2007/10/02(火)07:07
アンドリアのブッラータ
プーリアに行くことを決めた時、アンドリアでブッラータを買う!ということも決めました。
ブッラータは作り立てが一番おいしいという話が長年かけてすり込まれてたもんで、本場に行きたい!とずーっと思ってたんです。
ブッラータは、モッツァレッラと同じタイプのチーズを袋状にして、その中に、同じチーズの切り落としをほぐしたものと、乳酸発酵体入り生クリームを混ぜた“ストラッチャテッラ”を詰めたもの。
生クリームが冷めると切り落としの生地と一体になってバター状になるところから、ブッラータという名前がついたんだって(イタリア語でバターは“ブッロ”)。
できて3、4時間以内なら、生クリームと生地が混ざったばかりの状態。
48時間以内なら、半液体状。
それ以上経つと生地もストラッチャテッラも締まって硬くなる。
というチーズ。
さて、
アンドリアにチーズ屋はたくさんあるけど、私が選んだのは、ヴィッサーニもここから毎週仕入れている、という店。
ヴィッサーニは、イタリアで5本の指に入る超有名高級リストランテ。
そんな店が仕入れてるんだから、おいしいに違いない!
その筋の間では、最高クラスの作り手って言われてるチーズ屋さんらしい。
ブッラータは、2種類の牛乳を混ぜて作るんだって。
同じ品種の牛のミルクで搾乳時間が違うものか、品種の違う牛のミルク。
なんでもこの店では、イタリアの品種と、もっと脂肪分の多いオランダの品種の牛のミルクで作っているそう。
モッツァレッラとブッラータを毎日計1トン作っていて、1kg7ユーロで小売もしてます。
そんなわけで、カステル・デル・モンテで中世のミステリーに浸った数十分後、私たちは、このチーズ屋さんにやってきたのでした。
店は、ごく普通の小さな店。
ところが、普通じゃないのが途切れずに次から次にやってくるお客さん!
すごい繁盛店ですよ、この店。
↑
かなり見づらいけど、外から見た店。
お客さんは、みんな辛抱強く順番待ってます。
にこりともしないおっかなそうな店員さんたち(事前に調べた時、写真で見た顔だー!)にちょっとビビリながら並んでいると、いよいよ私の番。
「あの~、これ(ショーケースのチーズを指差す)、ブッラータですか?」
「これ?いいえ、スカモルツァですよ」
ひえー、恥ずかし~。
スタートから、軽い軽蔑の目のような・・・。
「えーっと、じゃあブッラータください!」
「今日中に食べるんですね」
「え?は、はい・・・(違うなんて答えたら売ってくれないに違いない)」
「何個?」
「1個」
「大きさは?」
「え?大きさ?(ドギマギ)」
「何人で食べるんですか」
「3人です」
店員さんは、店の奥の作業場に引っ込んでいきました。
ふう~、これだけのことなのに、緊張したあ。
やがてシートに包まれたブッラータを持って再登場。
「この大きさでいいですか?」
おー、注文に合わせて作ってくれるんだー!
作り置きしてショーケースに入れておくなんてことはしないんだ。
「はっ、はいっ!」
ブッラータを包装しながら、店員さんがびしっと一言。
「冷蔵庫に入れちゃダメですよ」
「はっ、はい」
そしてお代は?
「3ユーロです」
や、やすい!
拍子抜け~。
「今日中に食べろ」「冷蔵庫には入れるな」と命令までされて買ったブッラータ。
宝物のようだ~。
それにしても、この店の人たち、ほんとにプーリア人?
愛想笑いなんてまったくなし。
他の客にも、いつ食べるのか厳しく確認してからチーズを売ってる!
がんこ一徹の職人さんたちでんなあ。
ブッラータを買ったのはお昼頃。
この後、他の町に足を伸ばして、ホテルに戻ってきたのは夜。
作ってから6時間ぐらい経っちゃったなあ。
さあ、いよいよ食べるぞー。
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こんな風に包んでくれました。
↑
包装紙を取るとこんな状態。
薄い紙にくるまれていて、チーズごと結んである。
シートを取ると・・・・・
↑
ひえ~、なんだこれは。
予想外の展開だあ。
このだれーっとしたの、全部チーズです。
ビニール袋みたいにみえるけど、これ、ブッラータです。
私が今まで抱いていたブッラータのイメージが、音をたてて崩れていく~。
これは果して、正しいブッラータの姿なんだろうか。
おっかなびっくりチーズにナイフを入れて開いてみると・・・・・・
↑
うわあ、濃い!
一見して分かるんですよ、濃厚さが。
フォークですくって食べてみると、お~、バターだけどミルクだー。
バターを食べるなんて考えると気持ち悪いけど、これはとびきり濃厚なミルクを味わってるような感じ。
バターのように濃くて重厚なんだけど、高原の草のように新鮮!
おいしい~。
ストラッチャテッラはまだ固まってないから、スパゲッティみたいにフォークに巻きつけることができるぞー。
こんなチーズ、生まれて初めて食べた~。
これが作ってからたった6時間しか経ってないなんて!
何年も熟成させたみたいな大物ぶりだあ。
ちなみに、プーリアで最初に入ったレストランで最初に出てきたのがブッラータ。
その時食べたのがこれ。
↓
これもすごくおいしかったけど、これとはまったく違う味。
ようやく分かった。
今まで知っていたブッラータは、一度冷蔵庫に入れちゃったやつだったんだー!
それに、このだれーっとした姿は、3人分の小さなブッラータのために、普通サイズの大きなチーズにストラッチャテッラを詰めたから、こうなっちゃったんだね。
皮が薄くて詰め物が多いから、その結果こんな外見になっただけのこと。
なるほど、ブッラータってのは、ストラッチャテッラを味わうものなんだ。
それにしても、作り手によってこれだけ味が違うとは、奥が深い。
この店のブッラータはあまりに濃厚なので、毎日食べるチーズじゃないな。
大トロみたいなもんだね。
ブッラータのこってりした味を、パーネ・ディ・アルタムーラで落として・・・・・・
↓
この後、夕食を食べにレストランへと出かけたのでした。
我ながらすごい胃袋。
続く~。