2020/08/21(金)18:04
尾崎豊の「核」を聞いて
この詩人で歌手の美しい青年が存命中は、自分はその人の存在を知らなかった。
多くの歌詞は彼が10代の頃に作詞されていたようで、つい、
ランボー Arthur Rimbaud と重なってしまう。
尾崎豊の「核」の歌を夕べ初めて聞いた。1988年にリリースされた曲だそうだ。
1945年から1995年頃まで 米国(1110回)、ロシア(980回)、フランス(210回)、英国(45回)、中国(45回)、インド(5回?6回?)などの国で核実験が行われ、2005年には包括的核実験禁止条約 La Traité d'interdiction complète des essais nucléaires に176か国が署名し、内125か国が批准したものの、2005年からパキスタン(5回?6回?)や北朝鮮(2回?)で再び核実験が行われ、約2400回の核実験が行われた。米国、中国、パキスタン、北朝鮮は批准署の提出はしていない。(La Cartegraphe 及びStatistaより)
なかでも、1993年の世界核実験の資料によると、1961年のロシアの「ツアー」核実験は、広島の3000倍の破壊力だったそうだ。戦後、原子力発電は、核爆弾を平和利用に転換して使おう、という極めて明るい路線に乗っかった視野で核廃棄汚染物質まで疑問が向けられることもないまま、導入された。
「核」の歌は、直接、原子力発電に向けられたものではなく、核爆弾に向けられたものだとしても、最終的に、まるで2011年の福島に到来することを予測していたような怖い詩だと思った。
ねえねえ もしかしたら俺の方が正しいかもしれないだろう
俺がこんな平和の中で怯えているけれど
反戦 反核 一体何ができるというの
小さな叫びが聞こえないこの街で
「平和の中で怯えている」という部分が福島の町に残された「明るい未来」と書かれた看板と重なる。
原子力発電大国フランスではジャーナリストがマクロン大統領に原子力発電所に頼らない方向について問う場面を思い出した。
フランス語 マクロン大統領とジャーナリスト
動画の16:43ぐらいから原子力発電の話をしています。
これは2017年末頃の放送だろうか。
マクロン大統領は今後5年間ですべての火力発電所を閉めると言う。
これが二酸化炭素を放出し、地球温暖化につながっているから。
すると報道者のドゥラハウス氏は原子力はそういう問題がないから
クリーンだというわけですか、と詰め寄る感じ。
大統領は原子力は二酸化炭素の問題はないが、しかし
懸念はある、ça fait peur
とするものの、フランスではまだ(福島のように)原子力発電所が爆発をしたことはない、ともいう。
するとドゥラハウス氏はちらっと「でも、廃棄物質 le déchet が」という。
大統領としては、この部分は避けたいのだろうか。
結局、これといった解決策があるわけでもないので議論しても傷口に塩を塗るだけの話になるからだろうか。
廃棄物質をめぐる話にはならなかった。
マクロン氏は原子力発電は安定した電力を生み出し、再生可能資源としての電力は現時点で浮き沈みがある、と言う。
現在、フランスは75パーセントの電力を原子力に頼っているが、今後は核原子炉の安全性を確認していく姿勢を強化し、完全に閉める原子力発電所も出てくるだろうし、もしかすると近代化して継続して利用するかもしれない。
しかし、現在、依然として遅れをとっている再生可能資源を利用した分野の開発を早急に進めなくてはいけない。これに対して投資をすべきだ。
この分野への雇用促進もする。太陽光発電と風力発電に国家として力を入れる。
再生利用エネルギーにバトンタッチする方向展開に向けたい、と。
いつだったか風力発電が倒れたニュースがあったなあ。
あるフランス人は風力発電にぶつかって犠牲になる鳥の数も結構多いのよ、と言っていた。
ガラス窓のビルもたくさん建つようになったけど、あれも毎日多くの鳥が勘違いしてぶつかって命を落としているのよ、と。
人間が開発するもののためにほかの命を奪っているのか、と思っても、経済のためにそういうことは結局なくなってはいかないのだろうか。
自分は風力発電は日本のような地震国にはどうかと思う。
それでも一度、事故につながると環境全体が地球規模で取り返しのつかなくなる原子力よりはいい、と思う。
南仏は日照時間が多いということで田舎道を車で走行すると
民家の見当たらない広々とした場所に結構たくさんの太陽光発電が置かれた場所がある。
屋根にソーラーパネルを載せる家が増加したと思う。
民家はそれぞれ離れているので、近所迷惑にはならない。
フランス人の知人夫妻は10年前にソーラーパネルを屋根に設置し、
10年後の現在は毎月、約25万7千円相当つまり2千ユーロが家計に入ってくるという。
つまり、今後もずっと入ってくるのだ。うらやましい。
昔、2009年前にちらっとフランス国境沿いのドイツを素通りした時、屋根にはソーラーパネルを設置している家が多かったのを覚えている。
家は大きなガラス壁で、ああやって冬でも日中はあったかいのだろうと思った。フランスはまだ原子力にどっぷり浸っていた。
電気会社からの請求書にも原子力由来の電気が90パーセントと書かれてあって驚いたものだった。
もう数十年前からオゾン層は破壊されて、最近ではカナダの氷も例年になく溶けているとかニュースでもちらっとみかけた。
南極とかの氷が解けると、オランダのように海よりも低いというか、海の上に浮かんでいるような国は消えてしまうかも知れない説も数年前に出ていて、ボート形式の家を設計する若い建築家の写真を見たことがある。
もし、ほんとうにそうなるとオランダ難民が出てしまうのか、と思ったものだった。
海よりも低い国って想像がつかないけれど、確かにアムステルダムやライデンの街の下には水が流れていまして、と現地で英語で説明をしてくれた親切なオランダ人。
大きな家々もアムステルダムでは前のめりに傾いていて、地震国日本なら、もうとっくの昔に倒れている、と恐怖心を抱いたものだった。
異常気象と原子力発電所。
日本もまだ福島第一原発の問題が片付かない内にすでに日本海側で原子力再稼働をしたとニュースで読んだ。
ねえねえ もしかしたら俺の方が正しいかもしれないだろう
俺がこんな平和の中で怯えているけれど
反戦 反核 一体何ができるというの
小さな叫びが聞こえないこの街で