2024/05/11(土)04:49
ベトナムと云えばバインミーでしょう
英語のレッツイート(Let's Eat)はまんま「さぁ、食べましょう」、フランス語のボナペティ(Bon appétit)は「召し上がれ」、イタリア語のブォンアッペティート(Buon appetito)は「よいお食事を」のイミで、みんな食事の前に発する言葉です。
しかし日本語の「いただきます」や「ご馳走さま」みたいに、料理を作ってくれた人や、食材に対して感謝の意を表する言葉は世界中見渡しても他には見当たりません。
ところがベトナムでは食事の前に「チュク・ノン・ミェン(Chúc ngon miệng)」と云う言葉を発して、これは「いただきます」のイミです。
ベトナム料理と云うとみなさんは「フォー」とか「ゴイ・クオン(生春巻き)」を連想される方が多いと思います。
とにかくベトナム料理はあっさりしてるのが多くって、濃い味好みの人は、後から調味料を足して調整していくのですね。
なので日本人にはとても受け入れやすい。
パクチーがニガテな人は、オーダーのときそう云えば抜いてくれます。
もうひとつ忘れてませんか?
「バインミー」 バゲットに肉や野菜を挟み込んだベトナム風サンドイッチです。
あんなモン料理と云えるの?
ただの安くて手頃なだけの屋台料理やんか!
たしかにバインミーは安いですね。
カフェなんかだと3万ドン(約181円)以上しますが、露天だと1万2,000ドン(約72円)~1万5,000ドン(約91円)。
高いものでも2万5,000ドン(約151円)~3万ドン(約181円)くらい。
これでも円安で貨幣換算率が変わっての値段です。
実は、ベトナムのバインミーとよく似たサンドイッチがラオスやカンボジアでも売られてます。
ラオスの「カオ・チー・サイ・クワン(Khao Jee thai kuan)」、カンボジアの「ヌンパン(Num Pang)」がそれで、共通点はサクサク食感のフランスパンです。
つまり植民地だったときのフランスの置き土産なんですね。
植民地そのものは列強が好き勝手やったとんでもない所業ですが、こうして食文化では貢献してたのです。
ラオスの「カオ・チー・サイ・クワン」が屋台で10,000キップ(約130円)、カンボジアの「ヌンパン」は屋台で4,000リエル(約151円)くらい。
バゲット自体はフランス由来ですが、ベトナム人によってバインミーに生まれ変わることによって独自世界が作られました。
バゲットに塗るパテとマーガリンは、バゲットの柔らかさとともに歯ごたえを引き出し、具には焼き豚やソーセージに加えて漬物、パクチー、キュウリがこれでもかと詰められます。
とにかく食感が秀逸。
ラオスの「カオ・チー・サイ・クワン」は食べたことあってよく知ってるのですが、ベトナムのバインミーはヨメとホーチミンに行ったときが初めての経験。
少食なふたりでは、1個のバインミー半分づつで丁度いい腹具合になりました。
もはやバインミーは世界的なサンドイッチですね。
最近、バインミーはアメリカのCNN投票でアジアのベスト・ストリートフードのトップ50に選ばれました。
また2011年には、バインミーがオックスフォード辞書で正式に固有名詞になりました。
1958年、サイゴン(ホーチミン)のホアマーベーカリーは「あらゆる具材の入った」持ち帰り用フランス風サンドイッチの販売を開始しました。
その後、小麦粉の品質やパンの大きさも大きく変わりました。
本家フランスと異なり、ベトナムのパンは手にフィットする大きさで、外皮はカリカリ、ひび割れが多く、中はフランスのバゲットよりも柔らかくスポンジ状です。
このバゲットに、さまざまな種類のハム、パテなどと共にピクルスやパクチー、スパイシーで風味豊かな唐辛子などを挟み込み、ベトナム人はとても繊細な料理に生まれ変わらせたのです。
ちなみにバインミーはベトナム語で「パン」のイミなので、食パンで作ってもバインミーです。
ところで欧米人ってホーチミンのことをみんな旧名の「サイゴン」って平気で使ってるのですけど、アレっていいのかしら?