょう。甘樫丘東麓遺跡・現地見学会甘樫丘東麓遺跡（2009/8月）中大兄（後の天智天皇）に渡されたとされる「国記」も残っていません。日本書紀では蘇我蝦夷が「天皇記」「国記」を焼いたとしていますが、蘇我蝦夷に、果してそれらを焼く理由があったでしょうか？７世紀以前の歴史が日本書紀によって書き換えられている可能性がある。そしてそれ以前の歴史（国史）は、天智・天武らによって完全に葬られたのではないか。私は、その可能性を強く感じています。ドラマチックかつエキサイティングに記されている壬申の乱、そしてまるで天武天皇を英雄扱いしている日本書紀。その天武の出自は不明瞭。しかし、その天武が本来は即位出来る立場になかったとすれば天下を二分した壬申の乱後、天武がすんなり飛鳥で即位出来たことにも疑問を感じます。武烈天皇で皇統が途絶え、「応神の５世孫」として越の国から迎えられた継体天皇は即位後、大和に入るまでに２０年もかかったことが記されています。天武以降、大和は混乱するどころか持統の藤原京を経て平城京造営など、国家としての形態を整えて行きます。そして天武の皇統が途絶え、天智系の天皇の時代になった平安時代以降も日本書紀は訂正もされず、葬られることもなく弘文天皇の存在も含め、天智系の不名誉を記したまま現在まで古代日本の「正史」として残っています。これらのことから、日本書紀は天武の正体を隠してはいますが、井澤氏が言うように「天武の正体を隠す」そのことが日本書紀が編纂された主目的ではないと考えざるを得ません。日本書紀は天智系・天武系を含めて全ての皇族のみならず当時の歴史の「真実」を知っていた全ての大和人にとって自分たちの立場を正統化する、都合のいい歴史書だったのではないでしょうか。何だか意味のわからないシメになってしまいましたが、神功皇后の謎と、聖徳太子の謎に行く前に次回は、私が考えている古代史の「ある仮説」つまり、日本書紀が隠している歴史について書きたいと思います。 .

2009.11.05

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古代天皇の在位

聖徳太子の謎に迫るシリーズ第３段は、古代天皇が在位した時代について書きます。なんだか話題がどんどん聖徳太子から離れて行くようですがしばらく辛抱しておつき合いください。前回も書いたように、初代天皇の神武が即位したのは紀元前６６０年。「天皇の歴史って古いんだなぁ」などと、感心してはいけません。真実である可能性が０％だとは言いませんが、限りなく０％に近いと断言します。紀元前７世紀と言えば稲作は始まっていたとされてはいますが、まだまだ縄文時代と言っても間違いではない時代なんです。神武天皇の即位を紀元前６６０年としたのは、天皇の歴史を古く装うために日本書紀が創作したものだと言われています。中国の讖緯(しんい)説に基づき、「辛酉は天命が改まる年」という考えから紀元前６６０年に設定したというのが定説のようです。初代天皇の即位を紀元前６６０年としたが、実際の即位時期はいつだったのか。そして天皇家の歴史を古く装うためにどういう創作が行われたのか。どれだけの天皇が即位時期に手を加えられているのか。それらを知る手がかりは、ほとんどありません。いろいろな観点から見て、私の個人的な考えでは少なくとも第２６代の継体天皇（５０７年即位）あたりからは、日本書紀の記述は実際の時代に即したものだろうと思っています。仮に神武天皇の即位が３世紀頃だとすると、いろいろと時代調整が必要になりますね。実際は継体天皇までの３００年足らずの間にいた２５人の天皇を紀元前６６０年からの１０００年以上の間に充てて歴史を記さねばならないのです。欠史八代と言われ、天皇の歴史を古く見せるために実在しない天皇を偽作したという説があります。私はたとえ伝承であったとしても、全ての天皇が実在したと考えています。理由は単純。実在しない天皇を創作するのなら、もっとたくさんの天皇を創作するのが自然だからです。継体天皇を起点とする理由はここでは省略させていただきますがB.C６６０年から継体天皇が即位した５０７年までの１１６７年間に２５人の天皇を充てたために、いろいろと不自然なことになっています。それは天皇の在位期間と年齢です。一例として、私の手元にある資料から１００歳以上の天皇をご紹介します。初代神武（１２７歳）、５代孝昭（１１４歳）、６代孝安（１３７歳）、７代孝霊（１２８歳）８代孝元（１１６歳）、９代開化（１１１歳）、１０代崇神（１１９歳）、１１代垂仁（１３９歳）１２代景行（１４３歳）、１３代成務（１０７）、１５代応神（１１１）、１６代仁徳（１４３歳）１人か２人ならばわからないでもないのですが、上記のような事態は誰が見ても不自然だと言えるでしょう。戦国時代あたりでは「人生５０年」と謡われていました。現代人の寿命から考えても、上記のような年齢は不自然ですね。もっと違和感なく天皇の歴史を古く装うのならば、少なくとも仁徳天皇までに１５人くらいの架空の天皇を創作する必要があるのではないでしょうか。ここ数年、私は神社巡りをするようになり古事記や日本書紀の神話をよく読むようになりました。古事記や日本書紀によれば、天皇は天照大神の子孫であると書かれています。神話によれば、高天原の天照大神の孫、瓊々杵尊(ににぎのみこと)がこの国を治めるために地上に降りてきました（天孫降臨）。神武天皇はその瓊々杵尊の曾孫ということになっています。そして古事記には、天皇が神の子孫でありながら寿命が（普通の人並みに？）短い理由がわざわざ書かれてあります。その部分を読んだ時、ふと新たな疑問が浮かびました。天皇の歴史を古く装うために、神武の即位年をB.C６６０年としたため以後の天皇の年齢を増やす必要があったことはよしとして、その「割り振り」に不自然さを感じたのです。※天皇の寿命に関しての神話は、私の神社ブログにご紹介した記事があります　　→　「貴船神社　３　中宮（結社）」もし私が日本書紀の編纂を任されて、「神武天皇の即位を紀元前６６０年にしろ」と命じられたら以後の天皇の年齢や時代の割り振りを上記のようにはしません。天皇の歴史を古く装うことだけが目的ならば、神武や以後数代の天皇の年齢だけを多くすれば簡単なのです。いかに天皇の寿命が神よりも短いと言っても、天皇は天照大神の子孫なのですから、初期の天皇は高天原の神々の資質を色濃く持っていたと言えます。神武から数代の天皇の年齢を３００歳くらいにしても「高天原の神の子孫であるからだ」つまり、そういう言い訳が出来るのです。しかし実際には日本書紀の編者たちは、そういう手法は採用しませんでした。上記のように、１０人以上の天皇の年齢を１００歳以上に設定ししかもその割り振りを１０００年に渡って分散させているのです。日本書紀の編者たちは、そうせざるを得ない理由があったと考えています。そのよんどころない理由というのが、神功皇后だと思っています。長々と書きましたが、これまでのことをまとめてみます。１．天皇の歴史を古く装うため、讖緯説に基づき神武天皇の即位をB.C６６０年とした２．そのため以後の天皇の年齢を引き上げて調整した３．１００歳以上の天皇が１２人（その他の天皇も高齢）いる４．天皇の在位時代の割り振りに不自然さ、疑問がある上記「４」の答えとなるのが、神功皇后の存在だと書きました。次回はその神功皇后について書くことにします。 .

2009.11.04

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日本書紀の謎

聖徳太子の謎についての第二段は「日本書紀」について。日本書紀は古事記と並んで、日本最初の歴史書であり我国の正史として知られる、古代史を知る上で貴重な資料です。以前は「日本書紀」に書かれた歴史こそが真実だと主張する学者が多かったそうです。しかし日本書紀は、天皇の指示で天皇家の歴史を書いたもの。現在は「天皇家にとって都合よく書かれている」という認識が一般的ではないでしょうか。２５年ほど前、山岸涼子さんの「日出処の天子」という漫画を読んでから厩戸皇子（聖徳太子）に興味を持ちました。以来ずっと歴史を趣味として学んでいますが、私の歴史への興味は古代史のみに偏っています。最近は歴史ブームだそうで、「歴女」という言葉も出来るほど若い女性の間でも歴史ファンが増えているそうです。しかし「歴女」と言われる女性たちのほとんどは戦国ファンだそうです。男性女性に関わらず従来の歴史ファンも、戦国時代や幕末・維新が好きだと言う人が多いのではないでしょうか。私は今でも記紀に書かれた時代から抜けられず、戦国や幕末・維新の知識はほとんど小学生並の知識しかありません。ずっと古代史を学ぶ中で、あまり学者が語らない疑問を持つようになりました。特に４、５世紀以前の古代天皇に関しては、歴史学者もある意味「手つかずのまま放置」した状態と言えるかも知れません。それは古代天皇のものとされる陵墓の調査が出来ないことも大きな原因となっているようです。最近になって、宮内庁管理の古墳への立入調査が許可されていますが発掘調査が実現するメドまでは立っていません。古代天皇の陵墓については、以前書いた記事がありますので興味のある方はそちらを読んでください。「天皇陵について　１」「天皇陵について　２」「天皇陵について　３」さて、私がこの約２５年古代史を学ぶ中で抱くようになった「日本書紀」への疑問。どう考えても、従来の歴史観では解決出来そうにない疑問があります。叡福寺・聖徳太子廟１．古代天皇が在位した時代についての謎初代天皇とされる神武天皇が即位したとされるのは、紀元前７世紀のこと。第１１代の垂仁天皇までは紀元前の天皇ということになっています。しかし現在、私たちは３世紀の邪馬壹国についてもよく知らないのです。そして第１６代の仁徳天皇あたりまで、１００歳を越える天皇が多数存在することも大きな疑問を感じます。　　２．神功皇后についての謎神代（神話）は別として、日本書紀は各天皇ごとに書かれています。　　唯一皇后の巻が書かれているのが神功皇后です。　　神功皇后だけがその功績を天皇並に記されている理由はなにか。３．厩戸皇子（聖徳太子）の謎前回書いたように、日本書紀において厩戸皇子の扱いは特別なものがあります。古代の皇子の活躍に関する記述は少なくありません。　　特に日本武尊は古事記ではヒーローとして扱われています。　しかし厩戸皇子は用明・崇峻・推古と三代の天皇紀に記載され、その活躍は政治のみならず聖人としての逸話も記されています。　　そしてその薨去に関する記述も異例の扱いを受けています。また、推古をたすけ国政を全て任されていた厩戸皇子が、飛鳥から遠く離れた斑鳩に宮を構えたことも不思議です。４．天武天皇についての謎日本書紀では概ね１天皇１巻という構成になっています。在位期間が短い天皇の場合、まとめて書かれている巻もあります。天武天皇だけは２卷にわたって書かれています。また、年齢も記載されていません。次回からは、上記の疑問についてひとつづつ考えてみたいと思います。 .

2009.11.03

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聖徳太子はいなかった？？？

法隆寺「聖徳太子はいなかった」などという説が、最近話題になっているそうです。「聖徳太子は蘇我入鹿だった」という説もありましたが、私は「聖徳太子はいた」と考えています。先日、全く聖徳太子と関係ない内容の日記のコメントで（笑）フローラル５５さんから「聖徳太子は架空の人物？」というご質問をいただきました。聖徳太子の実像については、ずっと書きたいと思っていました。実は少し前、箸墓古墳のことについて書いたとき一気に私の古代史観と、聖徳太子の実像についても書くつもりでした。しかし、邪馬壹国や弥生時代のことを書いたところでとん挫してしまいました。古代史物を書くと、つい力が入ってしまいひとつの記事を書くのにまる１日かかったりします。で、結局疲れて尻切れトンボになってしまったのです。今回は少し肩の力を抜いて、少しずつ簡単に書いてみようと思います。聖徳太子はいたか？私の考えは「聖徳太子はいなかったが、厩戸皇子というすぐれた皇子はいた」そう思っています。あまり詳しくは知りませんが、「聖徳太子はいなかった」説においてはどうやら聖徳太子という突出した人物を創造し、それを厩戸皇子に充てたと説いているようです。「聖徳太子はいなかったが、厩戸皇子というすぐれた皇子はいた」という私の考えと同じようなことですが、以下の２点において大きく違います。１．厩戸皇子の前に「すぐれた」という形容詞が付くこと２．聖徳太子という人物が、なぜ歴史上に創造されたのかという理由「１」に関して申しますと、根拠はありません。私は厩戸皇子から古代史の世界に引き込まれ、厩戸皇子ファンなので「すぐれた」という形容詞を付けないわけに行かないのです。従って、多少は厩戸皇子を贔屓目で見ることはご容赦いただきたく思います。「２」に関してですが「聖徳太子はいなかった説」では、「天皇家の尊厳のため」に皇族にすぐれた人物を必要としたからと説いているようです。私は以前、厩戸皇子をすぐれた人物として描くことは藤原氏の「正当性」を主張するためだと考えていました。乙巳の変（大化改新）で、突然登場する中臣鎌足。以後それまでの蘇我氏に代わって、藤原氏が権力を握りました。仏教を広め、天皇中心の政治改革を押し進めようとしていたのは実は蘇我氏であって、「乙巳の変」は時代に逆行したクーデターだったかも知れないと思っています。聖徳太子というすぐれた人物を創造することは、その即位を妨げた馬子、太子一族を滅亡させた入鹿を悪役に仕立て上げその蘇我氏を滅亡させて権力の座に着いた藤原氏の正当性を主張する。そう考えていました。その構図は、今でも的はずれだとは思っていませんが聖徳太子というすぐれた人物を登場させることにはもっと重要な理由があったと、今は思っています。厩戸皇子という人物は、実は日本書紀において異色の存在です。日本書紀は天皇を中心に記された歴史書なので当然、多くの皇子の記事が掲載されています。しかし、厩戸皇子の記載は突出しています。天皇を差し置いて、あれほど功績が詳細に記された皇子は他にはいません。しかも、厩戸皇子が亡くなったときの記事には「国中の人々が嘆き悲しんだ」との記載もあります。こんな記述は、天皇崩御の記事にも見られません。なぜ厩戸皇子は、そのように偉大な人物として記録されているのか。私の考えはこうです。日本書紀という歴史書において　　　　　　　推古天皇の御代にどうしても偉大な皇子が必要だったから次回は、そのことも含めて日本書紀の謎と疑問点、そして古代の天皇の謎について書きます。

