知的漫遊紀行

2008/09/13(土)08:32

「ニッポンには対話がない」北川達夫・平田オリザ著・三省堂・08年4月刊・3の3

孫の教育(68)

                              ニッポンには対話がない私:この本で紹介されている言葉でコミュニケーションデザインというのがある。   専門知識を持つ者と持たない者、利害関係や立場の異なるひとびと、その間をつなぐコミュニケーション回路を構想、設計することだという。   このコミュニケーションが社会的に崩れてくると、学校に対して身勝手で理不尽なクレームをつけてくるモンスターペアレンツという保護者が登場する。A氏:それは君のブログで「バカ親、バカ教師にもほどがある・子ども化する大人たち」1.2.3.4でふれているね。私:親がいろいろな価値観の人と対話しないで育っているとそうなるという。A氏:例の和田中学の民間出身だった前校長の藤原和博氏も、子どものときにいろいろな大人と接触することが重要だと言っていたね。    そして、私立校と違って公立校はいろいろな生徒とコミュニケーションを持てることが長所だね。私:それからエンパシー(empathy)だね。   シンンパシー(sympathy)と違う。   エンパシーは、自他の区別を前提としたうえで、意思的、能動的に他者の視点に立ち、他者の立場に置かれた自分を想像することに基づいた相手理解のことだという。A氏:なんだか、難しいが、「高い立場」からの憐れみでなく、きちんとした相手への理解力だね。私:それからキー・コンピテンシー(key competency)という言葉がある。   OECDで生まれた新しい能力概念だという。   言語を運用する能力、他人といい関係をつくる能力、争いを解決する能力、人生計画を設計し実行する能力などが組み合わされた、個人の人生にわたる根源的な学習能力をいう。   生涯を通して成長し変化するものだという。  この本の最後の方で、日本の移民に対する対話というか、対応の遅れを大きく問題にしているね。A氏:移民が増えてくると、まさに、異なった価値観や文化と直接、ぶつかるわけだから、きちんとした「対話」が不可欠になるね。私:フィンランドの教育視察に日本人が行くと、皆、今のやり方をいろいろ聞くそうだが、ヨーロッパの国の人は、フィンランドが将来、多くの移民を抱えるようになったとき、どのような教育システムで対応するのか聞くことが多いという。   フィンランドは他の欧州諸国と比較すると移民がまだ、少ないからだね。A氏:日本も少子化で移民が増えるだろうね。 私:しかし、最近起きた大相撲の大麻事件などは、すでに後手になった移民問題を反映していると言えるね。   この本ではふれていないがね。   なんせ、今度の相撲の本場所で、三役10人中、外国人が6人だという。   大相撲はすでに日本の移民問題を象徴的に示しているね。   日本の伝統と違った価値観で育った外国人力士との摩擦だね。   効果的な「対話」が必要だね。 A氏:こないだ知人の人から直接聞いた話だが、東南アジアから来たベテラン介護士に「患者さんの不安をなくするのは大変でしょうね」と聞いたら、 「私、不安という言葉は分かりません」と返事されたという。  先日、インドネシアから多くの看護師候補が来たね。私:これから、日本は真の対話が必要だね。  この本は最初、読み出したとき、ありきたりの日本人論かと思って読み始めたが、実践経験が豊かなだけに具体例が多く、教育論としては面白い本だね。                

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