秋のうらら【石田】
ぼんやりと空気の冷たさに身を浸してみると、まだわずかに残る秋の暖かさに混じって、街を吹きぬける寒風の乾いた匂いを感じる。その匂いは私に郷里を思い起こさせる。憂いを帯びた秋風に、思わず目に汗が滲む。なんてことはない、目にごみが入っただけサ。秋のみならず、私の憂愁も深まってきております。ってな感じで口走りながら、プチ憂いに浸ってみたりする今日この頃。秋だろうとなんだろうと、時間は留まることなく流れていく。時間の波に乗るのは難しく、気力の要ること。その荒波を征し、いま一度大いなる海路に挑まんとする私。その眼差しは秋晴れの空に燦然と輝く太陽のようであったという。しかし気を抜くとすぐに曇ってしまうのが難点である。おっと、いかんいかん。秋の憂いに酔いが深まるにつれ、自分への酔いも深まってるゼ。