2009.11.02

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「銅鐸文化の消滅」について

もうしばらく、妄想は続きます。今回は「銅鐸文化の消滅」の謎について。「文化の消滅」と言うと、外部からの侵略を受けたようにも思えます。しかし、果してそうだったのでしょうか。銅鐸の見つかった状況には、共通点があるようです。・個人が所有した様子がないこと。・集落やその近くでは発見されないこと。・山中などに、明らかに故意に埋められていること。異なる氏族などから侵攻を受けて、銅鐸は忽然と消えたと言われます。実際、銅鐸が発見された様子からあわてて地中に隠したのだという説もありますね。しかし、それではなぜどこでも同じ様な状況で埋められているのでしょうか。あわてて隠すのなら、何かに入れて床下などに隠すとか山中に埋めるとしても、いろいろな方法があったはずです。例えば土器に入れて埋めるとか、洞窟のような場所に隠すなど。侵略を受けたのなら、隠し方も様々だと思います。近所に市立博物館があるのですが、そこに復元された銅鐸の模型があります。かなり大きなものなのですが、実際に触ったり音を鳴らすことも出来ます。その音というのが、見たイメージと比べると実に「マヌケ」な音がします。ちょっと言葉が悪いですね。とっても、もの悲しい音なんです。銅鐸の製作は、当時としては高い技術を要したでしょうし、何より青銅は貴重品だったはずです。そのようなものが、なぜ埋められたままになっていたのか。銅鐸を使用した民族が、外的によって完全に滅ぼされたというのなら説明がつきますが、西日本各地でそのような大規模な侵略が起こったとは考えられませんしその痕跡も見当たらないようです。例えば奈良の唐子・鍵遺跡。ここは銅鐸の製造地でもあったと見られ、銅鐸の鋳型も発見されています。注目はこの一帯に鏡作坐天照魂神社をはじめ、鏡作と名の付く神社が多数残っていること。特に（※）鏡作坐天照魂神社という神社名は、他の同様の神社の例から見てもこの付近が「鏡作」または「鏡作部」と呼ばれる地名であったと思われます。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※かがみつくりにいますあまてるみたまじんじゃつまりこの地域では、銅鐸を製作していた技術者が銅鐸製作を止めて銅鏡を作っていた可能性が高いんです。銅鐸を製造していたこの地域で、後に銅鏡が作られた理由としては（１）征服した氏族が、被征服者の銅鐸製作工場を利用して銅鏡を作った。（２）技術者は貴重なので、征服者が彼らを銅鏡製作に利用した。（３）侵略などではなく、何らかの理由で銅鐸を作らなくなっただけ。などが、考えられます。畿内には大きな環濠集落がいくつかありましたが、それらを全て滅ぼしたなら上の「（１）」はあり得るかも知れません。しかし、各地で同じような状況で埋められているという謎が残ります。「（２）」の場合も同じですが、更に掘り返して再利用しなかった謎も加わります。私は「（３）」だと思っています。明日になったら考えが変るかもしれませんが、銅鐸について次のような妄想を抱いています。博物館にあった銅鐸の模型が、もの悲しい音をたてたからと言うわけでもないのですが銅鐸は古代人の、特に王家クラスや権力者の葬送、またはそれらの先祖を祀るような儀式に使われた物ではないかと考えています。儀式に使われたあと、銅鐸はそれぞれの国の聖地、祖先の霊が宿る地、神聖な方角などに埋められたのではないか。おそらくは非常に大切な儀式の道具として作られ、最後には埋めるのが目的だったから、各地で同じ様な状況で発見されたのではないかと想像しています。つまり銅鏡は何らかの緊急な理由で埋められたのではなく、最初から埋められることが目的で作られたもの。そして段々と巨大化して行った形跡もある銅鐸が、突如作られなくなったのは葬送の形態が大きく変化したからではないかと考えます。銅鐸のかわりに作られるようになった物としては、よく銅鏡だと言われます。私はそうではなくて、銅鐸のかわりに造ったのは巨大な墳丘墓だと思っています。大仙山古墳（仁徳天皇陵）Google Earthより日本独特のものである、前方後円墳。あの形が、巨大化した銅鐸ではないかと思うのです。前方後円墳は、円墳に祭祀を行うために後方部を付けるようになったとも言われます。注目したいのは、あの鍵穴のような墳丘部ではなくて周濠（堀）も含めた全体像です。（そう言えば、周濠のある方墳や円墳ってありましたっけ？）私には、どうしてもあの形が銅鐸に見えてしまいます。銅鏡の分布と、前方後円墳の分布。なにか、重なる傾向がないかとも思うのですが。ただし銅鏡の分布については、未発掘の物もあると思うので単純には比較できませんが。堺市役所展望ロビーから見た反正天皇陵次回は、箸墓古墳の被葬者と日本書紀の謎についての妄想ワールドです（笑） .

2009.06.12

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邪馬壹国の東征はあったか

夏菜さんとレーナマリアさんから、九州から近畿への東征があったのではないか。そんなコメントをいただきました。よく考えてみたら、箸墓古墳をきっかけにして邪馬壹国を書くつもりでした。ちょっと話題から離れますが、「東征」について書いてみようと思います。東征であったか、移住であったかは不明ですが、弥生時代において、世の中が大きく変った痕跡がいくつか見られます。・「前末中初」　　　北九州において、弥生時代前期末と中期初頭の遺跡の出土内容に大きな相違・断絶　　が見られること。・「（防御性）高地集落」の出現　　瀬戸内海沿岸から大阪湾にかけて、烽火（のろし）台を持つ高地集落などがある時期　　に出現する。「逃げ城」的なものだけでなく定住型の集落も確認されている。　　稲作を中心とした弥生時代の集落としては不自然。　　広範囲で何かの脅威があった可能性も。・「銅鐸文化」の突然の消滅　　近畿から東海を中心に多く出土している「銅鐸」は、一体どういう「道具」だったのか謎　　の銅製品。その出土状況から、個人が所有したものではない模様。銅鐸はある時期　　を境に突然消滅。記紀にもその記述は一切なく、続日本紀などに「宝鐸」という記述で　　発掘された記録のみ。かつて大きな話題になった「吉野ヶ里遺跡」では、戦いで命を落としたと思われる遺体が数多く埋葬されていました。魏志倭人伝などに書かれた「倭人争乱」を思わせる発見でしたね。では、上記３つの「変化」について、簡単に私の妄想に近い考えを書きます。あくまでも私の個人的な想像ですが、上記のうち「前末中初」は「天孫降臨」で「（防御性）高地集落」の出現は、神武の東征にあたるかも知れないと思っています。「天孫降臨」の神話は、高天原から天照大神の孫であるニニギノミコトが葦原中國（あしはらのなかつくに＝地上）を統治すべく天降る話です。この高天原の「天（あま）」とは、「海人（あま）」のことではないかと考えています。ブログ仲間の素盞嗚さんは、彼らは対馬海流に沿った島々の一族だと説いていました。別のところに書きましたが、国生み神話にある島々には別称があるものがあるのですがほぼ対馬海流に沿った島々には、その地名に「天」という字が付いているのも興味深いと思います（本州を指す「天之御虚空豊秋津根別」は例外）。地名に天が付く島→龍水御朱印帳「つきよみのみや」稲作が進み人口が増えると、新しい土地の開拓が必要になったことでしょう。土地はたくさんあったでしょうが、水利など稲作に適した場所の確保は容易なことではなかったと思われます。新しい土地を求めての移住の波が、やがて神武の東征のような話になったのかも知れません。「（防御性）高地集落」の出現は、そういった九州勢の移民たちが脅威となったことの表れでしょうか。しかし、大きな戦闘や「東征」という言葉が相応しいような、九州勢の征服が繰り返されたわけではないと思っています。もちろん「高地集落」の出現を見れば、小規模な戦争はあったかも知れません。しかし新天地を求めて移動するパイオニア（神武たち）たちは、小競り合いと融和を繰り返しながら、新しい土地にとけ込んで行ったものと私は想像しています。当然のことではありますが、古代の歴史は記紀などでは近畿中心に書かれています。神武は大和を目指して、長い年月をかけて東進したことが書かれています。しかし、ふと考えてみると「なぜ、大和なの？」そんなことを、ずっと疑問に思っていました。ひょっとしたら、九州から移動した神武たちは大和に頼れる人（氏族）がいたのではないか。そんなことも想像しています。ですから、神武の東征は「東征」ではなく、安息の地を求めた移住だったかなとも思います。そう思う理由は、ニギハヤヒの存在です。古事記では、ニニギノミコトが降臨したあと、ニギハヤヒはその後を追いかけて河内に降りたと書かれています。神武もニギハヤヒもルーツは同じ「海人族」だったのです。古事記では、神武とニギハヤヒが「天孫」である証拠を見せ合う場面が書かれています。ニギハヤヒは、神武たちよりも早く移住した一派だったかも知れませんし、天孫降臨（海人族の九州本土侵攻）と前後して、若狭など日本海側から別ルートで入った一族かも知れません。なんだか、とりとめのない話になってしまいました。邪馬壹国や神武は、東征をしたと言うより、人口の増加や半島情勢などが原因で、東へ東へそして未開の地へとその一部が移住を繰り返したのではないでしょうか。そのうち、大和に定住した者たちが天皇家になったのかも知れません。それが「天族」による大和の征服ではなく、共存する中での発展だったとすれば大和に出雲系の神々が今なお祀られていることや、天皇家の皇祖神である天照大神が、大和に鎮まることが出来ず伊勢に遷座したことも説明がつくのです。長くなってしまったので、銅鐸はまた明日にでも。銅鐸文化は消滅したわけではない・・・と、いう妄想。 .

2009.06.10

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魏志倭人伝

前の日記からの続きです。魏志倭人伝の中で、最も話題になるのは「邪馬壹国への行程」の部分。あまりこの部分にこだわりたくはないのですが、ざっとおさらいして私なりの解釈、疑問を提示させていただきます。まず魏志倭人伝に書かれてある行程をまとめます。帯方郡（中国・魏）ー南東水行７０００里 → 狗邪韓国ー渡海１０００余里→　対馬国　→ 南渡海１０００余里 → 一支国ー渡海１０００余里 →末廬国※a東南陸行５００里 →伊都国ー南東１００里 →奴国ー東１００里 →不弥国※b投馬国･･･南水行２０日※c邪馬壹国･･･南陸行１月水行１０日※d郡→女王国（帯方郡→邪馬壹国）１２０００余里私の解釈から先に申し上げます。邪馬壹国は伊都国のすぐ南にあった。このことは「翰苑」という資料からも伺い知ることが出来ます。以前は宇佐ではないかと思っていました。一方畿内説では「※c」の部分の「南」を「東」の誤りであるとして、北部九州から陸行１月水行１０日の行程を東行。邪馬壹国は近畿だと主張。あまりにさらりと言われるので見逃しがちですが（笑）、資料に書かれていることを都合よく「南→東」と勝手に変えて解釈するのはいかがなものでしょうか。古代、大陸では「倭国は南方の国」というイメージがあったから、三国志の（魏志倭人伝）の編者・陳寿も東を南と書き換えたと言う推理なのですが･･･。さらに私は以下の３点について疑問に思うのですが、近畿説ではどう解釈するのでしょうか。ちょっと素朴な疑問も含んでいますが。（１）※aの部分。魏の使者は末廬国で船を降りて、伊都国へは陸行しています。　　畿内説ではもう一度１０日ないし２０日水行することになりますが、　　いったいどこから誰の船に乗ったと言うのでしょうか。　　私が魏の使者ならば末廬ではなく、せめて難波津まで自分の船で行きます。（２）※cの部分。他は距離を里数で説明しているのに、なぜ邪馬壹国への行程　　だけ日数なのでしょうか。しかも途中にあったはずの大国、吉備などについて　　の記述がないのも不自然です。（３）※dの部分。郡から女王国まで１２０００余里。しかし明記されている里数　　は伊都国までで既に１０５００里と「余里×３」　　それに奴国、不弥国への２００里も合わせると、好意的に解釈しても　　残る里数は１０００里程度。これでは到底、北部九州から近畿には行けない　　のではないでしょうか。　　行程の解釈は、素盞嗚さん　が以前書いておられます。興味のある方は、その記事を探して（笑）読んでみてください。それから、先日「邪馬壹国」という表記について触れましたね。魏志倭人伝が載っている資料をお持ちの方は、原文を確認してみてください。お持ちでない方も、ネットで検索すれば簡単に見つかります。→　参考サイトそこには女王国を「邪馬壹国」と表記してあると思います。我々は普通に「邪馬台国」という表記を使っています。どんなに古いワープロでも、きっと「やまたいこく」は「邪馬台国」と一発で変換するくらい一般的になっています。しかし「邪馬台国」とするには、実は「邪馬臺国」でなければなりません。魏志倭人伝に書かれてある「邪馬壹国」を新字体にするのなら「邪馬壱国」としなければなりません。「邪馬台国」とするのは、これも近畿説に通じる「ヤマタイ」≒「ヤマト」そういう意志の表れでしょうか。ただし、「臺」と表記されている資料が皆無というわけではありません。しかし、近畿説は歴史資料の「南」を「東」に換えて解釈し「邪馬壹国」を「邪馬臺国」だと解釈するという少々強引な論理の上に成り立っていると言えないでしょうか。私も近畿に住まう者として、邪馬壹国が近畿にあって欲しいと願う気持ちが全くないわけではありません。しかし、不明瞭な部分は、都合よく解釈するのではなく自然にかつ合理的に想像しなければいけないと思います。近畿説を信じている方は、もう一度上記（１）～（３）の疑問に対し、論理的な説明を試みてください。近畿説（または邪馬壹国が九州以外の場所にあったとする説）の観点から上記の疑問に不自然でなく論理的解釈が存在するのなら教えていただきたいです。以前、ネット上で近畿説の方と論争になってしまったことがあります。上記の疑問をぶつけると、「九州説には無理がある」と話をすり替えるばかり。トドメを刺す前に逃げられてしまいました（笑）おだやかじゃない話ですが、論争は本意ではありません。近畿説の方、そうでない方、邪馬壹国のことをあまり知らない方でも疑問があればおっしゃっていただきたいです。いっしょに考えてみましょう。それから「※c」の部分についての補足をします。中国の歴史書というのは、日本書紀や古事記と大きく異なる点があります。それは後の王朝の人が、滅びた王朝の歴史書を編纂しているということです。それに比べると日本書紀などは、時の権力者によってその過去が編纂されているわけですから、（天皇家などにとって）都合の悪いことは隠蔽されているか、改ざんされている可能性がありますね。作家の井澤元彦氏は、戦時中の大本営発表にたとえておられます。つまり中国の歴史書は、時の権力者の意向を気にせずに客観的に歴史を編纂していると言えるのではないでしょうか。そしてその編纂者は、おそらくは皇帝からも認められる超エリートインテリだったと思います。編纂者たちは当然ながら、過去の歴史書に精通し大いに参考にもしていたことでしょう。「隋書」の倭人伝にこんなことが書かれています。『夷人（倭人）は里数を知らず。ただ日をもって計る』「あそこまでは、半日の距離ですよぉ～」などと言ってた倭人を蔑んでいますね。しかも「夷人」という言葉を用いています。そもそも、「邪馬壹国」にしても「卑弥呼」にしてもその表記は失礼なものですよね（笑）中国には表音文字がないので、外国の言葉も表意文字である漢字を用います。しかし、「や」にしても「ひ」にしても、もう少し違った文字もたくさんあるはずですよね。ここらへんが、中華思想の表れなのでしょうね。話がそれてしまいました。隋書にある『夷人（倭人）は里数を知らず。ただ日をもって計る』という部分。隋書が書かれた時代と魏志倭人伝の三国志の時代とは３００年ほどの開きがあります。しかし隋書の編纂者は、過去の偉大な歴史家が「陸行１月水行１０日」という表記をしていることを知っています。つまり、あれがもし「日をもって計る」ことだったとすれば、「日をもって計る」ことが「夷人」の行為だと書くでしょうか。３００年の開きがあるので参考にするには強引かも知れませんがやはり「陸行１月水行１０日」は、「既に里数で説明済み」である上での表記だと思うのです。つまり「陸行１月水行１０日」は九州から邪馬壹国までの距離ではなく、帯方郡から邪馬壹国までの日程だと思います。それから先に書いた「トドメを刺す」の件ですが（笑）魏志倭人伝には、邪馬壹国への行程の部分のずーーっとあとに次のような一節があります。「女王国の東　海を渡ること千余里　また国あり　皆倭種なり」つまり女王国の東には海があって、その東１０００余里に国がある。その国の人々もみんな倭人（日本人）だということですね。邪馬壹国が北九州や九州東岸にあったとすれば、東にあるその国は四国。従って邪馬壹国九州説でも、九州内陸部、熊本、長崎などは、上記の一節は説明出来ません。一方残念ながら、大和には現在も過去にも海はありません。それでも近畿説を唱えるのならば、上記の一節も「間違いである」と解釈するしかありません。魏志倭人伝の中の「南」を「東」に換えて解釈し「邪馬壹国」を「邪馬臺国」だと解釈した上に、さらに魏志倭人伝の内容を否定するとなると、ちょっと論理的な解釈とは言い難いのではないでしょうか。その他にも、近畿説では不自然と思われる部分があるのですが、長くなりますので、今回はこれくらいにしておきます。魏志倭人伝について、上記のことがうまく解決出来ないかぎり近畿説を信じるわけにはいかないと思うのですが、いかがでしょうか。 .

