ricericericecocoa

2009/10/30(金)18:36

喧嘩慣れているわけじゃないけれど、虫酸が走る時は……

 私の店を後にする先生が、「じゃあ、また後で新宿でなぁ」と手を振る。新宿には行きつけ の飲み屋があって、そこは私の大学の大先輩が経営している。料理などほとんどおいていな い、純粋に酒だけ飲む飲み屋だ。  飲み屋とは話をする場所だと、私は思う。まったく違う職業であろうが年齢であろうが、そ んなことは気にせず、思った事を言い合う場所だと。だが、そう思う私を、その飲み屋で思わ ぬ事件が待ち構えていたのだ。    その夜、飲み屋にてうれしかったこと。久しぶりに、ずっと会いたかった人に会えたこと。 先生が私の店での働きぶりを評価し、皆に伝えてくれたこと。それによって、私は倦怠を生き ていたのだが、自分に自信を持ち直した所。  その日の最悪の出来事。年上に説教してしまったこと。嫌なものを見てしまったという気分 。それでも、モラルのないお客さんとも何とかやっていかなくてはいけないという店の経営状 態。世知辛い。  店の夜は更け、電車などない深夜の時間帯。午前3時とか4時の時間帯。常連の男性が我々の 他にはいて、彼は今日は女性を一人連れている。  女性を可哀想だと思いながら、今はその女性が馬鹿なのではないかと、いう気もしている。 脈絡もなく彼女は言った。  「彼はいろいろ抱えているんです。」  私の先生は言った。  「そんな日本語は使っちゃいかん。そんなこといったら、このricecocoaも、いろ いろ抱えているんだぞ!!」  人には言わないが……と、私は思う。その女性の言葉は、日本語というよりも、彼らの関係 性を他人に疑わせる言葉なのだと、私は思う。彼だけを特別視して、人一倍の苦渋を生きてい るかのように、ママのお腹に帰ることが出来なくなった彼を、せめて私が甘やかしてあげる、 ふふふ……ってことかな?? そう、思い出せば出すほど、私は意地悪になっていく。そして、許せない気持ちにどういう わけだか、なってしまう。男なんて甘やかしてはいけない。ズルイばかり。堂々と勝負しなさ いよ!って。  先生と大先輩は昔を馴染んできた曲の合間に思い出しながら、あの人この人と話している。  「うちの店に勤める女の子はみんな、悪女にはなれなくてねぇ。」と大先輩。  「けれど、Xさんは凄かったねえ。きっぱり、自分の道を決めて。妥協がまったくなかった ねぇ。」  などと……。  ”ああ、悪女かぁ”って、眠気と酔いの中で思う。悪女は決して悪い女のことではないよ なぁ。悪女はうまくはいえないけれど、尊敬に値する女のことだと、私は思う。 そんな話の折も折、私は気づいてしまい、横にいたKさんをつつく。向こう、向こう、トント ン、何か凄いことになっているよ。  うむむむ、見ると、常連のお客さんとその女性が何やら怪しい。お手てが、ズボンの中に。 ええ!ズボンたって、どこまで深みに!?  私とKさんはくすくす笑い。ああ、あれは、まさぐっておりますなぁ。ブツを、明らかに。 だが、あからさまでいいのぉ!?ちょっとやめてくれよ。酒がまずくなる。他人のセックスは おつまみにできません。幾ら私でもさぁ。  更に、大先輩がじゃあ、音楽をかけて皆で踊ろうやぁと明かりをチカチカさせると、更 に???のっかってる。更にセックス??  しかもだ、女性が一人で帰る。そんなのってあり??  というわけで、生理的にイライラしていたのもあって、その男性客にぶちきれちゃったんだ 。「そこまでやって、彼女を一人で帰らせるの?」「そこまで、やるくらいだったら、ホテル 行きなさいよ。行くとこに行って、やることをやった方が、落ち着くでしょ!?」って。 その男性はモゴモゴと反論。「君はまだ子供なんだから、わからないよ。」とか何とか。  人を馬鹿にしやがって、と、思わずしめあげ、その男性はしゅんとなってしまった。あぁ あ、またやっちまった、と……後悔先に立たず。こういうのは、性格だから、しょうがないの よねぇ。

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