知的漫遊紀行

2017/11/11(土)20:38

「神鋼『品質より納期』数値改ざん、社内調査を公表・「生煮え」調査、遠い解明 具体性乏しく」11日朝日新聞

私:神戸製鋼は10日、検査データ改ざん問題について、社内調査による原因究明と再発防止策をまとめた報告書を発表。 収益を重視するあまり、品質より生産量や納期を優先する企業体質になったと分析。  不正の原因を列挙し、自社の体質を批判した。   A氏:詳細な調査は弁護士でつくる外部調査委員会に委ねることになるという。   私:報告書は、「ものづくりに対する誤った自信」など、品質軽視の姿勢があったと指摘。 収益優先の体質を改めるため、「品質憲章」を定め、品質がコストや納期に優先することを明文化するよううたう。  たこつぼ化を見直すため、事業部門を横断する異動を推進し、品質軽視を防ぐため、グループ内で教育プログラムを整備し、幹部と現場が意見を交わせる職場づくりを進めることも掲げた。   A氏:川崎博也・会長兼社長らの記者会見での主なやりとりでは、長く事業部門制を取ってきて、各事業部門に収益責任を負わせ、数字さえ出れば「品質管理」も現場任せだったので、(不正も)かなり以前からということになったという。   私:しかし、俺が思うに、以上の記事は、ポイントが全く、外れているね。  神戸製鋼の検査の不正問題は、日産やスバルの完成検査での不正とは全く異質だという意識が神戸製鋼にもマスコミにもないね。   「品質は工程で作られ、検査では品質は変わらない」という基本からすれば、日産やスバルの問題は「ものづくりの工程」の問題でなく、検査員が有資格者であるべきなのに、そうでなかったという「検査組織」の問題で「ものづくりの工程」の「品質」とは直接無関係。   だから、日産の西川広人社長が、10月2日の記者会見で、発覚した問題については謝罪しつつも、無資格者が検査した車については「安全安心だ」と強調し、不正は形式的なもので、実質的な問題はないとの認識をにじませたというのも理解できる。   A氏:神戸製鋼の川崎会長兼社長は、「長く鉄鋼事業部門にいたが、私の専門は機械保守や設備改善で、『品質管理』には接しなかった」というのは、まったくおかしい発言だね。  「品質管理」のシロート的発言で、神戸製鋼の今度の問題の「真因」はここにあるね。 私:神戸製鋼は、日産の最終組立ラインが、作業者の手作業であるのに対し、装置工業だから、人手でなく直接、機械や設備が「品質」を決める。  すなわち、社長が経験した機械保守や設改備善は、本来、「品質管理」の中心なんだね。   A氏:君がよく言う「品質管理は品質を管理するのでなく、品質で工程を管理することだ」というが、この基本がわからないで、何十年も装置産業の「品質管理」のセンターである機械や設備の現場にいて、「品質管理」の意味を理解せず社長になったわけで、これが神戸製鋼の問題だね。   私:装置工業では機械保守や設備の改善が進めば「ものづくりの技術」が向上し、それは、品質向上、コストダウン、納期遵守につながる。  「品質より納期」というのは矛盾だね。  「現場技術力を向上し、品質を向上させれば、納期を安定して守れる。   A氏:工程が安定していないと「不合格品」を発生しやすいから、「不合格品」でもデータをごまかし、「合格品」として出荷して、納期を守るというのは、「品質より納期」でなく、「品質」が安定していれば「納期」を守れるから「納期よりも品質」だね。   私:それに、神戸製鋼はISO9001(和訳してJISにもなっている)の認定を得ているのだから、「不合格品」が出たら再発予防の「是正処置」をしなくてはならない。   すなわち、5Wで「真因」を把握して、これを潰して改善する。   「品質管理」には、高度成長期の始まりにPDCA(Plan,Do,Check,Action)サイクルという考えが現場に定着し、再発予防を繰り返すことで、品質が向上した。  Actionが再発予防の改善だね。   1980年代に日本の品質が世界を制覇したのは、その現場活動が背景にある。    日産、スバルの問題は、「ものづくり工程」の問題でないが、神戸製鋼の問題は「ものづくり工程」の軽視であり、現場の技術向上力の問題だね。   A氏:神戸製鋼は対策の一つとして、各工場の「品質管理」を統一するため、本社に「品質監査部門」を設置するという。   私:おかしいのは、神戸製鋼は品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001の審査を受け、認証されていることだ。  「品質マネジメントシステム」とは「品質管理」システムのことだ。   今回の検査の不正が発覚する前の神戸製鋼のHPのトップには次のよう「宣言」がある。 「神戸製鋼グループでは、お客様にご満足いただける製品を提供するために、品質マネジメントシステムの国際規格『ISO9001』の認証を取得し、品質保証・品質管理への取り組みを行っております」    普通、ISO9001の審査を受けるとき、会社側は「品質保証部門」というスタッフ部門が対応するから、新規に組織を作る必要があるのかね。   それに新たに「品質宣言」をするそうだが、上記のISO9001による「宣言」はなんだったのかね。   神戸製鋼のISO9001は完全に崩壊しているね。  その原因はなにかね。   弁護士による第三者委委員が、本格審査をするというが、本来は、装置工業の専門技術者を参加させ、「ものづくりの工程」の工程ごとの現場の技術管理状態を審査しないと効果的な審査報告にならないだろうね。 「ものづくり工程」の品質を作り出す技術能力を「工程能力」というが、顧客の品質要求が「工程能力」超えたら受注は不可能で、「工程能力」を上げるしかない。  だから、「工程能力」は競争力の源だね。    神戸製鋼の検査の不正問題の解決は、「工程能力」の向上しかないね。  

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