2009.06.04

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箸墓古墳について

前の日記からの続きです。まずはお断りを。私は邪馬壹国畿内説にケンカを売るつもりはありません。古代史ファンとして、真実に近づきたいだけなのです。論争するつもりはありません。畿内説の方も、古代史にあまり詳しくない方も、出来ればご質問等いただくとありがたいです。自分の考えを見直すことが出来ますから。どんなことでも、基本的なことでもかまいません。私たちマニアックなおじさんは、大胆な考えに走って基本的なことを忘れているというようなことが多々あるのです。さて、箸墓古墳について。奈良県桜井市にある、全長２７８ｍの前方後円墳。孝霊天皇の皇女、倭迹迹日百襲姫命墓（やまとととひももそひめ）に比定され現在は宮内庁によって管理されています。つまり、発掘調査どころか学者でさえも立ち入ることが出来ない古墳です。倭迹迹日百襲姫命大市墓とされる根拠は日本書紀の記述です。倭迹迹日百襲姫命は予知能力があったとされ、巫女またはシャーマン的な存在だったようです。　　　三輪山の神、大物主神の妻となったが、その神が蛇の姿だったことに驚き、　　　箸で陰部を撞いて亡くなった。　　　それで大市に葬った。ときの人はその墓を名付けて「箸墓」と言った。　　　その墓は昼は人が造り、夜は神が造った。大坂山の石を運んで造った。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～日本書紀～この記述から、箸墓は相当立派な墓であったことが想像出来ます。桧原神社から麓に向かう途中、この箸墓古墳が正面に見おろせます。この付近が「大市」ならば、箸墓古墳以外には「神が造った」とされるほどの古墳は見当たりません。他の皇族で、付近に陵墓を造った記録はありません。天照大神の御杖となった豊鋤入姫命（とよすきいりひめ）が、近くのホノケ山古墳に葬られているという伝承があるのみです。こうなると、箸墓古墳の被葬者は倭迹迹日百襲姫命で間違いないと言いたいところなのですが、決定的な問題があります。日本書紀の記述通りに歴史を見れば、倭迹迹日百襲姫命が亡くなって墓を造ったのは崇神天皇１０年のこと。西暦で言えば、紀元前８８年のことなんです。稲作こそ定着した時代ではありますが、青銅器が伝わったかどうかといった時代のことです。箸墓古墳の築造時期どころか、古墳時代からも大きくズレてしまいます。皇女の墓にしては大き過ぎるのではないかという、疑問もあるでしょう。箸墓古墳が倭迹迹日百襲姫命だと言っているのは宮内庁だけで、学者たちからははっきりとした説明が聞かれません。この古墳が卑弥呼のものでないのなら、いったいこの巨大な墓の被葬者は誰なのか。もし卑弥呼の墓だとしたら、なぜ、記紀にひとことも卑弥呼についての記述がないのでしょうか？そして邪馬壹国と大和天皇家との関係は？？私が邪馬壹国近畿説を採用するとしても、記紀にその記述がないことを説明することが出来ません。実は昔、私はどちらかと言えば畿内説を信じていました。当時は上記の疑問に対し、次のような仮説を考えていました。・元々の日本の支配者は邪馬壹国の卑弥呼であったが、大和天皇家が滅ぼした。　記紀では大和天皇家が太古の昔から日本を治めていたとして歴史を作り、邪馬壹国　の存在も卑弥呼の存在も歴史から抹殺した。・大和天皇家は邪馬台国から発展したものだが、天皇家の歴史を古く装うために　卑弥呼を天照大神という皇祖神に神格化した。邪馬台国という記述は古代中国の　ものであって、それは「ヤマト国」という国名にあてた字であった。自分で書いていてちょっと恥ずかしくなります。どちらもあり得ません。私が考えていたことと多少違うかも知れませんが、邪馬壹国畿内説をとるならば１）大和天皇家は邪馬壹国から発展した２）邪馬壹国は大和天皇家によって滅ぼされた３）邪馬壹国と大和天皇家は別の国として並立していた４）邪馬壹国は近畿にあったが、その存在を大和天皇家は知らなかった上記のうちどれかでなければなりません。そして、記紀に邪馬壹国も卑弥呼も記載されていない理由も説明する必要があります。日本書紀の編者は、邪馬壹国のことも卑弥呼のことも知っていました。断言出来ます。そして、その存在を隠そうとしたのではないことも伺えます。それどころか魏に使者を送った倭の女王の存在を日本書紀の編者は、非常に苦労してわざわざ表沙汰にしているフシがあるのです。天皇家にとって不都合にならないように、うまく（そして苦し紛れに）書いています。日本書紀の不自然な所を考慮しながらこの部分を読むと、邪馬壹国は大和にはなかったことが想像出来るのです。そのことに関しては後述します。私は学者でも研究者でもなく、無責任でお気楽な古代史ファンです。ですから理論武装もしませんし、証明もしません。しかし、不自然なものを廃して自然に考え合理的でないものを廃しながら、無理のない可能性を選択して邪馬壹国と卑弥呼について考えてみたいと思います。上記の日本書紀のことが気になるとは思いますが次回はちょっと日本書紀から離れて魏志倭人伝について書いてみようと思います。 .

2009.06.04

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箸墓古墳は卑弥呼の墓か

邪馬壹国などの、古代史の謎。古代史がお好きな方でも、その大半は独自の説を展開しているわけではなく好きな作家や信用している論者の説を信じ、活字になったものを真実に近いものとして取り入れているのではないかと思います。かく言う私も優柔不断な性格のため、新しい説に出会い、斬新な説を展開する書物を読むたびに持論を変えてきました。古代史マニアと称する私でもこうなので、「マニア」でない人にとっては、大学教授や有名論者の本、そして何より新聞などの報道に翻弄（？）されるのも仕方ないことだと思います。結論の出ないまま長年の間、学者や論者、そして古代史ファンの間で論争が続いている「邪馬壹国」に関する問題。私はいつも「邪馬壹国」と表記しますが、このことにお気づきの方は同じ考えを持つかどうかは別として、マニアックな古代史ファンだと思います。通常は「邪馬台国」と表記します。今回「箸墓古墳」について書くことにしたきっかけは、先週金曜日の夕刊の記事。まずは記事を引用します。　　「卑弥呼の墓」との説がある箸墓古墳（奈良県桜井市）の築造時期について、国立　　歴史民族博物館（千葉県佐倉市）の研究グループが２４０～２６０年とする調査結果　　をまとめた。３１日開かれる日本考古学協会の総会で発表する。この年代は、魏志倭　　人伝に「卑弥呼以て死す、大いに冢（ちょう）を作る」と記載された２４７年頃と時期が　　一致し、倭の女王・卑弥呼がいた邪馬台国の所在地論争にも影響を与えそうだ。　　同グループのの春成秀爾・同博物館名誉教授は「これで箸墓古墳が卑弥呼の墓であ　　ることは間違いなくなった。生前から墓をつくり始めていたのだろう」と話している。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　讀賣新聞　５月２９日夕刊この記事を読んで、みなさんはどう思われたでしょうか。卑弥呼や邪馬台国について、どんな印象を持たれたでしょうか。しかし、ひどい記事です（笑）上記の文章を読めば、大半の人が次のように考えることでしょう。・箸墓古墳は卑弥呼の墓である・邪馬台国は大和地方にあった全国紙の新聞社は概ねどこも「邪馬壹国近畿説」がお好きなようです。以前は「邪馬台国が見つかった」「卑弥呼の国か？」などと露骨な表現で、大和地方での発掘調査結果の記事を書いていました。さすがにそれは公平性を欠くと指摘を受けたのでしょうか、今回の記事も「卑弥呼　死亡時期と一致」という見出しになっています。しかし代わりに、大学教授やら考古学者のコメントという形をとって上記のような記事を書いており、相変わらず内容は近畿説に偏っています。一応「誤差ある　反論も」という小見出しもありますが、記事の最後にあって誰も気づかないような場所に掲載されています。ちょっと、自分の考えを整理するためにも久しぶりに邪馬壹国について考えて行こうと思います。長くなるので、今回は上記記事についてのみ。上記記事では、箸墓古墳が卑弥呼の墓であるかのような印象を受けますね。しかし、冷静に記事の内容を見てください。同古墳を卑弥呼の墓とする根拠は、この記事で見る限り、築造の年代が卑弥呼の時代だったということのみ。３世紀はじめの大和に、これだけの古墳を造る権力者が存在した事実はまぎれもない事実としても、それを卑弥呼と結びつけるのはあまりにも強引な論理。むしろ、箸墓古墳は卑弥呼の墓ではない傍証の方が多いのです。次回はその箸墓古墳について、日本書紀の記述などを参考に書きます。 .

2009.06.03

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緊急告知！！！

古代史ファンの皆様も、そうでない方々も今夜９時放送の、NHKスペシャルは必見ですよ。「法隆寺金堂再建の謎」およそ２０年前、同様の番組が放送されました。ビデオに録画して、何度見直したかわからないくらい繰り返し見ました。その大切なビデオは、１０年ほど前に引っ越しのゴタゴタで紛失してしまいましたが。でもあの時の放送内容は、今でもよく覚えています。「昭和の資材帳」作成にともなう調査で、いろいろな発見がありました。そんな発見を紹介しながら、教科書にはない法隆寺像が放映されたのです。例えば阿弥陀」如来像の台座は、元々は中宮寺・弥勒菩薩像の台座であった可能性があることや本尊の台座の裏に大陸の役人らしい落書きの絵が見つかったこと。金堂は国家的な重要な建造物でありながら、見えない所で粗悪な造りであったことなど。特に金堂の謎は、とても興味深いものです。例えば柱の礎石。きちっと整形された石ではなく、ただ表面を平にしただけの石です。部材の一部に、転用材が使用されていたこと。金堂を造るために加工された木材ばかりではなく、他の建築物に遣われていた木材を使用した箇所があるのです。また、見えない場所ではありますが穴の空いた部材も発見されました。これは木材を運ぶ時、筏のように曳航するための穴と考えられています。通常は穴の部分は使用されません。当時の番組では、「法隆寺は非常に急いで造られた」と結論付けていました。法隆寺は聖徳太子の時代から100年以上あとに再建されたと考えられています。しかし五重塔の芯柱は、年輪年代法　によると584年に伐採された木材であることがわかりました。584年というと、聖徳太子はまだ10才くらいです。その他、釈迦三尊の光背銘や藤ノ木古墳との関係などが語られていました。藤ノ木古墳（昨年５月）当時の私は、あの放送を見て悩みました。いったい法隆寺は、どんな意味を持つ寺なのだろうか・・・。梅原猛氏の「隠された十字架」を読んで以来、法隆寺は厩戸皇子（聖徳太子）鎮魂の寺と考えるようになりましたが金堂や芯柱の謎は謎のままです。最近は、法隆寺は別の場所から移設されたと想像しています。先日久しぶりにブログに復帰された素盞嗚氏は、法隆寺は九州王朝の寺が移設されたと考え夢殿本尊の秘仏・救世観音像は「隋書」に書かれた「アメノタリシヒコ」の像だとおっしゃってます。ナイショの画像私は「九州王朝説」のお勉強が足りず、自信を持って言えませんが概ね素盞嗚氏の考えの通りだと思っています。魏志倭人伝に記されている邪馬壹国への行程。イカサマ的な解釈で「近畿説」がとなえられたりしていますが、あの部分だけで論争する理由が判りません。魏志倭人伝の中に、「女王国の東　海を渡ること千余里　また国あり」とあるので邪馬壹国は大和ではあり得ないのです。大和には海がないのですから。魏志倭人伝のある三国志の他、中国の歴史書を比較すれば７世紀までの「倭国」は九州であると考えざるを得ません。「隋書」には「倭国は百済・新羅の東南三千里にあり」と書かれ倭国風土の説明では「阿蘇山がある」と記されています。隋の時代でも、「倭国」とは九州のことを示していると思われるのです。では大和朝廷は何なのか。古事記・日本書紀に書かれている歴史をどう解釈するのか。・・・　　　・・・　　　　　　・・・うまく言えません（笑）もう少しお勉強してから書くことにします。ところで、「アメノタリシヒコ」の「アメ」って、記紀に書かれた神話に残る、謎解きのキーワードのような気がします。天照大神、天之御中主神、天宇受売命、天児屋根命、天手力男命などの高天原系の神々にある「アメ」「アマ」そして「国生み神話」にある九州沿岸の島の名の特徴。→　参考：「つきよみのみや」これらも九州と関係があるような気がしています。ちょっと話が逸れてしまいましたが、最新の調査結果に基づく法隆寺の謎解きが、今夜見られるかも知れません。突然「九州王朝」なんて言われても、ピンと来ないことだとは思いますが「法隆寺は移設されたものであるという可能性」頭の隅っこにこのことを置いてご覧になると、今夜の「NHKスペシャル」は趣が深く感じられるかも知れません。もちろんNHKでは、九州王朝も移設も話題に出ないとは思いますがひょっとしたら藤ノ木古墳の被葬者が天皇であった可能性があるというそんな話題は出てくるかも知れません。20年前の番組（調べてみたら’８５年１１月放送でした）のイメージが強いのでこんな話になってしまいましたが、もしかしたら全くイメージ違いの番組かも知れませんが・・・。でも、メチャクチャ楽しみです。ビデオテープを買いに行かなくちゃ・・・。（DVDは再生専用のものしか持ってないんです・・・） .

2009.03.15

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2008も古代史オヤジでした

早いもので、12月も既に中旬。2008年もあと僅かとなりました。１日はとっても長い（特に平日）のに、どうして１年が経つのは早く感じられるのでしょうか。今年もいろいろありました。前回は写真で１年をふり返ってみましたが、今回は古代史ものでふり返ってみます。今年も古代史に関する発見や出来事がたくさんありました。昨年解体された高松塚古墳石室の壁画一般公開もありました。高松塚古墳やキトラ古墳の壁画の剥ぎ取り関連のNEWSは、今でも時々報道されています。２月には58年ぶりに行われた陵墓への立ち入り調査。実施されたのは奈良市にある神功皇后陵（五社神古墳・ごさしこふん）でした。同じ２月、明日香村の真弓鑵子塚古墳のドーム型石室の構造が判明。その他、万葉歌が記された木簡の相次ぐ発見や新薬師寺の巨大な金堂の基壇跡の発見もありました。そういった発掘現場の現地説明会などに参加したり何度か遺跡巡りにも行ったので、ちょっとふり返ってみます。古代史、遺跡と言えば明日香村。厩戸皇子（聖徳太子）への興味から古代史にのめり込んだ私にとっては明日香村は聖地のような場所です。あ・・・また画像を間違えました。聖地であるはずの明日香村なのに、しばしば脱線して宴会をやらかすイケナイわたし。「明日香プロ」を自認する私でありますが、意外にも今年は１回しか明日香村に行ってません。３月２９日に参加した甘樫丘東麓遺跡の現地見学会。ここは日本書紀にも記された蘇我入鹿の「谷の宮門」と呼ばれた邸宅に関連がある可能性があります。蘇我入鹿の邸宅はまだ確認されていません。ここで発見されたのは倉庫などの建物跡。「谷の宮門」発見もそう遠いことではないかも知れません。 GWに行ったのは藤ノ木古墳石室の一般公開。築造は６世紀後半と言われています。被葬者は不明ですが、私は崇峻天皇だと思っています。しかし、掘り返した地面を見てワクワクしたり墓の中に入って興奮する・・・。自分のことながら古代史ファンって、ホントにヘンだと思います。今年一番のBigイベントは、ナント言ってもこれ。出雲大社本殿の一般公開。本殿に上がることが出来たことは、一生の思い出になりそうです。次に公開されるのはおそらく60年後になるとのこと。神社マニアとしても、古代史ファンとしても出雲の空気に触れたことは大きな意味と気づきがありました。本や映像、ネットなどの資料だけではわからない何かが「現地に立つ」ことによって感じられたように思いました。そして先日の御廟山古墳一般公開。宮内庁管理の陵墓を、こんなに間近に見ることが出来る日が来るとは想像もしていなかったことです。興味のない人にとっては理解出来ないことでしょうが、私はこの誰のものかわからない墓を見て、しかも掘り返してる墓を見て興奮しました。こうやって文章にしてみると、古代史ファンってほとんど変態のような気がしてきました。しかし、世間的にもまあまあのNEWSだったらしく報道関係者の数もすごかったです。私たち夫婦も、どこかの局のNEWSで映像が流れたり新聞に写真が載っていたかも知れません。家内はとあるWEBニュースでは、バッチリ写真に撮られてました。ple嫁、初公開です（しかられるから、ナイショです）吉野で「南北朝って知ってるか」と聞くと「南北朝鮮やろ」と、自信満々で答えた家内。ロクに歴史の勉強をしていなかったのでしょうが、40を越えてから古墳の写真を必死で撮る自分の姿など、若い頃には想像もしていなかったでしょうね。 .

