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日常と旅情の狭間で in 仙台・宮城

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Rena4011

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2017.04.23
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カテゴリ:データ移行
移転先のサービス終了にともない、ここ2年くらいの記録を手動移行中。

2016/03/25 20:49 復興・防災 , 趣味・日記

三月の再会(2)自然史標本館/宮城野区のゲストハウス

3月13日午後は、青葉山駅の反対側に位置する自然史標本館、こと東北大学総合学術博物館へ――開館間もなかったと思われる20年近く前に一度だけ訪れたことがあり、コンクリート打ちっぱなしの円形の建物は当時と変わらないようだが、この日は三畳紀のウタツサウルス(魚竜)はじめ、当地や本学の研究者ゆかりの資料が目に留まる。

そして新しい資料としては、三陸沿岸の堆積物のボーリング調査標本――ところどころ色の異なる地層が、明治三陸津波、慶長三陸津波、貞観津波……そして有史以前から幾たびも波が押し寄せ土砂を運んできたことを物語る。経験がないとか想定外だとか、あるいは襲われたとか、災害といった言葉さえも、ある時代を生きるヒトにとっては真実であったとしても、地球の歴史のなかで当たり前に繰りかえされてきた事象にたまたま遭遇してしまった、寿命の短い生きものの側の一方的な表現なのかもしれない。それでも、そうした事象によって住まう場所を追われたり仲間と引き離されたりすることが、短いがゆえに瞬間を輝かせようとする生きものから光を奪うものであることが千年先も変わらないのだとすれば、過去の事象に学びつぎの遭遇に備え伝え継ぐこともまた、先の遭遇を生きのびたヒトの使命であるのだろう。

地下鉄の一日乗車券を活用すべく、東の終点・荒井駅に隣接する「せんだい3.11メモリアル交流館」へ。メモを取りながら見学している学生さんたちに混じり二階へ上がれば、五年前からの歩みをふりかえるパネルに、ところどころ住民の声が織りまぜられ、ちょっとした場所の違いによってまったく異なる当時の様子を伝える――と、2011年夏にオープンしボランティアの拠点となっていた、宮城野区のゲストハウスオーナーのメッセージが目に留まる……おそらく、わたしもかつて旅人として訪れた際に宿泊した宿に違いない。宿不足が続き、あるときは仮設の集会所に厄介になり、あるいはキャンセル待ちでかろうじて確保できた温泉宿まで足をのばし、何年か経ってようやくふつうのビジネスホテルがとれるようになったけれど――オーナーさんに初もののサンマを目の前でさばいてもらったのは、金華山で活動し雨上がりの石巻・日和山へ登った夏の終わりだったろうか、老若男女、ボランティアや旅人の交錯するプラットフォームは、マイクロシーベルトなどという単位が日常会話に登場するようになってしまったこの国の将来を思い息の詰まるようなときでも、一人ひとりの物語に耳を傾けているかぎりは、世のなか決して捨てたものではない、と感じさせてくれる空間だった。

長町で買い物をして、地下鉄沿線めぐりの一日は終了。記念日なんて必要ないといいながらも、11日とこの日の幾つかの「再会」はいずれも、旧い友人に偶然行き合ったかのような、懐かしくほっこりとした気分にさせてくれた。一見すると、隣人に起こる出来事に我不関として通り過ぎてしまいそうな大都市だけれど、この種の目に見えない蜘蛛の糸のような絆が、いざというとき命綱にならないともかぎらない。ならば、必ず訪れるこの季節を、災害に傷ついた三月、風景が墨染めの桜のように色を失っていた、思い出したくない春ではなく、あのとき、あるいはそれ以前からのネットワークを確かめる三月、そして、すべてが芽を出すわけでもないし、当初思い描いたものと違う花が咲いたり実がなったりすることもあるかもしれないけれど、新たな種を蒔き次の年へ繋げてゆく春に塗りなおし、毎年この地で刻んでゆくことではじめて、「忘れない」という言葉を自分のものにすることができる……のかもしれない。

さて、つぎの休日は何処の街に誰を訪ねに行こうか、それとも、そろそろ土でもいじりはじめるかな……







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Last updated  2017.04.23 00:25:03



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