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Romance夢紀行

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Archangel's Viper/ナリーニ・シン あらすじ


Archangel's Viper【電子書籍】[ Nalini Singh ]
※ ※ ※ ネタバレあります ※ ※ ※ 
辞書で確認せず、記憶に頼っててきとーに書きなぐっていますので、 内容が間違っていても笑って読み流せる方だけ読んでくださいね 。

ウラムの件から4年後。ホリー・チャンことサロウはボストンの病院に就職の決まった姉を飛行場まで見送りに来ていました。何かあったらすぐに連絡するのよ、飛んで帰ってくるからね、とサロウに念押しし、名残惜し気に出発していきました。そこにサロウの上司にあたるジャンピエールから電話があり、いま飛行場に向かっているんだが渋滞にはまって動けない。悪いが代わりにある人物を出迎えてほしいということです。

飛行場内のタワー専用の発着場につくと飛行機が到着し、そこからいつも通り完璧なスーツ姿のヴェノムが降りてきました。ホリーには知らされていないどこかでの任務のために2年ほど前にNYを離れたヴェノム。顔をあわせれば不愉快なことを口にする彼には激怒させられてばかりなので、いなくなった時にはせいせいしたと思ったものの、ホリーの中にあって最近勢力を増してきたように思える暗い力を感じ取り、わかってくれるのはなぜかヴェノムだけのため、不在の間はどこか物足りない思いだったようです。

ホリーはタワーに支給されている車にヴェノムをのせ走り出しますが、途中並走する車にぶつけられます。車を停めると、もう一台の車から出てきた3人はホリーを誘拐しようとする賞金稼ぎたちでした。彼らはヴェノムが同乗していることは知らず、ホリーとヴェノムであっという間に片づけてしまいます。倒したヴァンパイアの携帯をみると、ホリーの写真がみつかり、彼女だけが誘拐のターゲットになっていたことがわかります。

タワーの科学者たちはホリーの毒とヴェノムの毒を研究しているようで、ヴェノムの毒は何人もの天使を殺せるほどの強い毒性を持つようですが、ホリーの毒は毒性の強さとしてはそれほどでもないものの、まだ能力が発展途上であり、種類は地球上に存在しないもののようで比類がないようです。ヴェノムはホリーの毒に耐性を持っているようで、噛まれても死んだりはしないようです。

タワーに戻ったヴェノムはホリーを伴ってドミトリのところにあいさつと報告に向かいます。ドミトリはホリーを誘拐した目的が何なのか、誰がもくろんでいるのか、はっきりするまでは彼女にボディガードをつけると判断し、それなら子猫ちゃんは自分がおもりをするとヴェノムが申し出ます。ボディガードはヴェノムでなくジャンピエールやアッシュにしてほしいとホリーはドミトリに頼みますが、彼らの手があいていないと言われます。ジャンピエールやアッシュはエレナのガードにふさわしい実力をつけるために猛訓練中でガレンやイリウム、ドミトリたちが相手をしているようです。

いったん部屋に下がったヴェノムを見送ってホリーはこの日はジャンピエールやアッシュを訓練するドミトリを観察して過ごします。ジャンピエールよりも若いアッシュが意外にもドミトリとの戦いでは健闘しています。相手の次の動作を先読みして戦闘を有利に進めているようで、こういった能力は重要だとホリーの横に来て一緒に観戦しているヴェノムが教えてくれます。

通常のヴァンパイアは永遠に近い命の代償として100年契約を天使と結びますが、ホリーは作られた普通ではない経緯からいつ解放されるのかは誰にもわかりません。まだ発達中の毒や新しい能力が周囲に危険を催したり、本人に力がついてきたら独り立ちさせてあげられる日が来るかもしれないが、こないかもしれない。ホリーは「タワーの命令をいままではすべて受け入れてきたけれど、息が詰まりそう!」と身体の中の妖しい能力がわきあがってきてドミトリに対して爆発しますが、ドミトリは自分を憎みたければ憎めばよい。確かに君はタワーに縛られているかもしれないが、こうとも考えられないか。君の仲間はたくさんいる。と諭します

ヴェノムとの待ち合わせ時間の6時になってもタワーの入口に現れなかったホリー。一人で出かけるほど馬鹿ではないだろうと彼女を探すとタワーの最上階でハドソン川の夕焼けをながめていました。

ドレスアップした彼女をみて「俺がいない間に大人っぽくなったな」とコメントするとあなたの意見なんて聞いていないとやりかえすホリー。ヴェノムは自分の目をみても怖がらず、知性で彼に挑戦してくる彼女を密かに気に入っています。また彼女の中の能力が成長していることも感じ取っています。

車での移動中、シートベルトを締めろと声がけするヴェノムに「優しいのね」と嫌味を言うホリー。「面倒をみてあげている子猫ちゃんには優しくしないとな」とやりかえされ、ホリーは野生そのものといったうなり声をあげます。彼女自身は単なる人間のいらだちの表現としか考えていませんが、そこにセブンの一人で一般的なヴァンパイアとはいえない特異な存在のナージルのような野生を感じ取ったヴェノム。ネハが毒や蛇の女王と言われているような評判を、ホリーを感染させたウラムは持っていなかったはずだが、どういうことだろうか、大天使や領内の有力な天使たちへ影響を及ぼすキャスケードがホリーにも影響しているのだろうかと思いを巡らします。普段だったらラファエルに疑問をぶつけるところですが、あいにくモロッコでの大天使の会合にでかけていて不在です。

