ポルトガルの友人との邂逅
自然科学(物理系)の研究という職業柄、亭主の知人には北米・ヨーロッパを中心にさまざまなお国の方がいらっしゃいます。その中でも珍しいお国の一つがポルトガル。もともと人口が少ない(約一千万人)こともあり、国際会議などでも同国の研究者を見かける機会はそれほど多くはありません。一方で、亭主の専門分野では世界でも数少ない大型施設を利用して研究する必要があり、このような施設は世界中の研究者に対して無償で開かれていることから、大型施設の利用を通じて様々な国の研究者が出会い、共同研究を行ったり、お互いに切磋琢磨することが日常化しています。そのような亭主の共同研究者の一人は、偶然にもコインブラ大学の若手研究者。2017年に札幌で開催されたとある国際会議で初めて顔を合わせ、研究テーマが共通だったことから一緒に研究をやろうということになりました。その後、研究の方は牛の歩みで進んでいるところですが、先週たまたま彼とのメールのやり取りの追伸に「実はポルトガルの某所を訪ねてみたいんだが…」とコクったところ、予想もしない展開が待っていました。以下その部分の引用です:PS Incidentally, let me confess my personal affection to your country, Portugal.I’m a clumsy keyboard player, and has been fascinated by the magnificent worksby Don Domenico Scarlatti who spent his early days in Portugal. One of my dream is to see his portrait picture stored in Casa dos Patudos - Museu de Alpiarca. Hoping that the next *** conference in Italy could be the chance to have a tour to the place…(PS ちなみに、個人的に白状すると私は貴君のお国、ポルトガルに憧れております。 というのも、私は下手な鍵盤奏者ですが、若い頃をポルトガルで過ごしたドメニコ・スカルラッティの素晴らしい作品に魅了されています。私の夢の一つは、Casa dos Patudos - Museu de Alpiarcaに保管されている彼の肖像画を見ることです。次回のイタリアでの***会議では、その場所を見学できるとよいのですが。)(***は会議の名前)この追伸を含むメールに対して送られて来た返信の末尾に、以下のような「お返し」の追伸があるのを読んでびっくり仰天 (*o*)。PS There was something musical in the air in 1685, which saw the birth of Bach, Händel and Scarlatti :) As an amateur organ player, I'm always looking for repertoire that can be played in the characteristic iberian organs, such as the (few) organ sonatas by Scarlatti or his Portuguese contemporary Seixas. I hope you do find a way to visit Portugal, and in that case you are very much welcome to Coimbra, which is only a little bit north of Alpiarca. …Many of the places where Scarlatti lived in Lisbon were destroyed by the big earthquake in 1755, but some places built by the king who hired him are still worth a visit, such as the Mafra convent (built to celebrate the birth of Maria Barbara, the princess who became Scarlatti's pupil and queen of Spain), where you can find the only church in the world with 6 organs. Or the library and the chapel of the University of Coimbra, including a wonderful organ built in the Italian style.(PS バッハ、ヘンデル、スカルラッティが誕生した1685年には、何か音楽的な雰囲気が漂っていました :) アマチュアのオルガン奏者として、私はいつもイベリア半島の特徴的なオルガンで演奏できるレパートリーを探しています。例えば、スカルラッティや彼と同時代のポルトガル人であるセイシャスのオルガンソナタなどです。あなたがポルトガルを訪れる機会があることを願っています。その場合、アルピアルカの少し北にあるコインブラへの来訪を歓迎します。(中略)スカルラッティがリスボンで暮らしていた場所の多くは、1755年の大地震で破壊されてしまいましたが、彼を雇った王様が建てた場所は、今でも訪れる価値があります。例えば、マフラ修道院(スカルラッティの弟子でスペイン王妃となった王女、マリア・バルバラの誕生を祝うために建てられた)には、世界で唯一、6台のオルガンを備えた教会があります。また、コインブラ大学の図書館や礼拝堂には、イタリア式の素晴らしいオルガンが設置されています。)その後のやりとりがどうなったかはご想像にお任せしますが、彼はコインブラ大学の音楽学者達とも親交があるそうで、ポルトガルでのスカルラッティの消息や音楽についての最近の研究もよく通じていることが分かりました。まさに「肝胆相照らす」とはこのこと。このような友人との出会いがあるなど夢想だにしなかっただけに、未だ興奮冷めやらずといったところです。というわけで、これからの彼との交信が大変楽しみな亭主です。