2008.12.14

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御廟山古墳一般公開

世界文化遺産の国内暫定リスト入りが決まっている百舌鳥・古市古墳群。百舌鳥（もず）古墳群のほぼ中央に位置する、堺市北区の陵墓参考地・御廟山古墳が初めて一般公開されました。この現地見学会は本日29日と30日の二日間。宮内庁が管理する陵墓および陵墓参考地は、明治時代以降、発掘調査はおろか立ち入ることすら許されていませんでした。昨年１月、宮内庁は「研究者の陵墓（宮内庁管理）への立ち入りを、条件付きで許可する」と発表しました。その後、五社神（ごさし）古墳（神功皇后陵）と伏見城（明治天皇陵）の2カ所の調査が日本考古学会など歴史関係の１６の学会によって行われました。今回の一般公開は、その流れの中でのものではなく、濠水の浸食によって崩落が進行している墳丘部・裾回りの修復のため、宮内庁と堺市が共同で行った事前調査の実施に伴い実現したものです。実はこの古墳、墳丘部は宮内庁の管轄なのですが、周濠部は堺市の管轄。宮内庁管轄の墳丘部への立ち入りは出来ませんが、堺市の調査区域に仮設通路を設け、墳丘部を間近に見ることが出来ます。 Google Earth よりマウスで書いた汚い字で恐縮ですが、「A」と「D」の部分に仮設の橋が架けられ、A→Dへ続く通路が今回の見学コース。前述のように、宮内庁の調査区域には立ち入ることは出来ませんが墳丘の様子を間近に見ることが出来ました。見学者は、こういう通路から墳丘部を見て回ります。この古墳は、仁徳天皇の妃を葬ったものあるいは応神天皇初葬地（応神天皇陵は羽曳野市にあります）の可能性があるとして、明治34年に「陵墓参考地」に指定されました。明治時代以前は、近くにある百舌鳥八幡宮の奥の院だったそうです。宮内庁管理の陵墓が、初めて公開されるとあって報道陣の数も多く、ヘリからの取材もあったようです。私が参加した見学会は、初日の第一班（200人程度ずつに分けて公開）だったため新聞社や放送局の記者も多く帯同していました。中には「神社新聞」の腕章を付けたカメラマンもいました。今回の一般公開は、神社庁も注目しているのでしょうか？けっこう新聞社のカメラに写ったと思いますし、TVカメラの前もよく通ったのでNEWSなどで私の姿が放映されたかも。小さくてわかりにくいですが、讀賣新聞夕刊には家内いわく私らしき人影が写っているとか（自分ではよくわかりませんが）。その家内は、ある新聞社のWEB　NEWSではバッチリとアップで写っていました。この２つの画像は、古墳画像「B」のあたりの調査区域のもの。「埴輪列」の部分には円筒形の埴輪が並んでいました。足元の堺市調査区域には、崩壊によって転落した葺き石や埴輪片が見られます。上の３枚の画像は、「C」のあたりのもの。「B」と「C」の間の部分、前方部と後方部の境目あたりの突起した箇所は「造り出し」と呼ばれます。ここでは祭祀が行われたと想像されていて、家形や冑形、蓋形のどの埴輪が多く出土するのだそうです。通常、墳丘の両側にあるのですが御廟山古墳には南側片方にしかありません。「江戸時代の盛り土層」は「※文久の修陵」によるものではなく新田開発によって生じた水利の不足を補う目的で、濠を広げた際の土を墳丘部に盛り上げたものだと解釈されているようです。周濠は江戸時代、農耕用の溜池として利用されていたわけですね。斜面からむき出しに見える円筒埴輪。破片だけでも持ち帰りたい衝動にかられました（笑）。でも実際は、仮設通路からは手が届きません。墳丘部には、立派なクスノキが数多く見られました。樹齢数百年とも言われるクスノキが、これほど多くある場所は珍しいそうです。場所が場所だけに、手つかずの状態で保存されているのでしょうね。よくよく考えてみれば、墓を見て興奮するのもどうかとは思いつつ貴重な体験をさせていただきました。この一般公開は、明日（30日）も行われます。見学受付場所はJR阪和線「百舌鳥駅」からすぐ。仁徳天皇陵の南にある「大仙公園」の催し広場にて午前9時から見学整理券が配布されます。直接　御廟山古墳に行っても見学することは出来ませんのでご注意を。百舌鳥八幡宮 ※「文久の修陵」　江戸時代後半、国学の高揚により天皇家の陵墓探し（けっこう不明のものが多かった）と、一部修復工事が行われた。このことについては、近々書こうと思ってます。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　参考：　「天皇陵について　１」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「天皇陵について　２」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「天皇陵について　３」 .

2008.11.29

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古代史妄想　３

須佐之男命と蘇我氏についてですが、先日「宗我坐宗我都比古神社（そがにますそがつひこ）」に行きました。ここのご由緒などを調べているうちに、「そが＝すが」である可能性もあることがわかってきました。もう少し調べて見ようと思います。さて今回は、大和と出雲について。答えはまだまだ見えませんが（笑）、ちょっと考えてみましょう。私たちが知る歴史のベースは古事記や日本書紀。どうしても大和を中心として見てしまいます。たとえば大和から見た出雲。国譲り神話からのイメージは、「大和が出雲を制圧し、支配した」という感じでしょうか。で、あれば。前回のブログにも書いたように、説明のつかない疑問があります。伊勢・神宮・三輪山に出雲系の神が祀られている・天照大神（天皇家祖神）を大和に祀ることが出来なかった・日本大国魂神を天皇家は祀ることが出来なかったこれらは日本書紀、崇神天皇記に詳しく書かれています。疫病が流行り、国が乱れたため崇神天皇がとった行動は・宮中に祀っていた天照大神と日本大国魂神を別々の場所に祀ろうとした・大物主神の祟りを畏れ、丁重に祀った大和神社（おおやまとじんじゃ）そしてその結果は・天照大神は大和を出ることに→最終的には伊勢に鎮座・日本大国魂神を祀ることが出来ず、市磯長尾市（いちしのながおち）を祭主に迎えた　（市磯長尾市の出自不明）・大物主の祟りはおさまらず、大物主の子、大田田根子を祭主に迎えたこの日本大国魂神は、大国主（大物主）神と同神とする説や大和地方の地主神とも言われています。どちらにしても、天皇家とは無縁の神です。しかしご存知のように、出雲系の大物主神は三輪山に祀られ日本大国魂神も大和に祀られます（現在の大和神社）。天皇家の天照大神だけが、大和の地から出ることになったわけです。そして出雲の熊野大社の存在。古くは熊野三山よりも社格が上だったとも言われ、出雲の熊野大社の神が紀州・熊野に勧請されたという説もあります。こうして見ると、考えられるのは出雲も大和も熊野も、元々は大国主命（出雲）の国であり天皇家だけが「よそ者」であったということ。神話で言う「高天原」という他国からやって来た天皇家。神武天皇以来、日本の支配者のように思われていますが果たしてそうだったのでしょうか？pleの妄想全開＆益々エスカレート中。 .

2008.06.08

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古代史妄想　２

出雲・神魂神社蘇我氏の故郷は出雲？？蘇我氏の信仰（氏神）の謎。古代大豪族たちの信仰は、今でも多くが神社という形で残っています。物部氏系の石上神宮や河内の弓削神社、矢作神社など。鴨氏の賀茂別雷（上賀茂）神社、賀茂御祖（下鴨）神社。秦氏は松尾大社など京都や大阪に多くの神社を残していますし、意外にもあの伏見稲荷大社は秦氏分家の氏神と言われています。そして藤原氏の春日神の神社（奈良・春日大社、大阪・枚岡神社など）。その他葛城氏や平群氏など、例をあげればきりがありません。天理市・石上神宮蘇我氏系の神社はと言えば、実は無いわけではありません。蘇我入鹿を祀った入鹿神社は別として、奈良県橿原市に宗我坐宗我都比古神社（そがにますそがつひこ）があります。この神社については後述します。蘇我氏と言えば、やはり仏教のイメージがありますね。しかし伝来当初の仏教は、宗教と言うよりは最新の学問や文化色が強かったのではないでしょうか。奈良の歴史ある主な寺には、今でも墓地がありません。学問をする場所という性格が、今も色濃く残っているのだそうです。薬師寺の僧が説教で「奈良のお寺ははかない寺です」とシャレながら学問所としての寺の話をされていたことを思い出します。奈良・薬師寺私が蘇我氏と出雲について考えるきっかけになったのは、「蘇我」という文字についての気づきでした。「われ　よみがえる」という意味を持つその名は、根の国・黄泉の国を連想します。大和の「陽」に対して出雲の「陰」根の国、黄泉の国という出雲のイメージは古事記などの神話で意図的に作られた可能性が高いと思います。したがって「蘇我」と出雲を結びつけることは出来ないかも知れません。それでも「われ　よみがえる」という意味の名は、根の国の氏族ということを連想します。出雲・須我神社数年前から、年に200～300の神社巡りをしています。そんなマニアックな趣味でも、ちょっとした気づきと思いつきがありました。大阪や京都には、スサノヲ（素盞嗚尊・須佐之男命）を祀る神社が数多くあります。ところが、奈良にはスサノヲを祀る神社がほとんど無いのです。統計をとったわけではなく、あくまでも私のイメージです。しかも大阪や京都に比べ、奈良の神社はそれほどこまめに廻ったわけではありません。それでも奈良の古社には、スサノヲを御祭神とする神社が思い当たらないのです。神仏習合により、スサノヲは牛頭天王という祇園精舎の守護神と同神とされました。したがって八坂（弥栄）神社など、牛頭天王を祀った神社といわゆる出雲の須佐之男を祀った神社とは区別する必要があるのですが。スサノヲという神が、奈良では人気がなかったというわけではないと思います。そして思いついた「理由」は・スサノヲを氏神とする氏族は、大和（奈良）の歴史の表舞台から消えたのではないか　　　　　　　　　　　　　　　　　↓　　　　その氏族の没落と共に、スサノヲを祀る神社も消えた・その氏族の「悪評判」により、スサノヲを祀る神社は新しく造られることもなかったこうくれば、想像してしまうその氏族は蘇我氏。そして、古事記に書かれてある出雲の須賀宮の存在。須賀≒蘇我古代史好きの方ならおわかりでしょうが、地名と人名って関連していることが多いのです。「すが」と「そが」なので、オヤジの苦しいダジャレみたいですがま、一応見逃せない「類似」ということで注目しました。出雲の須賀宮は、現在も須佐之男命を祀る神社に「日本初之宮」として伝えられています。・奈良にはスサノヲを祀る神社がない（少ない）・須佐之男命の（最初の）宮は須賀（≒蘇我）だった・「蘇我」という名は「根の国・黄泉の国」を連想するいくら妄想とは言え、蘇我氏と素盞嗚と出雲を結ぶ根拠としてはちょっと苦しいデス。今回の出雲旅行でのメインイベントは、もちろん出雲大社本殿特別拝観でした。しかし須佐之男命を祀る神社を訪ね、蘇我氏とのつながりを探すことも楽しみにしていました。訪問した須佐之男命を祀る神社は八重垣神社、熊野大社、須賀神社、日御碕神社、須佐神社。残念ながら、それらの神社では何のヒントも得られませんでした。駆け足で廻った旅でしたので、詳しく調べて廻ったわけでもないのですが･･･。ところが意外な場所に、「ちょっとビックリ」なものを見つけてしまいました。それは出雲大社の境内。本殿の裏手にある摂社、素鵞社。素鵞社この「素鵞社」はなんと、「そがのやしろ」と読みます。御祭神はスサノヲノミコトです。そして出雲大社を取り巻くように流れている川の名も素鵞川（そががわ）。素鵞（そが）と出雲大社は関係ないと思うでしょうが、そうでもないようなのです。出雲大社と言えば御祭神は大国主命。しかし、ある時代には須佐之男命が御祭神だったのです。しかも大国主命を祀る「杵築大社」が造られたのは、７、８世紀頃という説もあります。出雲大社と言えば、古事記や日本書紀の「国譲り神話」を思い出すので、太古からある神社と思いがちですが。それ以前は、杵築地区の氏族の神社であった可能性もあり御祭神も大国主命ではなかったと言われているのです。出雲大社の素鵞社。苦しいオヤジのダジャレが、ちゃんとしたクリーンなダジャレになりました。俄然はりきった私は、こうなりゃ宗我坐宗我都比古神社にも行かなくてはいけません。さて、何か掴んで来ることが出来るでしょうか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

2008.05.31

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古代史妄想　１

大　山出雲へと向かう山陰道。バックミラーに映る朝焼けの風景に、私はそこが確かに神話の国であると感じたのでした。不思議なもので、本や写真で見るよりもその場所に立つことで感じる何かがきっとあるものです。慌ただしく走り回った、たった１日の出雲の旅でしたが意宇や杵築の空気を吸うだけで多くの何かを感じることが出来たような気がします。今回、出雲に行き是非とも確かめたいことがありました。私の個人的な妄想なのですが、そこに蘇我氏の痕跡がないかということを。聖徳太子の時代、いち早く仏教を広めようとした蘇我馬子。周囲の猛反発を受けながらも、彼が仏教を取り入れることに熱心だったのは渡来系氏族であるがために氏神を持たず、飛鳥時代の朝廷内で祭祀権がなかったからだとする説があります。すなわち、仏教を国中に広めることにより宗教の面でもイニシアチブを握ろうとしたというわけでしょうか。しかし、大きな疑問があります。仏教と出会うまで、蘇我氏は信仰を持たなかったのか。占いで政治を動かしていたような時代に、それは考えにくいと思うのです。渡来系氏族だから、氏神を持たないという説にも納得出来ません。渡来系の代表格とも言える秦氏は、山背に多くの神社を残しています。出雲大社さらに、出雲と大和に関する疑問。大国主命の幸魂・奇魂と言われる、大物主神。その大物主神は、出雲系の神でありながら大和の三輪山にすんなりと祀られています。しかし、天皇家の祖神である天照大神は大和の地に鎮まることが出来ず数十年間も各地を転々とし、それらの場所が「元伊勢」として今に伝わっています。丹後国一之宮　元伊勢・籠神社（宮津市）天照大神は結局、大和から遠く離れた伊勢に鎮座することに。出雲系の神が大和の最も重要な山に祀られ、天皇家の天照大神が大和から離れて祀られることも不思議でした。今回の出雲の旅で、それらの疑問に少しだけ回答のヒントが与えられたような気がします。古代史仲間の盟友、素盞嗚さんは（「素盞嗚さん」＝HNです）蘇我氏は九州王朝の実力者で、「磐井の乱」（素盞嗚氏曰くは「継体の乱」）後天皇家を監視する役目で大和にやって来たと考えています。九州王朝に関する知識が乏しく、確信はないものの私もその考えに異論はありません。だとすれば、蘇我氏と出雲はつながらないのですがあくまでも「妄想」です。ちょうど素盞嗚さんも多忙なのか、ブログの更新が途絶えて姿が見えません。このスキに、蘇我氏の妄想でしばし戯れたいと思います　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

