座乱読無駄話日記2

2022/09/07(水)21:41

ジーヴス

歴史・本など・・(292)

(2015年11月の記事です)  ジーヴスシリーズというのがあります。  知る人ぞ知る・・・というようなものでしたが、最近あちこちで目にします。 (上皇后さまが言及されたとのことで、一時はやりました)  国書刊行会から、ジーヴスコレクションとして「比類なきジーヴス」(P・G・ウッドハウス)を第一作目として、14冊も出ています。  これは、よしきた、それゆけ、でかした、がんばれ、お呼びだ、感謝だ、サンキューとかを頭につけて、やたらジーヴスをこき使いまくる・・みたいなタイトルが多いですね。  この同じ国書刊行会が、イギリスのテレビドラマ「ジーヴス&ウースター」のDVDまで出し、字幕を、シリーズの翻訳者みずからつけたというものですが、レンタル屋にはないようです。    ほかに文春文庫で「ジーヴスの事件簿ー才知縦横の巻ー」と「ジーヴスの事件簿ー大胆不敵の巻ー」が出ていますし、コミック版では、「プリーズ・ジーヴス」(勝田文・花とゆめコミックスペシャル 白泉社)があります。  これら、シリーズを全部読むには、なかなか大層な量ですし、まあ、全部読んだわけではありませんで、てっとり早く文庫とコミックに手を出すというイージーな選択をしました。    作品が発表されたのは1921年というから、日本では大正十年です。芥川龍之介はまだ「鼻」しか書いていないし、江戸川乱歩はデビュー直前ですよ。  そんな時代に、イギリスの貴族階級がいて、使用人がいて・・という御話です。  主人公ジーヴスは、あほボンのバーティーにお仕えしています。  バーティーは、伯父さんが大地主でお金持ちの伯爵さまで、いずれ爵位を継ぐことになっていますが、今はただの遊び人。イートン校を経てオックスフォード大学卒業で、24歳という年齢なのに、ほんまにアホの子です。  この、人はいいけど、ちょっとヌケてるバーティーのまわりには、類友というか、似たりよったりなアホの子(オックスフォード大学って賢いんじゃないの?)が、ぞろぞろいる。現役学生の双子の従兄弟なんか、なんともいえん、どーしよーもないガキ。やることが、ただのアホの域を超えている(ほんまにオックスフォードって賢いの?)。笑わせてくれるけど。  そのうえ、ややこしい伯母さんと叔母さんがいて、いろいろやかましい。伯母さんが世話しようとする嫁は、これらも、みなクセのある女たち。詐欺女か、または「あほっぽい」バーティを「教育」しようとする学識豊かな猛女。  こういう女性に取り巻かれて、いつもピンチになってしまうのがバーティーの人の良さというか、無防備なところというか・・。ある意味、自らしょうもないことをしでかす結果なんですけど、最後は「ねえ~・・ジーヴス~!」と泣きつくとこなんか、のび太とどらえもんですかねえ。  ですけど、ジーヴスのジーヴスたるゆえんは、どらえもんのようなあったかいもんではない。危機に陥るご主人様を、あくどくフォローするのがジーヴスの役目です。  ジーヴスは御屋敷を取り締まる執事ではなく、ロンドンのフラットに、ご主人様と二人暮らしで、このぼっちゃん一人だけにお仕えしている従者、あるいは侍臣です(あ、黒執事のセバスチャンは、ぼっちゃん一人だけに仕えて、二人暮らししてたこともありますけど、ぼっちゃん自身が、当主で伯爵さまなので、彼は執事です)。で、文春文庫版では、ジーヴスは「従僕」という表現になっています。  このジーヴスの根性の悪さというか、腹黒さというか、それがまた、あほのご主人様と絶妙の対照をなすところが、この2人の面白いところですね。  ↓ジーヴスの反抗顔三種 「プリース・ジーヴス」から。     特にジーヴスは、日常生活でも頑固なところがあって、バーティが買ってきた「趣味の悪いと、彼が判断する」服飾品などは、とことん敵対する・・というか抹殺する手段をひねりだし、最終的には「破棄」に成功してしまいます。  どんなにがんばって、バーティが抵抗しようと、勝ち目はないんですけどね。これに比べたら、「謎解きはディナーのあとで」(東川篤也・小学館文庫)の影山なんて、まだまだ修行が足りん・・ってかんじでしょうかねえ。  だから、伯母さまには、「ジーヴスはお前の飼い主」とか言われてしまうし、婚約者からは、結婚式の5分後には、彼は解雇する、という決意をされたりする。  しかも、バーティーが、あまりにあほなことを言いだすと、あからさまに顔で抵抗し、目つきで批判し、言葉のニュアンスで否定する。  主人の意見に、賛成しかねる時は、   「さようでございますか? ご主人様?」  どんな感じで言うんでしょうねえ。この? ? の部分が問題です。  あまりにジーヴスの「作戦」があくどいと思って、ついにキレたバーティが、「おれたちは、もうおしまいだ!」(夫婦じゃないんですけどね)と決意をしても、「お前は首だ!」と叫んでも、絶対勝てない。  「首ということですから、もう主従関係はないので、率直に申し上げさせていただきますと・・・・・」で、理路整然と話すジーヴスの論理に、真実を感じ取ってか、言い負かされてか、「またぼくに仕えてくれるか?」と詫びを入れる始末。  いや・・・いいご主人さまですよ。ほんと。    ビジュアルとしてはコミック版の彼が、目つきが悪くておもしろいんですが、辛気臭い表情ばかりが印象に残ります。  DVDは見てないのですが、写真や予告編だとジーヴスは優しげで、笑顔が多いように見えるんですね。慇懃な態度で、実は反抗してる・・・?   舞台のミュージカルでは、ジーヴスが里見浩太郎で、バーティーがウエンツだそうですが、このジーヴス・・少しトシとりすぎてんじゃないかって思うんですが、演技力でカバーかなあ?(どっちかというと助さん格さんの年齢の俳優さんにやってもらいたかったですね)。  まあ、私として、結局、イメージかためられませんでした。年齢も、いまいち決めにくい・・。バーティより10歳くらい上かなあ・・? けど、一応、​人名事典で描いてみました​が・・・。  あと、執事としては、私的には、「エロイカより愛をこめて」(青池保子)の、少佐のところのコンラート・ヒンケルさん、目ざというえに、ちょっとぶっとんだ性格をしていますが、好きですねえ。禿げている(すだれも含む)熟年執事の代表でしょうねえ。 ↓「第一発見者は執事の務め」・・いいですねえ♪   ↓執事はあくまで従順に   比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション) [ ペラム・グレンヴィル・ウッドハウス ] ジーヴズの事件簿(才智縦横の巻) (文春文庫) [ P・G・ウッドハウス ] プリーズ、ジーヴス(1) (花とゆめコミックススペシャル) [ 勝田文 ]   こちらも、よろしく。 ​座乱読後乱駄夢人名事典​     絵置き場。旧HP「座乱読ーザ・ランドック」の歴史上人物2000人描きの後‥少し停滞・・・。  ​座乱読ー別荘ー​     漫画をおいています。今は、高師直が主人公?の「足利家の執事」連載中・・・ 

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