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テーマ:DVD映画鑑賞(14213)
カテゴリ:ラブコメ
80年代にWham!というデュオがありました。当時、友達が「まあ、いってみれば、イギリスのトシちゃんとマッチが組んだみたいないユニットやね」てなことを言っていました。それに興味を示して、徐々に街に店開きし始めた頃のレンタルビデオ屋さんでWham!のビデオクリップ集を借りてきて見たりしました。映画「ラブソングができるまで」には、80年代風のMTV的な映像から始まります。そこで歌い踊るバンドの名はPOP。このPOPは、Wham!をモデルにしていると思いましたね。
「ラブソングができるまで(2007)」 監督:マーク・ローレンス 出演:アレックス:ヒュー・グラント ソフィー:ドリュー・バリモア 80年代に一世を風靡したバンドPOP。ツインボーカルの一人だったアレックスは、今は落ちぶれてしまっている。もう一人のボーカルが、ソロでも華々しい売れっ子ぶりをみせているのに、アレックスに持ち込まれる仕事といえば、「あの人は今」みたいな企画ばかり。アレックス本人も、「ぼくは過去に生きている」と認め、しょぼくれている。 そんなアレックスのもとへ、今をときめく歌姫コーラから作品提供の依頼が。返り咲きのためのラストチャンスか。たまたまアレックスのアパートに植物の水やりに訪れたソフィー、作曲に行き詰まるアレックスを救うかのようにすてきな歌詞が・・・。 まあ、このへんまで見れば、ストーリーは予測がついてしまいます。アレックスは、紆余曲折がありながら、きっとカムバックするでしょう。アレックスとソフィーは恋に陥り、いくつかの危機を乗り越えハッピーエンドになるに決まっています。それでも、見てしまうのは、なんだかほのぼのした雰囲気です。このDVDは、時間の都合で二日に分けて見ましたが、後半は早くうちへ帰ってみたいと、とても楽しみでした。 正直言って、紆余曲折、いくつかの危機といっても、大してハラハラ、ドキドキの興味を引くものはありません。この手のラブコメディの場合、例えば、第三者の介入や突発的な事件などによって恋する二人に大きな誤解が生じるとか、他にも彼氏や彼女らしき存在がいて恋の鞘当てが演じられるとか、そういった波瀾万丈があるものです。しかし、「ラブソングができるまで」は、ストーリーの起伏が少ない。静かに進んでいくといえるでしょう。 予測がついてしまうのに楽しく見ていけたのは、自分の予測が合っているかどうか確かめたいとする心理が働いたからではありません。そんなことより、アレックスの生き方を確認したかった。 アレックスは、過去の栄光から遠ざかり、生気なく暮らしています。彼はそんな自分に甘んじている。心中を察するに、一度経験した人気は、それが爆発的であればあるほど、もう取り戻すことはできないだろうと諦める気持ちになるのでしょう。ツインボーカルの相方が活躍すれば活躍するほど、デュオの人気は、自分ではなく相方によるところが大きかったとの気持ちになるのも(日本でも、グレープやあみんなどは、たまたま二人で売り出したけれど、必要なのは一人だけだったのではないかと思えます)。 つまり、自分の実力ではなく、フロック、運がよかっただけだと考えてしまったのですね。 仕事といえば、80年代を懐かしむ高校の同窓会にゲストとして呼ばれる、遊園地の簡易ステージで昔のビッグネームとして歌うなど、情けないものばかり。アレックスの表情も、たれ目で口をへの字にして、冴えません。 でも、不思議なことに、彼のアパートは意外と豪華。多重録音のスタジオ機能も備えている。ここを見る限り、みじめな生活をしているとは思えません。ただ、遊園地からの仕事帰りなどに「ギャラはいくら入った」と聞く様子から、生活は苦しいのかとの印象を受けますが。 問題なのはアレックスの生き方です。アレックスは、相方のソロデビューに続き、自分も新曲を発表する。けど、ソフィーにいわせると「売ろうとする意図が見え見え」だとのこと。歌姫コーラに提供する曲も、コーラが希望する奇を衒ったような仕掛けに迎合しようとする。ソフィーは、あくまでも歌の心を大切にしようと主張するのですが。 また、アレックスは、「自分は作詞ができない」と思いこんでいる。彼の考える歌詞とは、売れ線にハマる、聞き手に受けるための詞のことであったわけです。 けれどアレックスは、ソフィーへの一途な想いを表現することで、感動的な詞が書くことができました。しゃれた言い回しなどではなく、心のほとばしりを素直に言葉に託すことが聞く人の胸をうつのです。 大切なのは、ほかの人と自分を比較しないこと。人の価値観やリズムにのらないで、自分自身を見つめ、表現することです。アレックスは、過去の栄光ではなく、自分自身を再確認することで、ラブソングを完成することができました。そして、一度は立ち去ろうとしたソフィーも、アレックスがアレックスらしさを発揮し、自分への想いを打ち明けてくれたことで、彼のもとに留まりました。 人間、自分を見失うことがあるでしょう。あるいは、ずぅっと自分らしさを発見できないで生きていることもある。ひとりよがりの薄っぺらな自己認識ではなく、いくつになっても、自分で自分自身をしっかりとらえていたいものです。 それにしても、ローラ役のヘイリー・ベネットは、得も言われぬ魅力を発散していました。この輝きをぜひ次回作へつなげてほしい。 人気blogランキングに参加中。クリックしてね。ご協力、よろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 24, 2008 08:12:15 AM
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