テーマ:海外生活(7775)
カテゴリ:アメリカでの思い出
帰国以来、私が一番良く行く場所と言えば郵便局である。 オークション落札品の発送やら送金やら、最近でこそ頻度が落ちたものの、ほぼ毎日のペースで通っていたのだが・・・ 外で働かないとなったら一切化粧をしないこの私。ファンデーションも3年前のものがいまだになくならないという、ずぼらっぷり。少しでも節約しようと美容院にもろくすっぽ行かないし、衣服さえも先日の日記に記した通りのボロボロ状態。 余りの来店頻度の高さ故、そんな私が、自宅から徒歩1分のその郵便局ではすっかり顔馴染みさんになってしまい、昨年、アパートを片付けにアメリカに1ヶ月程戻って再度帰国して久々に郵便局に行ったら、 「最近、お見かけしないので、どうしたのかなぁって噂してたんですよ。」 ・・・な~んて言われてしまった。 あっちゃ~~っ。 一体、いつも何と言われているのやら・・・。特にまだ親が店をやっていてその看板背負っちゃってるだけに、今更ながら、 「ああ、せめて毎日の化粧位はすれば良かった・・・。」 と後悔している次第である。・・・でも、今更遅い。。。 話は変わるのだが、最近になって漸く、郵便局のカウンターにも「カラーボール」が常備してあることに気づいた。(今頃かい。。。) 「カラーボール」とは、強盗に見舞われた際、逃げる犯人に向かって投げつけ、犯人に当たって割れたその中に入っている特殊塗料が犯人に付着することで、その後の追跡捜査の一助を担うというもの。 いつ頃から普及しているものなのかは良く知らないのだが、私がその存在を知るようになったのは、アメリカで銀行に雇われてからである。新入社員研修の内容の一つに「Bank Robbery(銀行強盗)」という項目があり、ビデオを見つつその対処方法を学ぶのである。そして実際、店内のテラーライン(窓口)には、テラー一人一人の前に「カラーボール」が備え付けてあった。 日本の銀行の研修では、少なくとも私が 新人研修にも取り入れるということは、それだけ実際のケースとして銀行強盗があり得るからなのかなぁ・・・なんて漠然と思ったものであるが、実はビンゴ だった。 というのも、何を隠そう、私は入社して3ヶ月で2回も銀行強盗の現場に居合わせることになった伝説の女になってしまったのである。 その一回目というのは入社3週間目、2つ目の支店での実地テラートレーニング中に起こった。 アメリカの銀行の窓口は日本の窓口とは少々雰囲気が違う。カウンターは高いし、テラーは立ち仕事である。ここでは細かいシステムの違いは割愛するが、日本みたいに後ろに検印席がある訳でも無く、テラーの一人一人が与えられた一定のスペースに立ち、特殊なケースで無い限り、その場で一人で処理を行う。そして、大体どこの支店にもドライブスルー専用の窓口もある。 私はその時、ドライブスルー窓口の担当の一人で、支店に入ると正面にあるテラー達とは背中合わせになっている状態だった。ドライブスルー担当の2人のうち1人は6時まで残って対応するものの、私は研修生でその担当は無く、窓口の閉まる時間に程近かったその日はお客さんも少なくて、早々に日計を合わせ始めていた。 すると・・・ 正面窓口には3人テラーが居て、私とほぼ背中合わせに位置していたおばあちゃんテラーが突然、 「強盗よ!」 と叫んだのだ。 「へっ??」 と思って振り返えると、そこには、狼狽した顔つきでお札をしっかりと握り締めているおばあちゃんテラーの姿が。 そうしている内に支店長が出てきて支店はあっという間に閉鎖され、程なく警察がやって来た。 おばあちゃんテラー曰く、現金を数えていたら、横入りをしてきた男性がそれを突然引ったくろうとしたので、咄嗟にそれを避け、強盗はその瞬間に一目散に逃げてしまって被害は一切無かったらしい。おばあちゃんテラー、10代にも勝るとも劣らぬ、見事な反射神経! 何はともあれ、結局、その時の犯人は見つからず。でも、実質的な被害は一切無く、ニュースでは放送されたもの大きな事件という扱いではなかった。 ・・・が、2度目も程なくやってきた。 今度は、自分が配属された支店での出来事である。私自身は、日本人顧客専用の個室にいて一人でおり、通常、テラーラインの方は殆ど見えなかったが、その日、外回りの米人が来ていて私の横の空席に座って仕事をしていた。私自身もその日は自分の仕事が忙しく、一心不乱に作業に集中していたのだが・・・ 横に座っていた彼が突然私に向かって・・・ 「あれ?どうやら今、うちの支店、銀行強盗に入られたみたいだよ。」 なんて言うのだ。 「へっっ???」 咄嗟に事情の把握できない私。 「今、B(支店長の名前)がそう言ったのが聞こえた。」 と彼。 私は当然気づかなかったし、横に居た外回りの彼も、支店長のその言葉を耳にしたからこそ気づいたような状況だったようだ。 何とも、静かに、そして厳か?に、淡々と行われた銀行強盗だったようだ。(どんなんじゃ・・・) それにしても・・・ ウチの支店に銀行強盗に入るなんて、勇気ある強盗である。何故って、ウチに関しては当時の支店長も副支店長も所謂巨漢に近い体格。他の支店では女性が多いのに、概ねがっちりした男性が多い支店で、普通にやりあったら完全にやられてしまいそうな猛者揃いだったのである。 あと、アメリカで言うところの銀行の支店長って日本の銀行の支店長とは全くイメージが違い、私の勤務していたその支店の支店長はまだうら若き25歳の新進気鋭。(でもデカいの・・・)支店長としての決済権限は持ちつつも、空いた時間はテラーもやるのだが、どうやらその銀行強盗は、その支店長の窓口を襲ったらしい。 実に勇気があるというか、何にも考えていないというか、はっきり言ってマヌケな強盗である。 しかも、彼(強盗)ってば、隣にあったCVS(ドラッグストア)でハロウィン用のコスチュームの海賊アイパッチを購入して「変装」の上、どうやらおもちゃの拳銃だけを間に合わせに持って、実は丸腰で乗り込んで来ていたらしい。 この時も直ぐに支店は閉鎖され、警察と、部門トップである上司が飛んで来た。犯行があったのは、覚えている限り午後一番位の時間帯だが、その後支店は完全閉鎖。ひとしきり警察の取調べが終わった後、上司がピザか何かを取ってくれてみんなで食べてその日はおしまい~♪その辺が、アメリカらしいところである。 業務中は至って冷静で大人の態度に徹している私より<<はるかに>>年下の支店長Bを始め、皆、直後は興奮気味だったが、その後は談笑。そこで色々話している内に話題に上ったのは、入行して3ヶ月の間に2回もの銀行強盗現場に居合わせた私である。流石に、ウチの銀行の歴史の中でもそれは前代未聞という話になってしまった。 で、でも、わ、私はたまたま居合わせただけなんですが・・・。 とはいえ、やっぱり私のハプニング体質が、それを銀行にまで呼び寄せてしまったものなのかなぁ。。。 この時は銀行強盗に入られた時のマニュアルに従い、大人しく数千ドルを渡してしまったのだが、そのマヌケな犯人は一旦は逃走し、結局捕まったらしい。でも、その1度目も2度目も、現金を渡すところまでは何とかマニュアル通りに出来ても、上述のカラーボールを投げつけるところまではなかなか至らないもののようである。 ・・・取り敢えず、私は支店の、いや、銀行の、「伝説の銀行強盗体験オンナ」として君臨する事になってしまい、それは今も語り継がれているようだ。。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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