2008.05.31

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出雲大社・本殿一般公開その3

平安時代に作られた数え歌に、「雲太和二京三」というのがあります。雲太＝出雲太郎　和二＝大和次郎　京三＝京三郎それぞれ出雲大社、東大寺・大仏殿、平安京・大極殿のことで、大きさの順番を表したものだと言われています。現在の出雲大社本殿は、高さ２４ｍ。一方、大仏殿は約４６ｍあり、順位が変ってしまっていますが、平安時代くらいまでの出雲大社は４８ｍ、さらに古代には９６ｍあったと言われています。その形状は特殊なもので、高い柱の上にお社が建つというもの【模型】古事記にある有名な神話「国譲り」しかし実際は、高天原と出雲は激しく戦ったことでしょう。敗れた大国主命の怨霊を畏れ、朝廷は鎮魂の社を建てた。それが出雲大社だと言われています。以後の朝廷も大国主命の祟りを畏れ、出雲大社より高い建物を造らなかった。「雲太和二京三」は、そのような事情を表しているという説があります。今回の「本殿特別拝観」で、この目で確かめたいことがありました。それは主祭神である大国主命が、本殿内で横を向いているということ。そして、参拝者の正面にいるのは「御客座五神」と言われる神々であるということ。自分の目で確かめなくても、そんなことは本にも載っていますしネットでも簡単に確かめられます。しかし、実際どんな雰囲気なのかこの目で確かめないことには納得出来なかったのです。出雲大社・本殿の内部は、概ね下図のような構造になっています。大国主命が祀られているのは「御神座」で、矢印の方向を向いています。参拝者は本殿の南側から拝するわけですが、それに対峙しているのはやはり「御客座五神」という構造。御客座五神とは、天之御中主神（あめのみなかぬしのかみ）高御産巣立日神（たかみむすびのかみ）神産巣立日神（かみむすびのかみ）　　宇麻志阿斯訶備比古遅神（うましあしかびひこじのかみ）天之常立神（あめのとこたちのかみ）以上五柱の神は、「別天神（ことあまつかみ）」と言われ古事記の冒頭に登場する高天原に最初に顕われる神々です。特に天之御中主神、高御産巣立日神、神産巣立日神は造化三神（ぞうかのさんしん）と呼ばれ、高天原の最高司令神とも言われています。御神座は板仕切によって、正面から隠されていますし大国主命も参拝者に対して横を向いているそうです。そして出雲を征服した側の最高神たちが「監視」と、言うより御神座の入り口を封印しているようにも見えます。くわえて出雲大社での特殊な参拝方法「二礼四拍手一礼」も「四（し）」＝「死」を表しているという説もあります。「本殿特別拝観」に参加し、実際に本殿内部を拝させていただきましたが、正直な感想は「鎮魂」「怨霊封じ」という重々しさはなく、思いの外清々しく神聖であったこと。その他には特に新しい気づきや発見はありませんでした。それよりも、感動のあまり舞い上がってしまったのですが・・・。ただしひとつだけ「収穫」がありました（小ネタですが）。それは本殿前での神職の説明。大国主命（大黒様）を祀る本殿の中心にある、最も重要な柱「心御柱（しんのみはしら）」これが「大黒柱」の語源であるとのこと。これには拝観者一同、「ほぉ～」と、感心したのでありました。　八重垣神社　神魂神社　須佐神社今回、出雲大社の他に６社廻りました。そのうち５社の本殿は「大社造り」でした。御祭神もそれぞれイザナミやスサノヲで、怨霊とはなり得ない神々。つまり、御神座が横を向いている大社造りは「鎮魂の社」ではないと思いました。古代の家の構造がそうであったらしいのですが、主人は奥の部屋にいて、壁ではなく部屋の入り口に向いて座っている。ただそれだけのことのような気がします。また、「二礼四拍手一礼」の参拝方法についても「四」は古代では「よん」「よ」であり、「死」を連想させる数字ではなく、むしろ縁起のよい数だったという説もあります。「四拍手」は神の「和魂（にぎみたま）」「荒魂（あらみたま）」「幸魂（さきみたま）」「奇魂（くしみたま）」の四つを表しているとの意見もあります。従って出雲大社の特殊な点は、「御客座五神」の存在だけです。出雲大社は大国主命の鎮魂の社であることは間違いないと思います。しかし「四拍手」や「御客座五神」による封印は・・・と言うとそこまでは考えすぎのような気がしてきました。御客座五神の中に「建御雷神（たけみかづちのかみ）」や「天鳥船神（あめのとりふねのかみ）」などの「国譲り」を決定付けた神がいるならまだしも別天神という至高神だということは「封じ込め」よりも祀る側の「敬意」を感じるのです。「怨霊封じ」ではあるものの、「こちらに　お鎮まりいただこう」という感じでしょうか。長年の「祈り」による賜物かも知れませんが、出雲大社本殿の清々しさと神聖さはそんな「敬意」の顕われかも知れないと思いました。

2008.05.24

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藤ノ木古墳一般公開

以前、ここでもお知らせした「藤ノ木古墳石室一般公開」本日、行ってまいりました。午前９時前に着きましたが、いただけた整理券は１１時～１２時のもの。なかなかの人気です。画像ではあまり混雑していないようにも見えますが、並んでいるのは９時～１０時の見学者の一部です。それ以降の整理券をもらった人は、役場や法隆寺で待機かも。汗ばむ陽気の上に、周辺には木陰もトイレもありませんから。見学は無料ですが、１日１６００人限定で石棺前での見学は１人３０秒。石棺前で係りの人が解説をしながら、ストップウォッチで見学時間を計っていました。狭い石室ですし、長居するほどのことでもなく特に不満は感じませんでした。それに、何と言ってもお墓の中ですから。短い見学時間内で、係りの人に質問しました。公開されている石棺は本物でした。藤ノ木古墳の石棺は家型石棺。高貴な人にしか使われないものです。残念ながら石室内は撮影禁止でした。１０年ほど前に来たときは、まるで放置された建築現場のようだった藤ノ木古墳。石室の通路だけでなく、周辺もきれいに整備されていて驚きました。藤ノ木古墳の築造は６世紀後半と言われています。すぐ東にある法隆寺。厩戸皇子（聖徳太子）が斑鳩宮（現在の法隆寺）を造ったのが６０１年。厩戸皇子は、藤ノ木古墳の被葬者を知っていたばかりでなく、藤ノ木古墳の築造と斑鳩宮の造営時期はダブっていた可能性もあります。どちらにしても、藤ノ木古墳と法隆寺そして厩戸皇子とは無関係とは言い難いと思うのです。被葬者のことに関しては、また別に書きたいと思います。

2008.05.04

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出雲大社・本殿一般公開

前回は古代史関係のNEWSをお知らせいたしましたが、またもやBIG NEWSです。新聞やTVでご覧になられた方も多いとは思いますが、「５９年ぶりの出雲大社・本殿一般公開」先月頃から、大阪駅などで「平成の大遷宮」なるポスターを見かけました。どうやら平成２５年まで、出雲大社本殿の修復工事が行われるらしく、それまでは美しい社殿の撮影も無理かと残念に思っていました。ところが、昨日の夕刊を見てビックリ。御祭神を仮宮に遷した後、本殿内部が一般公開されているとのこと。６０年に一度のことなので、一生に一度のチャンスです。出雲大社の本殿は、他の神社と違って主祭神の祀られ方に特長があると言われています。拝殿から参拝する参拝者の正面にいるのは他の神で、大国主命は別の場所に、別の方向を向いていらっしゃるそうなのです。これは神社マニアとしての興味だけでなく、古代史ファンとしても注目すべき特長なのです。参拝者の正面にいる神はどういう神なのか。そしてそれは何を意味するのか。この目で確かめて、ご報告出来たらと思います。日程的にも、そして経済的にも苦しい（泣）のですが、これは行くしかありません。一般公開は、期間限定で軽装不可。日程等については、下記URLをご参照ください。 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00131319.htmlhttp://osaka.yomiuri.co.jp/news/20080421p102.htm .

2008.04.22

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古代史ファンの皆様へ

■藤ノ木古墳の内部一般公開先日お知らせいたしましたように、５月３日～６日（無料）です。GW中ですし、相当な人出でしょうね。例によって「奈良・斑鳩one dayチケット」を利用するつもりですが、人出によってはを飲む場所昼食の場所をどこにするか考えておかねば・・・ ■高松塚古墳・極彩色壁画の一般公開さて、もうひとつ BIG NEWS です。な、な、なんと、高松塚古墳の壁画一般公開。こちらも無料ですが、往復はがきによる予約が必要です。以下、４月１７日朝刊の記事より抜粋してご紹介いたします。文化庁は１６日、奈良県明日香村の高松塚古墳の極彩色壁画を、５月３１日から６月８日までの９日間、同村内の修理施設で一般公開する、と発表した。先着順で事前申し込みを受け付け、定員は１日５００人程度で無料。≪申し込み方法≫先着順で締め切りは５月７日（消印有効）。往復はがき１枚で２人まで応募でき、往信面に希望日（第3希望までの来場日と午前か午後の時間帯）と、それぞれの郵便番号、住所、名前（フリガナも必要）、年齢、電話番号を書いて、〒530-0047　大阪市北区西天満３の４の３大阪西天満郵便局留「国宝高松塚古墳壁画修理作業室の一般公開」事務局　　へ。宛先名が非常に長いですが、これがミソかも知れません。ワープロなどは使わず、ちゃんと手書きで申し込みいたしましょう。 ■聖徳太子　ゆかりの名宝こちらは天王寺公園内にある、大阪市立美術館の特別展。橋下知事の方針で、府立の近つ飛鳥博物館や弥生文化博物館は予算が出ず全国の博物館などから資料を借りることが不可能となりました。春の特別展の内容を、館蔵物のみで行うという形への変更を余儀なくされています。賛否両論あるとは思いますが、しばらくの間、府民も痛みを分かち合わねばなりません。一方、大阪市は各部署で「こっそり隠し持ってた裏金」が大きな問題となっていますが、文化面ではがんばってくれています。ちなみに市立美術館、博物館の裏金はないようです。掲題の特別展は、聖徳太子廟がある叡福寺所蔵、太子絵伝の修復完成を記念して「河内三太子」所蔵の名宝を展示するものだそうです。「河内三太子」というのは聖徳太子ゆかりの寺院。上の太子「叡福寺（太子町）」、中の太子「野中寺（やちゅうじ＝羽曳野市）」下の太子「大聖勝軍寺（たいせいしょうぐんじ＝八尾市）」の３寺です。展示物は寺院の性格上、「太子信仰」に関わるものが中心のようです。従って、平安時代以降のものが多いようです。私は行かないかも知れません（笑）　◆展示会公式ホームページ◆ ■国宝　法隆寺金堂展こちらは奈良国立博物館で開催される特別展。期間は６月１４日～７月２１日です。さすがに本尊の「釈迦三尊像」の展示はありませんが、本尊を守護していると言われる木造四天王立像（国宝）が展示されます。４体そろって寺外で展示されるのは初めてのことだそうです。法隆寺に行かれた方はご存知だと思いますが、金堂内には照明がなく、昼間でも内部をよく見ることが出来ません。懐中電灯が置いてありますが、なんだか仏様に失礼な気がしますしなんとも味気ない鑑賞方法でもあります。古代史ファン、厩戸ファンとしては見逃せない特別展ですね。持国天・増長天の展示は７月に入ってからなので、４体そろって見ることが出来るのは７月１日～２１日ということになります。　　◆奈良国立博物館・特別展◆ どちらも特別展に行こうと思われる方は、前売り券を買うとオトクですね。チケットぴあ、ローソンチケットで購入出来るようです（詳細は特別展HPをご覧下さい）特に「法隆寺金堂展」の方は、法隆寺でチケットを見せると拝観料が割り引きになります。両方に行こうと思う人は、生ビール１杯分オトクです。スミマセン。お金の価値がビール代換算しなくては実感できないもので・・・（私だけ？？？）

2008.04.19

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藤ノ木古墳

古代史ファンたるもの、新聞は角から角まで読まなくてはいけません。政治・経済や国際問題ならば、だいたいどの面を読むかは決まっています。しかし、こと古代史に関する限りどこにどんなNEWSが出るか、予想出来ません。初めて「現地説明会」に参加した、今城塚古墳の発掘現場。真の継体天皇陵と言われている古墳です。この現地説明会のNEWSは、讀賣新聞「北摂版」という地方版に掲載されていたと記憶しています。重大な発見であれば１面で報道されることもありますが、１面に載ってもその扱いは様々。TOPのこともあれば、片隅に小さく載っていることもあるのです。社会面に載ることが多いですが、いわゆる３面記事の場合もあれば別のページに載っていることも。文化面に載ることもあります。本日の朝刊の片隅に、興味深い記事が載っていました。「藤ノ木古墳来月公開」こいつを見逃さなくてよかったです。昨年９月から進められていた石室内部の整備が完了し、５月３日から６日まで無料公開されるそうです。法隆寺には何度か行っていますが、近くにあるこの藤ノ木古墳はノーマークでした。ちょっと足を伸していれば、古墳の整備状況を知ることが出来たかも知れません。とにかく、連休には絶対見に行かなくては！！この藤ノ木古墳、古代史ファンなら知らない人はいませんがその理由は「未盗掘の古墳」だったからです。被葬者の特定は不明です。しかしその出土物から、非常に高貴な人物の墓であったと言われています。この地域を本拠地としていた豪族、例えば膳部氏などの首長級の人物の墓であったとか穴穂部皇子墓説など、様々な説があります。私が注目したいのは、法隆寺との関係。「昭和資材帳編纂」と呼ばれる、法隆寺内の調査が行われた際確か江戸時代のものではありますが斑鳩地域の地図が発見されました。（TVで見たという記憶ではありますが）その地図にあった藤ノ木古墳には「ミササギ」と記されていたのです。ミササギ＝陵とは、天皇または皇后の墓に使われる名称です。そこで考えられるのが、暗殺された記録がある崇峻天皇。私は藤ノ木古墳の被葬者は別の場所から移葬された崇峻天皇ではないかと思っているのです。法隆寺、と言うよりは厩戸皇子が斑鳩宮と斑鳩寺を建てた時藤ノ木古墳の存在はもちろんのこと被葬者のことも知っていたはずです。そして注目したいのが、逢阪（大阪）の四天王寺。法隆寺＆藤ノ木古墳の位置関係を四天王寺に当てはめると藤ノ木古墳の位置あたりに堀越神社があります。この神社の御祭神は、なんと崇峻天皇なんです。神社の御由緒書には「聖徳太子（厩戸皇子）が崇峻天皇の徳を偲んで建てた・・・」とあるのですが目的は「鎮魂」であろうと思われます。この位置関係のことを知ったのは古墳研究の第一人者、森浩一氏の著書でした。わたくし霊感に関しては感度ゼロの「零感」ですが写真ではしばしばヤバイものを写して、霊能者の知人からおしかりを受けています。 GWにはこの藤ノ木古墳に行って、崇峻天皇の御霊を写して見せましょうぞっ！

