-患者向けの健康情報WebサイトWebMDより- 【3月11日】微量の医薬品(抗生物質、ホルモン、気分安定薬、その他)が一般向けの水道に含まれていることが、メディアで報告された。 AP通信の調査で、主要24都市の水道に薬物が含まれていることが分かった。 この調査によると、薬物が水道に入る経路にはいくつかある。誰かがいらなくなった医薬品をトイレで流したのもあれば、人が医薬品を使用し、一部は吸収されて残りは通過して尿や便に入り、上水道に入るものもある。医薬品の中には、下水処理や水処理工場での浄化を受けても残るものがあることが、今回の調査で分かった。 その濃度はppbからppt単位の低いものであり、水は安全だと公共水道施設は主張しているが、民間団体と政府の専門家によれば、水道に含まれる薬物レベルが健康への有害作用を無視していいほど低いとは確実に言うことはできない。 WebMDは、水道中の薬物で考えられるリスクについて専門家の意見をうかがった。 一般上水道に医薬品が含まれているというのは、新しい現象なのか? そうではない。水道に低レベルの医薬品が含まれていることは、10年以上前から問題となっていた、と環境保護団体の天然資源防衛委員会 の科学委員であるSarah Janssen, MD, PHD, MPHが述べている。 「1990年代後半からすでに、医薬品、特に経口避妊薬が下水に含まれており、上水道も汚染されている可能性があることを科学界では認識していた」とJanssen博士はWebMDに語った。 科学者たちが抱くこの懸念は、エストロゲン様物質に曝露したことを示すオスとメスの両方の特徴を持つ魚がポトマック川などで見つかったことで増大した。例えば、ある魚は、精巣と卵巣の両方を持っていた。 博士によると、科学者たちは最初に経口避妊薬の影響について調査を開始した。「今ではその他の薬にまで分析が広がっている。」 技術が進歩してそうした研究が簡単にできるようになった、と米国環境保護庁の水資源部の科学技術専門副部長のSuzanne Rudzinskiが語った。「分析手法が改良され、以前よりも低レベルの検出ができるようになった。」 飲用水に含まれる医薬品は健康に影響を与えるのか? 議論を行っているどの立場の者も、確かなことはわからないことを認めている。「現時点では、健康への影響に関するエビデンスを我々は持っていない」とRudzinski氏は言う。「それでも、これは関心がもたれる領域であり、今後も我々は研究を続けていく。」 Janssen氏も同意している。「我々は何も知らない。確かなことは、(飲用水に含まれる医薬品の)濃度がきわめて低いということだ。しかし、それが合成ホルモン薬となると、人体のホルモンは非常に低濃度でも作用するので、問題になりうる。」 「我々は、水道水は飲めないとか飲むべきではないというような考えを一般人に持たせたくない」とJanssen氏は言う。「特に今回の報告は、何が健康作用なのかについて詳しく研究するように、連邦政府、なかでもEPAに対して求めたものである。」 EPAが現在進めている研究は、水道水に含まれる医薬品が水生生物および人の健康に与える影響に着目したものだ、とRudzinski氏は言う。しかし氏は、その研究作業にどのくらいの経費が割り当てられているのか、答えはいつごろ出るのかについて詳細を語ることはできなかった。 特定の人、例えば妊娠女性、小児、高齢者は、水道水に含まれる医薬品で起こりうる影響に対して感受性が強いのか? Janssen氏が言うには、これも答えは分からない。「乳幼児さらには胎児も含めた小児は、身体が発育中であり、曝露量を体重当たりに換算すると小児の場合は大きくなるので、小児は環境曝露に対して感受性が強いことは分かっている。また、小児は成人が持っているような解毒システムを持っていない。したがって、小児はリスクが高いと考えることは理にかなっている。」 水道水を沸騰させれば医薬品を除去できるのか?ボトル入りの飲用水なら問題はないか? Janssen氏によれば、水を沸騰させても問題は解決しない。また、ボトル入り飲用水も、一部の公共水道で見つかっている低レベルの医薬品から逃れる手段とは考えないほうがいい。「ボトル入りの水の25%は水道水を詰めたものだ」とNRDC報告を飲用して語った。 ボトル入り飲用水のラベル表示はFDAによって規制されており、中に何が入っているのかを消費者が知る助けになる、と国際ボトル入り水協会のスポークスマンであるStephen Kayが語った。ボトル入り飲用水の業者が自治体の水源からの水を使用して、それ以上の精製処理をしていないならば、FDAはその入手先を合法とは見なすが、自治体の水道から得ていることをラベルに表示するように求める。ボトル入り飲用水の業者が自治体の水を使用しているが、それを逆浸透や蒸留などの工程で処理・精製しているならば、ラベルに「精製水」とか「逆浸透水」というふうに表示することができる。 逆浸透などの家庭用の濾過システムは医薬品のレベルを下げると思われると、ドレクセル大学(ペンシルベニア州)のポストドクター研究員であるTimothy Bartrand, PhDが語った。氏は、飲用水の研究項目を設定する米国国立科学財団のワークショップに参加している。 「活性炭システムは一部の医薬品を除去するが、全部は除去できない」と氏は言う。「逆浸透システムでも除去できるのは一部だけだ。」 消費者が質問したり、状況を改善したりするためにできることは他にあるか? 地域の公共水道施設に連絡をとり、飲用水中に含まれる汚染物質のどれを検査したのかを訊ねることだ、とJanssen氏は言う。それが問題への意識を高めるひとつの方法である。上院議員や下院議員に連絡をとるのもひとつの方法だ。 Rudzinski氏によれば、期限切れになったり必要なくなったりした医薬品を廃棄する際には、水で流してはいけない。そうではなく、使用しない薬やいらなくなった薬は、ペットの口には合わないようなコーヒーの出し殻か、ペット用のトイレ砂と混ぜておく。その混ぜたものを密閉容器に入れ、子供やペットがいじれないようにして、ゴミ箱に棄てる。 |