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2012/08/06
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カテゴリ:BOOK REVIEW
(ネタばれありです)

スティーヴン・キングってあまり大っぴらに読めない。できれば読んでるところを人に知られたくない。本棚の奥のほうに隠しておいて、ダミーでガルシア・マルケスとか飾りたい―――。自分の中ではそんなカテゴリーに分類される。でもボリュームたっぷりで、実は読みだすと止まらない。生理的にどうもダメというか、嫌悪感すら感じるのに、そこがまた魅力なのかもしれない。今回も登場するス○トロジー。そのテクニックにすっかりはまった感じ。

本の中身は2作品からなる。1本目は「図書館警察」。本の返却を延滞すると怖い怖い図書館警察が現れる、というストーリー。設定がピンポイント過ぎてそれって本当に怖いのかどうかよくわからないが、主人公サム(40歳)の幼少時代のトラウマとか、作者の卓越した表現力で立派なホラー小説として確立してるのでその辺はご心配なく。

2本目の「サン・ドッグ」もまた、シャッターを押すと化け物に変身するカメラ、という奇想天外さがまるでB級映画だが、壮大なスケールを描ききった作者の見事な手腕に敬礼。主人公の少年(15歳)がモンスターと格闘するあたり、ちょっと古いハリウッド映画を彷彿としていた。そういや80年代ってそんな時代だったなぁ。「勇気」だとか「根性」だとか恥ずかしげもなく語っても許される、いい時代だった気がする。

彼の妹がこれまたホラー映画マニアという設定で、兄の誕生日に「チャイルドプレイ」のビデオを見ていたり、「13日の金曜日」のジェイソンにファンレターを送り返事をもらったエピソードがあるあたり、「サン・ドッグ」は80年代ホラー映画に対するオマージュなのかもしれない。

両作品とも、ラストで恐ろしいモンスターが登場するが、その描写がとにかくデティールが細かく、ほとんど映像として楽しめるほど。怪物に触れた感触の比喩が「使用済みのティーバッグをつかんだような」ですよ。うへぇ、そりゃ確かに気持ち悪い!終始そんな感じで、その微細な具体性に脱帽。想像力だけでそこまで書けてしまうキングはやはりすごい(ていうか、気持ち悪い)。

実際「スティーブ、いつになったらもっとまじめなものを書きはじめるんだい?」と人から言われているそうな(同時収録のノートより)。確かに文学作品にはなれないが、自分の世界を創り上げる、というジャンルではもう頂点。

どこまでも漂う80年代の空気感。「へどが出る」「マ○ーファッカー!」なんて、なんか嬉しくなってしまう海外小説ならではのセリフも続出。それにしてもタイトル何とかしてほしい(原題はfour past midnight)。「悪魔の毒々図書館モンスター」なんていかが?(ぱくりやって)





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Last updated  2012/08/06 07:41:04 PM
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