2008.04.09

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春の明日香　４～甘樫丘東麓遺跡～

３月２９日（土）甘樫丘東麓遺跡の「現地見学会」がありました。ここ甘樫丘東麓遺跡に初めて訪れたのは、昨年のＧＷ。しかしその時は、遺跡は跡形もなく埋め戻されていて、実を言うと、そこが本当に甘樫丘東麓遺跡かどうかもわかりませんでした。あんまり悔しかったのでな行動に走った私。　　　2007/4/29の日記今回はバッチリ。新たな発見のNEWSと、「現地見学会」の新聞記事を見逃しませんでした。今回の明日香訪問は、この「現地見学会」参加が目的だったのです。（甘樫丘で飲む目当てではなく・・・）前回私が「ここが甘樫丘東麓遺跡だ」とにらんだ場所に間違いありませんでした。「ちくしょー。この下に甘樫丘東麓遺跡があるはずなのに」涙を飲んで歩いた更地は、やはり甘樫丘東麓遺跡だったのです。「現地見学会」の予定は１３時からの予定でしたが、１２時１５分頃にはもう始まっていました。ちなみに「現地説明会」ではなく、「現地見学会」です。人が集まった場所で、複数のスタッフが随時簡単な説明を行うという形式でした。今回の調査の主な目的は、甘樫丘東麓遺跡の時代の特定だったそうです。何度か整地されて、造営と破壊が繰り返されていることが判明しました。最も古いものは７世紀中頃には廃絶したことが確認されたそうです。７世紀中頃と言えば、そう！！ 645年の「乙巳の変（大化改新）」日本書紀・皇極天皇記３年１１月の条にこう記されています。「蘇我大臣蝦夷（そがのおおおみえみし）と子の入鹿は、家を甘橿岡に並べて建てた。大臣の家を上の宮門（みかど）と呼び、入鹿の家を谷（はざま）の宮門といった」すなわち甘樫丘東麓遺跡は、この「谷の宮門」蘇我入鹿の邸宅に関連があると考えられるのです。今回見つかった建物跡のうち、７世紀中頃に廃絶が確認されたものは３つ。全て「総柱建物」という、倉庫によく見られる特長を備えています。新聞記事などには「兵器庫」との記述もありましたが、蘇我氏滅亡前の、日本書紀に書かれた記述からの憶測でしょう。人の居宅ではなく倉庫らしい、と言うだけで兵器庫と特定されたわけではないようです。前回の調査は、この画像の一番手前の溝あたりまで。そこから奥の山側が今回の発掘調査場所です。画像に写っているお姉さんに質問して確認しました。前回の調査後、やはり丁寧に埋め戻したとのこと。しかしまだ、肝心の邸宅らしきものが発見されていません。上の画像の先は山（甘樫丘）の斜面であり、何も見つからないだろうとのこと。怪しいのは谷側に広がる一帯だそうです。ここは農家のミカン畑。前回も調査したかったそうですが、「ミカンの木を１本も傷つけてはダメ」との条件を出されて、断念したそうです。現場からは、７世紀の土器が多数出土しています。この甘樫丘東麓遺跡の調査は、引き続き行われるそうです。蘇我入鹿の邸宅や、続いて蘇我蝦夷の邸宅が見つかる日もそう遠くないかも知れませんね。この遺跡のちょうど上に、甘樫丘・川原展望台に登る道があります。時々チェックすれば、発掘の様子が上から見学出来るかも知れません。早く見つかって欲しいものです。そしてもうひとつ。古代史ファンにとっては驚きの感動がありました。場所はここ。道路建設によって、以前に一部破壊されている雷丘（いかづちのおか）。木が生い茂り、荒れ果てた感じの小山だったと記憶していますがなんときれいに整備されているではありませんか。３階建ての家ほどの高さしかありませんが、ここから眺める明日香の里は、格別な思いがあります。重要な遺跡があると言うわけではありませんが、何かと古代の文献にその名が登場するこの丘。古代史ファンにとって、おなじみの場所ではないでしょうか。明日香村に来ても、今さら亀岩や石舞台を見る必要もないのでこんなマニアックな散策が出来ます。次回はもっとマニアック。pleのイケナイ拾得物について・・・（？）　の巻。でもヤバイかなぁ～書かない方がいいかなぁ・・・　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

2008.03.30

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古代史オヤジの独り言　その３

～乙巳の変　あとさき～法興寺（飛鳥寺）の蹴鞠会で中大兄皇子に近づいた中臣鎌足。西暦６４５年の５月、中大兄皇子と鎌足は多武峰（とうのみね）の山中で「大化改新」の談合を行いました。談山神社（たんざんじんじゃ）の社号の由縁です。深い山にある大伽藍は、元々は寺として建立されました。鎌足の長男、定慧和尚が摂津・安威からこの地に父の墓を移し十三重塔を建てたのが始まりと伝えられています。車では明日香から遠回りをしなくては行けませんが、石舞台古墳からおよそ５ｋｍの場所です。二人は蘇我入鹿を討ち、天皇家を護ったと日本書紀には記されていますが果たして真相はどうだったのでしょうか。古代大和政権を国家として改革を進めていたのは実は蘇我氏の方であり、中大兄皇子らはその改革への反発組であったとも言われています。権謀術数に秀でた鎌足は、謀によく内部分裂を利用したようです。蘇我入鹿暗殺に利用されたのが蘇我倉山田石川麻呂。乙巳の変（大化改新）後には右大臣に任ぜられました。蘇我倉山田石川麻呂が造ったとされる山田寺跡。蘇我倉山田石川麻呂は冤罪で自害。乙巳の変での論功行賞として任ぜられた右大臣・左大臣が相次いで亡くなるとその後を引き継いだのは巨勢徳太と大伴馬飼。なんだか「真打ち登場」といった感じがします。斑鳩宮を襲い、聖徳太子の子孫を根絶やしにした下手人たちです。あの事件と乙巳の変は、どうもつながっているような気がするのですが･･･

2008.01.12

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古代史オヤジの独り言　その２

神秘的な考えを否定する気はありません。防衛相がＵＦＯを語る時代です。が、論理的説明を廃して語る神秘や超常には疑問を感じます。論理的（科学的）説明をする知識を持たないままでのそれらには、少なからず嫌悪感すら感じます。不思議なものがあると、「○○山と××寺と正三角形を形作っている」とか、「この場所と伊勢神宮を結んだ線上に・・・」とか、あるいは超能力や宇宙人と結びつけようとする人たちがいます。もちろんそんな意見を全て否定するつもりはありません。夏至・冬至や春秋分など、暦に関するもの（農耕に関するもの）宗教的なものもあると思います。明日香には「謎の石造物」がたくさんあります。最も不思議なものとして有名なのが、この「益田の岩船」です。厳密に言えば明日香外にあるのですが。岩船と言っても、船として使われたと考える人はいませんがＵＦＯの基地（発着台）だったと考える人はいるようです。その他、占星台、天文台だったという説、ゾロアスター教の神殿（未完成）説に、古代人のトイレ説も。今は竹藪に囲まれていますが、つい最近までは見晴らしがよかったようです。この岩の下部には格子状に削った跡があります。上部の滑らかな形状を見れば想像出来ると思いますが、形を整える作業をしていたものと思われます。この岩を９０°転がしてみると、近くによく似たものがあります。益田の岩船から５００ｍほど南東にある、牽牛子塚古墳（けんごしづかこふん）です。墓室は大きな花崗岩をくり抜いた２つの穴。最初から２人を葬る目的か、追葬を考えて造られたものですね。この古墳の開口部は、鉄格子で保護されているのでこんな写真しか撮れませんが益田の岩船の上部によく似ています。益田の岩船と牽牛子塚古墳の類似は以前から指摘されていましたが、ずっと自分の目で確かめたいと思っていました。レンタサイクルで行くには困難な場所です。今回は車で行きましたが、駐車場はありませんので苦労しました。私はやはり、この岩船は古墳の石室だと思います。明日香には作成途中で放置された石造物がけっこうあるようですが、この岩船はどういった理由で放置されたのでしょうか。重すぎて移動または回転出来ずに放置したのでは・・・実際に見るまではそんな風に想像していました。でも、この岩は明らかに加工途中で放置されています。　　　　　　・埋葬予定者が失脚した　　　　　　・埋葬予定者が予想外に出世した（笑）　　　　　　・制作費で折り合いがつかなくなった・・・が、調べてみると肝心な場所に亀裂が入ったため製作を断念したものと言われています。小高い山の山頂部にあることと、その大きさから転用もされないまま放置されたのではないでしょうか？転用と言えば、あの酒船岩も楔を打って割られた痕跡があります。一部が高安城の石垣に転用されたという説があります。「鬼の雪隠」「鬼の俎」と言われているものも、古墳の石室を何かに転用しようとした跡かも知れません。ところで、いつか彼岸花を見に行きたいと思っている明日香村の稲淵。美しい棚田の風景で有名です。この付近にも「謎の石造物」があります。その近くにある「マラ石」こういったものは五穀豊穣や子孫繁栄を願うものとして全国各地にあります。近くにある説明板によれば「元々は垂直に立っていた･･･」とのこと。石造物も人間といっしょで、年齢とともに・・・いやいや、失礼いたしました。

2008.01.08

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古代史オヤジの独り言　その１

歴史好きの私にとっての一番の楽しみは、何と言っても「現地に立つ」これに尽きると思います。普通の人にとってはただの野原や石ころも、古代史ファンにとっては「ワクワク」の材料となり得ます。何の変哲もない小径でも、もしそこが明日香なら「この小径を厩戸皇子（聖徳太子）も歩いたのだろうか･･･」などと、古代に思いを馳せるのです。最もポピュラーな遺跡は古墳です。古墳は今や、そのほとんどが小山と化しています。「要は『お墓』でしょ？」ともよく言われます。自分でも、人の墓を見て何が愉しいのかよくわかりません。それでも古墳を前にすると、墳丘や石室を見ては想像の世界に浸るのです。先日ご紹介した、神戸市の五色塚古墳なら歴史に興味のない人でも少しは見て楽しむことが出来ると思います。しかし天皇陵など、宮内庁が管理する古墳はどこも同じ様な「拝所」が設けられていてどれも同じ様に見えます。が、古代史好きにとっては、違うんです（笑）昨日訪れたのは「崇峻天皇（すしゅん）倉梯岡陵」奈良県桜井市倉橋にあります。しかもこの古墳（？）は、一応宮内庁から「崇峻天皇陵」に比定されていますが「墓」である可能性すら低い、ただの小山だと言われています。崇峻天皇陵について延喜式には「陵地および陵戸なし」と記されています。それでも「崇峻天皇陵」がここに存在する理由と根拠は江戸時代後半からの国学の高揚や明治・大正時代の政府の方針により「全ての天皇陵が存在すべき」とされたこと。比定については日本書紀の一文「（崇峻天皇は）その日のうちに倉梯岡陵（くらはしのおかのみささぎ）に葬られた」これだけの手がかりで「崇峻天皇陵」探しが行われたのです。そんな本物かどうか怪しい天皇陵ですが、やはりここに立つと古代に思いを馳せるのです。崇峻天皇は歴史上で唯一人、臣下によって暗殺された天皇です。殯（もがり＝貴人の本葬前に行われる儀式）も行われず、倉梯岡に葬られた崇峻天皇。現在の崇峻天皇陵がたとえ本物でなくても、一度ここに立ってみたいと思っていました。「崇峻天皇陵」よりも、「倉梯（倉橋）」という地が気になっていたのです。陵墓だけでなく、崇峻の宮も倉梯に造られていました。当時の政治の中心は「都」ではなく、天皇の宮でした。都という言葉は宮戸から来ているとも言われます。古代においては天皇が代わる度に宮が建てられ、そこが政治の中心となっていたのです。しかし倉梯という地は、飛鳥から２～３ｋｍ離れた場所にあります。崇峻天皇の倉梯宮の正確な場所は不明ですが、この地は地図で見るように、ただ飛鳥から少し離れているだけではありません。崇峻天皇陵を訪れて初めてわかったのですが、倉梯（倉橋）という地は飛鳥からは山を隔てた場所にあります。蘇我馬子をはじめ、当時の豪族たちが日参するには非常に不便な場所なのです。倉梯岡陵の前に立ち、私は当時の政治状勢や崇峻天皇のおかれた立場を考えずにはいられませんでした。ちなみに、その崇峻天皇ですが私の個人的な考えですが、最終的には法隆寺の近くにある藤ノ木古墳に移葬されたと思っています。崇峻天皇暗殺の首謀者とされているのは、当時の権力者「蘇我馬子」です。明日香の代名詞とも言える「石舞台古墳」は、馬子の墓と言われています。盛り土がなくなり、巨大な石室が露わになったのは偶然の自然現象ではなく人為的なものを感じます。墓を暴くという行為は、故人を侮辱する最たるものではないでしょうか。石棺も粉々に壊されていたそうです。蘇我氏は日本書紀などにあるような権力を欲しいままにした豪族ではなく、私は先進的な政治家ではなかったかと思っています。しかし、既得権者たちの恨みを買っていたことも確かなようです。夕暮れの島ノ庄。厩戸皇子や蘇我馬子も蘇我邸からこのような夕日を眺めたのでしょうね。

2008.01.06

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古　墳～山科陵＆五色塚古墳～

前回の日記の最後でもご紹介した神戸市垂水区にある五色塚古墳。築造当時の姿を出来る限り忠実に復元された古墳です。「古墳を見て、何がおもろいんや？」と、よく言われますがここの古墳を見れば、誰もが「スゴイ」と思うでしょう。上の画像は３～４枚の画像を合成したものです。あまりのデカさで、１枚の写真には収まり切らなかったのです。墳丘部に上ると明石海峡を見下ろし、淡路島から遠くは紀州までが見渡せます。この画像も合成したものですが、特別なテクニックではありません。カメラの「スティッチアシスト」という機能を使って撮影し、カメラに付属してたソフトを使って簡単に出来るワザです。ほとんどのデジカメにある機能だと思います。前方部から見た後円部。表面の「葺石」は元々あったものや、周辺に崩れ落ちていたものが使われています。後円部から見下ろした前方部と明石海峡。階段と急斜面の葺石の固定にのみコンクリートが使用されています。さてこちらは昨日訪れた「天智天皇山科陵」一辺70ｍの下方上円墳。付近は御陵（みささぎ）という地名にもなっています。入り口から拝所までの参道はおよそ300ｍもあります。もちろん全て宮内庁書陵部の管理。五色塚古墳と違って、墳丘部に上るのはおろか近づくことも出来ません。私も含めて古代史仲間の間では、何かと評判の悪い天智天皇ですが陵墓は古代天皇のものの中では破格の扱いという感じがしました。