ホリーは変化を強制され、若すぎる。ヴェノムがベッドのパートナーとしては全く考えられない存在ということのようです。

情報収集のため、街に出向く二人。ヴェノム行きつけの最高級のお店ではなく、店の前が暗くなっているような危険な地域のお店近くまできます。ホリーは自分のやり方でやらせてほしいといい、ヴェノムには手出しをしないでどこかへ行っていてと頼みます。ヴェノムは渋るものの、ホリーが彼に怯えて何も話してくれなくなってしまうと説得して、彼をその場に残し、店の前の暗闇のなかから出てきた情報提供者の二人と話し始めます。

二人はホリーを歓迎し、手を差し伸べると遠巻きにしたヴェノムが威嚇したため怯えしますが、ホリーたちが付き合っていると勘違いし、知っていることを話してくれます。どうやらホリーには5万ドルの賞金がかかっていて賞金稼ぎたちが必死になっているそうです。飛行場からの帰りに遭遇した賞金稼ぎだけでなく、他にも彼女を狙っている賞金稼ぎがいるらしいことはわかりました。ホリーは金額の大きさに驚いていました。

情報料として、二人にはホリーから個人名が指定された血液の交換カードを渡します。そうすれば薬などと交換することもなく、お金をより強い捕食者たちにむしられないからのようです。

二人でクラブに入って、ホリーは顔なじみのバーテンダーでもあり店主に挨拶をして、やはりここでも賞金がかかっていることについて忠告されます。いたたまれなくなり店から出ると、ヴェノムは黙って車を出してくれますが、数分たってホリーが質問を始めると彼の返答に我慢の限界がきてしまい、ホリーは何の考えもなく運転中のヴェノムの首に襲い掛かります。

片手でホリーのあごをおさえ制御しつつ、もう一方の手で車を道路のはじに寄せると、ヴェノムはホリーを抑えていた手を外し彼女に噛ませます。それでも血液は吸わない彼女に「飲め!」と命令します。それだけでは飲もうとしないホリーですが、お前が飲まないなら、俺が飲む。ウラムの味がどういうものなのか・・・というところまで口にするとホリーは彼から飲み始めます。

彼女が満腹になり呼吸が落ち着いたところで彼女を自分から引き離し、どうして割り当ての血液を飲まないんだ、おまえはブラッドラストに陥る寸前だったんだぞと伝えます。たまたま自分がいて事態を制御できたからよかったものの、そうでなければ罪もない人間たちが何人も死ぬことになっていた、と言われてホリーは真っ青になります。完全なヴァンパイアともいえないホリーは3か月に一度ほどの血液で身体が維持できるようですが、味が好きではなく、あえて飲み忘れることもあったようです。ヴェノムは彼女に血を吸われることを、自分の身体が思いがけないほど歓んでしまい、これは単なる女ではなくホリーだと自分に言い聞かせていました。

ヴェノムはホリーを自室に連れ帰り、スパーリングをして、彼女のなかの蛇の部分を解放します。自分たちにとって自己抑制というのは他の人たちとは違うものになる、と。最初は気の進まない様子のホリーでしたが、ヴェノムに首筋を狙われてから本気で抵抗し、本能が目覚め、通常の戦闘テクニックではない本性が出てきました。蛇のような滑らかな動きでの同種の戦いにヴェノムはこれ以上ないという喜びを感じながら相手をしています。

思い切り戦ったあとには、しゃれた洋服はずたぼろで、二人とも寝転がり、がらんとした居間の天井を眺めることになりましたが、ホリーはここ数年なかった心の静けさを堪能しています。戦った間の記憶は飛んでしまっているようですが、ヴェノムはこれはお前にとって初めてのトリップだから記憶がないかもしれないが、2度3度と自分の中にある本性を解放していくうちに、記憶も保ち、気息をコントロールできるようになる、自分自身と戦わなければもっと自分をコントロールできるようになると話します。

思い切り手合わせしたあとの二人はそのままサーモスタットの効いた石床で深い眠りにつきます。途中、目覚めたヴェノムはホリーに寝室から持ってきたブランケットをかけてあげますが、ホリーは薄目をあけるとまた眠ってしまいました。

9時に起きたヴェノムはホリーをそのままに身支度を整えますが、ホリーは気持ちよさげに眠っています。ヴェノムが平らな石床で眠ることを好む奇癖を面白がってセブンたちもそれぞれ試してみはしましたが、ナージルさえも数分以上は持たなかったようです。12時になるとホリーが目覚め寝ぼけた様子でしたが、状況に気付くと「自宅に帰る」と出て行ってしまい、ヴェノムはタワーのヴィヴィクのところへ向かいます。

小さいころの事故で生まれながらのハンターだったヴィヴィクは肩より下が不自由でしたが、ヴァンパイアになったことでハンターの本能はそのままに四肢が動くようになってきています。ところが皮膚が異常に過敏で、物との接触は問題ないのに人との接触すると痛みを覚えるという状態のようで、医師は今までの反動ではと言っているようですが原因不明のようです。ヴェノムは握手に差し出された手を遠慮していました。

ヴィヴィクはタワー内にも情報センターを立ち上げているようですが、まだギルドのセラーほどには満足いく出来ではないよう。ヴェノムは賞金稼ぎのメールアドレスを教えて、情報収取を依頼します。

