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カテゴリ:ニュース解説ー川下(小売業)
昨日の拙ブログのエントリに対し、NORRYさん、桑田さんから早速コメントを頂いた。
実は、「ロングテール現象」については、私も半年かもう少し前から強い関心を持っているのだが、商品寿命が極端に短いアパレルにおけるロングテールの成功事例らしきものがまだ思い浮かばず、自分の中ではもう少し研究を要するな、と思っているので・・・。 すみませんが、その問題は保留とさせて頂きm(__)m、昨日の続きを書きます。 世の中の企業は、ざっくり言って、「コンテンツ(情報コンテンツもしくは物的コンテンツ)を作っている企業」と、「コンテンツのためのインフラを提供する企業(コンテンツを売る売り場を提供する企業)」に分類できると思う。 出版社及び作家の先生とか、レコード会社やミュージシャンとか、アパレルや雑貨卸、製造メーカー、デザイナーなどは前者、百貨店、量販店、専門店や昔からある総合通販企業、楽天さんやYahoo Shoppingなどのネットショッピングモールは後者に属する。 アマゾンも、後者の企業だ。だから、同社が物販の取り扱いカテゴリーを広げることは、後者の企業にとっては、普通に考えてもライバルが1社増える訳で、当然脅威となる。 しかし、ネットの世界では、例えば百貨店業界である地区に新店舗が一店増えたのとは異なる様相を呈してくる。1つの強者に、ユーザーの大多数が吸い寄せられてしまうという、一強多弱の状況が生まれてくるからだ。 技術革新の方向性を先取りし、先手を打った企業が勝つ。そして、ある時期に栄華を極めた企業が、先を読み損ねたためにあっという間に新技術に基づくインフラを普及させた企業に追い抜かれる。 過去の経済史において、ここまで短期間にめまぐるしく勝者が入れ替わった時代があっただろうか。最近の事例を考えても、ソニーの凋落、一旦は競争の埒外に置き去りにされたかと思われたアップルの復活、アメリカの本社はチャプターイレブンを申請したが、優良企業としてこれまで頑張ってきたジャパン社がNTTドコモの傘下に入り連合を組むことで生き残りを図ろうとしているタワーレコード等々、本当にNORRYさんのおっしゃられる通り、この競争の激しさ、その変化のスピードの凄まじさには戦慄を覚える程である。 アマゾンとて、その例外ではない。というか、以前このブログでも書いたことがあるが、書籍やCD、DVDという、信号化してネット上で流通可能なテキスト情報、音楽や映像コンテンツが主力商品である同社自身が、一つ間違うと取り扱い商材の多くを失いかねない、危機的な状況におかれていると言えるだろう。間もなく、同社の巨大な物流センターの中から「本」が消え、大きな倉庫はカラッポになる。 実は、同社こそが、既に追い詰められた手負いの獅子に変貌しているのだ。本の代わりに売るものを!アマゾンは、死に物狂いで物販の取り扱い商品を拡大してくるだろうね。 しかし、これまで述べてきた話は、「コンテンツのためのインフラを提供する企業」の話であって、「コンテンツを作っている企業」の場合は、立場がかなり違うのではないか。 要するに、新しいお店が1店舗増える=売り場が増える=チャンスが増える、なんですよ、基本的には。 ただ、昨日も少し書いた通り、アマゾンは恐らく低価格販売でシェアを取る戦略で来ると思う。低価格にしてインパクトが出るのは、実は有名なブランドである。そういうブランドさんに対しては、あの手この手で交渉してくるだろうね。 仮に年中値引きを突っぱねたとしても、わが業界の弱みである、過剰在庫、売れ残りの問題を突いてくるだろう。それこそ今、書店と古書店を一緒に開業しているように、プロパーショップとアウトレットを同時に開店する、という方法も考えられるだろう。 大手アパレルさん、大手の服飾雑貨卸さんなどは、いかに安売りによるブランドイメージの低下を防ぐか、ということを常に考えておかれる必要があるように私は思う。 一方、中小のアパレルさんや、中小の製造メーカーさん、クリエーターさんは、ネット上ではオンリーワンとして、安売りではなく、むしろ高くても買って頂けるような、こだわりのある商品を開発し大事に売っていかれることが可能だと思う。リアルでの評価より、頑張ればネット上での評価を上げることは容易だと思うのだ。 それこそ、地方の安全で美味しい食材などが、高くても一定数のファンを獲得し、しっかりと売れていっているように。 ブロガーやアフィリエイター同士のネットワークを活用し、「ママゾンキャンペーン」と称して、新発売の書籍の売上高を瞬間的に1位にするようなことが、衣料品や服飾雑貨の世界でも展開できるかもしれないし。新たな面白い販促方法がアマゾンから出てくる可能性は大いにあると思うので。 要するに、アマゾンでの販売は、必ずしもマイナスになるとは限らないということだ。というより、特にネット販売のウエイトを重視される企業さんの場合は、ノウハウを習得するためにも、本店と楽天店、ヤフー店など以外に、新規売り場としてつながりを作った方が得策だろう。 但し、問題が1つある。ネットニュース等には、今回のスポーツカテゴリーの商品約10万点をアマゾンが「調達」と書いてあった。はっきりしない表現だと思ったが、恐らく、取引形態の基本が委託になっているのだろうと推察できる。 自社物流を活用するアマゾンのビジネスモデルは、ネットショッピングモール型よりもテレビ通販型の取引形態に近いと推察される。そうなると、「お金さえ出せば誰でも売り場が持てる」のではなく、「アマゾン側が欲しい商材を選ぶ」「初期在庫の負担能力がある企業が選ばれる」という要素が強くなるはずだが。 今日付けの日経MJに、ケンコーコムさんは一部商品を自社の物流センターから出荷する、と出ていた。これは多分、きちっとした情報システムと物流センターを構築している企業さんはアマゾンとの条件交渉が有利に運べるという先駆的な事例となっているのだろう。 一方の、「コンテンツのための売り場を提供する企業」さんの方だが、リアルの百貨店さん、量販店さん、専門店さんや、昔からある総合通販企業さん、ネット上での大小のショッピングモールさんやネットセレクトショップ、メーカー・卸系でなく、小売業の方が営んでおられるネットショップさんなどは、強大な強者への対抗、確かに大変だと思う。 小売業のネット販売の場合、メーカー系に比べて利益率の点でもそもそも不利でもあるし。 「総合」で「一強」に勝てない場合は、品揃え、VMD(ネット店の場合はサイトのデザイン、レイアウト)、販促方法、サービス(特に、エンターテインメント、癒しなど、人間の五感、喜怒哀楽に訴えかけるサービス)、ショップスタッフやネット店長などのヒューマンコンテンツなどので自社ならではの特徴を出していくほかないだろう。 商品を絞り込むか、顧客を絞り込むか、あるいはその両方を絞り込むか。商品に関しては、やはり、小売業の原点に立ち返り、無名の良品佳品を発掘し世に出していくことや、自社自身がプライベートブランドを開発し販売するなどの努力が必要だと思う。 アパレルや雑貨のブランドに全面的に頼らない、小売業のストアブランドの確立。これができている企業さんは、必ず残っていくと私は思います。 もう1つは、自社サイトをそっくりそのままアマゾンに丸投げ=提携もしくは身売りするか。アメリカもそうなっていますので、これは大いにあり得るはずですよ。水面下で既に交渉が始まっているかもね。 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年11月22日 02時19分48秒
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