北かぜ
また、寒くなった東京それでも、暖かいような気がする。 昨夜遅く、昼間の暖かさが嘘のように強い北風が、飲食店の看板を叩き道路に横たわらせていた。 薄手のコート、襟を立てるが寒気が胸元から入り込み、体温を下げた。 日付は、今日に変わっていたがどうにも身体が冷え、暖まりたくてラーメン屋の扉を開けた。 半分も麺が減った頃、急に目の前が見えなくなる。何?と思った時には、顔からスーツまで水浸し。床を水で流そうとした店員が誤ってカウンター越しの客(自分)にホースの水を飛ばした、と気付いたのは数分後。 「暖まろう」としたのに、水浸し。店員が気付いてタオルを持ってきたのは横にあったティッシュで大方拭き終わったあと。 「すいません!」と店員。 「... 。」無視して、残りの麺を流し込む。 「すいません」 じゃないだろ、「申し訳ありません」だ。などと思いながら、怒る気力もなくて一刻も早く、この場を去りたかった。なにしろ、濡れて寒かったから。 こういう時って、結構怒られたほうがすっきりして、いいんだよななんて思うが、何も言わず店を出た。 ぬれ鼠で、この北風くん。駄目な時は、なにをやっても...。 お気に入りのスーツでなくて良かったなんてポジティブに思うことで眠りについた、昨夜の出来事。