知的漫遊紀行

2018/09/19(水)16:31

「大学改革 ブランド主義・偏差値教育、破る議論を」19日朝日新聞・「永守重信のメディア私評」欄

私:永守重信氏は、日本電産の創業者で会長で、京都学園大学を運営する京都学園の理事長も務める。    永守氏は、今の大学教育には大変失望していて、日本電産を創業して以来、国内だけで新卒の学生を約6600人採用してきたが、一流と言われる大学を出た学生でも英語は話せないし、専門分野もほとんどできず、多くの学生が即戦力にならないから、企業で働けるように教育し直すのに、企業が時間もお金もかけているが、こんな国は日本くらいしか見当たらないという。    日本電産の社内には、どの大学を出た社員がどんな仕事をし、どう昇進しているかを追跡したデータベースがある。   それによると、一流大学の卒業生がいい仕事しているかと言えばそうでもないし、同期入社の中で二流、三流大学の卒業生が先に昇進することもよくあるし、同期のトップを走っていることもある。   日本電産はモーターの総合メーカーだが、新製品開発部門にも二流、三流大学の卒業生が多く、彼らの方が仕事ができるから。   結論は、出た大学と偏差値は仕事のできとは全く何の関係もなく、仮に一流大学の卒業生は仕事ができて、三流大学の卒業生はだめだったら、大学にこれほど興味を持たなかっただろうと永守氏はいう。   A氏:こういうことになる原因は、ブランド主義と偏差値教育。   多くの大学受験生は将来何がやりたいということをあまり考えずに、名前が通ったいい大学、ブランド力のある大学に入ろうとし、ろくに遊びもせずに塾に行き、家庭教師をつけてもらって入試に受かるための勉強ばかりしている。   進路指導では、「君の成績ではもっと下のランクに」と大学だけではなく、学部や学科まで偏差値で区切られる。   「人生100年」になろうとするときに、前途ある若者をたった18年生きた段階で区別してしまい、一番夢を持たないといけない時期に、夢を持たせないようなことをしている。   私:だから、永守氏は、若者の夢の芽を摘むブランド主義と偏差値教育を打破したいのだという。    その考えで京都学園大を運営する。   だから、永守氏の考えに共鳴してくれるガッツのある先生方に来てもらい、学生に質の高い教育をして世の中で求められている人材に育てるのだという   英会話を教えるだけでなく、英語で授業もし、英語の成績はTOEICで650点以下は卒業させない。   これから新たに工学部を設け、モーターの技術者も育て、今年の志願者が去年から7割増えた学部もあり、来年はさらに2倍にすることをねらっているという。   目標は、メディアでもよく取り上げられるイギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」の世界大学ランキングで199位までに入ること。   日本の大学で100位以内は46位の東大と74位の京大で、その他は200位以下だから、199位になれば日本の大学では3番目になるので、永守氏は、できれば10年で達成したいが、20年かかるかも知れないので、簡単ではないと思うが、達成をめざして永守氏は、私財を1千億円でも投じる覚悟だという。   A氏:教育は、人間の行動を変える。   永守氏は、職業訓練大学校(現職業能力開発大学校)で学んだが、その大学の校長は元東北大学教授で歯車の研究で有名な成瀬政男先生で、毎月学生たちに「人間の能力は学校の勉強で決まるのではない」「その場その場で全力で事にあたる」といったことや、将来世の中がどう変わるか、何を学び、どんなものを作ればいいかなどを語り、ものすごく影響を受けたという。   永守氏は、オイルショックで省エネが叫ばれたとき、省電力のモーターを開発して世に問うべく会社を起こしたのは、まさに先生の言った通りに歩んできたように思うという。   そして、永守氏は、成瀬先生のように京都学園大で学生たちの意欲を引き出したいと思っているという。   グローバル化が進み、世界を股にかけて事業をしなければいけない時代になり、日本を訪れる外国人も増え続けている。   時代が変わったのだから、大学も英語を話せるようにするだけでなく、教育内容を抜本的に変えるべきで、朝日新聞など多くのメディアは「偏差値偏重」の是正を求めてきたはずで、少子化が進み、若者が人材としてますます大事になる今こそ、職業教育も含めて教育改革を多面的に報じ、議論を巻き起こしてほしいと、永守氏はいう。   ブランド主義・偏差値教育を止め、それによる大学改革は大きな課題だが、確かに少子化が進む日本にとって、重要な解決課題だね。  

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