ヴィヴィクはラファエルのスパイマスタージェイソンとどちらが情報通なのかということで激しくぶつかっているようです。

タワー内の自室に戻ったホリー。ヴェノムのスイートほどではない小さな部屋ですが、そこには両親からのプレゼントのハートの柄が彫り込まれた柱つき巨大ベッドが設えてありました。ふかふかのプリンセスベッドがあるのに、石床のほうがぐっすり眠れたなんて、とむしゃくしゃしているホリー。部屋の小さい窓からはリージャンたちの宿舎がみえるようです。いまでは彼らの宿舎は緑にあふれてきています。中がみたくてたまらなくて、ヴェノムと顔を合わせなくてすむなら悪魔とでも取引できる気分の今、思い切って出かけてみることに。ヴェノムには私を置いて狩りに出かけないでとメールして部屋を出ます。

リージョンたちの建物は3階までは入口がなく、4階に離着陸用の入口があるようです。ホリーはよじ登り、「ごめんください」と声をかけると音もなくリージョンのひとりが舞い降りてきて「何者だ?」と尋ねます。「値千金の質問ね? どう思う?」と問い返すと、自分たちは今生の記憶しか持ち合わせないが、知識は骨にしみ込んでいる。そなたは新しきものでもあり、古きものでもある。「ヴェノムは知っているでしょ?」 彼とそなたは似て非なるもの。そなたは唯一の新しきもの。新しきものなら入るがよい。他のものが会いたがるだろう。と招き入れられます。

中は緑に満ち溢れ、かぐわしく、素晴らしいわ!とホリーは感激しますが、他のリージョンたちもそばに舞い降りてきます。「そなたはこだまであり、こだまではない」と一心に彼女を見つめ口が動いていないのに唱和の声が聞こえてきます。最初に招き入れてくれたリージョン以外はまた思い思いに散っていきますが、引き止めようとすると「そなたがこだまでなくなったら、私たちも新しく進化する」と謎の言葉を言い置いて去っていきます。ホリーが後ずさりすると、ヴェノムにぶつかりました。

二人で外に出てヴェノムの車でヴィヴィクがメールアドレスから探し当てたリストのなかでホリーが知っているアッシュが時々の情報提供者として使っている小物の名前を見つけ、彼のところに話を聞きに行くことにします。ホリーはジャンピエールと訓練中に触れずに彼の腕を折ってしまったこと、身体の一部分を消すことができる新しい能力のことをヴェノムに報告し、それはヴァンパイアの能力というより、天使の能力でもなく、大天使の能力ではないかと言われます。ホリーは「ただし大天使の能力の一滴でしかない」といいますが、そうだとしても価値のわかるものにとっては彼女の大天使の能力を秘めた血は5万ドルよりもっと価値があるということでしょう。

彼が潜伏するというビルにつくとヴェノムが妙に静かだと緊張をみせます。警戒しながら二人で踏み込むと古い血の匂いがするものの、1階には特段問題はなく、上の階で匂いが強まっているようです。3階に壁に張りつけられた骸骨のようにやせたヴァンパイアの女性がいて、驚いたことにまだ生きていました。どうやら彼女はとても若く、壁にたたきつけられたあとに首を切れば死ぬだろうと思われたようですが、かろうじて頚椎がつながっていたので生き延びたようです。他にもプールサイドなどにバラバラ死体がちりばめられており、ホリーの個人的悪夢が現実に再現されたようでした。

ホリーは自分の血を与える危険は冒せず、ヴェノムに頼み彼女に血をあげてもらいます。彼の血は古くて力強いため、少量でもすぐ回復します。一度はブラッドラストに陥りかけますが、押さえつけながら再度血を与えると正気に戻った様子です。ホリーは彼女に同情的ですが、ヴェノムは彼女は牙の形などどこか変だ、と言い、タワーに連絡して部下を呼び、彼女に護衛をつけ、監視下に置くようにと命令します。彼女は契約の主人に言われて、何かの褒美として殺された彼らに与えられたということでしたが、主人の名前は言えば罰を与えられると言い渋ります。ホリーがエレナに話して戻らなくてもいいようにするととりなし、ケネーシャという名前を聞き出します。この天使はヴァンパイアを作ることを赦されていない人物のようで、名前を聞いたヴェノムが身体を固くしています。何年仕えているかも自分の名前も記憶が定かでないようです。ホリーはデイジーという名前はどう?と言って本人も可愛い名前と受け入れます。

ヴェノムによれば、ケネーシャは4000歳の天使ですが、もともと天使は肉体的にも回復力も人間やヴァンパイアよりも高いポテンシャルをもっているにもかかわらず、親から受け継いだ遺産で食いつなぎ、まったく努力せずに暮らしていて、年齢からすると考えられないほどか弱い存在のようです。ヴェノムなら汗もかかずに殺せてしまうし、ホリーでも数年たてば、彼女が勝つ方に賭けるね、とヴェノムは軽蔑を見せています。

小塔がたくさん乱立しているケネーシャの歴史的趣のある邸宅についた二人は執事に迎えられます。ご主人様は訪問を受け付けておられませんと断られますが、2分以内に本人が出てこなかったら首だけを持ち帰ると脅すと本人があたふたと降りてきます。

邸宅に踏み込む前にヴェノムにケネーシャを罰する権利はラファエルにある、と釘を刺されます。ヴェノムの毒ならうっかり殺してしまうけれど、ホリーの毒でもかなりのダメージを与えてしまうだろう、と。大天使のつま先を踏もうなんて思ってもみないけど、彼に関心を抱かなかったらひと噛みしてもいいかしら? お願い、蛇ちゃん? とわざとらしく頼んだのでヴェノムは内心面白がりながらいいとも、子猫ちゃんと答えます。

