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(第一部のあらすじ)
親がなく、一人で生きてきた少女ひかりは、恋人の裏切りに、その 男を殺して自分も死のうと決意した。しかし、そんな時、占い師の 老婆から自分の胸にあることを図星にされるとともに、「星のかけら」 と称するかたまりを渡された。老婆のおかげで男を殺すことを思い とどまったひかりは、一人死ぬ決意をした。だが、その時、ふと老婆 から渡された「星のかけら」を思い出し、手にとり眺めているうちに、 ふと気付くとそれを口に含んでいた。 「星のかけら」を飲んだひかりの心にそれまでとは違う何かが生まれ、 ひかりは自分がそれまでとはまるで違う世界にいるように感じた。 (第二部) 人生に絶望し死んでしまおうとしたひかりであったが、不思議な老婆に 渡された「星のかけら」を飲んだことで、生まれ変わったような気持ち になった。そして、老婆に渡された紙に書かれた場所に行ってみると、 そこはある施設であった。 山間の街にあるその施設には、何らかの理由で家族と暮らせない子供たち がいた。そして、大半の子供たちはどこか心に傷を負っていた。ひかりは、 そこで子供達の世話をする役目を担うことになった。 その子供達を見ていると皆どこかしら自分に似ている気がする。違うのは、 その子供達には親がいることであった。親たちが施設に来る頻度は人により 異なる。月に一度来る親もいれば年に一、二度の親もいる。 ひかりが施設に来て一年が過ぎた。30人ほどが預けられているその施設で、 一人の少女の親だけが一度も来ないことに気がついた。「なみ」という名の その少女は、誰とも話をせず、いつも部屋の隅にいた。 「ねえ、なみ、みんなと一緒に遊んでおいでよ」 ひかりが窓の外を指差すと、なみは黙って首を振った。 「外は気持ちいいよ」 なみはやはり黙って首を振る。 「そう、じゃあ、無理にとは言わないけど」 ひかりはそう言うと、残った仕事を片付けに戻った。 施設に来て最初の頃、子供達の世話や施設内の様々な仕事に追われ、 ゆっくりと何かを考えることがなかったひかりであるが、一年が過ぎ、 少しずつ自分のこれまでのことや不思議な老婆との出会いの意味を考 えることができるようになった。 時々ひかりは変な気持ちになる。 ここにいる子供達と自分は大して変わらない。ちょっと前だったら、 自分が世話をされる方であり、寮母たちに反抗し、手を焼かせたこと だろう。それが今は子供達の世話をし、時には心のよりどころにさえ なっているのである。ひかりは何だかくすぐったいような気持ちがした。 だが、ほとんどの子供たちが心を開き始めた中で、なみだけは変わら なかった。 (このまま行くとこの子も自分と同じようになるかも知れない) ひかりの胸中に不安が過ぎった。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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