2007.12.16

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纒向遺跡

纒向遺跡は、奈良県桜井市にある弥生時代～古墳時代の遺跡群です。南東に三輪山を望む広大な住居跡で、邪馬壹国畿内説では女王・卑弥呼が居したクニの最有力候補地と言われています。「弥生時代の住居跡」と言われていますが、実は人が住んだ「弥生時代の集落」はひとつも見つかっていません。現在発見されているのは、祭祀用と考えられる建物や運河のような溝など。そのためこの遺跡は、例えば三輪山を拝するなどの祭祀の場とも言われます。運河のような工事跡があるので、海石榴市（つばいち）のような交易の場所だったかも知れません。弥生時代の遺跡としては、近くの「唐子・鍵遺跡」や大阪南部にある「池上・曽根遺跡」も有名です。その中で「纒向遺跡」が女王国とされるのはなぜなのでしょうか。上の楼閣の画像のように、唐子・鍵遺跡も邪馬壹国であった可能性を主張しているように思えます。しかしこの復元された楼閣は、唐子・鍵遺跡にあったという確証はありません。付近で発掘された土器片に、このような楼閣の絵が描かれていただけです。柱の跡が見つかっているわけでもなく、この楼閣も「遺跡を破壊しない位置」に建てられています。なんだか強引なモニュメントに見えてきますが・・・。邪馬壹国畿内説は、「邪馬壹国が大和王権に発展した」という考えが基礎にあるようです。そのために「魏志倭人伝」にかかれてある「邪馬壹国」の「壹」という文字を「臺（台）」の間違いだと解釈して「ヤマタイ」と読んでいます。「ヤマタイ」　≒　「ヤマト」　と言うわけですね。そして魏志倭人伝に記されている女王国への行程の部分である「南して邪馬壹国に至る」も、「南」ではなく「東」の間違いだと主張しています。一説には、あまり正確な記述ではないとも言われる「魏志倭人伝」ですがここまで都合よくねじ曲げたような解釈をしては「文献史料」を研究する意味がなくなってしまうのではないでしょうか。上記２点の解釈については「根拠がある」とのことですが、そのことについては別の機会に書きたいと思います。どうしても邪馬壹国を大和に位置づけたい畿内説が纒向遺跡が女王国だと主張する理由は、概ね次の理由からのようです。１．大和王権の象徴とも言える前方後円墳。その最古級の箸墓古墳がある。この箸墓古墳こそが卑弥呼の墓だと言うわけです。箸墓古墳は現在、「倭迹迹日百襲姫命（やまとととひももそひめのみこと＝孝霊天皇皇女）の墓として宮内庁管理になっています。２．魏から下賜された銅鏡は「三角縁神獣鏡」である。周辺からは出土する三角縁神獣鏡が、ここ纒向遺跡では発見されていない。従って、「この纒向遺跡にあった邪馬壹国から周辺諸国に配られた」という説。しかしこの説は、近年「柳本黒塚古墳」での三角縁神獣鏡大量出土によって崩れてしまいました。それでもなお、「黒塚古墳」は鏡を管理していた役人の墓だと言い張る学者もいるとか。３．垂仁天皇・景行天皇の磯城瑞籬（しきみずがき）宮など、多くの古代天皇の宮があった場所であること。大和王権発祥の地とも言えるこの場所が、邪馬壹国だという説です。他にも「理由」があるかも知れません。知っている方、教えてください。魏志倭人伝の記述から、邪馬壹国の位置を大和と解釈するにはかなり無理があると思うのですが･･･。魏志倭人伝と三角縁神獣鏡については、また別の機会に書くことにします。漢字による漢文は、ある本によると「助詞がないので、表現に限界がある。つまり『どうにでも読める』のだ」とのこと。だとすれば、魏志倭人伝の邪馬壹国への行程の部分もいろいろな解釈があっても仕方ないってことでしょうか（南→東は無いと思いますが）。魏志倭人伝の「行程」の箇所以外に、明確な一文があります。「女王国の東　海を渡ること・・・」の部分です。畿内説で、「南」が「東」の間違いだと言うのならこの「東」は「北」ということになるんでしょうか？どちらにしても、纒向遺跡や大和のどこに行っても海はありません。ところで、前述の唐子・鍵遺跡ですが纒向遺跡とは２～３ｋｍしか離れていません。纒向遺跡が邪馬壹国だとしたら、唐子・鍵遺跡との関係はどうだったのでしょうか。魏志倭人伝には記されていない「銅鐸」の鋳型がこの唐子・鍵遺跡から発見されています。ただし卑弥呼の時代には、銅鐸文化は消滅していた可能性もあります。ところがこの唐子・鍵遺跡がある付近は「鏡作」と呼ばれていました。おそらく銅鐸の製作をしていた技術者たちが、銅鏡を作るようになったのではないでしょうか。遺跡の近くに「鏡作坐天照御魂神社」があります。神社名は「鏡作という地に鎮座する、天照御魂神のお社」といった意味です。この神社の社宝は、三角縁神獣鏡なんです。この三角縁神獣鏡が、付近の鏡作部によって作られたものだとすると三角縁神獣鏡は国産の鏡ということになり、卑弥呼の鏡ではないということになります。ただしこの社宝、どこかで出土したものらしいですが・・・。

2007.10.20

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邪馬壹国畿内説･･･ってか？　１

「卑弥呼の贈り物染めた？」１０月３日の朝刊に、こんな見出しで「纒向遺跡」の記事が載っていました。日本最古と思われる、ベニバナ花粉が大量に見つかったそうです。ベニバナは中国から伝わったと言われ、染料として使われていました。その数日前の新聞では、同じく纒向遺跡での「木製仮面」発見の記事がありました。どちらの記事にも、「邪馬台国」「卑弥呼」の文字が所狭しと踊っていました。さすがに「邪馬台国の時代の遺跡」とか「卑弥呼の時代を彩った」という表現を使ってはいますが、イメージ的には「纒向遺跡が邪馬台国」と言わんばかりの記事になっています。記事では「？」や曖昧な表現を使ってごまかしてはいますが、「纒向遺跡が邪馬台国の一角であることを補強する」というようなことを学者等のコメントとして採用しています。これがまた、「××博物館の○○館長（考古学）」とか聞いたことのない施設の聞いたことのない人のコメントだったり･･･。要は、いろいろ談話をとった中で、邪馬台国畿内説を印象づけるコメントを採用したのではって想像します。こういう発見は非常に興味深いのですが、何でもかんでも「邪馬台国」「卑弥呼」と結びつけたがるマスコミにははっきり言ってウンザリします。ちょうどいい機会なので、邪馬壹国について何回かに分けて書こうと思います。ちなみに冒頭から「邪馬台国」と書きましたが、これは新聞記事の話題だったから。以後は「邪馬壹国」と表記させていただきます。この理由はどこかで説明することになると思います。しかし、なぜ「木製の仮面」や「ベニバナの花粉」の発見→邪馬壹国なのでしょうか？仮面や花粉から邪馬壹国をイメージする古代史ファンはたぶんほとんどいないと思います。ただし、発見された仮面にベニバナの花粉を使って「入れ墨」が描かれていたら邪馬壹国を連想するかも。魏志倭人伝の中に、倭人の文化や風習が書かれています。その中に、「（倭人は）おとなもこどもも、顔やからだに入れ墨をしている」とか「中国の白粉（おしろい）のように、からだに朱丹（顔料）を塗っている」といった表記があるんです。この魏志倭人伝を読んだ私の個人的な印象ですが、邪馬壹国は海に近い場所だったと想像しています。纒向遺跡は内陸部、しかも山に囲まれた盆地にあります。果たしてこの纒向遺跡、邪馬壹国だった可能性はあるのでしょうか。次回は纒向遺跡について書こうと思います。

2007.10.05

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古代史よもやま　５

素盞嗚さんのブログを読んでいると、今の博多の街の下には、とても重要な遺跡が眠っているような気がします。素盞嗚さんは、福岡周辺に邪馬壹国があったとお考えなんです。私はずっと、大分の宇佐にあったのではないかと考えていました。そう考えたきっかけは「弓削道鏡事件」であったり、宇佐神宮の御祭神の謎等々。加えて「魏志倭人伝」に書かれている「女王国の東　海を渡ること千余里　また国有り　皆倭種なり」という部分です。つまり邪馬壹国は東に海がある場所でなければならないのです。そして、その千余里向こう（東）に陸地がなければいけないのです。そういう場所は九州か四国にしかありませんが、四国は畿内説以上に無理があります。魏志倭人伝には、邪馬壹国は（北九州から）「南」にあると書かれています。畿内説では、この「南」は「東」の誤りであると主張しています。「こういう勝手な解釈はあかんやろ」と、素人目にも思うのですがいかがでしょう？「女王国の東　海を渡ること千余里　また国有り　皆倭種なり」既述のこの一節。「南」を「東」の誤り（または勘違い）とするならば、「女王国の東・・・」の「東」は、実際は「北」と解釈するのでしょうか？それ以前の問題として、大和には東にも北にも海はありません。私が学者なら、またはそうでなくても（そうでないのですが）学問的に検証するならば魏志倭人伝に記載されているその他の部分についても明確にする必要があります。たとえば「水行十日　陸行一月」など邪馬壹国への行程の部分。実を言いますと、その部分についてはまともに考えたことがありません・爆。帯方郡から女王国に至る行程の記述については、江戸時代以降、何万・何十万、ひょっとしたらそれよりもっと多くの学者・論者が様々な解釈を展開してきました。私のような素人なんぞ、口をはさむ余地のないほどの解釈が成されています。浅はかな知識であれこれ考えるよりも、（私にとって）都合のよい「説」を採用する方がらくちんなんです。無責任と言えばそれまでですが、私は、学問としてではなく古代史の浪漫を楽しむ「お気楽古代史ファン」なのです。が、最近は少々ストイックに立ち向かうようになってきました。このくらいのお気楽ブログでも、書くのに５時間くらいかかっちゃうんです。無責任と言えば先日卑弥呼≒日巫女卑弥呼≒天照大神みたいなことを書きました。でも実を言うと、「≒」ではなく「≠」と考えています。卑弥呼が日巫女の意だとすると、個人名ではないということになってしまいます。そうすると、卑弥呼の死後に女王になった壹与の説明がつきません。また卑弥呼を皇祖神とするならば、記紀に卑弥呼や邪馬壹国の記載がないことも不自然な気もするのです。日本書紀の方にのみ、魏志倭人伝のことが記されていますが邪馬壹国も卑弥呼の名も記載されていません。うやむやに「神功皇后＝卑弥呼」を匂わせるように誤魔化しています。天照大神が皇祖神とされているのは、「天孫降臨」によって日本の支配者が変ったからです。古代（特に弥生時代）において、世の中が大きく変った痕跡がいくつか見られます。・「前末中初」　　　北九州において、弥生時代前期末と中期初頭の遺跡の出土内容に大きな相違・断絶　　が見られること。・「（防御性）高地集落」の出現　　瀬戸内海沿岸から大阪湾にかけて、烽火（のろし）台を持つ高地集落などがある時期　　に出現する。「逃げ城」的なものだけでなく定住型の集落も確認されている。　　稲作を中心とした弥生時代の集落としては不自然。　　広範囲で何かの脅威があった可能性も。・「銅鐸文化」の突然の消滅　　近畿から東海を中心に多く出土している「銅鐸」は、一体どういう「道具」だったのか謎　　の銅製品。その出土状況から、個人が所有したものではない模様。銅鐸はある時期　　を境に突然消滅。記紀にもその記述は一切なく、続日本紀などに「宝鐸」という記述で　　発掘された記録のみ。どうも卑弥呼と天照大神は違うようなのですが、全く無関係とは言い切れない思いも残ります。どちらかがどちらかに投影されているような何かを感じるんです。そのあたりを近々、素盞嗚さんがブログで検証してくださるようです。　※　「素盞嗚の日本古代史」「天孫降臨」はいつのことだったか。そのことについてはまたいずれ・・・。ちなみに「邪馬壹国」ですが、今は「宇佐ではないかもなぁー」と思っています。未確認なのですが、太宰府に残っていたという「張楚金の翰苑」という書には「邪馬壹国は伊都国のすぐ南にある」と書いてあったとか。ネットで検索しても出てきませんし、時間をかけて調べてみようと思います。ところで今、素盞嗚さんが「隋書」に書かれた「倭国伝」についてブログで持論を展開されています。正確には「倭国」ではなく・・・う、書けません。↓　こんな字です。「倭」じゃないところに注目されています。私もこの字が「何かヘンだなぁ～」とは思っとこともありましたが、古代中国では、こういう字も使うのだろうと気にも留めませんでした。ところでこの字や「倭」という字は、なんと読むのでしょうか。「ワ」　「ヤマト」　そして「イ」 etc「ヤマト」と読んじゃったのは本居宣長なんだそうです。確かに古事記には「倭＝ヤマト」を連想させる箇所があります。中国の歴史書に記された、当時の日本の国名とも言える「倭」神武が筑紫から「大和」に東征し、初代天皇となった時から日本の中心は近畿「ヤマト」であったと主張したい古事記と日本書紀。当然「倭」は「ヤマト」と言いたいのでしょうが、あまり成功しているとは言えないようです。現在「古事記」の中で、「ヤマト」と訳されている文字は次の３つ（見落としがあるかも）。「倭國」　「倭」　「夜麻登」これらの表記について、ちょっと興味深い傾向を見つけました。「倭」は、はたして近畿「ヤマト」と言えるでしょうか。次回はそのあたりを書いてみたいと思います（いつになるやら）。