ケネーシャは彼女は他の天使から借りたんだと言い訳しますが、100年後の契約後に新しく契約したというほどの年齢ではないことをヴェノムは感じ取っていたため、嘘だと見抜き、デイジーとの契約書を持ってこい! といいつけます。書斎から書類が届きますが、いい加減な内容のものでした。ドミトリの前で申し立てしたいのかと脅しをちらつかせながらのヴェノムの追及に、青ざめたケネーシャはしぶしぶウラムの出来事のすぐあとで、ハドソン川にいた瀕死の状態のデイジーを見つけたと、命を助け、世話をしたお礼代わりに奉公してもらっていると説明します。

ホリーは彼女が欲しかったんでしょう!と追及すると、彼女の血はありえないほど美味しいんだ、と言い訳します。最初は気が付かなかったが、彼女の血を飲んでいると羽がみすぼらしくなり、抜けてくることに気が付いたが、手元に置いておくと飲みたい気持ちを抑えられないから、ヴァンパイアたちに血を飲んではならないが、おもちゃにしてもいいと貸し出したというのです。

我慢の限界のホリーはケネーシャの首に噛みつきます。ヴェノムも止めませんでした。死なないことを確認してから執事をよび、夕方までにケネーシャをタワーに出頭させないと大変なことになるからなと伝えてその場をあとにします。さらにホリーが攻撃しないよう手をひいて家を出ました。飲むと劣化するヴァンパイアの血というのは聞いたことがないもののデイジーが発見されたタイミングからひょっとしたらホリー同様ウラムの被害者なのか、それともドラッグの影響、それもアンバーと呼ばれるドラッグの可能性もヴェノムは検討しているようです。

ヴェノムたちは賞金稼ぎの名前リストの他の名前のところも訪問しますが、どこの人物も惨殺されていました。どうやらホリーへのメッセージではないかと思われます。

タワーに戻った二人は、隔離されているデイジーのところに行きますが、彼女は拘束されながらも身もだえ、苦しんでいる様子で、助けたときには狂気を感じられるような様子はなかったのに変だと思いつつ、ホリーは部屋に入り彼女に近づきます。ヴェノムもぴったりとその後ろについていきましたが、デイジーのなかから何かが飛び出し、ホリーに入り込み、ホリーは意識を失ってしまいます。

ホリーが死んでいないことを確認し、デイジーをみると心臓がなくなっていました。ヴァンパイアでも力のあるものなら心臓をなくしても再生し、生きられますが、彼女は若すぎて無理だったようです。

治療師たちはホリーを隔離しなくてもよいでしょうかと提言しますが、この出来事は彼女を狙ったもので、他のものへの伝染性はないとヴェノムは言い、ヴェノムは自分への過信からこのような事態を招いたと自分を責めつつ、ホリーを抱き上げ自分の部屋の暖かい石の床へ連れていきます。意識が戻らないものの、緊張がとけ呼吸をしている様子を確認し、ドミトリのところへ向かいます。

ドミトリは事態を治療師から報告を受けていたようで、ホリーにすっかり心を奪われたようだなと指摘されますが、ヴェノムはホリーをかばいすぎるな、彼女は野生の存在で、かごに入れたらいずれにせよ死んでしまうだろうと忠告します。ネハは優しいとはいえない大天使だったが、転生したばかりの人間とはかけ離れた存在だった自分を好きにさせてくれたと。

ヴェノムは自らの意思でラファエルに仕えていて、それは名誉なことととらえられています。またセブンのメンバーは一種の家族になっていて、イリウムはセブンのなかで一番力のある存在でいながら人間くささを一番保っているのは稀有なことだと感じています。ヴェノムにとってアオドハンは事件のあと自身を隔離している状態だったために心理的な距離を置かれていて理解しにくい存在ではあるようですが、もしもイリウムが大天使としてセブンを離れればおそらく親友のアオドハンはそのセカンドとして一緒に出ていくだろうと予想しています。

二人でヴィヴィクのいる情報室へ向かい、隔離室に設置されていたビデオを再生すると、デイジーの身体から飛び出した緑色のかたまりがホリーの身体へとむかっていくことが確認できました。この緑色はホリーの眼の色と同じ色でした。ウラムの一部なのでしょう。

ヴェノムはイリウムに頼んでケネーシャをタワーに連れてきてもらい、ドミトリと彼を尋問します。どうやらケネーシャがデイジーを見つけたのは、ラファエルがウラムと戦った2日前のことだったようです。
「あなたは亡くなったと思ってた。ごめんなさい。あなたは亡くなったと思っていたの」デイジーがホリーの顔を見た途端いったセリフは、もしも彼らがウラムに同じ時期に囚われていて知り合っていたけれど、大天使に記憶を消されて覚えていない可能性はあるかもしれない。どういう目的かはいまだにわからないがとドミトリとヴェノムは話し合っています。

ケネーシャはヴェノムに見つめられると人形のように言われたことだけ反応するようになり、供述した内容も嘘ではないようです。契約をきちんと結ばなかったこと、血液奴隷の契約もないのに虐待したことで罰を受けるのは間違いありませんが、弱い存在とはいっても年齢からいってラファエル本人が罰を下す必要があるだろうというのがドミトリの見解です。いまはラファエルはエレナとモロッコで大天使たちと会合を持っているため、気を散らせたくないとドミトリは羽を奪ったうえで監禁しておくと決めたので、イリウムは早速背中から剣を抜きケネーシャの羽を落とそうとしますが、この場を汚したくないから、まずは医務室で彼の病気の羽のサンプルなりを採取させ、彼の家に戻してから羽を落とせと命じます。

