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男なら、「ここだ!」というとっておきの店を用意しとくもんだと思う。 デートの時とかは特に、そういう店があったほうがいいというのが、俺の信念だ。 そういう「とっておき」を感じ取ってくれる人がいいなぁというのは俺のわがままだが、 まあデートに限らず、そういう店を見つけるのは楽しいし、楽しめる。 この街にも俺の「とっておき」はいくつかあるが、 今日はそんななかでも、俺の最後の砦とも言える、 最高の店に関するエピソードをお届けしよう。 いや、させてくれ! 俺がまだ高校生のガキだったころ。 受験を控え、夏休みの間俺は仲間たちと、ある図書館の自習室で勉強するのが日課だった。 毎朝自転車に乗って出かけ、夕方、図書館の閉館と同時に帰ってくる。 よくもあんなに机に向かったものだ。 いまは無理だ。 その図書館のすぐとなりに、ある定食屋があった。 オシャレでもなんでもない、こじんまりした店。 お客の数もそこそこ。 行列ができるような気配はない。 しかし。 抜群にうまい。 俺も食にハマっていろいろな店にいったが、いまだかつて、この店を越える味はないと思う。 それほどうまい。 そして安い。 ラーメンから定食、一品料理までそろっているが、すべてがうまい。 なんでわかるかっていうと、全部食べたから。 毎日図書館に通いながら、お昼はいつもこの店で食べていたのだ。 俺がこの街を出てすぐ、店は移転した。 移転してから1度だけ仲間たちと訪れたが、相変わらずの味に、俺たちは歓喜した。 なかなか帰郷する機会も減ってきて、移転後1度訪ねたきり、 俺は遠ざかった。 それから、7年近くたつ・・・。 ふと思い立って、今日いってきた。 カラカラと入り口を開けると、あいかわらずまあまあの客入り。 ああ、おやじさんとおふくろさんがいる。 すこし歳はとってたけど、かわらずに元気で。 カウンターに座ってメニューを見て、俺は少し泣きそうになった。 まったく変わらないメニュー。 時代の流れか、少しだけ(50円くらい)値上がりしてたけど。 俺はメニューの中から「うま煮ラーメン」を注文した。 あのときは吸わなかった煙草を吸いながら俺は、店内を見回した。感動とともに。 やがてできあがってきたラーメンを食べ、ごくごく自然に完食。 俺がラーメンのスープまで飲み干すのは、この店だけだ。 うまかった。 あのときと違って俺の胃袋は、普通盛りのラーメン1杯でおなかいっぱいになったけど、 何も変わらない満足感が俺に訪れる。 何も変わらない。 なんてすごいことなんだろう。 尊敬します。 帰り際、お金を払うとき、おふくろさんが言った。 「ひさしぶり!」 俺は思わず驚いた。おぼえててくれたのかと尋ねると、「あたりまえじゃない」と言う。 まさにこれが真のサービスであると、俺はしきりと感心した。 少し会話をかわして、俺は店を出る。 7年ぶりにやってきた、あのころ高校生のガキンチョだった俺をおぼえててくれた。 とてもうれしかった。 また通い出すんだろうな。 ここは俺の最後の「とっておき」だ。 誰にも教えないぜ。 そんな上機嫌な帰り道で出会った狭間。 さて、今日ある人に「花火でもしましょう」と電話しようかどうかで悩んでいる。 どーすっかなぁ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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