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2019/08/19
テーマ：創作童話(818)
カテゴリ：カテゴリ未分類
クリサーラは宙に浮かびながら下にいる皆に話しかけます。全身から
白い光を放射しているのはいうまでもありません。 「人類もブッチャーに支配された社会から、紆余曲折はあるとしても以前の状態に 戻るはずです、それに期待しましょう。ブッチャーの居場所ですが、グラッチの 調査員によると4日前、ニューヨークに戻っているそうです。赤膚族新種生産 研究所で増産の目安が整い安定供給ラインを突破してから帰還しました。腹心の 部下、グラシオラズと共に人類統治を盤石のものとするために各国に送り出した 配下の者とコンタクトしています。マンハッタン区のパーク・アベニュービルに あるグラシオラズの住居を改造して一緒に住んでいるそうです。 当然ですが周りの地下通路は遮断され、地上での交通網は何重にも張り巡らして いる警戒線を突破するのは困難です。ビルや街角の要所には武装ロボットと人間の 警備員が目を皿のようにして警戒しているので、突入すれば莫大な犠牲が生じ ます。ブッチャーに近づく作戦のひとつにモグンバをロボットへ変装する案が ありましたね、ザビエス、その後どうなりましたか？」 4ｍもの巨体を手作りの椅子に腰かけホンドリスのドールと遊んでいた ザビエス、急に名前を呼ばれて慌てます。長い左腕のひじをゆっくりと 折り曲げドールをその上に乗せ、滑り台遊びをしていたのです。 「は、はい、モグンバはいつでも見た目だけなら、完全なロボットになれますよ。 ＡＩ搭載のランクＡだけが用いている周波数の解析を済ましたので、ロボット たちの会話も可能になりました。ただしグラッチの監視員によればブッチャーの 近くに行けるロボットは限られ、ロボットへの命令や指示はグラシオラズが 直接行っているようです」 「ブッチャーのそばにロボットは気軽に行けないということですね」 「そうです、モグンバを潜入させたとしても警備ロボットを混乱させる程度です」 「なにか良いプランはありますか」 なにも思いつかないザビエスは、デルフミュームに助けを求める表情で 顔を向けました。するとさっきまで自分の長い左腕を滑り台代わりにして 遊んでいたドールが、今度はデルフミュームの右腕で同じ遊びをしている のです。ザビエスの視線を無視したデルフミュームは、ちょっこちょっこ動く ドールを目で追っていてザビエスなど眼中にありません。 無言の時間に耐えきれないのか生き物たちが身体をユサユサ動かし始めた とき澤登沙祐里がクリサーラの眼下にやって来ました。 「ザビエス、あなたの肩を貸してください。クリサーラさんの目の前に いきたいので」 右手を差し出しサユリさんを持ち上げ自分の左肩まで運ぶザビエスは、 満更でもない表情を浮かべています。 つづく お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
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