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放浪の達人ブログ

無言の交渉

   「無言の交渉」

俺が買い付けに行くアジア某国の某ビル地下1階の奥には
あんまり英語が話せない中国人おじいちゃんがやっている天然石屋がある。
他の店より値段は高めだが石の品質はとても良い。
今回はじいさんとのコトバを越えた交渉のことを書いてみる。

余談ではあるがここで俺の輝かしい学歴について触れておかねばなるまい。
俺は入学競争率1.01倍という田舎の高校を
トップにわずか数百番及ばなかったものの見事に卒業したという
誰もがヨダレを垂らすような英才教育を受けて育ってきたが、
残念ながら三河弁を選択科目で専攻していたので中国語はわかんない。
よって不本意ながらそのじいさんとは筆談での交渉となる。

俺が「我是日本人(俺は日本人だ)」と自己紹介から始め、
相手は「我是中国人(ワシは中国人だ)」と書いてくる。
そんな事はもうわかっている。だから筆談してんぢゃねえか!

じいさんは石を指し「是阿富汗的瑠璃(これはアフガニスタンのラピスじゃ)」と
書いてくるがハッキリ言って漢字が達筆過ぎてわかんない。
おまけに略語というインチキも使うので解読はIQパズルのようだ。
ちなみにエジプトは埃及、ニュージーランドは新西蘭と書く。
オマケだがケンブリッジは剣橋だ。何じゃそりゃ。

さて、石の選別も終わり値段交渉となる。
ビジネスでわざわざココまで来たのだという事を強調し、
お互いの売りたい値段、買いたい値段を折り合いがつくまで書き合う。
 じ「4000(これで買え、日本人)」
 俺「3000(いやいや、これで売ってくれ)」
 じ「3800(値下げはここまでだ、日本人)」
 俺「3200(おいおい、さっきまでの中国的笑顔はドコ行った?)」
 じ「3700(しゃーねーな、最終値段だ)」
 俺「3500(ジョーダンじゃねえ、もうちょいマケれ、じいさん)」
ナドと「お、漢字ばかりじゃなく数字も使えるんだな、このじじい」と
半ば感心している時にハッと気付く。

俺達はずっと無言だったのである。
片隅にはお互いのコトバを書き殴った無数のメモ用紙。
これぐらいの英語はお互いわかるのに筆談モードに2人とも没頭していたのである。

帰り際にじいさんは「タンキュー」と言った。
も~、ここまで来たら「謝々、再見」と紙に書いてくれっ。



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