山田維史の遊卵画廊

2016/04/10(日)12:06

シェイクスピア「ファースト・フォリオ」新発見

本、古書、装丁(13)

 世界で最も貴重な本のひとつとされる、シェイクスピアの死後7年目にあたる1623年に出版された全3巻の戯曲全集の初版、いわゆる「ファースト・フォリオ」が、イギリス・スコットランドの邸宅マウント・スチュアート・ハウスで発見された。CNNが伝えている。  奇しくも今月23日はシェイクスピアの没後400年目の命日。生誕452年になり、誕生したのも4月といわれているが、正確な日にちは判明していない。  「ファースト・フォリオ」は、現在、世界に231冊存在することが確認されていて、このたびのマウント・スチュアート・ハウス・コレクションの新発見により234冊となった。  じつは、その234冊のうち、日本の明星大学が10冊所蔵しているのである。  近頃やたらに巷に氾濫している言葉を使えば、「奇跡」である。いや、これは本当に「奇跡的なコレクション」と言ってさしつかえない。今回のイギリス本国での貴重な発見に「専門家らの間では喜びの声が上がっている」-----とは、CNNの言葉だ。  私は数年前、明星大学で開催された「ファースト・フォリオ」に関する学術セミナーにおいて、所蔵の「ファースト・フォリオ」を見せていただく機会があった。   じつは同大学は、今年、シェイクスピア没後400年を記念して特別展「シェイクスピアこそ人生だ」を開催しており、「ファースト・フォリオ」の一部も10月2日まで特別公開している。入場は無料だが、前もって観覧予約が必要。  明星大学は他にも多くの稀覯本のコレクションがあり、その所在場所を公表しない厳重管理下にある(銀行の大金庫室並みとだけ申上げよう)。そして、それらの公開の際は、見学者の呼吸によって室内の湿度や温度が変わることを防ぐために、あらかじめ入館者の人数制限をしているのである。  シェイクスピアの戯曲やソネットを原文で読むのはなかなか大変だが(古英語ということもあり)、日本語訳で親しんでいる一般読書人でも、「ファースト・フォリオ」を目にすることは、おそらくゼロに近いのではあるまいか。明星大学は今回の公開に、複製本も用意して、ページを繰って見られるようにしたそうだ。  ヤボなことを言うと、「ファースト・フォリオ」1冊の価格は、1億2千万円をくだらないでしょう。  ここで耳寄りなニュースを。  来る5月25日に、ロンドン・クリスティーズのオークションに4冊の「ファースト・フォリオ」が出品される。価格は1億2千3百万あたりから開始し、1億8千4百万円を越えるでしょう。昨日、出品本のニューヨーク展示会が終了しました。

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