2007.09.08

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古代史よもやま　４

「邪馬壹国九州説」や、「古天文学の話題を書きます」と言いながら放置して「スカイダンボ」や「UFO写真」の話題に行ってました。誘惑的なネタがなくなったので古代史行きます。「日本書紀は中国（唐）を意識して編纂された」素盞嗚さんがこんなセンセーショナルな話題を、先日のblogに書かれていました。長年の「？？？」が晴れそうな気分です。日本書紀には矛盾や謎がたくさんあります。素盞嗚さんのblogも読みながら、次回には日本書紀について書いてみたくなりました。とは言っても、素盞嗚さんのような学問的な文献分析ではなくもっと感覚的・・・というか良く言えば浪漫、悪く言えば妄想のような話題になると思いますが。妄想と言えば、断片的にわかっている史実や記紀などの記述と神話・伝承。それらの点が線となってつながりそうでつながらない、おぼろげながら形になりそうで、やっぱり断片に戻ってしまう。今回は、そんな「疑問」を並べてみます。邪馬壹国や卑弥呼。いくら表音文字がなく、漢字だけの中国とは言え、他の国や女王の名前に、「邪」や「卑」はないだろう・・・ってずっと思っていました。中国の人たちは東の島国なんて「野蛮人の国」としか思っていなかったでしょうから、よく似た「音（読み）」の悪意ある漢字を当てはめたのは、当然と言えば当然のことかも知れません。その当時の倭人が漢字を覚えたとしたら、女王のことを「卑弥呼」とは表記しなかったことでしょう。卑弥呼の行った「鬼道」が、よく言われているように「太陽信仰」の一種だったとすれば卑弥呼＝日巫女、だったかも知れません。後の天皇家でも皇太子を「ヒツギノミコ」と呼んでいました。これは日嗣御子（太陽を受け継ぐ皇子）とも書かれていたようです。日本の神道は多神教とは言え、古くからその中心は太陽神だったのかも知れません。「日巫女」だったとすれば、つい連想してしまうのが「天照大神」です。そしてその天照大神の「天の岩戸隠れ」について、興味深い話があります。「天の岩戸隠れ」神話が、日食のことではないかと仮定したとして、古代において起こった日食とその地域について調べた人がいるんです。古天文学を創始した元東京大学教授の斉藤国治氏。氏の１９９０年の著書、「古天文学の道　～歴史の中の天文現象～」の中で古代日本で起きた皆既日食を紹介しています。日本書紀を読むと、日食の記事やほうき星の記述がよく書かれています。実際にあった天文現象と史書などと比較検証してみることはたいへん興味深いですね。詳細は省きますが、魏志倭人伝など中国の史書の内容で判断すると２４８年にあった日食に斉藤氏は注目しています。卑弥呼が死んだとされる年にピタリと当てはまると言うのです。このことを知ったとき、私は軽い衝撃を受けました。古事記や日本書紀での「天の岩戸隠れ」の記述から、それは日食を神話化したものだろうと思っていたのです。だから、「天の岩戸隠れ」と卑弥呼がつながったように思えたんです。ただし、問題もありました。２４８年の皆既日食は（皆既日食は非常に狭い地域でしか見られません）能登地方と奥州横断をするような帯状の地域で起きたのだそうです。近畿地方では「皆既」ではありませんが、ほとんど太陽は隠れてしまったと予想されていました。では九州はどうだったかと言うと、その本には何も書かれていませんでした。紹介されていた図を元に、模写してみると下図のようになります。。目視による模写なので正確ではありません。上の図の黒い帯状の部分が、皆既日食が見られた地域です。図から想像するに、九州地方では大和の状況より「不利」な気がしますね。しかも大和地方と福岡の日の出時間の差で考えると、この日食のピーク時が、福岡付近での当日の日の出時刻にあたるようです。邪馬壹国九州説を信じている私には、あまり歓迎できない結果でした。しかも斉藤国治氏は専門外のためか明言は避けていますが、どうも邪馬台国近畿説の立場をとっているように思えました。ところが氏も後でミスを認めているそうですが、よくよく調べてみるともうひとつ注目したい日食があったんです。２４７年３月の日没頃のこと。今度は九州説の立場から見ると、当日の日食のピークが１８：２５。福岡地区の日没時刻が１８：３５。ちょうど太陽が燃え尽きるように沈んだ光景だったことでしょう。だいたい、卑弥呼の死が２４８年だったとは魏志倭人伝には書かれていません。２４７年のことが書かれてある部分のあとに書かれてあるので可能性としては２４７年没の方が自然だと思います。「卑弥呼以死（ヒミコもってシス）」卑弥呼は女王になった時点で既に「年齢は長大」と書かれていることから老衰や病死の可能性もありますが、処刑されたという説もあります。シャーマン的存在の女王であったとすれば、農作物の不作や狗奴国などとの戦況の悪化など、その霊力の衰えや喪失から殺されたと言うのです。ましてや上記のように太陽が燃え尽きて沈んだ現象も重なると「惑わされた衆」は卑弥呼を見放してしまったことも考えられますね。卑弥呼の死が老衰や病死ではなく、国勢や日食と関連があるとすれば、私は「卑弥呼が自ら命を絶った」と想像しています。少なくとも処刑では「大きな塚を作る」ことはあったとしても、奴婢とは言え百人もの殉死者があったとは考えにくいのです。２４７年、燃え尽きながら太陽が落ちていくような日食。そして卑弥呼の死。２４８年、明るさを取り戻しながら太陽が昇った日食。これは壹与の即位。そんなふうに考えている人もいます。卑弥呼は日巫女か。卑弥呼の没年あたりに２年連続であった日食。日食という現象と「天の岩戸隠れ」との類似。これらが果たして卑弥呼と天照大神をつなぐ「線」となるのか・・・。ここいらヘンが歴史のロマンですね。次回は高天原の天照大神と卑弥呼は、活躍した時代が違うかもってことや邪馬壹国は東遷したか。神武は東征したか。そんな疑問の「点」を書きます。私は浪漫という妄想に耽る癖があります。点を線にし、形作る作業はみなさんにオマカセします。何かひらめいたら、すぐに教えてください。

2007.08.18

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古代史よもやま　３

「邪馬壹国畿内説について書きます」なんて言って、「期待してます」というコメントをいただいてその気になってましたがやっぱり軽い話題にしておきます・笑。わたしが最近古代史ネタを書かないのは、正直言って「疲れる」から知識が中途半端なので、時間がかかるんです。「日本書紀にアンナことが書かれてあったなぁ」と思い出したら、その部分を引用するために、何十分も日本書紀を読み直したりするハメに。持っている資料を総動員して確認したりサイトで調べまくったりで、ヘトヘトになってしまうんです。おまけに最近は、何か貼り付ける画像がないとやる気が出ないと言うか撮影した写真をネタにしなけりゃ日記が書けない性分になってしまいました。ですから「邪馬壹国」ネタを書くとなると、画像に困るのです。吉野ヶ里に行きたくなるのです。玄界灘や周防灘の写真を撮りたくなるのです。それでもmagadelanroseさんやフローラル５５さんのように、たくさんコメントをいただけるなら書き甲斐もあるかも知れません。でも私の日記の場合、ＵＰした後の「あしあと」と言えば「本日のお買い得さん」「見ちゃぁ～ダメさん」とか「巨乳大好きさん」みたいなＨＮがずらりと並ぶのです古代史に関しては、jasminteaさんの怒濤のＵＰや素盞嗚さんの造詣の深さと学問的なアプローチに敬服してます。お二人のようなパワーがあれば、毎日でも古代史ネタで行きたいんですが･･･。その素盞嗚さんのblogでは今、神功皇后から邪馬壹国の女王の話題が展開中。ユニークかつ興味深い「素盞嗚説」が繰り広げられています。しかし、酔っぱらうと筆（キーボード）が止まるという欠点があり（人のことは言えませんが）その上最近は、「猫の越後屋一家」のネタにスペースがとられなかなか先に進みませんどうやら邪馬壹国の卑弥呼と、（大和の）神功皇后は関係がありそうです。素盞嗚さんの考えとは違うと思いますが、私はさらに、天照大神との関連も加えたいのです。同一人物でもなければ、活躍した時代も違う可能性大ですがそれぞれの伝承や説話が微妙に絡み合って、神話や日本書紀の記述に反映されているような気がするんです。よく言われていることですが、卑弥呼＝日の巫女ではないか。天岩戸隠れ（天照大神）とは「日食」のことではないか。真偽のほどは別として、想像をたくましくして日本書紀などを読むと気になる記述が散見されるんです。魏志倭人伝に書かれてある「卑弥呼以って死す」の年はいつのことか日本書紀に見られる天変地異の記述や、日食やほうき星が見えたといった記事。次回は「古天文学」の本を参考にしながら、日食や天変地異、そして天照大神、卑弥呼、神功皇后の話を書きます。

2007.08.04

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古代史よもやま　２

遺跡発掘に携わっていた方のウラ話。ある程度の発見があった時点で、少々大袈裟な話にしてマスコミにリークすることがあるそうです。発掘予算獲得のためや、遺跡の保存、発掘期間の延長などの目的で世論を味方に付けようというわけですね。そういう時に、「卑弥呼」「邪馬台国」ってフレーズは効果的なのだそうです。数年前、奈良の黒塚古墳で大量の三角縁神獣鏡が見つかったことがありました。このニュースはマスコミにも大々的に取上げられましたね。さすがにこのニュースは「リーク」ではないでしょうが、「卑弥呼の鏡３２枚」といった見出しが新聞各紙を賑わせていました。あのニュース・ステーションでも、生で現場から中継していました。当時のキャスターだった久米宏の質問に対する橿原考古学研究所の方の答えがイカシてました。「先生、やっぱり、邪馬台国の鏡なんでしょうか」・・・（しばし沈黙＆漂う緊張感）「いえ、三角縁神獣鏡は大和朝廷の鏡だと思います（邪馬台国の鏡ではない）」「ほう」「あ、でも。邪馬台国は近畿にありました」最後の一言がなければ痛快だったんですが・笑。反対に、見逃されてしまう遺跡もあることでしょう。個人や会社の利益のために、故意に黙殺されたり開発を急ぐあまり気づかない「フリ」をするこただってあるかも知れません。調査開始までにも、発掘調査にもすごく時間がかかることがあるそうなんです。宅地などを開発する業者にとっては、遺跡の発見は迷惑な話かも知れません。遺跡の多い地域では、ちゃんとした調査後に工事が行われるのでしょうがそうでない地域の開発は、どのような手順で行われるのでしょうね。先日の新聞記事にありましたが、最近では民間の調査会社もあるそうです。そういった会社の調査員も、公的機関と同じ様な研究者なのだそうですが質の低下や利潤・利害追求の弊害も一部で懸念されているそうです。高度成長の時代や、日本中にブルドーザーが走った日本列島改造の時代には、ひょっとしたら貴重な遺跡が黙殺されてしまったかも知れませんね。そんなことが本当にあったかも知れないということを、実際に体験しています。私が小学校５年生の時でした。学校の敷地を広げるために、それまでの敷地面積と同じくらいの田圃が埋め立てられました。当面は「第二グランド」として使用されましたが、私の卒業後は大きなプールや体育館が建設されたようです。その「第二グランド」で、ちょっとした騒動がありました。埋め立てに使用された土は、当時建設中だった市民会館の工事現場から運ばれて来ていたとのこと。吉井川という大きな川の河口近くの、川沿いから出た土砂だったそうです。赤土を盛って表面を平に整備される前、第二グランドは私たちにとって、かっこうの遊び場でした。そしてある日、クラスの女の子がそこで矢じりのようなものを見つけたのです。その子はもちろん担任の先生に報告しました。しかしなぜか担任の先生は、「あそこ（建設現場あたり）じゃ、珍しくない」そう言って、ほとんど無視していました。今になって思えば、先生はもっと違った反応をすべきではと思いますが･･･。すごく貴重な教材が見つかったのですからね。それからしばらくの間、私たちのクラスは大パニックでした。休み時間になると、大勢の児童が「第二グランド発掘調査」に繰り出したのです。私も弥生式土器のかけらをたくさん見つけました。縄文式土器に近い形のものもありました。子供だった私でも、なんだか「これでいいのだろうか」って気はしましたね。市民会館は予定通りに完成し、第二グランドはきれいに整地され土器や矢じり、眠っているかも知れない古代の集落のことは忘れ去られて行きました。大切にしまっておいた私の土器のかけらですが、いつの間にか、母に捨てられてしまいました。いまだに悔しくて仕方ありません。母は土器のかけらをどこに捨ててしまったのでしょうか･･･。私もどうして「どこに捨てた？」と母に聞かなかったのでしょう。机の引き出しに入れていた土器は、母には瓦か植木鉢の破片にしか見えなかったのでしょうね。しかしあの土器片が、何百年後かに発見されることになったら・・・。コンクリートの瓦礫や鉄といっしょに見つかったりしたら、未来の学者を悩ませるかも知れません。遠い未来、映画のように地球が「猿の惑星」になっていたら、猿学者は悩むでしょうねぇ。「２０世紀の人間は、石の矢じりで狩りか？」なんて見出しの記事がでたりして・・・。て、ことで猿学者が提唱する、邪馬台国畿内説はまたの機会に。

2007.07.28

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古代史よもやま　１

大学入試の社会では地理を選択していた私が、古代史を好きになったのはおよそ２５年前のこと。きっかけは「日出処の天子」という漫画でした。以来、厩戸皇子（聖徳太子）に惹かれ彼に関する書物を読みまくりました。明日香や斑鳩など、厩戸皇子ゆかりの地を訪ね歩きました。しかし当時は、時代の流れには疎くただただ厩戸皇子のことばかり調べていたのです。その後間もなく長崎に転勤になり、厩戸皇子ゆかりの地巡りは途絶えました。ちょうどその頃、九州は佐賀県の吉野ヶ里遺跡が話題になりました。吉野ヶ里には３回ほど行きました。「魏志倭人伝」に書かれてある通りの邪馬壹国の「クニ（＝環濠集落）」の発見で、邪馬壹国論争にも決着がつく日が来たと思ったものです。気功を少し習ったことがあるのですが、霊能者でもある私の気功の師匠は吉野ヶ里で「卑弥呼が見える」と言ってました。吉野ヶ里は邪馬壹国ではないと思いますが、邪馬壹国連合の一国に間違いないと思います。ところが、世間ではまだまだ旧態依然（あえてこう表現しますが）として邪馬壹国畿内説も根強いのです。私の周辺に、古代史ファンはいません。しかし、友人や職場の同僚と邪馬壹国のことが話題にのぼるとほとんどの人が「（なんとなく）畿内説」という認識を持っています。理由は「ただ、なんとなく」だそうで･･･。最初に習った時の先生の教え方とか印象に残った本やＴＶ番組とか人それぞれだとは思います。私の偏見かも知れないと思うのですが、メディアの影響もあるような気がします。新聞記事で古代史が取上げられることがありますが、「邪馬壹国には『畿内説』と『九州説』があるが、『畿内説』が主流のようである」などという根拠が曖昧な記述を時々見かけます。考古学上の新しい発見のニュースは、近畿のものが多いのは仕方ないことです。しかしそれが３世紀頃のものだと、全て邪馬壹国と結びつけられています。新聞の見出しに「邪馬台国の遺跡か」とか「卑弥呼の鏡」などと書かれていたニュースがありました。しかしこれには、ちょっとしたウラ話を聞いたことがあります。インターネットがダイヤルアップの時代の、古代史仲間に発掘調査員の方がいました。発掘調査にもいくつか種類があります。純粋な学術的調査の他に、開発にともなうものがあります。宅地や工場団地の造成や道路などの開発時に偶然見つかった遺跡の調査など。後者の場合、様々な利権がからんで来るんです。次回は発掘調査員のウラ話と、邪馬壹国畿内説について書きます。ホントはもっと書くつもりでしたが「白波」が回ってきたもので･･･。やっぱ焼酎は芋ですな、スーさん。

2007.07.25

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pleの鳥肌事件なり

３回に渡って「天皇陵について」を書きました。きっかけは神功皇后陵（五社神古墳）が、学者の立ち入り調査が実施されるかも知れないという新聞記事。先の日記にも書いたように、神功皇后は神社の祭神としても古代史の本の中にもよく目にするお方です。しかし今まで、あまり注目はしていませんでした。さて、昨日書きかけた「鳥肌事件」です。あまり期待しないでください。　　　*　　　*　　　* 私が地図を見て迷うはずがなく、既訪問地の土地勘には自信もあります。私の嗅覚は、下手なナビよりも頼りになると自負しています。その私が先日、奈良で迷いました。場所は大和西大寺。関係ありませんが、私は岡山の西大寺出身です。薬師寺のあとに、その日最後の訪問予定地だった平城宮跡に向かいました。近鉄の大和西大寺駅に行き、駅にあった２つの地図で平城宮跡の場所を確認しました。鼻歌まじりで、いつものように自信たっぷりで歩きました。１００ｍほど歩いた所で方角が違うような気がして、少しコースを修正しました。妻や子を連れている時の男にとって、ここで戻ることは「敗北」を意味します。駅から３００ｍも歩けば、野原のような平城宮跡が見えるはず･･･。ところがどんどん住宅地の迷路のような道に入り込んでしまいました。さすがに迷ったことを認めようと思った時、周辺地図が描かれた看板を見つけました。屈辱的な気分ではありましたが驚いたことに、その地図には平城宮跡が載っていませんでした。「げっ･･･」こんなはずでは･･･ふと左後方を見ると、近鉄「平城」駅の看板が見えました。迷走した道を戻る気にもならず、電車を使って大和西大寺に戻って仕切直しすることにしました。平城宮はどうしても行きたい場所だったのです。そして平城駅にあった地図を見た瞬間、私は一瞬固まってしまいました。（おまたせいたしました、ここでやっと出ます）鳥肌がたちました。ナント･･･「あっ」と驚く･･･タメゴロウ（古）私がいたのは、平城宮とは正反対の方角と言っていいほどの場所。･･･と、言うだけでなくその地図で私が見たものは･･･「神功皇后陵」だったのです。　　　　　ほら。　　　　ほら。パクリ画像と思われてはいけないので、普通ではあり得ないアングルで･･･期待はずれの結末で申し訳ありませんが私にとっては偶然では片づけられない出来事でした。神功皇后さまおみちびき、ありがとうございました。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわり。

2007.07.18

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