ドミトリはヴェノムにこのままホリーの警護と賞金稼ぎの調査について任せますが、ウラムのかけらを抱え込んだホリーについては何をしでかすかわからない新しい脅威を抱えた存在として注意深く見守るようにと伝えます。場合によっては自分が処刑するとヴェノムは言いますが、彼女に対して家族同然の愛情を抱くドミトリはそんな羽目にならないように、と命令します。

温かな気持ちの良い場所で目覚めると、そばのソファでヴェノムが寛いでいました。ホリーは5時間ほど気を失っていたようです。ドミトリと12回くらい手合わせしたくらい身体はクタクタで、腹に手を当てるとなかの違和感がかなり大きくなり、鼓動をしているように感じます。

ホリーはこの違和感を本来なら正直に申告しないといけないかもしれないけれど、閉じ込められるのには耐えられない。もしもこの違和感が周囲に悪をまき散らすことになってしまうなら首を切られることになるかもしれないけれど、生きたいと思っているいまはもう少しこのままでいたいと願っています。

お腹が空いたホリーにヴェノムは彼女の好物の海鮮焼きそばを振舞ってくれ、ヴァンパイアになる前は家族経営の旅館で腕を揮う評判の料理人だったと教えてくれます。その噂を聞きつけたネハがヴァンパイアになって宮廷で使えるようにとスカウトしたようですが、ヴァンパイア化してみると戦士としての才能が目覚ましく、違う形で仕えることになったようです。夜中にこっそり厨房で友達に料理を振舞っていたところをネハに見つかり、今度このような機会に自分を呼ばなかったら首を切り落としてくれると言われ、その場で気取らずに楽しく夜食をつついた思い出を話してくれます。料理上手のホリーの母に匹敵するヴェノムの腕前にホリーも感心しています。

ホリーが気絶している間にゼフとアラベラという友人たちから何度も着信があったようなので、二人は彼らのねぐらに向かいます。

さびれた共同宿泊所のねぐらに行ってみると、そこには血の跡があるだけで、他の人物たちは各ブースで横になったり新聞を読んだり静かに過ごしていて二人の姿はありませんでした。その場を離れようとするとブリンという人間の女性がホリーの注意を惹き、死にかけた彼らを隠した場所に案内してくれます。ブリンはゼフたちが自分の血液奴隷だからという名目で保護していた永遠に心が幼い人間の女性でした。

怪我の事情はどうやらアンバーでラリった末の乱闘が急に起こり、巻き込まれたのではないかということですが、救急外来へ連れていけば命は救えるかもということで彼らを運び出します。ブリンから事情を聞いたヴェノムはお金を取り出し、近くにたむろしていたグレた雰囲気の若者たちに渡し、ブリンの面倒をみるように命じます。彼女は自分の保護下に置く。絶対にブリンの血を飲んでもいけないし、食べ物や洋服などの世話をするように。どこにでも目があるからめったなことはするなよと釘を刺します。

ホリーは彼のやさしさに感激しますが、理由を尋ねるとヴェノムは自分が住んでいた村で似たような純粋な女性がいたと話してくれます。自分が10歳のときに16歳だったけれど、年下の親せきの子供よりも優しくしてあげないといけないことはわかっていた。彼女は年寄りの男に嫁がされ、ある日の朝目覚めなくなるまで殴られていた、と。貧しくてもブリンに優しくしてあげることのできるゼフたちは実際には裕福だった彼女の家族よりもずっと名誉がある、と。だからゼフたちの怪我の金銭的な面倒もヴェノムが個人的にみることにしたようです。

ヴェノムたちが救急に担ぎ込んだゼフとアラベラですが、すぐに対応してもらい、一般的な輸血のほかにヴェノムからも少し輸血することでアラベラは意識を取り戻します。

喧嘩騒ぎが起きる前、タイムズスクエアのライティングがきれいだからとアラベラはゼフと観に行っていたそうです。洋服屋さんの戸口の陰でひっそりと過ごしていたら、二人のヴァンパイアが自分たちに気が付かないで会話を交わしていてあることを耳にしたと教えてくれます。「ウォルター・バタースビーのまえに世界は凋落する。得点はよかった・・・・・チャン」そこまで話すとアラベラは癒しの眠りに入ってしまいました。

ジャンピエールとアッシュに確認すると、ウォルター・バタースビーの表側の顔はリッチなヴァンパイアたちのブローカーだということなのですが、裏では宝石泥棒などをやっている人物のようです。リッチな地域にある彼のオフィスを訪ねていくと、1800年ごろに生まれた人物のようで、知的で洗練された雰囲気です。

なぜホリーに5万ドルの賞金をかけたのかと尋ねると、自分は取次をしただけで、調査した限りではホリーがいなくなったとしてもタワーでは転生に失敗したケースとして小さな部屋を与えられているだけで誰も心配しない使い捨ての存在だということだったので、取り掛かることにしたと説明します。ホリーの元カレが情報源でした。彼女は彼と恋に落ちていたというよりは普通をとりもどしたくて付き合っていた相手で家族相手に話した当たり障りない説明しか彼には話していなかったものの傷つきます。契約書を見せろとヴェノムに言われて見せますが、契約相手の名前はメールアドレスのみでした。ヴェノムはそれを調査させることにします。バタースビーは幼児性愛者や強制的に転生させるケースなど好ましくない依頼者をはじくために自分も一通りの調査をしたものの何もわからなかったので、正体はわからないものの知性のある相手だと説明し、タワーがホリーを重要視していて、このような災難が降りかかるとわかっていたら危険に見合わないということで断っていたのに・・・。とぼやきつつ、契約は打ち切り、賞金を懸けた相手がわかれば情報をタワーに送ると約束します。

