簡易型ATXファンレス電源(7)
電源の回路の解説を簡単にしておく。基本的にはMC34063Aの出力を増力しているということなのだが、このICはスイッチング電源用としては、古典に近いこともあり、アプリケーションノートでは、バイポーラトランジスタを使っているものしかない。手元にパワーMOS FETがあり、これを使おうと思ったのだが、パワーMOS FETを使うのは全くの初めてのため、当初いわゆる勘所がよくわからなかった。バイポーラトランジスタと比べて大きく違うのは、1)ゲート駆動電圧が、比較的高い。(今回のMOS FETは、約4.5V以上必要)2)ゲート容量が結構大きい。という2点である。06年3月23日に載せた回路図を参照すると、1)は何を意味するかと言うと、Q5がONになると、ドレイン-ソース間の抵抗は、数mΩになる。したがってソースとドレインの電位はほぼ同じになることになる。このときドレインは入力の+12Vに接続されているわけだから、ソースの電圧もほぼ12Vになる。一方、ゲート電圧はこれより約4.5V以上必要なので、単純計算で約16.5V以上が必要になる。つまり、電源電圧より高い電圧が必要なのだ。この回路図では、とりあえずの電源として9Vの乾電池を+12Vにつなぎ、21Vを確保している。SWを上に切り替えた場合は、この電圧を作るために、スイッチング電源では、平滑コイルの入力側の電圧は絶えず、入力電圧と0Vの間を切り替わっていることを利用して、約23Vを確保している。この部分の回路(C3,C4,D1,D2)はチャージポンプ回路と言われる。あるいは、構成だけみれば、倍電圧整流回路である。理論的には、電源電圧の2倍(24V)になるが、現実にはD1、D2の順方向降下電圧(Vf)の分だけ低い電圧になる。D1,D2はショットキバリアダイオード(SBD)なので、Vfは約0.4~0,5Vくらいになる。あとは、MC34063Aの内部がダーリントン接続のバイポーラトランジスタなので約1.6Vくらい降下するし、D4のVf(普通のシリコンダイオードなので、0.8V位)ゲートの電圧は、21V+αとなっている。実はこのMOS FETのゲート-ソース電圧は最大20Vなので、Off(ソース電圧はほぼ0V)からOnになるときは、定格を超えてしまっている。ほんとうはもう少し低い電圧にしたいのだが、ゲート保護用の定電圧ダイオードが内蔵されているので、いいことにしてしまった。2)ゲート容量が大きいということは、ゲートの電圧を変化(MOS FETをON/OFF)させるときに、電流駆動能力が結構必要ということを意味する。当初、この図のなかの図2のような回路にしてあったのだが、抵抗をどんどん小さくしていっても、駆動波形がきれいにならずに、半分あきらめかけたのだが、ちゃんと調べると、D4,Q6のような回路がみつかって,うまく動作するようになった。R9は負荷抵抗というより、Q6 2SA1015のバイアス抵抗である。R9も10KΩ位にすれば、1/6W程度の抵抗が使えるし、消費電力も少なくなるのだが、それだと、駆動波形がなまる。Q6をダーリントン接続にすれば、よいが、プリント基板上の場所がなくなってきたのと、ダイオードがD5が放熱器が必要なほど、電力を消費するので、これでよしとした。なお、2SA1015はhfeが大きいGRグレードもあるので、そちらを使えば少しは改善するはずである。(つづく)-------本日の御託しばらく前のことだが、某所より、「国際単位 HANAGE」の話が廻ってきた。以前より知っている話だが、NET上で調べてみると、結構見つかることがわかったが、オリジナルはここ(だと思う)