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June 10, 2007
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カテゴリ:ヒーロー映画
 プロ野球の選手よりも、宇宙飛行士よりも、“秘密情報部員”になりたかった。秘密情報部員になれば、新兵器満載の車を乗り回し、かっこよく国際陰謀団を倒して、美女にモテモテの毎日が保証されると考えていました、おバカな子。おバカついでに、もうひとつ。ヤマハ音楽教室に持って行くプラスチック製のバッグがありました。そこへおもちゃの拳銃や、ガシャポンカプセルで作ったコショウ爆弾などの秘密兵器を詰め込み、気分はすっかりスパイが持ち運ぶアタッシュケース。
 今は“秘密情報部員”なんて言い方はしないのでしょうか。でも、世代的にはエージェントや諜報員とりやっぱり“秘密情報部員”。また、007は、「ダブルオーセブン」とは気取った感じがして言えない。やっぱり「ゼロゼロセブン」でしょう。
 なんで“秘密情報部員”に憧れたかといえば、やはり007及びスパイ映画の影響。「007は殺しの番号(1962 のちに『ドクター・ノオ』に改題)」が大ヒットしてシリーズ化されるや、スクリーンには夥しい“007もどき”が登場しました。「サイレンサー/沈黙部隊(1966)」「電撃フリントGOGO作戦(1966)」などなど。本家ジェームズ・ボンドがハーゲンダッツだとしたら、マット・ヘルムやデレク・フリント(名前からしてカッコいい)は、レディーボーデンだったりサーティーワンだったりします。けれど、どれもアイスクリームであることには変わりありません。007的要素である“新兵器”、“国際陰謀団”、“美女”はどの作品にもついています。
 さらにチューペットとかガリガリくんなど、アイスクリームではないけれど、氷菓として同じ売り場にまとめられて“アイス”として売られています。「077連続危機(1965)」「殺しの免許証(ライセンス) (1966)」など紛らわしいタイトルの作品、宣伝ポスターなどもいかにもジェームズ・ボンド風な作品は、本家007と間違えて入場料を払った人もいるのではないでしょうか(ちなみに「007ロシアより愛をこめて(1964)」は初公開時「007危機一発」でした。イメージ的に“危機一発”を上回る勢いを求めて“連続危機”としたのか?ピストルよりもマシンガンで行けと。タイトルだけは)。
 日本のアクションテレビドラマ「キイハンター(1968~1973)」、主題歌は“非情のライセンス”。なんだかタイトルが「殺しの免許証(ライセンス)」と似ています。それだけでなく、「殺しの免許証(ライセンス)」のメインテーマ曲に歌詞をつけたような印象でした。
 ショーン・コネリーの出演した「丘(1965)」という作品がありました。私の田舎では、映画館の看板に“ショーン・コネリー主演、007シリーズ最新作「丘」”と表示されていました。意図的なのかうっかりなのか、「丘」は007シリーズの1本と読めます。正確を期して言い換えれば、007シリーズのショーン・コネリーが主演する最新作「丘」でしょう。小学生でも、その看板を見て間違いに気づきました。ショーン・コネリーが出演しているだけでなく、007の新作だったらいいなあと思ったものです。内容は、軍隊で罪を犯した兵隊=ショーン・コネリーが、何度も丘を登らされて不当な罰を受けていたと記憶しています。ショーン・コネリーは出演していても、007とは全然似ても似つかない映画でした(アイスクリームでも、氷菓でもなく、“冷凍みかん”)。
 ブランド・アイスクリームから氷菓、さらには冷凍みかんまで(高価なもの、安価なもの、異質なもの)、似たテイストのもの(つめたーい)は全部試してみました。スクリーンの秘密情報部員の皆さんには、それぞれ学ぶところがあり(本家007よりもスケールが小さくても、間抜けなのにカッコつけていたりしても)、映画を見た直後から、ごっこ遊びでまねさせていただきました(本人は、遊びよりもすっかりその気でなりきっていました)。
 そんな007を中心としたスパイ映画大旋風が吹き荒れたのは過去のことだとしても、依然としてスパイ映画は作り続けられています。「ミッション・インポッシブル」シリーズ(1996~)、「トリプルX」シリーズ(2002~)など。
 その中で、「エージェント・コーディ ミッション in LONDON」は、16歳のCIAエージェントのお話。高校生の秘密情報部員だなんて、虚構性たっぷりで嬉しい。「スパイキッズ(2001)」は、高校生どころか小学生だぞ。年齢には、こだわりません。小学生がスーパー情報部員であってもいいでしょう。でも、スパイファミリーなんて虚構にもほどがあります。なぜハリウッドはやたらと“家族愛”をもちこみたがるのか。
 コーディの場合は、両親にCIAのエージェントをしていることを隠している。やっぱり“秘密情報部員”なのですから、オープンにしてはいけません。少年少女エージェントの訓練場は、保護者が参観に訪れると、急遽コンピュータやパラボナアンテナなどの最新設備をカモフラージュして、ごく普通のサマーキャンプに見せかけるのです(親に心配かけないのも“家族愛”?)。
 コーディは、例え少年エージェントでも、007的要素の「新兵器」「国際陰謀団」「美女にモテモテ」は受け継いでいます。「新兵器」、メントス・キャンディに仕掛けた爆弾(ちょっと地味)。「国際陰謀団」は洗脳ソフトを使って、サミットに集まる要人を思うままに扱おうという悪だくみ。洗脳ソフトを使えば、犬がピアノの演奏までできてしまう、なんてあたりは、ジュブナイル的なゆるい設定ですが、そこがまた虚構の世界ならではの楽しさ。
 高校生といえば、微妙な年齢です。まだ子供であるという見方もできるし、反対に限りなく大人に接近している存在でもあります。
 深見真のライトノベル「ヤングガン・カルナバル」シリーズは、高校生の殺し屋を描いています。彼らは「ハイブリッド」と呼ばれる組織に属し、法で裁けない悪党や犯罪組織と闘っています。2007年6月現在、8巻まで出ています。第1巻をひもとけば、一挙に最新刊までむさぼり読んでしまう面白さです。こちらの高校生は、“殺し屋”だけにハードです。仕事上銃を撃ちまくって悪人を血祭りに上げます。悪い奴らはトコトン悪く、そいつらが行うグロい拷問シーンも出てきます。さらに、ライトノベルですからさすがに細かい描写まではありませんが、ラブシーンもあります。早く9巻が読みたい。
 くらべるまでもなく、「エージェント・コーディ」はソフト路線。コーディは、メントス爆弾は持っていますが、拳銃を所持していません。闘いは、あくまでも身に付けた格闘技を駆使した肉弾バトルです。殺し合いはありません。このあたりは、爽やかな高校生とすれば“リアル”な設定ともいえると思います。007的要素の最後のひとつ「美女」についても、ロンドン警察の少女秘密捜査官といい雰囲気になります。でも健全な高校生ですから、頬にチューするだけ。
 この作品は、秘密情報部員を夢見る少年が、身も心も虚構の世界にのめり込んじゃう映画です。
 シリーズ第1作「エージェント・コーディ(2003)」の方がもっと面白いというので、次はそちらを見てみたいと思います(健全な高校生風に)。

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Last updated  June 10, 2007 09:20:30 AM
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