ホリーはヴェノムに手をひかれ、車に乗せられますが無言です。黙ってドライブした先にはドミトリがフェラーリで来ていて助手席にはオナーがいて、そこから街でデットレースを繰り広げます。途中からイリウムも空中で参戦し、数秒だけヴェノムが早くタワーに到着していました。

ヴェノムに何気なく首筋を撫でられながら、ドミトリたちと楽しく歓談する場にいてもホリーは何も耳に入りませんでした。じゃあ明日、とドミトリたちとイリウムがその場を離れると、ヴェノムを誘います。俺は子猫とは寝ない、特に将来性を考える子猫とはとかわされますが、いいじゃないの、私との関係ができるだけなんだから、私のことが欲しいのはわかっているのと迫ります。

ヴェノムはセントラルパークで車を降りると、ジャケットや靴、靴下を脱ぎ捨て車に放り込み、「逃げてみろ」とホリーに命令します。暗闇の公園での追いかけっこがはじまりました。ヴェノムはホリーに十分に猶予を与えてくれたものの、追いつかれるのはわかっていました。それでも追跡をかく乱するために本能を全開にして木によじ登り、ヴェノムが近くまで来ると背中めがけてとびかかり押し倒すとまた捕まらないうちに逃げ出したり、芝生のなかで数分じっと横になって気配を消してヴェノムがそばを通っていくのをほくそ笑んで見送り、10分ほどそのまま過ごして、全速力で別方向に駆けますが、数分後にはどうやってか正面にヴェノムが現れ、両腕を広げた彼の胸に飛び込むことになってしまいました。

両腕を地面に押さえつけられ、洋服を脱がされ、今度は上下を入れ替わりホリーが下敷きになったヴェノムの泥だらけのシャツのボタンを一つひとつ外しているとヴェノムは自分がほんの少し獲物になった気分を初めて女性の視線に対して感じてワクワクゾクゾクしています。・・・突然ホリーが後ろにがっくりとのけぞり、胸に異様なふくらみがうまれ、緑色の光のいびつな翼のようなものが現れます。ホリーはヴェノムの肩に爪が食い込むほど握りしめていて痛みを覚えているようだったので、とっさの判断でヴェノムは自分の手首を切り裂き自分の血を与えると光は治まっていきましたが、ホリーは外傷はないものの身体のダメージのほかに自分の異様さがはっきりしてしまった判断したようです。

ヴェノムはタワーまで送ってくれて、今日はドミトリに話す力はないだろうから、明日の朝にしよう。今日はもう寝ろと言って別れました。翌朝起きて身支度をしながら姉や弟、両親たちにそれぞれ電話をしてさりげなく別れの挨拶をしたあと、ヴェノムの部屋に立ち寄り、ドミトリの指令室に向かいます。そこにはドミトリと妻のオナー、イリウムが待っていました。ヴェノムが彼らを呼んだようです。

ヴェノムが、「ホリーは進化したようだ」と簡単に報告し、詳しい説明はホリーに任せてくれます。自分の中の何かが自分の身体に収まりきらないほどの力が大きくなってきていると。自分のことを処刑する判断は誰がするのか、どういう一線を越えたら処刑されるのか、教えてほしいと。ドミトリはホリーをバルコニーに誘います。「どうせならここから突き落としてホリー問題を解決したらどう?」とホリーが言うとドミトリは怒って、「そうしたかったら発見したときに自分がお前の首を折って始末していた」と言います。ドミトリは知り合ってからいつもホリーを見守ってくれていて、本当の父親は別にいるとしても、ホリーにとっては特別の存在です。ホリーはドミトリに謝ると、もしも私が怪物になってしまったらあなたに殺してほしいと頼みます。だってヴェノムには頼めないから。「あなたの子供みたいな気分にさせられるのはなぜかしら? 」とオナーは言いますが、それなのに自分に処刑してほしいと頼むのかとドミトリは返します。「父親は自分の守るべき子供を絶対に殺すべきではない」その言葉にはあまりにも多くの痛みが込められていて、オナーの知らない彼の哀しい過去を感じさせました。

話し合う彼らを窓越しに見守るイリウムとヴェノム。もう機嫌は直ったのか?とおちょくるヴェノムにお前には関係ないと返すイリウムですが、旅に出るアオドハンにサヨナラを言わなかった、自分を守ろうとするなと言われたと告白します。事件が起こったあとのアオドハンしかしらないヴェノムにはアオドハンがどう変化したのかはわからないというと、アオドハンがどんな天使だったかというと、無口かもしれないが彼は強くて空の稲妻のようだったし挑戦を恐れるようなタイプでもなかった。戦いとなれば盾となってくれる戦士だった。自分たちの中でかれが一番だったんだとイリウムは説明します。「それならなぜ彼が自分自身を取り戻そうとするのを怖がるんだ? 」一緒にいるのが当たり前ではないと忠告し、イリウムはその考えにショックを受けていたようです。

ホリーがドミトリを安心した様子で見上げ、リラックスした様子で一緒にいるのをみて猛烈な嫉妬心が沸き上がることに気が付いたヴェノム。彼が妻のオナーに完全に心を捧げていることを知っているのに。部屋に入ってきたホリーはヴェノムのそばにきます。彼女の決意を受けて、彼もその場を動きませんでした。オナーが新しい力が沸き上がってきた時どんな感じだった?と聞かれ、痛みしか感じなかったと思ったけど今思うと引っ張られているような感じもする。どこかの場所からの・・・。ホリーの手から緑色の光があふれだし、その光が指し示したのはヨーロッパの方向でした。大天使ミカエラ。彼女はウラムにも同じく襲われている。デイジーがそうだったように、ホリーもウラムのかけらが飛び出しミカエラに向かう可能性がある。

