ああ、70年代
きのう、ひょんなことから岸惠子さんのエッセイに辿りつきました。岸さんが以前、資生堂の花椿という小冊子(月刊だったと記憶)にご自分の暮らしぶりについてエッセイを連載してらして、当時(1976)高校生だったわたしは、毎月楽しみにしてたことを思いだしました。 岸さんと娘さん(デルフィーヌ・麻衣子さん)の生活、パリにひたすら憧れるわたしにとって、その内容は胸が弾むワクワクの世界。週末にはパリを離れてのんびりと田舎で過ごす、そんなライフスタイルがすてき~! などとミーハーなわたしはきゃいきゃい はしゃいで読んだりしましたけれども、華やかで羨ましいほど恵まれているように見える岸さん、じつは夫シャンピ氏との苦い別れを迎えたころだったのでした。あれから数十年が経過し、岸さんほどではまったくないにしろ、わたしも似たような別れを強いられ、あの高校生のときに読んだ岸さんの毅然とした生き方は我が心に根付いて、いまもなお励まされ続けている自分がここにおります。岸さんほどの御方でしたらいくらでも、新たなパートナーとなるべく殿方との出会いが、なかったはずはないと思うのに、いまだ一人でいらっしゃる。その真相が知りたいと思いながらも、シャンピ氏によせる想いが岸さんの中でいまだ灯され続けているからだろうと推して(というか確信して)いるのです。 1979年、岸さんが来日して久しぶりにご出演されたドラマ「沿線地図」、この主人公を演じた真行寺君枝さんにも、大いなるショック?をうけました。大人びたあの表情と、ドラマの中での彼女の生き方には、わたしには決してマネのできない強い個性があり、もしもうひとつの人生を歩めるとしたら、彼女のように生きてみたい…などと本気で思ったりもしました。ドラマの主題歌「もう森へなんか行かない」も、忘れはしませんとも。フランソワーズ・アルディのなんとも切ない歌声、フランス語の美しさと漂う情感が心に響いた曲です。 記憶によれば、真行寺さんに度肝を抜かれたのは、やはり資生堂がらみ。小椋佳氏の「ゆれるまなざし」の曲をバックになぞめいた美しい女性がひとり、このCMが最初でした。このCMはドラマ沿線地図より3年ほど前だったようですが、ほんといつまでも鮮明に記憶に残る名コマーシャルで、あのCMのあのひとが出てる、しかも岸さんも出演してるんじゃ、こりゃもーゼッタイ見なくっちゃ!のノリであったように思います。なぜそんなに惹かれたのか、おそらくそれは、真行寺さんがわたしと同い年でありながら、醸し出す雰囲気は浮世離れしており、別世界(退屈なわたしの毎日に刺激を与えてくれるような)に生きてらっしゃるそれを、もっと見たい知りたい好奇心にほかならない。わたしの想像グセ(現実逃避?)は、このころ顕著でございました(いまもか) いつもながら話が逸れたので元に戻しますが、17歳という多感な時期に出会った岸惠子さんは、しっかりとわたしのその後の人生に影響を与えていたんだな、といまでは(いまだからこそ?)感じます。17歳の時代はもう戻ってきやしませんが、退屈でありながらも良き時間だったんだとあらためて認識いたしました。岸惠子さんのエッセイを新旧含めて、これから読んでみようと思っています。きっと17歳には推し測れなかった、新たな感銘を見いだし、我が心がよろこぶことでしょう。