だけど問題があるとイリウムが指摘します。光の方向はブタペストとしても、今この瞬間、ミカエラはモロッコにいるはず。もしかしたらホリーのような存在をミカエラも作ったのかもしれない。ミカエラの領土に踏み込むなら大天使がいない間のほうがなお都合がよいということで、原因を探るために領土を出る許可をドミトリに求め、ホリーはヴェノムと共に出かけることになります。ドミトリが「彼女がもし傷つけられるようなことがあれば、お前に報いを受けてもらうからな」と言うと、ホリーは首を横に振っていましたが、ヴェノムは頷いていました。

二人はミカエラの領土まで飛行機で飛びますが、ホリーがこのあたりから強く惹きつけられる力を感じるという深い山間で、ヴェノムはホリーを抱えてスカイダイビングで潜入します。ミカエラの奥深く隠された宮殿に何かはあるようです。

彼らの侵入の痕跡を残さないために、細心の注意を払い天使の警ら隊をすり抜け、ヴェノムのピッキング技術や視線での催眠技術、蛇の本性を全開にした素早く静かな動きなどを駆使して、二人は宮殿の奥の塔へとたどり着きます。ホリーの中から発光する緑の光と、異物の意思はますます強くなっていきます。ウラムの記憶も断片的によみがえり、この宮殿の空を何度もミカエラと飛んだことを思い出し、ホリーは彼を単に怪物とは思えなくなってきます。

ミカエラは妊娠したという噂があったため、部屋にウラムのかけらを身体に取り込んでいる赤ちゃんがいたらどうしよう? と塔に入る前に二人は話し合います。事情があっても天使の赤ん坊、それも大天使の子供をみつけてすぐ殺すわけにはいかない、戦争になってしまう。状況をとにかく把握して、ラファエルに判断してもらおうと確認しあい、塔に潜入します。

部屋にはゆりかごがおいてあり、緑色の光がそこからあふれています。またその横にはミカエラを思わせるブロンズ色の光の球がありました。天使の炎のような何らかの彼女の力のようです。何を見ることになるのか、恐る恐るのぞきこむと、そこには目も口もなく四肢も不十分な肉の塊のようなものがいました。鼓動があることが確認できるので生きていることはわかりました。突然ホリーの体中から血が噴き出し、合体しようとする力が働きだしました。ヴェノムは他にどうすることもできず、彼女のヴァンパイアとしての生命力を信じてホリーの首を絞め気絶させます。ひとまずホリー自身の生命力がないと飛び出そうとするホリーの中のウラムのかけらには力がないようで、作用は止まったようです。とにかく自分たちのみたことを、誰にも気が付かれずにラファエルに報告せねばと、気を失ったホリーを抱えて、時には背負い、ヴェノムは蛇の本性を全開にして警備の厳しい宮殿を人目をかいくぐりながら引き返し、辛い道をひた走ります。宮殿から十分離れない場所でホリーが目覚めかけ、再度血が噴き出しかけたのでまたもや首をしめて気絶させ、さらに距離を稼ぎます。

充分離れたところでホリーの傷を確認すると酷い状態で、ヴェノムが自分の血を飲ませようとしましたが、私たちが逃げるためにはあなたの力が必要だからとホリーは飲もうとしません。ヴェノムは必要になるからとアッシュに言われて持ってきた輸血のボトルを思い出し、1本口に流し込むと、それはスパイス風味で彼の家を思い出させる味でした。その後ホリーに自分の血を与えると、傷は少し回復したようで、彼女自身もかろうじて動ける状態になりました。

ミカエラの領土にはジェイソンの内通者がいて、その人物が今回別荘を提供してくれていました。500年連れ添った愛妻をミカエラに殺され、復讐のためには何でもするという人物のようです。二人はこの別荘でラファエルが来るのを待ちます。ホリーはあの肉の塊と合体したら自分がなくなってしまう、そしてウラムが復活することになってしまう、その事態を阻止するには自分が死ぬしかないかもしれないと気が付いていますが、ヴェノムには私は逃げないと宣言します。そこにいる間は将来のことは考えず、愛を確かめ合うことにします。

3日後の夜明けにラファエルが飛んできます。すぐにミカエラも警戒のため出向いてきたため、ラファエルには心話で「現地で会おう」と指示され、ヴェノムたちは再び塔を目指します。今度はホリーが塔にできるだけ近づくまで目くらましのグラマーを使いヴェノムと自分の姿を隠し、塔の入口にいた2000歳くらいと思われる天使の戦士はヴェノムが目くらましから外れ、彼の視線の力で自分たちの存在を誤魔化すことになんとか成功します。

塔に入るとホリーの意識はウラムに乗っ取られ、隅に追いやられてしまいます。部屋に入ると「天井を開けろ」とホリーではない口調と声音で命令します。前回彼らが潜入時には気づかなかった部屋の仕掛けでしたが、ミカエラはおそらくリモコンを持っていて、天井部分から出入りしているのでしょう。天井が花のように開くとほぼ真上にラファエルとミカエラが来ていました。

ホリーのなかのウラムはミカエラに対し、俺を裏切ったなと責めますが、ミカエラは最初彼だと信じません。ところが俺たちが最初に会った時のことを覚えているかと言うと明らかに思い当たる節があったようで、愛する人が戻ってきたショックを覚えていました。ウラムが自分に力を取り戻すために血をよこせというと素直に首を差し出し、たっぷりと飲ませます。それはよく知られた傲慢な大天使の意外な一面で、彼女なりに彼を愛していたことがうかがえました。気配を消しながらそばに控えているヴェノムでしたが、ヴェノムはホリーのなかにまだ本人の意識があると感じているようです。

ホリーの身体の中では、ホリーがウラムにあなたがもしあの肉の塊に遷移するとしたら、口もきけない、何も見えない、身動きもできない状態でミカエラに保護されながら生きることになるけれどそれでよいの? ホリーのなかのウラムのかけらは、彼がブラッドラストになってから移された彼の一部、つまり精神のこだまのようなものだけれど、大天使としてよみがえるには肉と精神、大天使の血が必要で、肉はラファエルによって完全に塵となってしまったから、ここにあるものしかなく、ホリー自身の身体は大天使の力を支え切れるものではないと説得します。

ホリーの身体から飛び出したウラムのこだまはミカエラへ乗り移ろうとしますが「私の身体から出ていって!」とはじき出され、今度はラファエルの身体に入ろうとしますが追い払われます。そしてホリーの身体に戻ろうとしますがヴェノムが素早くホリーの身体をかばい、彼らをラファエルがかばいます。ここまで彼らは300数才の若いヴァンパイアとして、そして生まれて間もない存在として期待される以上の働きをした。ここからは大天使の仕事だ、と。

また、もしもこだまと肉の塊が合体してウラムが復活するとしたら、それは昔の彼が戻ってくるわけではなく、ブラッドラストのあとの彼が戻ってくるだけなのだということにミカエラも気が付きます。ミカエラは悲しみながらも天使の炎に近い強力な力をウラムにぶつけ、またラファエルも天使の炎をぶつけ、ウラムのこだまを完全に消滅させます。

ラファエルがホリーを抱くヴェノムに近づくと、滂沱の涙を流し「ホリーは瀕死です」と言います。ラファエルは彼女を運んでもよいだろうかと彼に尋ね、ミカエラはそのまま放っておき、グラマーで自分たちを覆うとひとまず別荘まで彼女を運びます。

ラファエルの治療の炎も彼女には効果がありません。彼女は自分がもしも死んだら家族には突然の事故で亡くなって、亡くなる瞬間も幸せだったと伝えてほしいと言っていました。またヴェノムには生きて、また誰かを愛してほしいと。絶望的な状態ですが、ヴェノムはせめて彼女を家に戻してやりたいと願います。ラファエルはその願いを聞き入れ、国際空港までは彼がヴェノムとホリーの二人を抱えて運び、そこからは特別機でNYに戻ることにします。ラファエルは「ホリーは2度ウラムに打ち勝ったのだから、自分ならホリーが負けるほうには賭けない」と励まします。

「俺に愛させておいて、置いていくな!」特別機のなかで、ヴェノムは彼女の衣類を脱がせ、血まみれの身体をぬぐいシーツだけをかけて容体を見守っています。傷からは血がにじんできていますが、彼女の回復のためにはヴェノムの血を飲ませないようにとラファエルに指示されていました。ミカエラの血が強力すぎるので、これ以上の強力な血はホリーの身体には耐えきれないだろうという判断でした。気を紛らわせるため、ヴェノムは過去の自分の思い出を話し続けていると、意識は戻らないものの、指がかすかに動いたことでヴェノムはかすかな希望を持ちます。

心地よい気分のなかホリーが目覚めると、身動きした直後には全身に激痛がはしりますが、そこはヴェノムの部屋でした。あれから47時間ほど経っているようです。どうやらミカエラの血が彼女の身体の回復を助けてくれた一方で、強すぎる力は傷から流れ出てしまったようです。お腹がペコペコの彼女にさっそくヴェノムは様々な料理をどんどん作り、食べさせますが、食べても食べても足りません。どうやらエレナと同じように、ホリーの身体も進化しているようです。とはいえ大天使の力はウラムと共に消えたようで、ホリーは少しがっかりしていましたが、おそらく彼女が進化すれば本能的な能力のほうは表出していた形へ強まっていくだろうとヴェノムは言います。彼女の虹彩はウラムの痕跡ともいうべき少し緑がかった茶色に変化していて、能力について不安を覚えるホリーにヴェノムは告白します。

君を愛してる。頭の先から足の先まで。昨日も今日も。今この瞬間から死ぬまで。動きが素早かろうが、遅かろうが、身体が小さかろうが大きかろうが、強かろうが弱かろうが、君を愛してる、ホリー。

賞金稼ぎを雇った人物ですが、ヴィヴィクがメールアドレスからたどったところ、大天使カリセムノンに関係する人物に繋がったようで、ドミトリが彼をバラバラにし、ビロード張りの箱につめてカリセムノンに送り付けたそうです。おそらくデイジーの血を吸っていたケネーシャのようにウラムの血をもつホリーから血を吸うためのカリセムノンの仕業ではということですが、ラファエルがカリセムノンと会話を持ち、否定されてしまったため、これ以上は追及できないようです。

ホリーは不完全な変化の状態というのはそのままで、ヴァンパイアでもなく、天使でもないのです。君はナージルのように、俺のように、ただ一人きりの種族だ。ホリーはそれもいいと思えるようになり、種族に名前をつけなきゃというとヴェノムが幸せそうに笑いながら「ホリーベリーだろ」と提案します。ホリーも笑いながらヴェノムにキスをします。過去は終わり、二人の未来はバイパーグリーン色にきらめいています。

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